文太と真堂丸

だかずお

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~ その男 骸 ~

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真堂丸と骸は互いに刀を向け、対峙したまま動かない。
そんな中、最初に口を開いたのは骸だった

「こりゃあ、驚いた オマエ強ぇな」

真堂丸の視界はぼやけていた。
相手が只者でないことは分かっている
いまの状態、視力はかすみ使いものにならない、そんなことを考えていた刹那
目の前にいた男は消え、首もとに刀の気配を察知した真堂丸はとっさに刀で防いだ、速いっ
その一太刀は充分すぎる程、相手の強さをもの語っていた。
攻防はつづいた、凄まじい速さで襲いかかる刀を今や防ぐことしか出来ない

キィン キィン キィン

キィン キン キィン

金属音がぶつかり合う音が辺りに生々しく響く
もし、一瞬でも反応がおくれたり判断を読み間違えたら、身体は即 真っ二つになるだろう

後ろに飛び跳ね、体勢を整えた真堂丸は予想外の行動に出る

骸は言った 「なるほど」
真堂丸は目をつむり刀を構えていた、今や、ボヤけた視界に頼るのは危険。
目を閉じ身体全身で相手の動きを感じ、音や感覚を頼りに闘うしかない。

「そうとう、場数を踏まなきゃ出来ねえ芸当だな」骸は笑った

「それで、俺に勝てるかい?」

骸は再び真堂丸に襲いかかる
刀を振りかざし交わらせる程に、骸は嬉しくなった。何故なら自分の太刀をこの男は目をつむり確かに躱しているからだ。
こいつは本物だ 骸は確信する。

俺が探し求めていた男

骸は本物の天才だった。
生まれて刀を持って以来、神童と呼ばれ、誰も骸には歯が立たなかった。
どんな大人も、名の知れた奴も骸にかかればまるで非力な存在でしかなかった。
人間離れした身体能力、 刀の秀でた才能、それらは完璧なものだった。
だが、それ故に抱えた悩み
満足する相手に出会う機会のなさが、骸をいつしか退屈にさせた。
それから、ただ、ひたすら強い奴を求めてきた
国中を巡った、強いと聞く者を片っ端から斬って斬って生き続けた。
それでも、自分は負けなかった。
ある時、道にあるく蟻を踏み殺し、骸は感じた。
所詮どんな剣客も俺にとってこの程度の相手にしかならねぇ
骸はあまりの強さ故に絶望を味わい生きてきた つまらねぇ。

だが、なんということだ今、目の前にいるこの男。
ようやくようやく自分の満足出来る男が目の前に現れたのだ。
骸は不気味に微笑んだ。
対峙して闘うなか実は骸は真堂丸のすべての傷の箇所、身体の状態、更には骨の小さなひびの位置まで完璧に見抜いていた。
このまま、いけばそれに合わせた攻撃を続けることもできる、自分の勝ちは確実だった。
そう、それは時間の問題、結果の決まってる やりとり、まるで、つまらない殺し合い。
それにまだ自分は・・・突然骸の足は止まる。

「そんな、 つまらねぇことはしねえ、ここでオマエを殺してもなんも楽しくねえんだよ」骸は刀を鞘に収めた。

「オマエの万全な時に決着だ 、次は生かさねえ」
そう言い残し骸は立ち去って行ったのだ。

真堂丸は骸の背中をジッと見つめ
すぐ再び、重い身体を持ち上げるかのように走り出す。

骸は興奮していた、
「久しぶりに、五割の力をだせたな、あいつは良い、いいよぉ いいょお」

真堂丸はいきなり、片脚を地面につけ倒れた ズサッ  身体が思うように動かなかった。
その時だった、前から沢山の兵士達の声が
「この辺りにいるんじゃないか?」

「きっと近くに」

まずい
とっさに身体を物陰に隠したが、兵士達はどんどん近づいてきている

ハアハア 駄目か ?

ドォーンッ !!!!

「なんの音だ?向こうだ、向こうをさがせ!!」

それは一刻程前
道来と太一は城に潜入していた、この騒ぎの中ばれずに潜入することはたやすかった。

「太一、俺たちは至るところに火をつけ、兵隊達をそっちにおびき寄せるぞ、その間に真堂丸が文太を救いだす時間を稼ぐんだ」

「はいっ」

城を走る中
「道来さん、これ見てくだせぇ」

「武器庫か」

「よしっ、ここだ」
そう、その時の爆発音がまさにそれであったのだ。

「ふぅー」 真堂丸は立ち上がり、ふと窓の外、下の方で見慣れた人影。そうそれは、 道来と文太が走ってる姿だった

あいつら ・・・
真堂丸の中に、なにか今まで感じたことのないような嬉しさが湧き上がった瞬間だった。
二人の姿は再び真堂丸の脚をしっかり立ち上がらせた。
真堂丸は力強く前を見据える。
直後だった、真堂丸は確実にとらえた。
そう、聞き慣れたその声は文太の声

「そこか」

文太のいる牢
文太は大声をあげていた。そう、それは自分の居場所を伝える為の叫び

「ちっ、うるせえな 声出すのをやめるんだな、殺すぞ」
雷獣は鋭い目つきで文太を睨んだが、文太は止まらなかった。

「結局、お前の信頼した真堂丸は間に合わなかったな、所詮信頼なんてなんの役にもたたねえ、そんなもんなんだよ、下らないものにすがったと死ね」

雷獣が刀を振りかざしても

僕は怖くなかった

なんにも、怖くなかった

大帝国という恐ろしい奴らに捕えられても、まったく不安じゃなかった

だって


僕は君を信じていたから


君が助けにくること分かってたから


僕の瞳には
しっかりと真堂丸が映っていた。


「待たせた、文太」

雷獣の後ろには刀を構えた真堂丸が立っていたのだ
「本当に来やがったのか」
雷獣は驚いた、心底驚いた そして何故か 自分でも気味が悪かったが嬉しく、また羨ましくもあった。

「ちっ、やるしかねえな」雷獣はゆっくり刀を抜いた。
「二人ともあの世に送ってやるぜ」
雷獣は物凄い形相で真堂丸に刀を突きつけ叫んだのだった。
ここからだろ、本当に救いだせるかだせないかはよぉ !!

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