冬馬君の秋と冬

だかずお

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『とけたみのお見合い』

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「ひやっほー」喜ぶ冬馬君

何故なら明日から三連休なのだ。

この休み前の学校が終わった瞬間のなんとも嬉しいこと。

この、何かやらなきゃいけない義務みたいなものから解放された瞬間がたまらないのだろうか。

冬馬君は勢いよく玄関を開け家に入る

「ただいまー」三連休前のこの瞬間テンションアゲアゲマックスだ。

「今日は大喜や多網にうちに泊まりに来るか電話しようっと」

すぐに電話しに受話器に向かう、すると

プルルルル

「あれっ、電話だ」

ガチャ

「もしもし」

冬馬君はビックリ、それは珍しく多網からの電話

「ちょうど今電話しようとしてたんだ、どうしたの?」

電話先でなにやら多網は声をころし笑っているではないか

一体どうしたんだろう?

「すごい ことに なった」

「えっ、なに?」興味津々の冬馬君

「父ちゃんの友達のとけたみさん」

「あー夏休み七夕祭りでお世話になった人」(『冬馬君の夏』より)

「お見合いすることになった」

「えーっ、うそーっ」

「それで父ちゃんに相談があるからと、電話来てて行きたいって言ったら、どうぞ言った。だからみんなで行こう」

「ひゃっほー」冬馬君は飛び跳ねた。

「じゃあ、平塚これから行けるの?」

「うん、しかも泊まっていいって、きみ子と大喜も行けるって」

「うきょー」それを聞き更に飛び跳ねる

「これから行くから支度しといて」

「分かった、じゃあまた後で」

ガチャ

すぐさま二階にかけあがる

「ひゃっほー、スーがお見合い、なにやら面白いことになって来た」もう今から冬馬君はにやけていた。

「いやー楽しみだ」
こーゆう人の恋話はなんだか盛り上がる、それが更にお見合いとは。

正子に事情を話し了解を得てから、すぐに支度を始める冬馬君

「やったーやったー」

この泊まりに行く支度してる瞬間がまた、たまらん。


一時間後

ピンポーン

家のチャイムが鳴る

すぐに向かう冬馬君

「行ってきまーす」

玄関を開けると、宅急便の配達だった。

うおっ、こんなとこでフェイントかぁ


それから10分後ついに多網の家の車が外に見えた。

じゃあ気を取り直して「行ってきまーす」

車の中には多網父ことサー、多網、きみ子が乗っている大喜はこれから迎えに行くようだ。

ガチャ

「久しぶり」

ああ久しぶりのこのメンバーに心和む。

「じゃあ大喜の家に出発~~」

「おーっ」

車は走る

「あれ、多網のお母さんは来ないんだ?」と冬馬君

「母ちゃんは多美が少し風邪気味だから留守番してるって」

この時、皆は夏に行ったスペイン旅行を思い出し声を揃えて言った。

「ウェルカム ウィメーン」
そうスペインでの正子と多網ママのあの泥酔騒動である。

そうこうしてるうちに、大喜家に車が着く

玄関から大喜が出てくる、皆は大喜の姿にまたアガる。

「これで、いつものメンバー集合だぁー」

「スーの家に出発だぁー」

ブウゥーン

多網父も、なんだかニタニタしていた「あの、スーがお見合いねぇ、何だか面白くなって来たなぁ、すぐ来てくれって、よっぽど緊張してるんだな」

子供達もその言葉に何だかワクワクした、何故だろう人の恋路を見るのは結構楽しい、しかもスーの。

「私がうまくいかせる」きみ子も気合い爆発

「よーし、僕らで盛り上げてうまくいかせよう」と大喜が二ンマリ。

「オウヤァー」冬馬君と多網も爆発

サーもそれを聴きニンマリ、我が友スーよ待っていろ。 トバスゼ!! 

ブゥ~ンッ

なんとも、楽しみだ。


車はとけたみ家に向かう。


その頃、とけたみ家では。
とけたみは落ち着かず家の中を行ったり来たり。
今や324往復目だった。

「まだかな、サー はやく相談したいのに、あーっ緊張する、起きてると緊張するから、来るまで寝てよっと」
凄い発想だ。

布団に潜り込むスー。
あーっ、真昼間に眠る瞬間がまた、たまらない。
でも、緊張する。
目をつむるが、緊張の為、眠りにつけない。
明日僕はお見合いするんだ。

スーは空想する

ポワワワン

「どうも、初めまして スーと申します」

目の前にいるのは、モデルの様な美女。

まぁ、世界一のイケメン男だわ。
私この人と結婚したい。

「あのスーさんは、好きな方とかいらっしゃるんですか?」

「まあ、常にモテますが私には君しかいない」

「まあっ、一生ついて行きます」

ポワワワン

スーはニタニタ笑っていた。

そして、ウトウト
あーこの寒い季節にあったかい布団にくるまり何もせずに眠る、私の好きな時間だ。
うむ、幸せ絶頂タイム
こんな日が一週間は続いて欲しい。
食っちゃ寝、食っちゃ寝 ニタニタ。
カハッ。
良いねぇ、どれくらい人は眠れるか?そんなのに挑戦するのも良い。
目をつむり、口元は笑い、夢の中へ
うはははは。
眠る瞬間の至福。
私と言う殻を脱ぎすて、どこまでも高く高くスーよ行けっ。

グカァー クカッー スーの至福タイムは続く。

スーが眠りにつくのを尻目に両親はソワソワしている、あの子結婚出来るのかしら?

人は、やけに結婚にこだわる。
勝ち組、負け組などの話をしている近所のおばさん達を尻目に野良猫がアクビをして通り過ぎる。

グゥー クカッー スーは眠っている

寒い北風の強い日、布団の中はポカポカ


ピンポーン ピンポーン
外のチャイムが鳴る、その音に目を覚ますスー。

「あっ、サーが来たに違いない」

ガチャ

「こんにちは」玄関の外に立つのはサーと子供達。

「やあ、みんないらっしゃい」

「久しぶりスー」夏休みの七夕祭り以来のスーに子供達は大喜び。(「冬馬君の夏」より)

「みんな久しぶり」スーは皆の顔を見て何だか安心、少し緊張が和らいだ。
ああ何だか嬉しいホッとするなぁ。

「さあ、あがって」

中から、スーのお父さん、お母さんも「皆さん久しぶりです、今日はゆっくりして行って下さい」

「あっ、こんにちは、おじゃましまーす」

皆はリビングにあがる

スーのお父さん、お母さんは用事があるらしく、外に出て行く
「私達はちょっと用事があるので、また夜宴会でもしましょう、うちの息子は明日、お見合いで緊張してるようで、皆さんに会いたがってたんですよ」とお母さん。

「僕達になにか手伝えることがあれば」サーが言った。

「ありがとうございます、よろしくお願いします」そう言い二人は外に出て行った。

ガチャン

「さて、とけたみさん。話を聞かせてよ」さっそくサーが気になり質問する。

子供達はこのシチュエーションにワクワク


「うんっ、生まれて初めてのお見合いなんだよぉ、僕彼女なんて出来たことないからさぁ」

「どんな人なの?」と、きみ子。

「お父さんの知り合いの人の紹介で、写真は明日出会うまでのお楽しみの為に見てないんだ」

「そっ、そうなのか」すごいな その、お楽しみって。

「おじちゃん、明日失敗しない為に予行練習」きみ子が立ち上がる

「父ちゃんを相手だと思って」と多網の言葉に二人はギョッとする

とけたみさんの為だ
「よっ、よしやろう」

見つめ合う二人

なっ、何だこの異様なシチュエーション
サーこと多網の父(既婚者、子供二人)と、とけたみことスー(42歳の男)が緊張しながら向き合い座っている。

「あっ、えっ」

「ういっ、あっ」

「ほら、あいさつ スーおじちゃん」

「あっ、えっ、こっ こんばんスー」
皆はずっこけた、なんちゅー自己主張の強いあいさつ
、いきなり自分のあだ名を入れた、あいさつをするなんて。

「あっ、こんばんサー」

あんたもかい。

小声で大喜が冬馬君に「何だか面白くなってきたね」

「うん、確かに」

沈黙する二人
「スーおじちゃん、なんか喋って」きみ子が会話をうながす。

「あっ、えっと 好きな魚は何ですか?」

皆はずっこけた、なんちゅー質問だ、何故に魚?

真顔で、何の動揺もせずにサーは言った。

「秋刀魚」

「てへっ、そうでしたか」

シーン 会話は止まる

「スーおじちゃん、続けて、続けて」

その言葉に焦る、スー

「あっ、えっと 何で秋刀魚が好きなんですか?」

えっ、まだその会話引っ張るかぁー

サーは真顔で答える

「秋刀魚は可愛いからです」
かっ、可愛いのか?

「そうでしたか、焼く派ですか?刺身ですか?」

「焼いて、大根おろしに醤油です」

「尻尾も食べますか?」

「全部食べます」

「骨も?」

「骨以外」

なんぢゃーこやつら!!
どーでもいい会話だが異様にりゅうちょうに流れていた。

「あっ、サー子さん 味噌汁は何が好きですか?」

うおっ、なんか世界に入りこんどる、名前がいつの間にやらサー子さんになっとる~~。

「サー子は大根です」

「僕は豆腐」

二人は、はにかみ 笑った

「てへっ」

なんぢゃー?

「サー子さんは旅行今行くならどこですか?」

「わたくし、サー子はハワイでございます」

「あはは、そうですか。僕は沖縄」

二人は、再びはにかみ

「てへっ」

なんだか、サーまで本気になってる、座り方はかしこまり、今や正座である。

「あのっ、サー子さんの趣味は?」

「あっ、軽くボーリングをたしなむ程度ですわ、おほほ」サーは口調も変わっている。

ギクッ 冬馬君と大喜はこの質問の後の展開が読めた。

「あら、奇遇ですな僕もボーリングを軽く」

「昔から友達のサー君には勝ちますけどね」

プチッ
「まぁ、わたくしサー様のことはご存知ですが、あの方は、あなたの10倍はうまいかと」

プチン

「やだなぁーサー子さん、僕のほうがあの人の100倍は上手いんですよ」

「じゃあ、あの方は1000倍かと」

「それなら僕は10000倍だ」

「まぁ、あなたは失礼な人ね、もう離婚よっ」

「あなたこそ、まだ結婚もしてないのに離婚とは、良いでしょう」

二人は立ち上がる

「今日こそ、本当に強いのはどちらか勝負だ」

「良いだろう」

ガラッ

二匹の猿はそのまま勢いよく、外に飛び出した。

「ああ、行っちゃった」

「一体あの調子で明日のお見合いは大丈夫なのか」


明日はスーのお見合いが大爆発する


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