冬馬君の秋と冬

だかずお

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『サーと鼻毛andとけたみ』

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はっはっは、遅刻しそうな、多網乳(おっと字がおかしいぞ)多網父こと、通所サー。
彼は早朝から急いでいた。
ハッ、アッ 会社に送れちゃう。
だが、彼は異様に気になっていたことがある。
それは、なにか?
なんだが鼻がムズムズするのだ。
なにかが、立派なたけのこの様に鼻からはえてる気がするのだ。
わたくしが分かり易く説明しよう、鼻毛である。

サーーーーーーーーーッ

あっ、なんかムズムズする、鼻の穴に手を突っ込んで引き抜きたい。
確実に立派なたけのこ様が数本はえている。
サーは確信した、確実に人様に確認される程、立派なたけのこだと。
鼻毛のこ どうでもいいわ。

チラッ チラッ

辺りを見回し、今だっ!!
今なら誰も見てない。
あーっ、この鼻毛を抜ける瞬間たまらない。
絶対に豊作だ。
鼻の穴の下、毛を掴もうとした瞬間。

ハッ

OL様がジロリとサーを見ていた。

おおおおおおー

サーは鼻に手をやるのをスルーして、おでこをかいた。

ポリ ポリ ポリ ポリッ
全くオデコはかゆくないのだが、ポリポリポリポリかいている。

あーっ、鼻毛抜きたいっ。
あーっ気になる。

ザッ、この瞬間、サーの鼻毛は、また下方向に立派に向かってはえた気がした。
なんで、こんなに元気があるんだ、僕のたけのこ鼻毛。
サーはカッカした。
鼻をムズムズさせて、鼻毛を吸い込もうとしたが、むせてしまう。

ガシュフッ 鼻毛ッ。

あーっ、誰も僕を見ていない空間に瞬間移動したい。
鼻はとにかくムズムズしている。

抜きてえ、抜きてぇよっ。

サーは人の視覚にはいらないスペースを見つけ、クルッ 今や。
指は鼻の穴に直行、よしっ、絶対に豊作だっ。
お代官様、今回は豊作ですよー抜いて、抜いて抜きまくりますよーー。

チラッ

ハッ

小学生が下からサーを覗き見ていた。

ぬおっ

見られてはまずい。
サーはそのまま、目をかきはじめる、あーっ目が痒いっ。

ようやく、電車を降りたサー。
やった、やった これで、心おきなく鼻をほじくりまくれるぞ。

サーはエスカレーターを下っている。
今だっ!!

ホジホジホジホジホジホジホジホジホジホジホジホジホジホジホジホジホジホジホジホジホジホジホジホジホジホジ。

快快快快快快快快快快快快快快快快快快快快快快快快快快快快快快快快楽。

よしっ、引っこ抜け、サーーーーーーーーーッ


反対側、下から上がってくるサラリーマンと目があった。

サーはすかさず、鼻下から手を頭にまわし、頭痒いとポリポリポリポリポリポリポリポリポリポリポリかいた。

全く痒くはないのだが。


サーよ、一言言おう 誰も君を見てないと思うが。
見ていたとしても、気にしないと思うが。
見ていたとしても、見ず知らずの君のことなど5秒後には忘れてるんちゃうか?
自意識過剰なサー。
ああサー、されどサー。
僕のイメージがっ。
ようやく、トイレのうんこだす個室で、心おきなく引っこ抜いたそうな。

あーっ サー サーサーサーサーサーサーサーサーサーサーサーサーサーサーサーサーサーサーサーサーサーサーサーサーサーサーサーサーサーサーサーサーサーサー

豊作豊作豊作豊作豊作豊作豊作豊作豊作豊作豊作豊作豊作豊作豊作豊作豊作豊作豊作豊作豊作豊作豊作豊作豊作豊作豊作

お代官様 今年は豊作豊作ですよー。

アッハッハー

ああサーよ、油断したサーよ。

ガチャ

鍵を閉めるのを忘れていた哀れなサーよ。

ギョッ

鼻をほじくりまくってるサーをガン見していたのは、まさかの隆だったと言う。

「あっ、ども」

「おはよう隆さん」

トイレで二人は挨拶を交わしたそうな。
鼻に手を突っ込んだサーを見つめながら。


仕事場に着いたサー。
すると「今日はここに新しい社員の方が来られたのでよろしくお願いします、では自己紹介をどうぞ」

その男はモジモジしていた。

「えっ、あのっ、その」

どことなく自分に似ている彼に親近感を覚えるサー。
あっ、なんだか友達になれそう。
一緒にお弁当食べてくれるかな、ハニカムサー。

「えっと、僕のお名前は、とんぺえ です。よっ、あのよろしくお願いしますます」

ぬおおおおん とんぺえ、こりゃまた珍しく、かっこいい名前だ。
ますます気に入ったサー。

「彼の机は、君の横だからよろしくな、正孝まさたか君」

今更ながらなのだが、サーの名前は正孝だったのだ。

「はっ、はいっ 部長」何故か声は裏返った。

「よっ、よろしく正孝さん」

「あっ、あのみんなからサーって呼ばれてるんで、サーって呼んで下さい」

「あっ、はっ、ソーなんですか、じゃあ僕のことはピューって呼んで下さい」

「あっ、はい、そうですか」



ピュー ?

なんぢゃそりゃ

サーよ、向こうも、そう思っただろう



サー

なんぢゃらほい? と。

「あっ、じゃあ遠慮なく、サーさん、この書類はどこにしまえば良いですか」

「あっ、それはここですよ」

サーは、自分が人に教えられて凄いな、僕は部長になったんじゃないかと興奮した。

ただ、書類置く場所教えただけやんけ~~。

「あっ、ピューさん、コーヒーお飲みになりますか?」

「では、お願いします、あっ、ちょっと細かくて悪いんですが、分量的には角砂糖三個半に、ミルクは四つ入れて下さい、あの普通のミルクのサイズのやつでちょうど四つぶん、あっもし砂糖スティックだったら、一個半くらいで良いです」


サーは思った こまけー と。

ですが、サーは微笑み、オッケー ピューさん と言ったそうな。

「ありがとうございます」

二人はどことなく似ていて、空気感があったのか仲良くなった。

「ピューさん、よかったら、一緒にお昼食べに行きませんか?」

「僕、お弁当なんです、ワイフの」

えっ?ワイフ 英語をここで使うなんて、なんて新しい方なんだ。(そうなのか?)
サーも真似してカッコつけようとした、そう自然に。

「ぼっ、僕もマイワイフのおーべんトゥーなんですよ」

何故か力が入りすぎて、全く関係ない、お弁当の所の発音が英語っぽくなってしまっていた。

二人はサーがいつも、職場の人に見つからない様に隠れて食べる秘密の場所に。
まぁ、普通の公園のベンチなんだが。

「サーさん良いですね、僕もいつも一人で職場の人がいない所で食べるんですよ」

サーは思った、ピューさん、僕の気持ちを知っとるのぅと。
何故か満足気な顔を浮かべ、頷いている。

パクパク ムシャ ムシャ
食べる時は全く会話のなくなる二人。
食べ終わって、一息ついたら言った。

「そろそろ、戻りましょうか」

「ええ」

「僕、初めての場所でうまくやっていけるか心配だったんですけど、こうしてサーさんに出会えて良かった」

「僕こそ、友達が出来て良かったです」

「これからよろしくお願いします」

変な友情が、二人の間に芽生えていた。

仕事場に憩いのオアシスが出来た様で嬉しかったサーであった。

帰り道

あっ、そう言えば、こないだ、とけたみさんから電話あったんだ、なんだったんだろう?後でメールしとくか。


ポワワワワン

場面はとけたみの家に。

「ただいまー」
着いたと同時に開くのはライン。
小夜さんから、何かメッセージ来てるかな?

連絡は来てなかった。

ガックシ

実はこの二日間、音沙汰無し。
いつも、自分からメッセージを送るスーはしばらく、自分からはしないでみようと思って送っていなかった。
寂しさのあまり、小夜さんがすぐに自分にメッセージをくれると思っていたのだが、現実は。

おかしいな、小夜さん寂しくないのかな?僕とやりとりしないで(めでたい奴である)。

あーもう、こっちから、でも待て。
もし、僕から送ったら、僕が小夜さんに依存しているみたいじゃないか(全くその通りなスー)。

絶対にしないもんねっ、しないもん。
スネるスー。

食事時

「とけたみ、そー言えば小夜さんとはどうなんだ?」
とけたみ父がたずねる。

「知らない、忙しいんじゃない」

その言葉と様子から大体を察する父。
ああ、うまく言ってないのか。
その話題はやめにした。
だが、父は言った。
「最近お前、ずっと小夜さんの事ばかりで、自分の人生をないがしろにしてないか?それじゃあ、相手からは魅力ある人間にはうつらないんじゃないか?」

「良いんだよ、僕の人生なんだから」

「それなら、もう何も言わないが」父は少しムッとしていた。

部屋に戻り布団の中、あーメッセージ送ろうか、どうしようか。
いや、ダメだ。
ずっとラインを開いては、閉じの繰り返し。

スーは、ふと思う。
いつまでも、僕はこれで良いのだろうか?
最近確かにこれしかしてない、僕は小夜さんに依存してるだけだ。
もし、小夜さんに振られたら、ただの抜け殻になるだけだろうな。
セミの抜け殻ならぬ、スーの抜け殻(結構不気味である)

部屋の天井をボケーっと見つめるスー。

少し、在り方を変えようかな。
もう、小夜さんのことは少し忘れよう、ラインも、もう見ない。

スーは力強く立ち上がる、よしっスー行こう。
僕の人生を歩もう。

その時だった

携帯がなる

これはメッセージの音

スーは部屋で、飛び跳ねる

ピョーン ひゃあああっ、小夜さんからか~~~~
飛びついて、抱きつくように携帯をとり、速攻ラインを開きチェック


が、メッセージはこうだった。


こないだ電話何だった?


サーからだったのだ。


とけたみは吠えた。

小夜さーーーーーーーーーーーーーーんっ はやく連絡ちょうだーーーーーーーーーーーいっ。


その夜、連絡を待ち、朝まで寝れないスーであったそうな。


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