文太と真堂丸

だかずお

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~ それぞれの想い ~

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真堂丸が守るこの道を大帝国が抜ける事、それは大帝国が国中の人間に脅威と恐怖を植え付け、刃向かった者達の末路はこうなると、絶対的な力を誇示する事に繋がる。
そうなれば、この国は終わる。
もう誰も歯向かう者はいないだろう。

少し死んでたせいか、真堂丸はほくそ笑む。
身体は多少ましになった。
膝は疲労によりガクガク震えていた。
まだ動ける   キン  キン   キイイイイイインッ。

「少しでも、後方の真堂丸殿のもとに兵を行かせないように俺たちはここで敵を食い止めるぞ、大丈夫か?乱、元郎」

「はいっ大同さんっ」 「ああっ」

乱、本当はお前には来ないで欲しかった。
お前、妻が出来たんだろう。

この戦場に向かう前

「行くんですね」女は言った。
女の名は里美、乱の妻になった女性だった。
「すまない、結婚したばかりと言うのに、こんな俺を許してくれ。俺の事は忘れて、幸せになってくれ」
乱は戦に出向く準備をしていた。
妻は乱から一時も目を離す事なく言った「大同さん、本当は黙って行くつもりだったんです、あなたが絶対についていくのを知ってたから」

「知っている、俺にとって大同さんと元郎さんは大好きな上司であり、兄貴みたいな存在なんだ。彼らだけに行かせて自分は何の力にもなれない。そんなのは生き延びてこの先ずっと後悔する、俺は彼らが本当に大好きなんだ」

「・・・・・・・・・」

「乱さん、言えなかった そんなあなたの気持ちを知ってたから」

「子供が出来たんです」

乱は握ろうとした刀を落とした。
「えっ」嬉しかったと同時に悲しく、今にも声をあげ泣き出してしまいそうな程だった。
生きたい  まだ生きたい 愛する妻と子供と一緒に。

出発の日だった。
「乱、お前は残れ。奥さんを大事にしろ」

「そうだぞ乱、俺たちの分まで残りの人生を生きろ」元郎も大同に続けて言う。

「子供が出来たんだ」

「なんだと」乱の首袖を掴みかかった大同が叫ぶ

「貴様、それでも行く必要のない戦に首をつっこみ、命を無駄にするつもりか?ここで俺が貴様を動けなくして戦場に行けないようにする」

「大同さん、だからこそ行くんだよ」

「なんだと」

「この戦、負けたらどうなる?大帝国の支配下になれば人々は地獄の生活を強いられる、そしたら俺の妻や子供はどうなる?今この期に、真堂丸さん達が居る時に止められなきゃ、もうこの国は誰にも救えない」

「俺は父親だ、もう今は大同さんと元郎さんの為だけに行く訳にはいかない。家族を守るんだ」

大同と元郎は乱の顔つきの変化に気づいた。
「もう何も言わん、だが最後の命令をさせてもらう、どうしても行くと言うのなら、死ぬんじゃねえぞ」

「元郎、お前もだ。お前の子供はどうする」

「あいつはもう大丈夫だ。それに自分も乱と同じ気持ちでもある、今しかない機を逃してはならない、それに彼等を死なせたくない、忘れるな皆で生きて帰るんだ」

「分かったよ、行くぞ」

誰にも気づかれない様に、乱の妻は彼らを見送っていた。彼女は乱を引き止めなかった。

最後の夜の会話
妻が寝静まった後、外に出て震え泣く乱の姿があった。
自分は本当に行くべきだろうか?
子供の顔が見たい、声が聴きたい、成長する姿を見たい。
父親として生きたい。そんな想いが胸にこびりつく。
背後に気配、肩を叩いたのは妻だった。
「子供の名前、勇気って言葉から一文字とって勇って考えたんですけど、どうですか?」

乱は涙でいっぱいの顔で妻を見上げる。

「わたしは、あなたを信じています。何を選ぼうとあなたを信じてます。優しいあなたは必ず一番の選択をするはずだから、それを信じます」

「子供をよろしく頼む、父ちゃんはずっとお前の味方だからと伝えてくれ」

「はいっ」

「必ず、お前達がこれから暮らす時代は平和になるようにするから、家族を選ばなかった俺を許してくれ」

「あなたは家族を選んでくれた、だからこそ行くんでしょう」

「いつでも誇りに思ってます」

「ありがとう」二人は抱きしめあった。
多分最後になるでしょう、この肌に触れるのも、声をかわすのも、あなたの顔を見るのも、抱きしめ合うのも。
 言えませんでした、行かないでと言えませんでした。
だからせめて最後の瞬間まで、ずっといつまでも手を繋がせて下さい。明日の朝が来るまでずっと。

キィンッ  キィンッ  キィンッ

真堂丸は後ろ後方から、仲間たちの居る場所が大体把握出来ていた。
もし彼らが今の場所で戦ってくれてなかったら、ここはもう死守出来てなかった。
助かったぜ、お前達   本当にありがとう。
キィンッ  キィンッ  キィンッ
真堂丸側の主力戦力、誰一人欠けてもこの時点での敗北確率はかなり高いものになっていただろう。

ザザッ  その時、元郎が気づく。
「あの兵達、真堂丸さんの所に一気に攻めるつもりだ」

「俺たちが止めるぞ、乱、元郎  行くぞ」

「はいっ」

河原でしんべえは動く事なくずっと座り込んでいた。
あれから何日たった?戦はどうなった?あいつらはきっとまだ戦ってる。いや、もう俺には関係ないだろ。
行った所で俺にできることは人質になる事くらい。
足を引っ張るだけの足手まとい。

うっ、ううっ  俺に力があったら。
あいつらと一緒に居たい。

「ねぇ、お兄さん、その顔、ずーっとここに居たんじゃない?何してんだ?」

「休んでるだけだ、あっち行けよ」振り向かずに、しんべえは答えた。

「なら、どうしてそんな哀しい顔してるの?」
その声に驚き、振り向く しんべえ。

「お前は?」


真堂丸達が守る道の先

文太は焦っていた。
まだ着かない、こんなに遠かったか?この距離を一緒に歩いてるみんなの身体は大丈夫なのか?それに戦場に向かったみんなは? 落ち着け、落ち着け。
母はその様子に気づいていた。

その時だった「きゃああっ」村人の女の子の叫び声

しまった。
それは道の途中、歩いていて少し気になった尖った木。今までは細かいとこまで注意していた、何処か油断していた、大丈夫だろうと。いや、焦っていたのだ。気がかりだったのだ仲間たちのことが。
僕のせいだ。僕が焦っているばっかりに。

母が文太に声をかけようとした時だった。

「文太さん、もっと俺たちを信頼して下さい。あんたはさっきから、一人で全ての責任を負って余裕がない。例えここで死んでも、誰もあんたを恨みゃしない、だからなんでも一人で背負わないで、俺たちを頼ってくれ」それは寅次だった。

「そーだぞ文太」 「文太ちゃん、私達は大丈夫」

「お兄ちゃん、これくらいの傷、大した事ないよ」

みんな気づいていた。文太の事を。優しいみんなは文太を気遣っていたのだ。

「はいっ、ありがとうございます」

文太、いい友達が出来たね。母はそんな事を思う。
真堂丸ちゃん達、死ぬんじゃないよ。

「兄貴かっこよかったですよ」

「うっ、うるせー当たり前の事だい」

みんなどうか無事で居て下さい。
すぐに僕も向かいます。

ゆったり流れる川のせせらぎの音が、妙に心に響く。それは懐かしの顔、見た事ある顔、しんべえの恋した女の顔だった。

「凛」

「相変わらず、しけたツラしてんなぁ、しんべえ」

それは、大帝国の幹部の一人、蝿王蛇との戦いの時に共に行動した凛。
凛の後ろには凛が兄貴と慕う千助もいた。
「久しぶりだな、しんべえ」

「凛、前を歩いている」千助は二人に気を遣い、場を離れる為、歩き出す。

「てめぇら、一体何処に行くんだよ。この先は戦場だぞ分かってんのか?」

「ああ、あたい達は彼らと一緒に戦うんだよ」

「わかんねぇのか、お前達みたいなのが行ったところで何の役にも立たねーんだよ」

「そんなの分かんねーじゃねえか、それにあたい達の為に立ち上がって、戦ってる人間を見殺しに、自分達は何もしない。そんなふうになりたくないんだよ」

「あたいは、彼らの力になる」

「へー、あんたは相変わらず、仲間を裏切り逃げてんの」凛はすぐに、しんべえの何かを抱えた様な表情に気づく。

「まぁ、事情は知らないけどね、あたい達は行くわ、じゃあね、しんべえ」

「なぁ、凛」

「なんだよ」

「俺みたいに刀も握った事のないような男が行っても役に立てるかな?」

「ばーか、そんなのあたいが知るかよ」

「仲間が気になってんだろ」

「だったら役に立つか、立たないかなんてしらねぇし、そんなのてめぇーで決めろ」

「そうだよな」

「なぁ、凛」

「なんだよ」

「おめぇ、ちったあ綺麗になったじゃねーか」

「ばっ、ばっきゃろー 何言ってやがる」

「俺も一緒に行く」

凛はしんべえの顔を見る  「分かったよ」

「行くぞ」

キィンッ  キィンッ   キィンッ   キィンッ

信じられない、道来。この男、この短期間で本当に俺の刀を受け止めてやがる。
本当に成長しやがった。

ずっと いつもそうだった。
私は己を疑っていた。
心のどこかで、自分には無理だと。
どんなに努力しても、どんだけ経験を積んでも、どうしても自分を心の底から信じられなかったのかも知れない。
かつて一山さんと肩を並べた実力者、鬼道。
そんな相手に私が勝てるはずがない。心のどこかに常に疑いがあった。

私にできるはずがない。 
私なんかが、そんな。

キィンッ   ずっと自信が持てなかった。確信が持てなかった。己が命を懸け打ち込んでる事にすら。
己は何処かで自身の価値を疑っていたんだ。
あいつらは別格、天才だから出来る、でも自分には。
何をしても、どれだけ努力しても拭えなかった自己への不信感

真堂丸 お前はそんな私を、ずっと信頼してくれていたんだ。恥ずかしいが、お前が鬼道を任せると言ってくれた時、私は耳を疑ってしまった。
私にやれるか?やるつもりで立ち向かっていた自分が、本当は誰よりも無理だと疑っていたんだ。
お前が信頼してくれたおかげで私にも勇気が持てた。
自分にもやれるんだって。
自分で自分の可能性を信じなきゃ、何も始まらない。
本当の一歩を踏み出す勇気が持てない。

キィンッ   キン  キン   キィンッ

なぁ、真堂丸  この戦が終わったらみんなで同じ町にでも暮らして、笑い合って生活したいな。
なんでだろう?戦いの最中、こんなに思考を巡らせてるのに、意識は完全に鬼道の太刀筋を捉えてる。
ひとつ分かる事がある、次の太刀で決着がつく。


どちらかが敗北する



帰ったら  みんなで・・・・・




ザアアアアアアアアアアアアアンッ






ブシュウウーーーーーーーーーーーーーーッッ






道来の身体から血が噴き出した。




カラアアンッ



刀を落としたのは鬼道



「私の勝ちだ」


「道来  」仲間たちが叫ぶ。 「道来さんっ」

「あの野郎やりやがった」菊一の胸が熱くなる

真堂丸も気づく「道来」

「鬼道様ーーーーーーーーっ」

「馬鹿な、この俺が負けただと」

「鬼道、降参しろ、私はお前を殺したくない」

戦が終わる。
遂に決着の時!!!!

「良かろう、大帝国のはいぼ ・・・・」

嫌な、悲鳴にも似た叫び声だった。
その叫び声を一番最初にあげたのは真堂丸だった。

「道来ーーーーーーーーーーーーーーーーっ」

「避けてくれえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇーーっ」


「えっ?」


スバアアアアアアアアアアアアアアンッ



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