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~ 一斎の実力 ~
しおりを挟むヒョオオオオオーッ
目の前に立つのは生涯最強であろう宿敵
その光景、真堂丸には目の前に、己自身が立っている様に見えていた。
「うん、さすが半端ない」ニヤリと一斎が笑う
スッ
一斎が刀を構える
道来は再びこの所作にも感動を覚える。
なんと美しい構え、なんと美しいたたずまい。
凄い 凄い 凄い 凄い 凄い 凄い 凄い 凄い 凄いっっ。
俺は一体何を見ているのだ?
その瞬間、頭は現実を見つめ始める。
なぁ
真堂丸、お前は一体何を相手にしているのだ?
こんなのを相手にお前はどうして冷静に立っていられるんだ?
本当に こいつと戦うんだよな........
道来は同時に真堂丸の偉大さにも触れていた。
お前達は本当に凄い。
俺がこれから100年かかっても到達出来ない域にいる、お前達からは何が見え、何を感じているんだ?
道来は気がつけば涙していた。
この戦、一瞬たりとも見逃さない。
友よ 頼む 勝って 生きてくれ。
しんべえは息苦しかった。殺気?いいや違う。
骸がしたように一斎は俺らに何の殺気も放っちゃいない。
何故息苦しい?
恐いのだ、恐くて恐くてたまらない。
目の前でもし、あいつが真っ二つに斬られたら、足元が震え始め、いまや立っているのも、ままならない。
ガクガクガク
文太お前はやっぱすげえな、俺はダメだ、やっぱこええよ、大丈夫だって確信が持てねぇ。
足の震えは止まった。
もう立っていられなかったのだ。あっ、ああ俺立っていられないや。
地面にしんべえが倒れ込む、その瞬間だった。
二つの手がしんべえを支える。
「大丈夫か?」
それは、太一と一之助の腕だった。
しんべえが首を横にふる
「大丈夫、真の兄貴を信じるんだ」
「しんべえ、あっしらが支える、大丈夫。先生は必ず勝つ」
しんべえは涙し頷く。
「あっ、ああ」
ヒョオオオオオオーッ
「真堂丸、見せてよ君の実力」
瞬間、僕文太の視界から真堂丸は消えた。
ザッ シャッ ザッ シュッ ザンッ
「うん、見事だ」
一斎は全て見切り、息ひとつみださず、更には刀を交えずにかわしていた。
「素晴らしい太刀、君と骸は本物の刀使いだ、僕が認めるよ」
一斎がゆっくりと自身の刀を目の高さまであげる、その所作もまた凄かった。
何故なら刀が下から目の高さまで上がるのに刀が連なって何十もあるように見えたのだ。
「真堂丸、人間に不可能はあると思うかい?」
「さあな」
「僕はないと思ってる、自身は無限だと思っているんだ」
「それ故に僕は無敵、負けることはありえない」
「おごりが足元をすくう時があるんだぜ」
「おごりじゃない、完璧なる実力の元の自身への信頼だ」
「少し、遊んであげよう ちょっとした僕の刀遊び」
「行くよ」
ニヤリ
その頃、場面は変わり菊一達のもとでは。
ズオオオオオオオンッ
三つの影がそこに立つと同時に辺りは一気に重苦しい場へと豹変する
洞海の身体は震えていた、恐ろしくてたまらなかった
なっ、なんだ この殺気は。
もし、目の前に米と菊一が居なければ恐ろしさのあまり発狂していただろう。
ズオオンッ
「久しぶりじゃないか、御二方」
「貴様がすべての黒幕だったんだな?」米が言った。
「一山は死んだね、愚かな奴だ。我々と共に動けばまだ生きられたものを」
「真堂丸とか言う餓鬼が暴れすぎたせいで大帝国は少々人手不足でな、我々が直々に動くことにした」
「今日は米、お前を殺しに来た。菊一もちょうど良い、殺しておこう」
「なんだ、後ろの餓鬼は。俺たちが恐いか?」
「あははははははははははははははははははは」
「無理もない、安心しろ」
「最も残酷に殺してやるから」
米が洞海に叫ぶ
「安心せぇ、わたしゃがそんなこたぁさせん」
「俺もだよ」菊一が刀を抜く
「逃げろ洞海」
「ああ、かわいそう」三國人の一人が笑う。
「俺たちがここに居るんだ、不可能だとあきらめろ」
ゾッ
「洞海、気をしっかり持て、自分を信じろ」叫ぶ菊一
それは絶望的な程の力の差だった。
三國人の一人は米と菊一を既に通り越し洞海の前に立っていた。
「よぉ」洞海の顔を覗き込み、笑って囁く
「お前は最後にしてやるよ、充分恐怖しな」
動けないのも無理はないだろう、これほどの威圧感を感じてしまったら。まずいっ、このままじゃ全滅だ。
「どうする米」
「大丈夫じゃ菊一、お前もこいつを連れて逃げろ」
「まだ、お前は仲間にとって必要じゃろ」
「馬鹿言うんじゃねぇ、俺もやる」
「後ろの若者を連れ行け」
「米や、年と共に頭も悪うなったか?貴様一人どうやって我々を足止め出来る」
ピクリ
三國人が何かに気づく
「そう言うことか」
ズゴオオオオンッ
扉が破壊され外に立つ五人の人間
「米婆、すまん侵入者を通らせちまった」
「無理もない、相手はこいつらじゃ」
「お前達は」菊一が懐かしむ
「よう、久しぶりじゃのう」
一山を慕い、長らく共に過ごした仲間達の姿
「募る話もあるが、ここはわしらが足止めする行けっ」
「分かった、任せるぜ」
「行かせないと、言ったはずだが」
刀を抜こうとした三國人の手が止まる
「ほぉ」
「あたしゃをあまり舐めない方が良い、痛い目みるぞ」殺気を込めた目で米が三國人を睨みつけた。
「なるほど、手強いな」
六人が三國人を取り囲む
同時に菊一が洞海を背負い、走り出す
「すいません、菊一さん」
「なに、気にするな 行くぞ」
「やれやれ、逃げたか、、まあいい 今この六人を殺せるのは後にでかいからな」
「覚悟せよ」
ゴゴゴゴゴゴゴゴオオオオオーーーー
三つの絶望と呼ばれる三國人は笑っていた。
「凄い殺気じゃないか米や」
「そりゃ、そうじゃ貴様が生きてる以上、人間を苦しめ続けるじゃろう、ここで、あたしゃ達が始末する」
「おいおい、笑わせるなよ、それが出来ないから苦労してんだろ」
「俺達が育てた怪物共によって、この国は長く絶望に閉ざされていた、なあに大したことではない、人間にとってはそちらの方が楽なのではないか、毎日絶望に打ちひしがれ、何もせずに無力さに打ちひしがれ、強い者に命令され、ただ動いていればいい」
「我々が放った怪物共は恐ろしかったか?」
「鬼神に白竜、女狐もそこから育ち、この国は安泰だったのだよ、人間は無力だ。絶望を理由に被害者であり続ければ楽ではないか?良いか米や人間に力なぞない、黙って従うだけ それが主らだ」
「あっはっはっはっは あっはっはっは」
「何がおかしい」
「笑わせるね、三國人 お前達は滑稽(こっけい)だよ。」
「何だと」
「人間が非力で無力だと笑わせるなと言っておるんじゃ、お前がこの国に放った怪物共を打ち倒したのは誰じゃい?人間じゃ。人間は闇に負けない強さをもつ。
闇がどれだけ深く強大でも必ずそれを超える光を持つ、それがあたしゃの知ってる人間だ、希望は決して消えん」
「意見の相違、では貴様を殺そう、無力さにわめき死ね」
ヒョオオーッ
一斎がゆっくりと真堂丸に近づいて行く
「じゃあ、僕の太刀遊びを見せてあげる、遊びと言っても気をつけて、下手すりゃ死んじゃうからさ」
スッ
「行くよ」
シュッ
ザンッ
キィンッ
「?」
「お見事」
「もう一回」
シュッ
ザンッ
キィンッ
見ていた道来は呆気にとられていた。
なっ、何てことだ 嘘だろ、あいつは今確かに一太刀しか放ってない、だが何故?
「切っ先は無限か?」真堂丸が言う
「もちろん」
一之助が道来を見つめる「道来殿、まさか今のは」
「ああ、とんでもない。奴は今、一太刀しか放ってない、上から下に刀をおもいっきり振りかざした。だが真堂丸が刀を止めたところは頭の真横、そして二人の今の会話」
「なんとっ」
「どういうことだよ」しんべえが言う
「普通は刀の切っ先はある程度は予測出来る、この角度で全力で振りかざせば、ここに来ると言う具合に、だが奴の切っ先は上から全力で下に振りかざしたのに切っ先は完璧な程に変わり上に刀が着地している」
「でも、それくらいなら下に振りかざすと見せて横にやるくらい俺でも出来そうだぜ」
「ああ、だがそんなものは普通に威力もなし、更に身体の動きで真堂丸程の実力者からすれば簡単に読めてしまうんだ、それにな驚くべきは、奴は下から上に振りかざした途中、4回程刀の軌道が変わっていた、多分奴はどの角度にも無限に方向を変えられる」
「嘘だろ、信じらんねぇ、じゃあ全く何処に刀が来るかよめないじゃねえか」太一が驚く
全く信じられん奴だよ、右に全力で降った刀がどうやったら、あんなに自然に左、更には斜め上やら下、どんな方向にも刀の切っ先が変わると言うんだ。
下に行ったと思えば上に行き、また下に向かうそんな事まで出来るんだ。
「そこのあなた、ひとつ訂正をしておくよ」一斎が言う
「今のは4回切っ先を変えたんじゃない、23回切っ先は枝分かれしたんだ」
「何だって」驚く道来
こんな奴に一体どうやって勝てと、そう道来が思った瞬間だった、文太の表情を見、真堂丸を直視した。
あいつらは何も動揺していない、大丈夫、大丈夫なんだな、信じられんが、もう見切っていたんだな。
大した奴らだ。
文太お前の信頼感には感服する。
大丈夫だって、すぐに分かったんだ。
「刀を追わなきゃいい、自身の身体の直前のものをさばけば良い」
「冷静だなぁ、大抵はこれでみんな真っ二つなんだけど。うん、やっぱこれくらいじゃ 全然余裕か、骸も簡単にさばいていたよ」
「良いね なんだか楽しくなってきた」
「じゃあこれは」
瞬間だった
あまりにも速く訪れた瞬間
絶対的な力の差を見せつけられた決着の瞬間
それは唐突にやって来たのだ。
真堂丸は何も出来ずに、吹っ飛んでいた。
ズゴオオオオオオオーンッ
「なっ、嘘だろ何が起こったんだ」皆は驚き、ただただ呆然としていた。
「速いよね、僕の太刀」
これが 一斎
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