冬馬君の秋と冬

だかずお

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『行けっ 飛び出せ 羽ばたけスー』

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皆は布団に寝そべっている。

「かはーっ この瞬間たまらない」ニッコリ冬馬君

「明日はハロウィン、みんなで一緒に過ごせるなんて最高だね」と、きみ子

「確かに」

「夜中の語り合い」多網が言う。

ヒャッホーウ、子供達いつもの恒例行事、アガる瞬間である。

「最近、清香ちゃんとアミちゃんとはどうなの?」きみ子が冬馬君と大喜の顔を見る。

二人はいきなりふられたその話題に、ドキッとする。
だが、やはりこのメンバーで清香達の事が話せるのが嬉しい冬馬君と大喜である。

「最近連絡とってないんだよね」冬馬君が言う。

多網が「明日電話」と急かす。

「いゃあーしたいけど用もないからねぇ」大喜が苦笑い。

「なんか、みんなで遊ぶ計画立てようよ」きみ子の提案に二人は、嬉しくて飛び跳ねそうになる。

さすが、きみ子 ナイスアイデア~~、姐さん、一生ついて行きます~~っ!!
こーゆぅ時頼りになる、きみちゃん。

「じゃあ近々、私が計画たてるね」

きみ子、ありがとう~~

すると多網が「じゃあ恒例の怖い話」

ヒョーッ 出たぁーっ。

「私、新しい話ある」

皆、きみ子のその発言に興味津々。

「聴かせて、聴かせて~~」布団をかぶる。

「こないだ、虎鮫代ちゃんから聴いた話なんだけど」

出たーっ、虎鮫代ちゃん!!!

「こないだ虎鮫代ちゃんの家に蛇鰐美へびわにみちゃんが泊まりに行ってた時」

出た、蛇鰐美。話には何度か聞くが、まだ会った事はない。
しっかし、なんてインパクトのある名前の二人なんだ。全員集合したらやばいな。
きみ子に虎鮫代、蛇鰐美、チーター辺りは瞬殺であろう。
それにしても蛇鰐美ちゃんは一体どんなキャラなんだ?気になる。
冬馬君は思う、相当濃いキャラであることは間違いないだろう。

きみ子の話は続く

「なんか夜中寝てる時、突然、蛇鰐美ちゃんがうなされたらしいんだよね」

「あがががががががががぴーひゅるる」

なんちゅーうめき声。
冬馬君と大喜は布団にもぐる、この時点で怖い、そう幽霊ではなく、蛇鰐美ちゃんが。
多網は何故かこの時、炒飯食いてぇと思ったそうな。
どうでもええわ。

「そのうち蛇鰐美ちゃんが」

「私のコーヒープリンを返せ~~って、うなされ始めたらしいんだよね、それを聴いた虎鮫代ちゃんがビックリ。あっ、やばい蛇鰐美ちゃんが取り憑かれてると思ったらしくてお経を唱えたんだって」

冬馬君と大喜は思った、何故それで取り憑かれてると、虎鮫代ちゃんは思うのか、それが一番怖いと。

「なんみょーしんみょー、もんじゃ焼経」
すんげ~お経だ。
確か、前聴いた話でも、あやつはお経を唱えてたな。

「そしたら、突然、鰐わにが(きみ子は名前を言うのが面倒臭くなったのか、突如名前を省略し始める)そんな、魔法は効かんぞ(まっ、魔法?)はやく、コーヒープリンを持ってこいって叫んだらしいのよね」

「それ聴いて、虎がハッとしたのは、鰐に憑いてるお化けの招待が分かっちゃったの」(動物園か。省略により話が全く分かりにくくなる。ここだけ聴いた人にとっては、全く謎の会話である)

「あっ、鰐はコーヒープリンに取り憑かれてるんだって、だから供養の為にコーヒーに入れるミルクを枕元に置いたらしいのよ、実は虎鮫代ちゃん、コーヒープリンって聴いてゾッとしたんだって、何故かと言うと、夕飯の時、蛇鰐美ちゃんのコーヒープリン落としたからなの」

「だから、その食べられずに捨てられた、コーヒープリンが、怒って化けて出たんだって」

どんなコーヒープリンだ。

いや、それは間違いなく、取り憑かれてるのではなく、蛇鰐美ちゃんがコーヒープリン食べれなかったのを引きずってるだけじゃないのか。

「そしたら、横から、チュルって音が、びっくりして振り向くと、目をギラつかせた蛇鰐美ちゃんがミルクを吸ってたんだって」

うわああっ、冬馬君と大喜は怖かった。
もちろん、コーヒープリンお化けではなく、その蛇鰐美ちゃんと言うキャラが。
多網も怖がっていた、コーヒープリンならコーヒーゼリーのが良いのにどうしてプリンを買ってしまったんだと。 なんぢゃー

「それで、虎鮫代ちゃん気を失って朝になったらしいよ」

「翌日、お清めの為、虎鮫代ちゃんの部屋、コーヒープリンを買って、飾ったんだって、3個で1パックのやつ。
でも、どう言うわけか、その日の蛇鰐美ちゃんが帰る前には一個消えてたらしいよ」

「怖い話でしょ」

怖いと言うより、虎鮫代ちゃんと蛇鰐美ちゃんが謎キャラ過ぎる。

「しっかし、明後日、スー大丈夫かな?」きみ子が言う。

スーの初デート、さてさて、あの男は一体今どうしてるのか?
場面は、とけたみこと、スーの部屋に変わる

ラインメッセージを真剣に打つスー。

「あーっ、どうしよう」男は真剣に悩んでいる。

「なんて打てばいいかな」何度も消しては直す。
初デートが決まって以来、この夢のような出来事に男は本当に夢なんではないか?ちょっとしたメール返答ミスで、この大切な出来事が無くなってしまうんじゃないかと怖れていたのだ。

おお悲しきスーよ、大丈夫 きっと大丈夫だ。
彼は悩んでいた。
「そうだよね」と打った方がいいか「そうだね」と打った方が良いかを。
この一文字で、僕はこーゆうイメージの人間だと思われるかも知れない。
それともこっちが良いか?
「そうだね~」あっ、だったら、「そうだねー」が大人っぽいのか? あーっ、難しい。
文字を打っては消しを繰り返す。
と言うのも、スーはこないだテレビを観たのだ、男から来たら嫌なメールランキングたるものを。
それ以来、気にし始めた男。
即送り返したメールを、わざと遅く時間を空けたり、ちょこまかな小技を取り入れたのだ。
実際良いか、悪いかは全く分からんが。
スーのラインやり取り、自分の返信時間が五分以内であるのに対して、小夜さんからは何時間も後。
この間、何度スーは携帯をチェックすることか。

まだ? あっ嫌われた? やばい? 返事の仕方間違えたか? 絵文字使い過ぎた?
大体これで、一日が終わる。

とりあえずメールは完成した。
いつもなら、即送信だが「ちょっとまだはやいな、時間少しあけよう」と、トイレに行く。

帰って来ては、悩む、後五分くらい遅いほうが良いかな?いや、あんま遅くなりすぎても。

その短い時間の差に、なんの違いがあるのだスーよ。
そんなことより、何着ていくか、何処に行くか、などを考えた方が良いのでは?

ようやくスーの思考はそっちに向く。
いったいデート何処で何したら良いんだろう?
あードキドキする。どうしよう、どうしよう。
そー考えると、サーはこんな道を先に通っていたのか、サーは大人だな。
40を過ぎた男はオモフ。

「明日、服でも買いに行った方が良いな、でもどんな服買ったら良いんだろう?」服は大体、マッマに買ってもらってきたスーは、マッマに選んでもらおうかなと考える。
いや、小夜さんに会って決めたんだ。僕は変わる。
一人で行くんだ!一人でやるんだ!
明日服を買いにデパートに一人で行く。

「よしっ、気合いだ、デートは、みんなも隠れてついて来てくれるし安心だ」

変わってない。もう一人ではなくなった。

スーは期待に胸を踊らしている。
そう、人生初のこのビックイベントに。
スーの男をかけた一大スペクタクルビックイベント!

皆も是非一緒に応援しておくれ。

それは、いよいよ二日後に迫っていた。

男はすでに緊張に包まれている。


季節は涼しい10月の終わり頃

男の挑戦は始まる。


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