冬馬君の秋と冬

だかずお

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『本日の泊まる場所の巻』

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ブゥゥーン 旅先に着き、本日泊まる場所の近くの町に向かっている車の中は気分爽快、ご機嫌に走っている。
「ハイホー、ハイホー 歌を歌おう」大ご機嫌に歌ってるのは冬馬君、あまりの嬉しさにみんなも歌いだす。
車の中はまさにライブ会場と化す。
「今日は私達のライブに来てくれてどーもサンキュー」きみ子がノリノリで挨拶を始め、それに便乗して多網が首を縦に振りまくる、その姿は歩いている時の鳩の姿にも見えた。

「いやぁーライブ始まりましたぁー」スーまで一緒にライブ会場と一体化してノリノリである。

「おじちゃんこれかけて、最近これ練習してるの」
きみ子が手渡す一枚のCD
きみ子は観客に向かって語りだす。
「どうも~~きゃりーきみきみでーす、私の新曲パーティモンスター聴いて下さい」名前違うような?
しかし、みんなは大盛り上がり
「待ってました、きゃりーきみきみ」大喜が叫ぶ。
始まったばかりの旅行の行きの車の中は本当にたまらん。まだ旅行始まったばかりなんだ!!

曲のイントロできみ子は世界に入りだす。
目をつむりーの、リズムとり身体揺さぶりーの、プップこきーの。
バッ 手を天にかざし 勢いよく踊りだす
「パーティモンスター」
ファッションではなかったか?と大喜は思ったが、ノリノリきみ子のテンションの高さに笑っている。
いまや曲に合わせて冬馬君、大喜、多網もポーズをきめて踊って歌っている。
「パーティモンスター」(そりゃあんたらの事じゃ)
とにかく大ご機嫌な車は本日泊まる場所に一番近い町に到着。
「ここから先はコンビニとかもなくなるから必要なもの買って行くよ」サーが言った。

「えーもう着いたの?まだまだライブ始まったばかりなのに」不完全燃焼な子供達。
次は多網の多ーるシーサクセションが待っていたのに。この雨にやられてぇーエンジンいかれチマッタァ。おいらのお尻ちゃん、とうとうこいてしまった。
どうしたんだヘヘイベイベー オケツガスはビンビンだぜ!!(歌詞めちゃくちゃや)
まだまだ行きの車のこのシチュエーションよ続け、そんな事を思った冬馬君であった。

「見て、24時間スーパーがあるよ」スーが大きなスーパー発見、あがるテンション

「24時間だ、24時間オープンってなんだか嬉しくなるね」そう興奮しながら言いサーは車を駐車場に停める。
あー遂に着いた。初めての土地、初めて見る風景、どんな思い出が待っているんだろう?冬馬君は期待に胸を踊らせていニンマリ、何度でも言ったる。
「旅行最高~~~~」とにかく大ご機嫌である。

「夕飯は今日どうしようかね?泊まる場所で作っちゃうか、後でこの辺りまで食べに来るか?」スーの問いに子供達は即答。
「この辺りに食べに来る~~」

「そうだね、せっかくの旅行、その時、町も観光も出来るもんね」と言う事で夜は再び町に繰り出す事に。
うきょーワクワクが止まらない~~。しかも二泊三日じゃい!!

「じゃ必要なものとりあえずここで買っていこう」

「24時間やってるし、後でもまた買いにこれるから良かったね」きみ子が何故か豚肉を手に持ちニヤニヤしながら言っとる。

「夜の乾杯の為にお酒買って行こう」スーの提案にサーも「よし今日は大晦日、みんなで大いに盛り上がろう」 「オーーーッ」
そう、今日は大晦日なのである。
まさか旅先で新年を迎えられるとはこれまた最高のシチュエーション、前回の婆ちゃん家旅行をまた思い出す。

多網が大晦日と聞いて意気込んでいる「今日絶対寝ない」
その発言に冬馬君と大喜も「僕らだって」一体どんな大晦日になるのだろう?

食べ物やお酒を買い込み、いざ我らの泊まる場所に向けて出発~~。
「初めてだね、旅行で宿とかホテルじゃなくて一軒家に泊まれるなんて」ウキウキ冬馬君が言う。

「うん、なんか別荘持てたみたいで嬉しい」サーが頷く。

町を抜けると、途端に山道に。
「なんか家もなくなってきたね、こりゃコンビニも無いわけだ」大喜が先ほどまでの景色と一変した風景をキョロキョロ見ている。
周りは本当に何もない山道となる。

「夜怖そうだね」ワクワクしながら冬馬君が言った。
ドキッ 同時に何故か背筋をピンと伸ばすサー、スーコンビ
「夜怖い話して」ボソリ多網の発言にサーとスーは心の中即答する、絶対しないもん!!
自身の自画像を保つため無論口には出さずに。
我々は勇敢なサー、スーなのだ、お化けを怖がるなど言語道断。

ブゥーゥーン 車は山道を進む。
山道を30分くらい走っていると一軒のお家が視界に入る「あっ、きっとあれだ」スーが言った。

「わおーーーっ、あれが今日からの住まい」テンションが上がりだす一同
「遂に着いたぞーーーっ」子供達が顔を見合わせ「楽しみーーっ」
車を駐車場に停め、さっそく家の中へ。
「お邪魔しまーす」
この瞬間がまたたまらない、どんな場所なんだろうか?期待が膨らむ、泊まる場所を覗くこの対面の瞬間は素敵な女性との出会いの様だ(本当かよ)。
さっそく玄関を入り、部屋の中に駆け込む子供達。
さあ、僕らに君の全貌を見せて。
「わぉーハイディーワオー」(なんの掛け声じゃい)
「広いーーっ」 玄関を入ってすぐに広いキッチンにリビング、大きなテーブルにテレビやソファーがある。
「ここでご飯食べたり、くつろぎスペースになるね」冬馬君が言った。
その時だった「うわぁーーー」何かに驚く多網と大喜の声が。
びっくりしたサーとスー「まさかお札あったの」(すぐに幽霊系を意識する)
声のする方に走って向かう冬馬君ときみ子。
「どうしたの?」
「うわぁーー凄い」リビングの左の部屋の扉を開けると脱衣所が、そこの扉の向こうにお風呂があるのだが、驚くのはそれだけでは無い、そのお風呂場から外に出れる場所があり、外にはなんと檜風呂があったのだ。
「これがスーが言ってた露天風呂だ、たまらーん」
子供達は飛び跳ねた、すぐにサーとスーも見に来る
「何枚貼ってあったの?」
「あっ、違ったのか」ホッとし、風呂の姿に感動する「これは素晴らしい」まるで横綱みたいな風呂(どんな例えじゃ)
「よーし夜はお風呂に入ろう」今から夜の楽しみが出来た。
「ちょっと着いたばかりだし休憩しよう」サーがリビングのソファーに座る。
「ずっと運転だったもんね、サーお疲れ様」

リビングの部屋の外はベランダになっていて、そこの左側に露天風呂がある造りになっていた。
ベランダから見える風景がまた乙で、そこから山々が見渡せたのだ。つまり露天風呂に入りながらこの景色が眺められる。

子供達は今度は二階に上がって行く
「まだ二階見てないよ」

ダッダッダッ 

「うわぉーんっ モスキート~~」(なんぢゃ?)蚊?

二階は畳の部屋がふた部屋
またきみ子が畳に鼻をくっつけクンクン嗅ぎ始める(きみ犬)これこれ、これがたまらんのや。
きみ子の謎の習性。

「やっぱ畳って落ち着く」

サーとスーも二階に上がってくる
「やっぱこれだね~~、畳は素晴らしい」

「ビジネスホテルもアメリカ式にしないで畳にして欲しいよ」スーが言った。
「うん、日本の誇りだよ」

「日本の素敵な文化、技、職人、心は後世に残って欲しいよねぇ」畳を見、日本を憂い語り出す二人。
窓の外に広がる青い空に、生い茂る山々、みんなのテンションは自ずと高まる。
「しゃー旅行は始まったばかりじゃい」

しばしくつろぎタイムとなる。
子供達は二階の和室でくつろいでいた。
「なんか静かだね、車の音もしないし、場所によって聞こえる音ってこんな違うんだ」大喜が言った。

「うん、なんかこんなに違うんだってビックリする」頷く冬馬君。

多網ときみ子はプップこきながら部屋の中を駆けずり回っている。
あーこんな光景もなんだか和んでしまう。

旅先で いつもの姿 またよろし (なんじゃ)

二階の和室にもテレビがあった。
何となく大喜がスイッチを入れると、コマーシャルが、本日20時より花火大会。
「えっ、この辺りのローカルコマーシャル、今日近くで花火大会あるって」興奮するきみ子
子供達は飛び跳ねた「後でサーとスーに伝えなきゃ」
実は下の階にいるサーとスーもテレビを観ていた。
「今日花火大会だって、ラッキーだったね、みんなで後で行こう」 「そうだね」

今時刻は16時をまわった頃
サーはいびきをかいて寝ている、スーはベランダで一人黄昏ていた。
ああ、小夜さん君にもこの景色見せたかったなぁ、一緒に新年を過ごしたかった、一緒にここに来たかった。ぐすんっ、駄目だなぁぼくはまだ小夜さんを引きずってるなんて。
いつまでもしょげるな自分、新たな一歩踏み出そう。
スーは自分に喝を入れるが、小夜に投げかけられた優しい言葉や、思い出を思い出しては、目が潤みだす。
その時後ろから声が「こんのとこでスー何してるの?」
それは冬馬君の声だった。

「あっ、冬馬君か、いゃあー景色綺麗だなって」
冬馬君にはなんとなく分かった、子供ながらにスーが嘘をついてた事、どこか自分は人のそんな気持ちを敏感に察してしまうところがある。
スーの時折見せる寂しそうな顔に気づいたのだ。
「小夜さんの事考えてたの?」
スーはどきりとする、みっ見抜かれとる!!
「いやぁ、実はちょっと思い出してね、いつまでもみっともないね」

「そんな事ないよ、それだけ人を愛して想えるスーは凄いよ、引きずったって何も恥じる事ないよ」

「ありがとう冬馬君、君は相手の気持ちを想える優しい子だね」スーは微笑んだ。
「行きの車の中の話、みんなが言ってた事、もっともだって思った。振られちゃったけど、僕はあんな恋愛出来たんだ、あんな気持ちを知れたんだ、それがかけがえのない宝だったんだね、僕にもやっぱこの思い出を無きものには出来ない、今は相手の幸せを思って、いつまでも依存せずに自分の人生をまたあゆむよ」

「スーなら絶対また素敵な人に出会えるよ」

「ありがとう冬馬君、清香ちゃんを大事にしてあげるんだよ」

そんなスーの言葉が嬉しかった。
スーは本当に優しい人だ、子供の自分にもまっすぐ語りかけてくれたのだ。子供とか大人とか関係なしに。
ふとリビングを見るとサーは多網に起こされていた。
「みんな、そろそろ町に夕飯食べに行こうか?花火大会もあるみたいだしね」

「賛成~~~~」

再び車に乗り一同は先ほどスーパーなどがあった町に向かい出す。
ブゥゥーン ~~~~
「街灯が全然無いから、この時間で真っ暗だね」きみ子が車の中から辺りを見回し言った。
「お化け出ないかな」多網のその発言に発狂しかける二人、説明するまでもないがサーとスーである。
スーは思った、自分が運転しないで良かった。彼は今お化けが視界に入らない様に目をつむっていた(んなアホな)。
もうあたりは真っ暗、はやく町の明かりを見て安心したいサーとスーであった。
30分ほど走り、再び町に到着、二匹は叫んだ「あー街灯って最高、民家ってホッとするね、24時間オープンって神だよぉ」とにかくよっぽど怖かった様だ。

その時、大喜が叫ぶ「あそこ行きたい」
「えっ?」一同振り向くそこにはお洒落なカフェバーらしき店が。
「なんか良い感じだね、行ってみようか」スーが言った。これが全ての始まりであったのだが。
さっそくお店に入る。
カラン 「いらっしゃいませ」

ハギューーーーーーーんっ、ズギャアアーンッ
スーとサーの心は宇宙を飛び出し、グルグル回っていた。
なんとお店の女性がスーパーべっぴんさんだったのだ。
「6名様ですね、カウンターとテーブルどちらになさいますか?」男二匹はかけてる眼鏡をクイっと上げ、渋い表情を浮かべこう言ったそうな「カウンターベイブ(お姉さんの近くに居れるから)。

ここから男二人の見苦しい姿を垣間見る珍事勃発。
なんとここにて次回に続く。
次週サーとスーが暴走す。


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