文太と真堂丸

だかずお

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~ 鬼神という鬼~

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ギイッ      ギコ      ギコッ

小さなさざ波に舟がきしむ
漆黒の夜の暗闇、小さな小舟は地獄と呼ばれる鬼ヶ島に向かっていた。
舟を漕ぐ男は無表情で身体は小刻みに震えている

あああー     あああーっ

まるで風の音がこんな声をあげ、気味悪く歌ってるよう耳に響く
真っ暗な海は先が見えず 向かってる場所のせいだろうか?とても不気味に感じた。

「お前たち一体何なんだ?何故進んで自ら地獄に向かう?」舟を漕ぐ男の声は震えていた。

舟に沈黙が漂う
「言えることは、普通にゃ死ねねえぞ」
その言葉にしんべえはゾッとする
考えりゃ、鬼神は女狐以上の化け物、こりゃあ、とんでもねぇことになりそうだ、しんべえは心を強く保つ為、拳を強く握りしめた。

あああーあああーっ
風が不気味な声をあげ歌ってるように辺りに響き渡る

「さすがに鬼ヶ島に向かってる今、良い気はしないぜ」太一が言った。

道来は目をつむり黙って座っている。
辺りを包むのは漆黒の闇

その時

ザァプン
小さな音、水面から何かが浮かびあがる音だった

ひいぃぃぃいっ

舟を漕ぐ男が突如叫ぶ

「おしまいだ」

ゾクッ背筋が冷たくなる。

何故なら、水面から鬼の頭だけが顔を出しこっちを覗いてるからだ。
「見つかったでごんすか?」刀を抜く一之介

真堂丸が「いや、死んでる」

海に浮いていたのは、鬼の首だけであった。

「一体どうして?」と文太

「まっ間違いねぇ、こんなのは何年ぶりだ?鬼神が仲間を殺すって事はとんでもなく怒ってるってことだ、人間を襲いだす始まりだ」

男はこの時点で正気を失っていた。
鬼神と言う怪物の恐怖が自身の正常心を凌駕してしまった、男にもはや正常な判断は出来なかった。
突如、一人つぶやき始める
「まずは、近い私の村は襲われる、地獄だ、人間の終わりだ」男は突然、自分のお腹に隠してた短刀を取り出し自らの腹に突き刺した。

「馬鹿野郎、何やってやがる」と叫ぶ太一

「くそっ」一之介が近寄る

「そっ、そんな」

男は手を前に出し笑った「人間はこれから先、地獄を見るだけ、鬼神に襲われ、死ぬまで残酷なめにあわずに死ねて俺はまだましだった」男は生き絶え海に落ちていった。

「なんてことをっ」

「鬼神は人間を襲いだす気らしいな」道来が立ち上がる

「止めなければ多くの犠牲者が出ることになる」
文太は涙を流し、拳を強く握りしめた。

「急ぐぞ」舟は進む。

舟は島の姿を肉眼で捉えられる所まで来ていた。

「思ったより、でかい島でごんす」

ああああ~~ アアア~~
前にも後にも風の音がこんな風に聞こえたのは初めてだった。

その時

「待て」真堂丸の声

「鬼達の声がする」

「ああ、確かに、やけに賑やかだ、まるで宴会でもしているようだな」と道来

「どうする?奴らが静かになり機を待つか?」

「そっ、そうだそうしようぜ」しんべえが少しホッとする

僕らは島の上陸の機会をうかがうことに

夜明け頃
鬼の声は静まりかえり
辺りは薄暗くも空から少し光が射し込み始めていた。

「いまだ」

島に住む女 のの は鬼ヶ島の外の世界を知らない。
ずっと憧れていた、ずっと夢見ていた
この島の外にはどんな世界が広がっているんだろう。
死ぬ前に一度で良い見て見たい
ふうーっ静かにため息をついた。

そんな ののが直後信じられない光景を目にすることになる、崖の下、一隻の舟が上陸する
「えっ?」自身の目を疑った。
舟から人がおりてくるではないか、島の人間ではない。

「いけない」ののは声を出した

胸踊る期待からすぐに不安へと変わる
あの人たちは島の外の人、ここが鬼ヶ島だって事を知らないんだ。
見つかれば殺されてしまう。

その直後 ののは彼らの声を耳にして、あまりの驚きに一瞬立ち止まる

「ここが鬼ヶ島か本当に気味悪い場所だぜ」としんべえ
いきなりしんべえは足をつまずき、すっ転んだ。

ズテッ
「いっいてっ、いっ、今のはな緊張のせいじゃねえぞ、軽い冗談だからな」

「まったく、良く言うぜ」
皆は笑った。

ののは信じられなかった、あの人たちはここが鬼ヶ島だって事を知ってる
ののが信じられなかったのは、そのことだけではなかった。
鬼ヶ島と知りつつ彼らは上陸し、更に笑っていたのだ。
この島にいて、笑ってる人間の顔を見たのはいつ以来だろう。

のの の胸に、この時の光景が生涯残ることになる
刀を持ってる男の人たちに、優しそうな人、とてもあったかい感じがした。
ののは彼らの姿を見て気がついたら何故か、一粒の涙を流していた。

すぐにハッとし
鬼に見つかる前に彼らを家にかくまらなければ、彼らは殺されてしまう、そう直感した。
ののが崖下に急ぐ

「待って」すると背後から声が

「尚姉」

「のの 行ってはいけない、もしあなたが行って、彼らと一緒にいる事が鬼達に知れたらあなたが殺される」

「でっ、でも、彼らはこのままじゃ死んでしまう」

「分かってる、だから私が行く」

「お姉ちゃん」

その時だった
下で、一人の鬼と彼らは既に対峙していたのだ

「あっ、青鬼さんっ」

下では
「どうやら、見つかっちまったか」と太一
即座に刀を抜く、太一、一之介。

「お前達、上陸する島を間違えたか?今すぐ逃げろ、他の者に見つかったら殺されるぞ」

一同はその言葉に驚いた。

「僕達を気遣ってくれてるんですか?」と文太

その直後、青鬼の後ろから声が
まずいっ 「お前達このさきに洞窟がある、そっちには今鬼はいない、いったんそこへ行き、すぐに島を出るんだいそげっ」

「あっ、ありがとうございます」文太が頭を下げる

みんなは走り、洞窟に向かった。

「しかし、一体どういう事でごんす?鬼に救われるとは?」一之介が首をかしげる

「どうやら鬼達にも人間と同じく、いろんな性格の鬼がいるみたいですね、これなら人と分かり合え仲良く一緒にやっていけるかも」喜ぶ文太

「あめぇよ、文太 みんながお前みたいにすぐ分かり合えるわけじゃねえ、人間に鬼が近づいていってみろ、どんなに性格の良い鬼でも、見た目の違いに恐怖するのが人間、結局恐怖が先行する人間に分かり合えるはずがねぇ」

「俺も今度ばかりはこのアンポンタンに同感です」太一が言った。

「アンポンタン? てめぇ」

「分かりません、そうかもしれないけど、そうじゃあないかも知れない、あきらめたら先はない、僕は分かり合えると信じています」文太の目は真っ直ぐ先を見据えていた。

しんべえは口をポカンと開けたまま
「けっ、物わかりの悪い奴だぜ」
そして微笑んだ。

「文太の兄貴がそう言うなら、俺もそれを信じよう」と太一も笑った。

「けっ、きみ悪りぃっ、ここでも意見があっちまったな」としんべえが太一に言った。

一部始終を上から見ていた、二人

姉は歩き始めた「もう大丈夫、見つかったのが青鬼で良かったわ、私達は帰りましょう」

ののにはひとつ腑に落ちない思いがあった。
彼らは確かに、ここが鬼ヶ島か と言っていた。
何故ここへ?

洞窟に着いた一同
「これからどうする?」と道来

「あの青い鬼、あいつなら何か話が出来そうだ、あいつは必ずここに来る」と真堂丸

「そうですね、待ちましょう」と文太

のの 達は家に戻っていた。

「お姉ちゃん、さっきの人たち」

「のの、 その話、鬼神に聞かれたらどうなるか分かるでしょ?」

「うんっ でもっ」

「のの、私の願いはあなたに生きて欲しいただそれだけ、死んだお婆ちゃんとの約束でもあるの」

「お婆ちゃん?」

「そう、いつか話すわ」

「私に何があっても、あなただけには生きて欲しい」

「やめて、お姉ちゃん 絶対にいつまでも一緒、お姉ちゃんが死んだりしたら、私生きていたくないから」
姉は少しさびしい表情を浮かべた。

「お婆ちゃんはね」

「ううん、何でもない、今はこの話はしない」

「いきなり、話そうとしたり、やめたり変な尚姉、私尚姉がいるから こんな地獄の様な場所でも希望を失わず生きていられるの」

「のの、確かにここは辛い場所かも知れない、でも生きてれば必ず 素敵な事だってあるの、それにあなたには夢も、まだまだやりたいことだってあるんだから」
のの はその言葉に島の外の世界を思った。

「だから、二人で希望を捨てず、生きるの」

「うんっ」
両親が殺されてから、今日まで生き抜いてこれたのは尚姉のおかげだ。
尚姉が私を支え自身の希望になってくれていた。

ありがとう尚姉


その頃

鬼神が目を覚ました
「夢を見た、気にくわねぇババアの夢だ」

「ババアですか?」

「ああ、尚のとこのな」

「ああ、あの婆さんでしたか」

「俺はあの手の人間が大嫌いでな、何が希望だ、笑わせやがる」
鬼神は立ち上がった。

「どこ行くんで旦那?」

「これから、人間を再び殺す事に決めたんだ、まずは俺の大嫌いな人間を思いださせる人間を処刑しよう」

「ですが、尚のところは、旦那直属の奴隷、殺しちまって良いんで?」

「もう、のの一人居れば充分だろ」

「旦那あんたも鬼で、希望を削ぐのが好きですな」

「フハハハ、上手いことを言う、そうだ俺が鬼」


洞窟の場所

入り口に一人の鬼の姿
「お前達、舟の場所に戻す、すぐ去れ」
それは青鬼だった。

「ありがたいが俺たちは鬼神に用があるんだ」道来が言った。

「なんだって、お前達気は確かか?」

「鬼神さんに何の用だ?」

「人間を殺すのを止め、大帝国から身を引けと話しに来た」真堂丸が言う

「は?」

「お前達、大馬鹿野郎か?自分達が何を言ってるか分かってるのか?」

「ああ」
青鬼の表情が変わった。

「人間が鬼神さんに勝てるはずがないだろう、みすみす殺させる訳にはいかない」
背中から大きな鉄のこん棒を掴み出す

「身の程を知らない者よ、力の差を知るがいい、鬼と人間の絶対に埋まることのない力の差を」

ザッ

真堂丸が前に出る

その時、突如辺りに不気味なうめき声が響き渡る

「ゔおおおおおおおおおおおおおおおーっ」

ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオーッ

「なんだこの地鳴りは」叫ぶ太一

「おっおい、やべえよ」身をすくめるしんべえ

島全体が揺れる程の声

青鬼の額から汗が「これが鬼神さんだ」

青鬼は気が気ではなかった、何故ならこれは処刑の合図

まさか、尚の所ではないよな?

青鬼は気がついたら、走り出していた。

尚、のの

「なんだ、行ってしまったでごんす」

「何かあったみたいですね」

「俺達はどうする?」と道来

「ここで、しばらく様子を見よう」真堂丸が言った。

ゴオオオオオオオオオオー
不気味な地鳴りは鳴り響き、鬼神の足は のの家に向かっていた。




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