冬馬君の秋と冬

だかずお

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『今年の年末は』

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冬の朝は暖かい布団から出て起きるのがなかなかに億劫である。冷え込んだ朝にアイフォンの目覚ましが鳴る。
眠たい目をこすりながら目覚ましを止め、新たに設定しなおす。うん、2分後に。1分でも多く寝ていたいんじゃー、サーは心の中叫ぶ。
今日から仕事は五連勤、年末近くだろうが御構い無しに仕事はあった。
ピピピッピッ ピッピピピッピピ すぐに再び、けたたましく目覚ましが鳴る、後1分、また1分後に時計をセットしなおすのだ、これを4回程繰り返し、いよいよ観念してサーは目を覚ますのである。

「朝か」冬の朝はやはり中々布団から出られない。
仕事場に着くと、ある程度脳内は仕事モードに切り替わるのだが、仕事場に行くまでの道のりは休息モードのサーは、行く間が正直あまり好きではなかった。仕事が終わった瞬間の帰り道は飛び跳ねたくなる分かり易い男なのだ。
とりあえず布団からやっとの事で起き出した。
起きたばかり、あまり腹はすいていないのだが、とにかく朝食を食べる習慣がある。
食べなきゃ脳が働かないと思い込んでいるのである。

下の階に降りる時、子供達が寝ている部屋の前を通るサー、一瞬立ち止まり中を覗く。
息子の多網や、冬馬君達はぐうすか気持ち良さそうに布団に包まり寝ている、みんなは今日も休みか良いなぁ~と、指を咥えながら心の中つぶやくサー。

「ううっー、しかし今日は一段と寒いなぁ」

朝食を済ませ、支度をして駅に向かう
「行ってきます」

こうしてサーの一日は始まるのだ。

今年も、もう終わりか、なんだか一年あっという間だった様なそんな気がするな。いつも年終わりにそんなこと思うなぁ。
それにしても冬の天気の良い朝の空はとても澄んでいて綺麗だなぁ。
「今年も一年自分お疲れ様」朝から冬の青空の下、自分をねぎらうサー。
職場にピューが来てからと言うものサーは前より仕事に行くのに緊張しなくなった。
親しく話せる友達が職場に出来た事で心がリラックス出来て嬉しかった。
上司が居なくなって代わりにスーが来ないかな?そんな事を思い、笑いながら駅に向かう。
電車のホームで座っていると、目の前に富士山が見えた「わぁー富士山ってやっぱ凄いなぁ、なんだか心が晴れ晴れするなぁ」こんな日はなんだか朝から得した気分になる。
「こうして僕が今、富士山を見ている間にも、実際にに登ってる人が居ると思うとなんだか面白いなあ」

今日はどんな一日になるかなぁ!!

その頃、多網の部屋では暖かい布団に包まれ気持ち良さそうに寝ている子供たち。
大喜が目を覚ます「あっ、冬休みの特番アニメ特集やってるんだった」

その言葉に冬馬君もすぐに目を覚ます
「見に行こう」

学校じゃない時は、こうしてすぐに目を覚まし、起きられるのだった。

多網の妹の多美は朝から発声練習をしている模様
もちろん発声する言葉は憧れのイクラ様の言葉
「バァーブゥ」首を傾げる多美 
「バブバブ ババ ブゥーア(イクラ様のはもうちょっと滑らかなのよね)」練習に余念は無い。
朝から何しとるんじゃい!!

「またぁ、多美ったら朝からイクラちゃんの真似して」母にそんな事を言われ、ちょっとカチンときた多美。

これは真似じゃなくて超える為の練習なの、ママは黙ってて「バァーブゥーアー」

「ハイハイ、寝なさいね」

あーっじゃかしいわっ、言葉の伝わらない歯痒さ、多美は一向に自分の言葉を理解しない母にイラついた。

あんたも少しはタイコさん見習って子供の言葉くらい理解せんかママ、タイコさんはイクラ様の言葉を理解してるんだからね、母親の鏡でしょ!!
「ばぁーブッ ブッ チータラ ホイホイ ハッソンケー」

「ハイハイ おやすみ」

「カコーーッ」多美は切れた。
だが閃く、このカコーーッって言葉はイクラ様のチャーンに匹敵する名言になるのでは?と。
試しにもっかい言ってみた。

「カコーーッ」

「あははは、イクラちゃんの真似はもういのよ」

プチン これのどこがイクラの真似じゃーーーかしぃーー あんたはタイコを見習え~~ママの分からず屋
「バァーブゥーアーホー」

場面は変わり電車の中。
サーの通勤の最中に一通のメールが届いた。
ピッ あっスーからだ。何だろう?

えっ?サーのテンションがみるみる上がっていく。
メールの内容はこうだ。

サーこないだはありがとう。
僕は小夜さんにフラれて生まれ変わったよ。
新しい一歩を踏み出す為に計画を立てたんだけど、今年の年末一緒に祝わない?もちろん子供達も誘ってみんなで一緒に。
僕が泊まる場所も予約するから、旅行でもどうかな?

サーは思う、絶対に行きたい。
テンションが上がる、年末までもう少し、よしっ仕事頑張るぞー 気合いが入るサー。
シャーシャーシャーサァー サーのテンションは上がってゆく。

その日の夜、家に帰り、サーはみんなにその事を伝える。

飛び跳ねる子供達
「絶対行く~~~~~~っ!!」

多網は嬉しさのあまり身体をクネクネさせるクネクネ多網ダンスを発動させる。
きみ子もブッブこきまくる(嬉しさを表現する他の方法はないんか~)

と言うことで、今年の年末はスーと一緒に旅行決定となる。
「しゃーーしゃーーーーーっ」みんなは嬉しさのあまり飛び跳ねまくっている。
サーも心の中思う、五連勤くらい屁でもないぜ、と。

翌朝も仕事に向かう前に子供達の寝ている部屋を覗いて、自分に言った「あと四連勤じゃ~~しゃ~~、そしたら旅行じゃい」

三日目、四日目

そしていよいよラストの日

仕事中、事あるごとに考えるのは、明日はみんなで旅行だ、であったそうな。
部長に怒られては、明日は旅行だ で切り抜ける。

そしていよいよ、ラスト三十分
ぬおおおおおーっ、この暇な時間の三十分がまた長いこと。
後二十八分、男は一分ごとに時計をチラチラ見ていた。 まだ二分しかたってない、こーゆう時は遅いんだよな、旅行の時こそ、こんな時間感覚になって欲しいのに、と愚痴る。

いよいよラスト五分前の時、表情には勝手に笑顔が溢れてくる。あー明日は旅行、見た事ない景色に、美味しい料理、この季節の温泉なんかも良いな。
男は笑いが堪えられなくなっていた。

すると部長が「正孝君、三十分残業出来る?」

男はギョッとする
うっ、嘘だろ!!こんな時に。
断れない従順なサーは頷いてしまう。
こうして三十分延長戦となる。
彼が延長してから終わるまでに時計を確認した回数は250回にも及んだそうな。

そしていよいよ仕事終了。
ピューに挨拶した後、再び上司に引き止められないように慌てて職場を逃げるように出る。

外に出た瞬間、男は解放された

心の中叫ぶ
「ハッハー私は自由な男 サーじゃい」

速攻お家に帰ったそうな。
スーから連絡が来ていた。ピッ メールをすぐに確認

明日朝八時くらいにサーの家に行くよ。
泊まるところも決まって二泊三日でとったからよろしく。
サーのテンションはこれを見て、ますますあがる、仕事が終わり帰りの電車、明日から休みに旅行、しゃー最高の気分じゃ~~!!

多網家では、冬馬君達の定番行事の旅行しおりを作っている。
「何もってけば良いかな?」冬馬君がペンを持ちながら言った。

「パンツ」囁く多網

皆は「パンツ」と言って、しおりの持ち込み欄にパンツと書いている。

「トランプなんかもいいんじゃない?」きみ子の提案

「やっぱり旅行前はワクワクするね」興奮冷めやらぬのは大喜

「去年は婆ちゃん来たけど、今年は来なかったね」冬馬君が、ついこないだの様な去年を懐かしんだ。

「そう言えば、去年の冬休みは婆ちゃん家旅行だった」

「婆ちゃんに会いたいなぁ、あの旅行楽しかったね」きみ子も懐かしむ。(「冬馬君の冬休み」より)

そんな中、サーが家に帰ってきて「ただいまー」サーの気分は爽快、全快、リフリジャレイタ(冷蔵庫)だったそうな(なんじゃそりゃ)。

サーから旅行の詳細を聞き、ますますテンションの上がる子供達 いよいよ明日から旅行。
ヒャッホー!!やはり旅行前のワクワクは止まらない。

その日の夜、やはりすぐには寝ないで布団の中、夜中の語り合いをしている子供達であった。


いよいよ明日からスーと合流しての旅行が始まる。
一体どんな旅が待っているのだろうか!!


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