冬馬君の秋と冬

だかずお

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『とけたみデート2』

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冬馬君達はスーのデート場所である公園にスタンバイしている。

「小夜さんには見つかっちゃまずいからね」きみ子が皆に念を押す。

「了解」一同、気合い満タン。絶対にスーのデートを成功させると、ひき締まる。

「確かに、見つかっちゃまずいね、さすがに小夜さんは、こないだので僕らの顔知ってるだろうから」大喜が言う。

すると多網が「アイルビーバック」突然サングラスをかけ顔を隠し始めた。

「あっ、良いなぁ」と、冬馬君。

「ギョッ」多網の後ろ奥にいる不気味な存在が目に入り冬馬君は声をあげた。
しかも、ギョッと。

黒いハット帽にサングラス、黒いマスクに何故か全身を覆う黒いマント。
「僕は特に、顔見られたからね」サーであった。

あんた、そりゃただの変質者ではないか。
前日ならハロウィンで通せたのに。

すると「あっ、スーだ」大喜がスーを発見。

皆のワクワクとドキドキは高まる。
「いよいよ、始まるやんけー」きみ子の瞳はダイヤモンド(なんぢゃ)。

スーは行ったり来たり、腕時計を何度も見ては相当緊張している。

「あっ、はっ、スー~~ー」

冬馬君は思う、なんか気持ち分かるなぁ、僕も清香に会う前はああだもん。頑張ってスー。

我が友よファイト!! 変質者は言った。

そして遂に。

「あっ、とけたみさん、こんにちは」

小夜さんが来た~~ 
デートを覗き見てるこ奴らも、目を輝かせ緊張しだした。

「あっ、どっ、どうも こんばんちは」
スーは間違えたった。

「待ちました?」

「そっ、そんなことないです」

スーは緊張と照れのあまり硬直した。
この後どうするんだ? たはっ。
僕が公園に誘ったんだ、何とかしなきゃ。

「あっ、よかったら少し歩きましょうか?」

「はいっ」

スー達が歩きだす。

すかさず、きみ子が「みんな尾行開始!!」

「おおっ」

後を追う、冬馬君達

曲がり角を曲がった瞬間、変質者サーはひっくり返った。 
「うわあっ」

「何してんの、父ちゃん」

すると前を見た冬馬君と大喜も「うわあっ」ビックリ、すっ転んだ。

きみ子も、そいつを見てしまう。
目をまん丸くして「なんぢゃ、あいつは?」

目の前、スーと小夜さんの背後を隠れ歩く、全身毛むくじゃらの存在。

まさか、奴は?

ゴリラ

ゴリラでハッとする一同。
まさか、小夜さんのお母さんの五里羅さん?

「僕らと同じく、後つけてるんだ」

にしても、あの格好で尾行とは阿保なのか?
全身黒マントで身体を覆う変質者は思ふ。

その時だった。

「うわあっ」大喜は声をあげる。

なんと、林の中から全身毛むくじゃらのもう一匹の猿があらわれ、ゴリラに合流したからだ。

「あっ、まさか あれは?」

アウストラロピテクス!!

小夜さんの父であった。
何故あんな目立つ格好を?謎である。

とけたみの友サーは思う、とけたみさんはとんでもない家族と関わりを持ってしまったんではないか?と。
(彼らも、全身黒マントには言われたくないだろう)。

こうして、奇妙な仮装集団は、スーと小夜さんの後をつける。

前を歩くのは猿二匹

「小夜さんの親もやっぱ心配なんだ」大喜が二匹の猿のケツを見て言った。

どうでもいいが、ケツまでリアルに作られている。
ハロウィン仮装大賞でも彼らなら、もらえたんじゃなかろうか?

一方、スー達は。
池のほとりのボート乗り場。
「小夜さん乗りますか?」

「はいっ」

ボートに乗り込む二人。

遅れてすぐに、二匹の猿はボートに乗り込む。
ゴリラとアウストラロピテクスがボートを漕いでいく。
ボートスタッフのおじさんも二人を見て、ひっくり返っていた。

ついで、変質者黒マントと子供達もボートに乗り込む。

もはや、凄まじいデートである。
デートに謎の黒マントと、猿がくっついて来てるのだから。
地縛霊も真っ青ではなかろうか。

ボートを必死に漕ぐスー。
漕ぎ方が分からなくて全く進んでいない。

やばいなんにも話題がない、思いつかない、なんか話さなきゃ。

「きっ、綺麗ですね」

「えっ?」

この時、スーは小夜さんがと、言いたかったけど、さすがに言えず、池が!と言った。

後ろにつける、猿と変質者の集団には二人は気づいていない。

が、すぐに猿はボートを漕ぐ変人に気づく。
「あの人可笑しいね、全身マントで顔まで隠してる」
現代のアウストラロピテクスは笑った。

「やーね、パパ世の中には変な人がいるもんね」五里羅も笑う。


冬馬君達からは、そのボートは異様だった。
猿二匹が漕ぐボート。
自分達は猿の惑星に来てしまったんではないかと錯覚するほど。
目の前で猿がボートを漕いでいるのだから。
よく、通報されないなぁ、そう思った冬馬君。

そんな時スーが勇気を振り絞って言う。

「小夜さんは、なんか素敵ですよね」

「そうですか?どんなところが?」
この小夜さんの返事と表情に男はもうメロメロだった。

可愛い。

「あっ、もう全てが最高です」スーが言う。

「えーっ、そんなことないですよ、ありがとうございます」

スーは思う、なんか良い流れだぞ シャーーー。

チラッ

「あっ」スーと小夜さんは声をあげる。
何故なら横に猿が居たからだ。

焦る二匹の猿は顔を見合わせる

「パパ」

「ママ」

「緊急避難」二匹はそう言い残し、池にダイブする。

「あはは、小夜さん僕はよっぽどオカシイのかな?今池に、二匹の猿が飛び込んだように見えた」

「実は私も・・・気のせいかしら」
小夜は思う、あれはまさか?

二匹は池の中、必死にもがいていた。
「パパ、まだ顔を出しちゃダメ、アウストラロピテクスの意地を見せて」(どんな意地じゃい)

ゴリラに頭を抑えつけられるアウストラロピテクス。
どっちが進化しているのだろう?

すると、今度は。
チラッ、小夜さんがなんと冬馬君達を見る。

「えっ?」

目が合うサー、まっ、まずいっ。

マントで顔を隠し、男は足から垂直に池にダイブする。見事な飛びっぷり。

ジャパーン ここはjapan !!

「サー!!」驚く子供達。

スーは思ふ、あっ今、我が友が池に飛び込んだ。
大丈夫かな?

「なんかさっきから、ちょっと怖いですね」小夜のその言葉にスーは「ボート降りましょうか?」

「はいっ」

二人はボートを降り歩いて行く。

池からすぐに三匹は顔をだした。

チャポン~

「行くぞーー」凄まじい執念

二人は公園のレストランに入って行く。
スー達二人の背後と前方を挟む形で、ズブ濡れの猿二匹と変質者黒マントが席に座り、囲んでいた。

小夜の後ろに猿

スーの後ろにマントマン達。

「なんか、今日不思議な日ですね」小夜が言う。

「たっ、確かになにかに取り憑かれてるみたいな」スーがきょどった。
何故なら、スーの視界に入るのは、小夜の後ろに座る猿二匹。

小夜の視界には、スーの後ろに座るマントマン達。

するとスーが、「小夜さんは、どっ、どんな人が好きなんですか?」勇気を振り絞って言った。

「えーっ難しいです、うーん面白い人も良いですね」

スーは突如言う
「アルミ缶の上にあるみかん、はっ、なんつって」

小夜は笑わなかった。

直後ゴリラはアウストラロピテクスに囁く。
「なかなかハイレベルね」腹を抱えて笑っている。

きみ子は頭を抱えた。
「あーっもう見てらんなぃ、かたすぎる」

スーはこの時、こんなことを考えていたのだ。
もう、告白した方が良いんだろうか?
いっ、いこう。駄目だったら駄目で良い。
スーは突然立ち上がった。

「さっ、小夜さん 今、好きな人居るんですか?」

「えっ、どうしたんですか?急に」

そのセリフに、一部始終見てる一同にも緊張が走る。
えっ?突然すぎないか? 言ったあ~~。
サーも拳を強く握る、とっ、友よ いったな、もう引けんぞ。

ゴリラとアウストラロピテクスも固まっている。
きゃあああんっ 青春。

すると小夜さん「今はいません」

ズクシュ スーにダメージが走る。

サーも心の中、叫ぶ「とっ、友よっっ、怯むな、まだまだっ」

冬馬君達も、スーまだ、あきらめるには、はやいっ。

スーは一瞬暗くなるが、今日は諦めなかった。
僕は生まれ変わったんだ。

「あのっ、小夜さん」

見てる一同は思った、あっ、告白するっ。

スーは小夜さんに恋に落ちていた、もうっ、ハートが我慢出来ないっ、もう僕のハートは止まらない!!

「小夜さんにとって、ぼっ、僕は?一体」

「ハクショーンッ」その瞬間アウストラロピテクスはクシャミをしたった。

「あっ、スーさんなんか言いました?」

「うえっ、あっ、小夜さんにとって、ぼっ、ぼっ、望遠鏡ってなんですか?」

全く意味不明な質問になる。

小夜は真面目に答える「覗いて見ると、遠くの物が近くに見えたり」

あっ、ははは スーーーーーーーーー

その後、会話はなく。
黙って食事をする二人。
冬馬君には分かっていた、スーの気持ちが。
ご飯を食べてるけど、きっと味なんて感じていない。
必死に小夜さんのさっきの言葉を気にしない様に振舞っているスーの姿が冬馬君の目に映っていた。

ゴリラとアウストラロピテクスもなんだか元気がない。

どうした、我が友よ、40年かけて掴んだやっとのチャンスじゃないか?もう終わりか?
まだ、ちゃんと相手に気持ちすら聞いてないじゃないか?

スーは必死だった。
小夜さんに嫌われないように。これで小夜さんともう二度と会えなくなるのは嫌だ。
ここまで、ラインをしてた思い出が頭をよぎる。
ずっと楽しかった、あなたと携帯のアドレスだけでも繋がっているのが嬉しかった。

スーが口を開く
「まだ、はやいですし、せっかくなので近くの街を歩きませんか?」

見てるサー達は祈るように思う。
頼む小夜さん。

ドクンッ ドクンッ お願い。

「いいですよ」

「シャーーーーーーーーーーーーーーーーーっ」
その返事に、黒マントマンと猿、ターミネーターと子供達は拳を天にかざす。

この奇妙な仮装集団を、一部始終見ていたスタッフは何故、ずぶ濡れの彼らを店から追い出さなかったのか?

店長が言ったのだ。
「ありゃ、関わらん方がいい」と。

スーは、その返事に嬉しくて泣きそうになった。
「行こう小夜さん」

二人が出た後、すぐに店を出る猿二匹。

小夜さんの両親は、僕らに気づいていないのか?
サーは思う。

とにかく、後を追うよ。

「おーーーーーっ」


こうして、スーのデート応援観察は続くのであった。


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