冬馬君の秋と冬

だかずお

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『冬馬君ハートブレイク』

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ザアアアアアア ザアアアアアア~~

時刻は21時頃
雨は依然強く降りしきり、たまーにピカッと雷様が光っている。
子供達は光る度に「おおーっ」と声をあげたりするのだが、サーとスーは光る度に身体をビクッと揺らす。

みんなが集まっている冬馬家は夜になってもまだ、とても賑やかで、クリスマスパーティーはこれからと言わんばかりの盛り上がりを見せている。
子供も、大人も、みんなが今日家に泊まると言うのは、やはり最高に気分が嬉しくなる。
やったあ最高、今日の夜もみんなで過ごせる!!
この瞬間の気分はやはり、たまらないものがある。

「あーなんだかこの雰囲気和むのぅ」蛇鰐美ちゃんがニンマリ笑う。

「うん、いつもみんなで集まると、ホッとしてリラックス出来るよ」と、きみ子。

「それ分かります、みんなで集まって遊んだ帰り際、あー楽しかったなぁっていつも思います」そんな清香の言葉に冬馬君は死ぬほど嬉しくなる。

ウレピ~~~。

「本当なんか、みんなで過ごすこの空間、凄い落ちつく」アミもすっかりリラックスしている。

大喜もその言葉に嬉しくなる。

「まあ二人も飲んでペロ」清香とアミにオレンジジュースを注ぐ虎鮫代ちゃん。

「ありがとうございます」みんながすっかり打ち解けて仲良くなってるのも嬉しかった。

ふぁー なんだか良いなぁ、みんなと過ごすこの時間は本当に落ちつく。世間のしがらみや、人間関係、日常のやるべき事などから解き放たれてリラックス出来るこんな瞬間は宝である。
あぁ、この瞬間は日常の悩みを忘れよう、そんな瞬間があって良いじゃない。 ニカリ
毎日こうだったらなぁ~~ そんな事を思い笑った。

「よっしゃー、今日夜もみんなで一緒に過ごせる」
そのきみ子のセリフにみんなは「ひょー最高」
大ご機嫌であった。

多網が気合いのすかしっぺ 「嬉プゥ~」その微妙な音と言葉にみんな大笑い。
しかも微妙に臭かった。

出番の全くない多美は言う
「ちゃ~~~~~~~~~~~~~~~~」以上


この頃、酔いの深まった大人達は語り合いをしていた。少しほろ酔うと、気を遣いあっていた関係が少しほぐされ、深い話などが出来るのが酒の魅力の一つかも知れない。

「最近は色々スーはどう?」多網父ことサーが親友スーに質問している。

「仕事の大変さは、仕事内容や身体よりも、人間関係のが僕にとって大変かなぁ」

「僕もおんなじだよ~なんか変に気を遣っちゃうし、仕事場だと、家族の前とかとは態度変わっちゃうし、どうも打ち解けづらいんだよね、僕の性格かも」

隆も頷く「職場の雰囲気とか自分にとっても一番大事かも、上司とか立場がある人とかだと妙にかしこまっちゃって」

「みんな悩んだり、考える事は同じですね」と大喜パパ

「なんか語り合いになってきてるじゃん」大喜ママ 由佳が言った。

カマーン正子とウェルカムウィメンは、布団を掛け、爆睡中である。「カマ~ン」 「ウェルカム~~」
イビキもそれかい。

「僕も家族が居なかったら仕事辞めてると思いますよ」サーが語りだす。

「どうした急にサー」驚くスー

「やっぱり辞められないのはお金の問題とかですか?」と、大喜パパ

「それもありますし、この先、何が僕に出来るかなぁなんて」

「サーなら何だって出来るよ、本当に辞めたいなら家族に事情説明して、新しい道に踏み出すのも大切なんじゃない」スーが言う。

「そうですよ、やってみたい事あるなら、やらなきゃあっと言う間に人生なんか終わっちゃいますよ」隆も言う。

「まぁ、やりたい事、特にないんですが、見つかったら考えてみます」

「でもそうですよね、年とるごとに安心や、今まで通りから抜けるのとか、世間の目とか、仕事が無くなるの怖く感じますもんね、でも踏み出す時は踏み出すのも大切かと」頷きながら大喜パパ。

「そうだよ、常識や社会の目線で生きなくたって良いんだよ、人生なんとかなるわ」力強い由佳であった。

これには男陣拍手喝采

子供達が「なんだか大人達ヒートアップしてきてる」

「なんか熱気を増してるね」

「こりゃ面白くなってきた、僕らも起きながらの夜中の語り合いしようよ」と冬馬君

「良いねー最高」

「布団に入らないでの夜中の語り合い、珍しい」大喜ニンマリ。

「クリスマスバージョン」多網が囁く。

子供も大人も語り合いが始まる

ザアアアアアア~~ ザアアアアアア~~
こんな雨の音を聞きながらの語り合いもまた乙である。

ピカッ(儂もいるんじゃー)雷様
一応サーとスーは身体を震わせる ブルッ。

「虎鮫代ちゃん、なんか最近変わった事あった?」と、きみ子

「最近は普通の事が多い。例えば昨日、顔が鳥で身体がケバブの人間が(どんな人間じゃい、ってか人間か?)食べてもいいよって」

どしぇー全然普通じゃない!!

「って、夢みた」夢で良かった。

「そーいや、こないだこの蛇鰐美はUFO見たで」
皆驚くかと思いきや「私も見た事ある」アミが言った。

すると、虎鮫代ちゃんが「あたしUFOマニアなの、色々調査中」

冬馬君は、そもそも虎鮫代ちゃんが宇宙人なのではないかと一瞬疑って笑った。何をどう調査してるのかは異様に気になる。

「沢山の人間がUFO見てるのに不思議だよね、いっさいニュースにならないの」

「確かに、世界中とかユーチューブで沢山一般の人があげてるやつとか、空港閉鎖にまでなったのにニュースでやらないよね」

「パイロットさんもみんな見てるのに、言ったら職務おろされるってこないだ辞めた人が、テレビで言ってたよ」虎鮫代ちゃんが続ける。

「うーん、情報って多少操作されてるとこは、あるのかも知れないわね」頷くきみ子

「エリア51も怪しいよ」鼻息荒く冬馬君。

「うん、でもこれだけの人が見てるからもう隠せなくなるよ」大喜が言う。

身震いする、サーとスーであったが。

「宇宙人にも綺麗な宇宙人とかいるみたいだよ」
虎鮫代ちゃんのその一言に。

サーとスーは何故か、格好つける。
「私は地球人の代表サー」

「なにをぅ、僕が代表の宇宙大使スーだ」
阿保。

「そもそも、地球に人類があるんだから、他の惑星に居て当たり前ですよ」大喜パパが言う。

皆宇宙人の話で盛り上がっている。
もう一度言っておこう、今日は一応クリスマスである。

「僕もUFOに乗って宇宙人と交流したいなぁ」冬馬君が目を輝かす。

「ドラエモンや、のび太君達は宇宙交流進んでる」と、謎の言葉を発した多網がニヤリと笑う。

まぁ、確かに彼らは宇宙人との交流が盛んだが。

「なんだか夢が膨らむね」清香が微笑む。

「宇宙人と屁比べしたいわぁ」きみ子よ、どんな競争じゃい。

「あっ、そう言えば、清香ちゃんとアミちゃんが作って来てくれたケーキ食べようか」まだ食べれるのか?由佳が嬉しそうに言う。

「賛成~~~~~~~~~っ」皆大喜びだ。

パクッ 

「うみゃー ペロ ペロ~~」虎鮫代ちゃん絶賛。

「最高」みんな大絶賛である。

冬馬君と大喜は誰にも見られない様に背を向け、涙を流しながら食っていた。
「美味すぎるー」

最高のクリスマス
心暖まるみんなで過ごすクリスマス会

「今日はリビングで布団敷いて、みんなでここで過ごそうよ」冬馬君の提案にみんな大賛成。

雷が鳴る部屋で、一人ぼっちにならないですんだサーとスーは喜んでいたそうな。
よしっ、それなら怖くないと。

さっそくリビングの空いたスペースに、布団を敷き詰める子供達

「ヒャッホー 何だか良いなぁこの空間」喜ぶ子供たち

「旅行に来たって感じやのぅ」ご満悦な蛇鰐美ちゃん。

まだ大人達のスペースにはテーブルが出ていて、おつまみとビールを飲んでいる。

「私達はまだまだ飲めるよね」カマーンとウェルカムが撃沈した後は、由佳が仕切っていた。

「もちろん、付き合いますよ」スーもまだまだ飲めるのか?

「よーし朝まで飲むぞー」意気込む隆

「家飲みはこのまま休めるのが最高ですよね」サーも嬉しそう。

こんな賑やかな飲みの真横に、布団を敷いて寝むれるなんて、また格別な体験、普段はできないから、それがまた嬉しかった冬馬君達。

「なんか居酒屋で布団敷いて寝てるみたいで良いね」喜ぶきみ子。

居酒屋にそんなサービスがあったら結構嬉しいかも。
みんな寝てたりして 笑。

ザアアアアアア~~

「しかし、このシチュエーションの台風面白いね」布団の中から顔を出し大喜が言う。

「サイコ」と多網うをつけてくれ

「そんな映画あったペロ~~」ほら突っ込まれた。

「みんなで理想の相手の話しません?」いきなりのアミのこの提案に女子達はぶち上がる。

「良いねー」 女の子達は、恋バナトークは大好きの様だ。
心臓バクバクの冬馬君と大喜。
布団に入り~の、夜中の語り合いが始まる。

「じゃ、まず私からいこうか」きみ子が先陣をきる。

「私はやっぱり、イカツイ屁をこく人」

多網が必死にブリブリこいている。

「しっかし、きみ子、お前はなんちゅーのが好みなんや」珍しく、蛇鰐美ちゃんが、まともな意見を言っている様な気がする。

「己はのぅ」突如こないだ失恋した恐男を思い出した蛇鰐美ちゃんは黄昏た。

「じゃ、私ペロ、私は舌を回転させない人」
意外過ぎだった、嫌だったんだ?自分がよーするそれ、他人がするのは。

「どうしてですか?」と、清香

「なんかねー落ちつかないじゃん」
あんたがやっとるんじゃ、一番それを!!

「じゃあ、アミちゃんは?」きみ子の、その質問に胸ドキドキの大喜。

「私はね、勇気のある人」
大喜は近々、必死に勇気のある所を猛烈にアピールしようと考えていた。

「清香ちゃんは」

バキュームカー(なんちゅー効果音)冬馬君の心臓は今にも破裂しそうにドキドキしている。

「うーん、ちょっとネコっぽい顔の人が好きかも」

その清香の発言に皆大笑い。
「なんじゃ、そのネコっぽい顔ちゅーのは、あたいだったら絶対、蛇とか鰐に似た顔の奴は嫌じゃ」それは、あんたの顔だ蛇鰐美ちゃんよ。

だがこの言葉を必死に咀嚼している人物がいた。
そう、冬馬君である。
明日顔をネコに整形しようか考えていた。
とりあえず、髭と耳くらいは付けようかと。

きみ子は冬馬君と大喜の為に更に突っ込む
「二人は今、好きな人いるの?」

これには、さすがの冬馬君と大喜も真剣な顔をして聞いている。

ああ ああ、もし清香が好きな人いるって言ったら僕はどうしよう?一瞬気持ちが落ち込む冬馬君。
清香は今好きな人居るのかな?

「私はいない」その返事はアミだった。

ホッとした大喜であったが、自分も対象外かぁと、少し落ち込む。

しかし、問題はその後の返事であった。

アミが清香を見て「清香はねー」と微笑む。

えっ?
頭が真っ白になる冬馬君

なに?今の、清香はねーって?冬馬君マジ顔である。

これには、さすがにきみ子も、まずい空気を感じたのか、何だか嫌な予感が。
質問を止めようとしたが、アミの次の一言が冬馬君の心臓を突き破る。

「清香は居るからねー、彼氏」

「あっ」 冬馬君は呆然となる

その反応にすぐさま気づいたのは横に居た大喜。
冬馬大丈夫か?こりゃ相当落ち込んでいる。

きみ子、かろうじて多網、蛇鰐美ちゃんも異変に気付く。

すぐさま話を変える為、きみ子が「冬馬君はどんな人がタイプ?」

ギョッ もはや質問を理解していない。
「えっ?あっ、へへっ てへっ」
重症じゃ、皆は即座に思う。

するとアミの一言「清香の彼、超可愛いタイプなんです」

グサッ 今や冬馬君のハートはもぎ取られ、煮られていた。

「私も大好きなんです」清香の言葉

ジギャアアアンッ
更に炙られ、焼かれた。
冬馬君の顔はゾンビ化する。

一瞬、冬馬君を見たスーが失禁しかけた程だ、ぎゃあっゾンビと。

「そー言えばさっきのケーキ美味しかったね」一気に話を変えるきみ子

「美味しかったです」
微笑む、清香とアミ

冬馬君は立ち上がり、急に部屋を出た。
清香とアミは、きっとトイレにでも行ったと思ったに違いない。
だが、冬馬君の気持ちを知っていた他の人は気づいていた。(虎鮫代ちゃん以外は)
多網が立ち上がろうとしたのを、そっと止める蛇鰐美ちゃん。
小さな声で、今はそっとしておいてあげよう。
こないだ失恋した蛇鰐美ちゃんには気持ちが痛いほど分かっていた。

二階の部屋、冬馬君は一人泣いていた。
僕は何を泣いているんだ?恥ずかしい、結果は分かっていたじゃないか。
一人こんなとこに居て、戻らなきゃみんなに怪しまれる、はやく戻らなきゃ。
そう思ったが、涙が止まらなかった。
ずっと、大好きだった清香。
何だか、これが最後になる。
そんな気がしたのだ。
キャンプや、旅行楽しかった思い出、これからの色んな思い出。
それはきっと僕とではない。
その彼とだ。

ええいっ、いつまでも泣くな僕、大好きな人ならその人の幸せを喜ばなきゃ。
涙は止まらなかった。

うええんっ、うええんっ。
誰にも気づかれないように声を殺して泣いた。
真っ赤な目を誰にも気づかれたくない、必死にティッシュで拭いて鏡で顔を確認した。
泣いてたのが気づかれない様に。
目は少し腫れぼったかったけど仕方ない。
これ以上長くなると戻りづらくなる。

リビングに戻ると、みんなに顔を見られない様、怪しまれない様に布団に入る。

大喜達は心配していたけど、冬馬君の気持ちに気づいていない振りをしていた。
きみ子も、あの質問、聞かない方が良かったかなぁ、そんな気持ちになっていた。

そんな中、アミが言う「清香、最近出来た、その彼にもうメロメロなんです」

「やめてよ、アミ」

話に興味がなく、聞いてない様な素ぶりで布団にもぐる冬馬君。
耳は全集中を会話に向けていた。

「良かったよね、清香 出会えて、ニャ太郎と」

冬馬君は歯を食いしばる、ニャ太郎だと?そんなふざけた名前の奴に清香は恋したのか。
僕は冬馬君だぞ(よー分からんかった)

「顔を撫でる仕草とかすっごく可愛いの」

ぬおおおおあおおおっ、顔を撫でるだと?キザな奴め
ぬおおおおおおおおおおおおお~~
布団が小刻みに震えている。
布団の中に得体の知れないものが居る様に見えてる大喜の口はポカンと空いていた。

「今、出会って三日目なんです」

ズガアアアアン 三日目?たった三日?
僕は何年も前に会って、一日も忘れなかったのだよ、清香の事を。
それが三日、たった三日だとおおおおおおっ。
清香の名前すら覚えてないんじゃないのか?そいつは。

「可愛い雄猫飼ったんで、それが私の彼氏です」

雄猫だとおおおおっ、なんてキザな エッ?

その清香の一言に冬馬君は喜び悶えた
ぬおおおおおおっ サンタクロース様ぁぁ 私に奇跡をありがとうと。
ようやく冬馬君に笑顔が戻る。

その様子に、きみ子も、大喜も、多網も、蛇鰐美ちゃんも、安心した笑みを浮かべていた。
虎鮫代ちゃんの舌はよー回っていたそうな。


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