文太と真堂丸

だかずお

文字の大きさ
上 下
105 / 159

~ 二人の姿勢 ~

しおりを挟む


ザッ  ザッ
「来やがれ秀峰、道来さんの仇」太一は刀を握りしめ
砂埃舞う中から、こちらに向かってくる影に刀を向けた。

ザッ ザッ
「俺が負けるまで、道来さんが敗北したなんて言わせねえぞ」

ザッ

来たっ
「うおおおおっー」太一が刀を振りかざす

ブオオオオオオンッ
「えっ?」
太一は溢れんばかりの涙で、目の前がかすみ、見えなくなった。
「どうして・・・・・・」

「道来さんが」

砂埃舞う中から現れたのは、なんと
血まみれの道来の姿

「道来さんが生きてた」

「すまない太一、俺が心配させたか」

「どうして?俺はてっきり道来さんが」
太一の顔は涙でいっぱいだった。

そう、あの時

ズバアアッ
道来の刀が秀峰の腕を斬り落としていたのだ。
秀峰は自身の敗北を悟り
「勝負ありですね」
自身の首を斬り落としていたのだった。
そう、道来は勝っていたのだ。

「良かった、良かった俺、道来さんが死んだかと」

ズサッ
道来が倒れこむ

「道来さんっ」

「すまなぃしばらく動けそうにない、真堂丸達はどうなったんだろうな?」

「あいつと約束した、秀峰に勝ち必ずそちらに行くと、だが身体が動かない」

「真の兄貴は絶対に負けねぇ、道来さん 少し休んでください、すぐに担いで俺が真の兄貴達のもとに道来さんを連れて行きます、道来さんの約束は果たします」

「ありがとう太一」

真堂丸   すぐに行く、   

勝て

真堂丸

道来 対 秀峰

勝者

道来


その頃、富士の山の頂上

「真堂丸お前の覚醒した力を見せてみろ」
骸が真堂丸に刀を向け立っている。

「次はその小僧を確実に殺すぞ」

シュンッ
真堂丸の姿が消えた

「ほぉ、なかなか速いじゃないか」
キィンッ   キィンッ   キィンッ   キィンッ
文太は傷を負い地面に倒れながらも、目をそらさず、勝負を見ていた。
そして正直驚いた。
それは真堂丸が更に強くなった事もそうだったが、なにより、これ程強くなった真堂丸の刀を骸はすべてさばき、戦っている事だった。
骸はこんなに強かったんだ
真堂丸はこの戦いの最中、何度も死を乗り越え成長した、そして今おそらく過去最高に強いだろう。
それでも、それでもまだ骸は上に立つのか?
文太はこれ程まで刀の道を追求した、骸の姿に敵ながら感服した。
この人、本当にすごい、本当に。
どんな道を歩んできたら、こんなに強く。
そして、こんな人に全力を出させ戦っている真堂丸
どちらが居なくても、この域の刀の勝負は成り立たなかっただろう
相手の力量が少しでも追いつかなきゃ、これ程の戦いは成り立たない。
まるで二人で一つの対に思える。
骸が真堂丸を兄弟と呼んでいたのもこの様な理由からだったんだろうか?
どちらか一方でも、刀の道に対する志しが少しでも低かったならばこの域には到達出来なかっただろう、本当に一人じゃ出来なかった。
お互いが限界を超え、向き合って生きた刀の道

すごい  本当にすごい
二人が生涯をかけ追求してきた刀の道
極め、極め、更に極め
その極地が対となり絡み合い交わっている
それは生死を賭けた戦であったが、まるで美しい芸術をみているようでもあった。
感動?こんな状況で?
あまりの二人の凄まじい生き様に文太は涙を流していたのだ。

キィンッ   キィンッ   キィンッ  キィンッ
「楽しいぜ、真堂丸 俺がまさか全力で戦える相手に出会うとは思わなかったぜ」

「俺もお前に礼を言おう、俺はこの戦いで成長できた」

キィンッ キィンッ   キィンッ
「笑わせる、すぐにどちらかが死ぬ、無論俺は死ぬつもりはないがな」

キィンッ
「行くぜ兄弟、簡単に死んでくれるなよ、まだまだ遊ぼうぜ」

スパアアアンッ
真っ黒な太刀
まるで骸自身の姿を映し出すような
すべてを刀に賭けた男の到達した域
刀の通った道筋が真っ黒に見える、それはまるで次元すらも斬っているように。
それは文太の目にもはっきりと見えていた漆黒の黒い太刀

キィンッ
刀が弾かれ地面に落ちる、それは真堂丸の刀だった。
まずい、次一撃でもくらったら、自然に声がでてしまう

「真堂丸」

この機に骸が猛攻をしかけると思ったが身体を仰け反り、何かを躱したのは骸のほうだった。
骸の背後の大きな岩が真っ二つに斬れる
一体何が起こっているんだ?
骸も刀を捨て、何も持たずに腕を振りかざす
スパアアアンッ
真堂丸もなにかを躱す、今度は真堂丸の背後の岩が真っ二つに。

「無刀の境地だろ」ニヤリ

キィンッ   キィンッ     キィンッ  キィンッ
僕は確かに目にしていた、刀を持たぬ男達が刀で戦っている?

無刀
なのにどうして、刀が見える?
なのにどうして、斬れる?
なのにどうして 刀の交わる音まで?
彼らは確かに刀を持たず、刀で戦っていたのだ

キィンッ   キィンッ   キィンッ   キィンッ

ザッ  ザッ
ヒョオオオオオオーー

骸が刀を拾い上げる   カシャ
「俺の刀には魂がこもっている、だから刃こぼれなどは何を斬ってもしたことがない、お前もそうだろう?」

「ああ」

「良い剣客ってのは、自身の意思が刀に伝わる、そう言わば刀とは自身の心、折れることは許されねぇ」

「折れることは死を意味する」

ザッ  
真堂丸も刀を拾い上げる
「この刀はもはや自身の身体の一部、俺の命であり魂」

カシャ
「こいつが折れることはない」

「ああ、最高に楽しかったぜ、永遠に続けと願ったほどに」骸は空を見上げた。
「瞬間にこそ永遠があるのかもな」
生涯ここまで刀を追求してきた、求め、求めて、ようやく巡り会えた出会い、しかしその相手を殺してしまわねばならないとはなぁ。
非常に残念でもあるが仕方ねぇ。

「決着をつけよう、どちらが強いか」

「ああ」頷く真堂丸

ヒョオオオオオーー

「どちらの信念が強いか、次の一撃ですべてを決めるとしよう」

「そうだな」

二人は向き合った。
決まる、次で本当に決着が
心の底から遂にこの時がと…身がすくみ震えあがる気持ちがした。
何度戦を見ようが、慣れることはない。

真堂丸  
心の中強く祈る
友の無事を。

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴオオオオオオーーッ

「行くぜ」

「ああ」

ギロリッ
その刹那、両者が身構えた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

西涼女侠伝

水城洋臣
歴史・時代
無敵の剣術を会得した男装の女剣士。立ち塞がるは三国志に名を刻む猛将馬超  舞台は三國志のハイライトとも言える時代、建安年間。曹操に敗れ関中を追われた馬超率いる反乱軍が涼州を襲う。正史に残る涼州動乱を、官位無き在野の侠客たちの視点で描く武侠譚。  役人の娘でありながら剣の道を選んだ男装の麗人・趙英。  家族の仇を追っている騎馬民族の少年・呼狐澹。  ふらりと現れた目的の分からぬ胡散臭い道士・緑風子。  荒野で出会った在野の流れ者たちの視点から描く、錦馬超の実態とは……。  主に正史を参考としていますが、随所で意図的に演義要素も残しており、また武侠小説としてのテイストも強く、一見重そうに見えて雰囲気は割とライトです。  三國志好きな人ならニヤニヤ出来る要素は散らしてますが、世界観説明のノリで注釈も多めなので、知らなくても楽しめるかと思います(多分)  涼州動乱と言えば馬超と王異ですが、ゲームやサブカル系でこの2人が好きな人はご注意。何せ基本正史ベースだもんで、2人とも現代人の感覚としちゃアレでして……。

仇討浪人と座頭梅一

克全
歴史・時代
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。 旗本の大道寺長十郎直賢は主君の仇を討つために、役目を辞して犯人につながる情報を集めていた。盗賊桜小僧こと梅一は、目が見えるのに盗みの技の為に盲人といして育てられたが、悪人が許せずに暗殺者との二足の草鞋を履いていた。そんな二人が出会う事で将軍家の陰謀が暴かれることになる。

小童、宮本武蔵

雨川 海(旧 つくね)
歴史・時代
兵法家の子供として生まれた弁助は、野山を活発に走る小童だった。ある日、庄屋の家へ客人として旅の武芸者、有馬喜兵衛が逗留している事を知り、見学に行く。庄屋の娘のお通と共に神社へ出向いた弁助は、境内で村人に稽古をつける喜兵衛に反感を覚える。実は、弁助の父の新免無二も武芸者なのだが、人気はさっぱりだった。つまり、弁助は喜兵衛に無意識の内に嫉妬していた。弁助が初仕合する顚末。 備考 井上雄彦氏の「バガボンド」や司馬遼太郎氏の「真説 宮本武蔵」では、武蔵の父を無二斎としていますが、無二の説もあるため、本作では無二としています。また、通説では、武蔵の父は幼少時に他界している事になっていますが、関ヶ原の合戦の時、黒田如水の元で九州での戦に親子で参戦した。との説もあります。また、佐々木小次郎との決闘の時にも記述があるそうです。 その他、諸説あり、作品をフィクションとして楽しんでいただけたら幸いです。物語を鵜呑みにしてはいけません。 宮本武蔵が弁助と呼ばれ、野山を駆け回る小僧だった頃、有馬喜兵衛と言う旅の武芸者を見物する。新当流の達人である喜兵衛は、派手な格好で神社の境内に現れ、門弟や村人に稽古をつけていた。弁助の父、新免無二も武芸者だった為、その盛況ぶりを比較し、弁助は嫉妬していた。とは言え、まだ子供の身、大人の武芸者に太刀打ちできる筈もなく、お通との掛け合いで憂さを晴らす。 だが、運命は弁助を有馬喜兵衛との対決へ導く。とある事情から仕合を受ける事になり、弁助は有馬喜兵衛を観察する。当然だが、心技体、全てに於いて喜兵衛が優っている。圧倒的に不利な中、弁助は幼馴染みのお通や又八に励まされながら仕合の準備を進めていた。果たして、弁助は勝利する事ができるのか? 宮本武蔵の初死闘を描く! 備考 宮本武蔵(幼名 弁助、弁之助) 父 新免無二(斎)、武蔵が幼い頃に他界説、親子で関ヶ原に参戦した説、巌流島の決闘まで存命説、など、諸説あり。 本作は歴史の検証を目的としたものではなく、脚色されたフィクションです。

白物語

月並
歴史・時代
“白鬼(しろおに)”と呼ばれているその少女は、とある色街で身を売り暮らしていた。そんな彼女の前に、鬼が現れる。鬼は“白鬼”の魂をもらう代わりに、“白鬼”が満足するまで僕(しもべ)になると約束する。シャラと名を変えた少女は、鬼と一緒に「満足のいく人生」を目指す。 ※pixivに載せていたものを、リメイクして投稿しております。 ※2023.5.22 第二章に出てくる「ウツギ」を「カスミ」に修正しました。それにあわせて、第二章の三のサブタイトルも修正しております。

蒼穹(そら)に紅~天翔る無敵皇女の冒険~ 四の巻

初音幾生
歴史・時代
日本がイギリスの位置にある、そんな架空戦記的な小説です。 1940年10月、帝都空襲の報復に、連合艦隊はアイスランド攻略を目指す。 霧深き北海で戦艦や空母が激突する! 「寒いのは苦手だよ」 「小説家になろう」と同時公開。 第四巻全23話

富嶽を駆けよ

有馬桓次郎
歴史・時代
★☆★ 第10回歴史・時代小説大賞〈あの時代の名脇役賞〉受賞作 ★☆★ https://www.alphapolis.co.jp/prize/result/853000200  天保三年。  尾張藩江戸屋敷の奥女中を勤めていた辰は、身長五尺七寸の大女。  嫁入りが決まって奉公も明けていたが、女人禁足の山・富士の山頂に立つという夢のため、養父と衝突しつつもなお深川で一人暮らしを続けている。  許婚の万次郎の口利きで富士講の大先達・小谷三志と面会した辰は、小谷翁の手引きで遂に富士山への登拝を決行する。  しかし人目を避けるために選ばれたその日程は、閉山から一ヶ月が経った長月二十六日。人跡の絶えた富士山は、五合目から上が完全に真冬となっていた。  逆巻く暴風、身を切る寒気、そして高山病……数多の試練を乗り越え、無事に富士山頂へ辿りつくことができた辰であったが──。  江戸後期、史上初の富士山女性登頂者「高山たつ」の挑戦を描く冒険記。

霧衣物語

水戸けい
歴史・時代
 竹井田晴信は、霧衣の国主であり父親の孝信の悪政を、民から訴えられた。家臣らからも勧められ、父を姉婿のいる茅野へと追放する。  父親が国内の里の郷士から人質を取っていたと知り、そこまでしなければ離反をされかねないほど、酷い事をしていたのかと胸を痛める。  人質は全て帰すと決めた晴信に、共に育った牟鍋克頼が、村杉の里の人質、栄は残せと進言する。村杉の里は、隣国の紀和と通じ、謀反を起こそうとしている気配があるからと。  国政に苦しむ民を助けるために逃がしているなら良いではないかと、晴信は思う、克頼が頑なに「帰してはならない」と言うので、晴信は栄と会う事にする。

厄介叔父、山岡銀次郎捕物帳

克全
歴史・時代
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。

処理中です...