文太と真堂丸

だかずお

文字の大きさ
上 下
137 / 159

~ 幹部の実力 ~

しおりを挟む



なんと大きいのだ。

目の前に立つ男は自分の想像を遥かに超えていた。
どうやったら、これ程までの境地に達せる?
自分が後、何万回生まれ変わったら、この男の境地に達するのだ?

おおおっ おおおっ
刀の道をよくぞここまで極めた。
この男と比較するだけ無意味
花彩が真堂丸に出会い、感じた事。
己は、こと刀に関しては、常人を遥かに超えた高みに達し、一生涯でここまで達した事を誇りに思うておった。
笑わせる、目の前のこの男を見ると自分の存在がひどく滑稽に思わされる程に。
己の生きた証に出来る唯一の事。
それは大帝国が、こいつを倒すきっかけをつくること。

「聴け、命をかけて一秒間を稼ぐ、その隙に逃げろ」花彩が真堂丸を前に出来る事、それは自身を犠牲にし、他の幹部を逃がす事だけであった。

「死ぬつもりかい?」

「そうでもしないと、いずれ集中力が先に切れるのは我々の誰かだ、その瞬間に我々は全員奴に真っ二つに斬られるだろう」

「何をぬかすか、分からんだろう」龍童子が叫ぶ

「受け入れろ、七対一でも勝てんのだよ、この男には……」

ギリッ

「全力で散れ」

幹部達は頷く。

ギロリ

「行くぞ」

ヒョオオオオオオー

花彩と真堂丸の目が合う。

ギロリ

容赦の無い目。
こいつ先ほどまでは、殺しをためらってやがったな。
入道雲の腕が斬り落とされたみたいだが、こいつの実力じゃあ奴を仕留められなかったはずは無い。
我々に生死の覚悟の有無を問いた。
話に聞いた男と随分違う様だな。
まぁ、どうでも良い。
今、目の前に立つこいつの目には殺気がある。

ニヤリ

ザッ

スパアアアアアアアアンッ

ああ……真っ二つになる瞬間、花彩は思う。
己の人生は、案外見事だったのやも知れぬ。
最後の最後にこれ程の男に出会い、斬られ死ねたのだから。
刀の道を真っ直ぐ極めたからこそ、この男がどれ程凄いのかが分かる。
素人目にはただ凄いと、どれ程凄いのかは分からんだろう。
己にはしかと分かるのだ、道を極め続けてきたからこそ、この人間の本当の凄さが。

己の人生もそこそこに天晴れなり。

ズサッ

ヒョオオオオオオオオオオオオオーーッ

幹部達は全力で散り散りに逃げのびた。
花彩のつくった一瞬の隙に。
ここから戦局が動き始める。

「皆気を付けろ、幹部達がそっちに行くぞ」
真堂丸がすぐに叫んだ。

「先に雑魚から斬りゃ良いんだよ」ニヤリ、夜叉が笑う。

すぐに真堂丸の元に大帝国の兵士達が襲いかかる。
もう、助けに行けねぇな。
ギリッ
皆、任せた。死ぬんじゃねえぞ。

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ」

ザンッ

「太一、前方気を付けろ、強いのが来る」道来が言った。

「分かりやした」

キィンッ  キィンッ   キィンッ

その瞬間だった「太一、俺の前の兵の刀を防いでくれ」

「はいっ」

キィンッ

その瞬間、太一側に道来は刀を出した。

「あーっ、憎たらしい、今一匹殺せたのに」すぐ側に女郎蜘蛛が立っていた。

「安心せい、二人で一気に殺すぞ」
女郎蜘蛛の背後からの声、入道雲が刀を向ける。
幹部二人か、道来の額から汗が流れる。
やらなきゃ、死ぬだけだ。

「太一、気をしっかり持て、俺たちで幹部をやる」

「はいっ」

一之助も背後に凄まじい殺気を感じる。

キィンッ

「貴様を殺す」夜叉が一之助の背後に立っていた。

「あっしも、気合いを入れねばな、こいつはあっしがやらねば」

スパアアアアンッ

「青鬼さん、ごめん」
鬼が真っ二つに斬り殺され、地面に崩れ去る。

ギリッ、青鬼はなんとも悲しい表情を浮かべた。

「やれやれ、ようやく雑魚の相手が出来て嬉しいぜ」
真っ赤な刀を肩にかける、鳳凰。

「お前達、こいつは俺がやる」青鬼が拳を鳳凰に向け、睨みつける。

「やれやれ、雑魚が吠える」

ザザッ

「鬼道様、報告に参りました」

「どうだった、龍童子、柳、あの男は?」

「最強でしょう、我々全員でかかっても殺されていたでしょう」龍童子が言った。

「鬼道様、あれは絶対に戦っちゃいけない、あんなの一人じゃ絶対に勝てないよ」

「なるほどな」

一山よ、貴様最後にとんでもない刺客をよこしやがった様だな。
現幹部全員と、この人数の兵でも、手こずるとはな。

「我々も雑魚どもを片付けに向かいましょうか?」

「あいつらにはそんな数は必要ない、貴様らは少し休め」

ピクッ (気付かれておられたか)
「ハッ」

鬼道は見抜いていた。
真堂丸とあの短時間向き合っただけで、二人の体力、精神が凄まじい消耗をしていた事を。

「認めよう真堂丸、貴様が最強である事を。だが、仲間が殺されゆく状況、心乱さず戦い続けることは出来るかな?」

精神が先に崩れれば、あとは脆い。
ニヤリ

ヒョォオオオオオオオオオーー

キィン キィン キィン キィン キィン  キィン

「ほぉ、少しはやる様じゃないか」夜叉が笑う。

さすがに強い、この短時間であっしがこいつに勝つ実力をつけるのは、まず不可能。

すぐ背中に佇んでいた死が、覗き込む様に顔を出す。
だが、あっしはたとえ死んでも、負ける訳にはいかない。
せめて、こいつと一緒に。

キィン   キィン   キィン  キィン
「貴様の首を真堂丸に持って行ってやるから、そう悲しむな」

「そう簡単にはやらせる訳にはいかないでごんすよ」

「いや、簡単に殺る」

ズッ   ザンッ
「えっ」一之助が思わず声をあげる

「ばっ、馬鹿な」全く捉えられなかった相手の攻撃
頬から血が垂れる。

同時に背後から兵達が襲いかかる
「馬鹿どもやめんか、こいつの首は私のもの」

ガタッ
額から汗を流す一之助「なんて情けない、あっしは何も出来なかった」

「あははは、実力差が分かったか」

「喜べ直々にこの夜叉が首を斬り落としてやるのだから」

ザッ

皆さん、先生、文太さん、太一、道来殿、しんべえ

ありがとう

一之助が夜叉を鋭い視線で見つめていた。

ヒョォオオオー

キィン   キィン
「ほぉ、貴様中々強いな」女郎蜘蛛が道来に向かって言う。
「だが、戦いに集中出来てないな。後ろの小僧が気になるか?なら、私をはやく斬り、助けに行くしかないねぇ」

キィン   キィン
「太一、大丈夫か?」

「道来さん、馬鹿言ってんじゃねえよ。こっちは覚悟決めてんだ、今更俺の心配なんかして負けたら許さないっすよ」

「分かってる」チイッ 道来 何してる?落ち着け、落ち着くんだ、こいつをすぐに斬り、太一の元に向かえば。

キィン   キィン   キィン    キィン   キィン

ああ   くそっ   強いっ

道来の背後から凄まじい斬撃の音が

スパアアアンッ

「太一っ」

「甘い」女郎蜘蛛の長く鋭い爪が道来の肩を貫通する。

道来は自身の腕を気にせず、すぐに後ろを振り向いた。
「太一」

その言動に「この馬鹿があああっ」凄まじい形相の女郎蜘蛛が道来の前、鋭い爪を振りかざしていた。

「道来さん、後ろっ」太一が叫んだと同時に入道雲が太一の首を目がけて刀を振りかざす。

スパアアンッ

「見事」

入道雲のもとに、背後から刀が飛んで来ていた。
それは道来が入道雲目がけて投げた刀。

キィン
だが、敵も見事に道来の刀をはじいた。
「雑魚ならやれたな」入道雲がほくそ笑む。

「なんだ、我々二人を殺るつもりだったみたいだね」
刀を投げたと同時に、女郎蜘蛛の脇腹に鞘も打ちこんでいた道来。が、これも女郎蜘蛛に躱されていた。

「わざと、こちらの戦いに集中していない様に見せ、私を油断させるとはねぇ」

「ふぅ、殺すの惜しいけど」女郎蜘蛛が笑い、道来の首元に鋭い爪を突き付けた。

「終わりだ」入道雲も同時に太一に刀を振りかざす

「さようなら」

ザンッ

一之助は夜叉に首を斬り落とされる瞬間、腹に隠していた短刀を即座に取り出し、夜叉目がけて突き刺した。

ズバッ

「なるほど、勝機はないと見て、わざと簡単に刀を手放しこの機会を待っていたか」

「いーヒッヒヒッヒヒッヒヒッヒヒッヒヒッヒ」

「幹部をなめるなよ」夜叉は一之助が突き出した短刀を手で掴んでいたのだ。
大帝国の幹部の実力。

「ちっ」
道連れにすら出来ない。

「お前はもう死んだよ」

ズバアアアッ

みなさん、すまんでごんす。

ガキインッ

一之助の首の上、刀は止められていた。

「…………ありがとう、助かったでごんすよ」

「すみません、遅くなりました」

そこに立っていたのは洞海

ヒョォオオオオーー
道来の首を突き刺そうとした、女郎蜘蛛の爪を叩き斬ったのは菊一
「間に合ってよかった」

「菊一さん、助かりました」

「太一」慌ててすぐに太一の方を振り向く道来

入道雲の刀は夏目によって止められていた。
「初めましてだな、菊一と共に一山の仲間だった夏目だよろしく」

ふぅー良かった。

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴーー

「なんだ?この地鳴りは」大帝国の兵達が驚く

「一山を慕っていた奴ら、俺たちに力を貸してくれる連中だ一万人はいる、これからもっと集まってくるはずだ」

「こいつはぁ、頼もしい」道来が言った。

「お前達よくこの人数で戦ってたな、さすがだな。だが気を抜くな戦いはこれからだぞ」

「はいっ」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴーーー

菊一達のおかげでかなりの人数の援軍に支えられた真堂丸達。

戦はこれから激しさを増していく。

その時、戦場を見つけた一つの大きな影

ニタァアアアアアアアアアアアアアアアアッ

みぃーつけた

それは、三國人を旦那と慕うバピラと呼ばれる戦闘狂の怪物の姿だった。

奴は戦場に到着した。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

西涼女侠伝

水城洋臣
歴史・時代
無敵の剣術を会得した男装の女剣士。立ち塞がるは三国志に名を刻む猛将馬超  舞台は三國志のハイライトとも言える時代、建安年間。曹操に敗れ関中を追われた馬超率いる反乱軍が涼州を襲う。正史に残る涼州動乱を、官位無き在野の侠客たちの視点で描く武侠譚。  役人の娘でありながら剣の道を選んだ男装の麗人・趙英。  家族の仇を追っている騎馬民族の少年・呼狐澹。  ふらりと現れた目的の分からぬ胡散臭い道士・緑風子。  荒野で出会った在野の流れ者たちの視点から描く、錦馬超の実態とは……。  主に正史を参考としていますが、随所で意図的に演義要素も残しており、また武侠小説としてのテイストも強く、一見重そうに見えて雰囲気は割とライトです。  三國志好きな人ならニヤニヤ出来る要素は散らしてますが、世界観説明のノリで注釈も多めなので、知らなくても楽しめるかと思います(多分)  涼州動乱と言えば馬超と王異ですが、ゲームやサブカル系でこの2人が好きな人はご注意。何せ基本正史ベースだもんで、2人とも現代人の感覚としちゃアレでして……。

仇討浪人と座頭梅一

克全
歴史・時代
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。 旗本の大道寺長十郎直賢は主君の仇を討つために、役目を辞して犯人につながる情報を集めていた。盗賊桜小僧こと梅一は、目が見えるのに盗みの技の為に盲人といして育てられたが、悪人が許せずに暗殺者との二足の草鞋を履いていた。そんな二人が出会う事で将軍家の陰謀が暴かれることになる。

小童、宮本武蔵

雨川 海(旧 つくね)
歴史・時代
兵法家の子供として生まれた弁助は、野山を活発に走る小童だった。ある日、庄屋の家へ客人として旅の武芸者、有馬喜兵衛が逗留している事を知り、見学に行く。庄屋の娘のお通と共に神社へ出向いた弁助は、境内で村人に稽古をつける喜兵衛に反感を覚える。実は、弁助の父の新免無二も武芸者なのだが、人気はさっぱりだった。つまり、弁助は喜兵衛に無意識の内に嫉妬していた。弁助が初仕合する顚末。 備考 井上雄彦氏の「バガボンド」や司馬遼太郎氏の「真説 宮本武蔵」では、武蔵の父を無二斎としていますが、無二の説もあるため、本作では無二としています。また、通説では、武蔵の父は幼少時に他界している事になっていますが、関ヶ原の合戦の時、黒田如水の元で九州での戦に親子で参戦した。との説もあります。また、佐々木小次郎との決闘の時にも記述があるそうです。 その他、諸説あり、作品をフィクションとして楽しんでいただけたら幸いです。物語を鵜呑みにしてはいけません。 宮本武蔵が弁助と呼ばれ、野山を駆け回る小僧だった頃、有馬喜兵衛と言う旅の武芸者を見物する。新当流の達人である喜兵衛は、派手な格好で神社の境内に現れ、門弟や村人に稽古をつけていた。弁助の父、新免無二も武芸者だった為、その盛況ぶりを比較し、弁助は嫉妬していた。とは言え、まだ子供の身、大人の武芸者に太刀打ちできる筈もなく、お通との掛け合いで憂さを晴らす。 だが、運命は弁助を有馬喜兵衛との対決へ導く。とある事情から仕合を受ける事になり、弁助は有馬喜兵衛を観察する。当然だが、心技体、全てに於いて喜兵衛が優っている。圧倒的に不利な中、弁助は幼馴染みのお通や又八に励まされながら仕合の準備を進めていた。果たして、弁助は勝利する事ができるのか? 宮本武蔵の初死闘を描く! 備考 宮本武蔵(幼名 弁助、弁之助) 父 新免無二(斎)、武蔵が幼い頃に他界説、親子で関ヶ原に参戦した説、巌流島の決闘まで存命説、など、諸説あり。 本作は歴史の検証を目的としたものではなく、脚色されたフィクションです。

白物語

月並
歴史・時代
“白鬼(しろおに)”と呼ばれているその少女は、とある色街で身を売り暮らしていた。そんな彼女の前に、鬼が現れる。鬼は“白鬼”の魂をもらう代わりに、“白鬼”が満足するまで僕(しもべ)になると約束する。シャラと名を変えた少女は、鬼と一緒に「満足のいく人生」を目指す。 ※pixivに載せていたものを、リメイクして投稿しております。 ※2023.5.22 第二章に出てくる「ウツギ」を「カスミ」に修正しました。それにあわせて、第二章の三のサブタイトルも修正しております。

蒼穹(そら)に紅~天翔る無敵皇女の冒険~ 四の巻

初音幾生
歴史・時代
日本がイギリスの位置にある、そんな架空戦記的な小説です。 1940年10月、帝都空襲の報復に、連合艦隊はアイスランド攻略を目指す。 霧深き北海で戦艦や空母が激突する! 「寒いのは苦手だよ」 「小説家になろう」と同時公開。 第四巻全23話

霧衣物語

水戸けい
歴史・時代
 竹井田晴信は、霧衣の国主であり父親の孝信の悪政を、民から訴えられた。家臣らからも勧められ、父を姉婿のいる茅野へと追放する。  父親が国内の里の郷士から人質を取っていたと知り、そこまでしなければ離反をされかねないほど、酷い事をしていたのかと胸を痛める。  人質は全て帰すと決めた晴信に、共に育った牟鍋克頼が、村杉の里の人質、栄は残せと進言する。村杉の里は、隣国の紀和と通じ、謀反を起こそうとしている気配があるからと。  国政に苦しむ民を助けるために逃がしているなら良いではないかと、晴信は思う、克頼が頑なに「帰してはならない」と言うので、晴信は栄と会う事にする。

厄介叔父、山岡銀次郎捕物帳

克全
歴史・時代
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。

葉桜

たこ爺
歴史・時代
一九四二年一二月八日より開戦したアジア・太平洋戦争。 その戦争に人生を揺さぶられたとあるパイロットのお話。 この話を読んで、より戦争への理解を深めていただければ幸いです。 ※一部話を円滑に進めるために史実と異なる点があります。注意してください。 ※初投稿作品のため、拙い点も多いかと思いますがご指摘いただければ修正してまいりますので、どしどし、ご意見の程お待ちしております。 ※なろう、カクヨム、ノベルアップ+でも投稿中

処理中です...