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~ 一山の過去 ~
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太一は目を覚ました。
「おっ、俺は 」身体が思うように動かない 手当がほどこされている。
俺は負けたんだな。
そう思った瞬間すぐに部屋を見回す
道来さんは?
道来さんは何処だ?
太一は傷だらけの身体を必死に起こし、立ち上がる。
俺は置いていかれたのか?
太一は自分の傷どころではなかった。
あの敗戦 刀に真摯に生きる道来さんのことだ もしかしたら、長く道来と共にしてきた太一は彼の性格を理解している。
だからこそ、そんな不安にかられていた。
廊下を出た瞬間
太一は安堵の表情を浮かべる
道来の声がしたからだ
それは外から聞こえた。
太一は声のするほうを覗き見る
それは道来が素振りをする背中姿だった。
その姿に太一は涙を流す
振り向かずに道来は喋り始めた
「太一よ、私は刀を持ってからずっと人と比べてきた、いつも勝ち負けにこだわってやってきた」
「お前もうすうす気がついてただろう、私の刀の実力はたいして変わらず。いつまでも、自信を持てず ここまで来てたことを」
「太一、私はこれから昨日の己自身を越えるよう精進する、比べるのは己自身、今は昔の様に刀で一番になることに興味はない、それでも私と共に刀の道を歩むなら 何処までもついてこい」
太一は泣きながら言った
「地獄の果てでも、ついて行きます」
太一は嬉しかった。優しい道来さんの事、自分が目を覚ました時、少しでも自分を不安にさせない為に自分の眠るすぐ近くのこの場所で素振りをし、自分の起きるのをずっと待っていてくれた道来さんの気遣いが手に取るように分かったから。
誰よりも自分を理解し大切にしてくれてる、その気持ちが嬉しくてたまらなかった。
ありがとう道来さん。
真堂丸と文太は道場に戻って来た。
一山は真堂丸の表情をみる
そして 微笑んだ。
良い目になった、瞳に光が射し込んでいる。
「友達達も起きたみたいじゃぞ」
「あっ、道来さん、太一さん」
太一が傷だらけなのに驚いたが、理由はきかなかった、なんとなく分かったからかもしれない。
「さて夕食にしようかのう」
夕食後ら門下生達はそれぞれの家に帰っていく
騒がしかった道場は、日も暮れた後は、ひっそりと静まりかえった。
部屋に残るのは 僕らと一山さん、それにあのお尋ね者になっていた三人
広い道場にロウソクを灯し 、なにやら話が始まった。
「お話があります先生」
「ふむ」
「我々になにかできることはないかと」
「大帝国のことじゃろ?」
「はい」
「どうやらワシから話すことが色々ありそうじゃ、旅のお方よ これも何かの縁一緒に聞いてくれんか?」
「もちろんです」
道来も頷いた。
「まずは自己紹介してあげなさい」
「私は海 と申す」
「私は陸と申します」
「俺は今更紹介するまでもないな」空が言う。
「あの、変なことを言ってすいませんが、僕あなた達のことお尋ね者の看板でみた気がするんですが?違ってたらすいません」
「間違いなくそれは我々です」陸が言った
「あれだけワシがやめろと言っとったのだが、仕方なかったのう」
陸が声を荒げ語り始める
「我々は大帝国を怖れてるだけではいけないんです。我々は奴らの事を探るため旅をしてました」
「そんな時でした、奴らの支配が及ぶ町で人が殺されそうになっていたのを黙って見過ごせず、助けたのです。それからです我々がお尋ね者になったのは」
「そんな」僕は思わずつぶやいてしまった。
「奴らは力と恐怖で国を支配するつもりじゃ 」
「先生、今なんとかしないと、もう手遅れになります。同じ意思を持つ者を集め立ち上がらなければ、この道場には少なくとも集めれば百はいます、このことを伝えて」
一山は返事をしなかった
「この国はどうなるんでしょう?」
僕は希望の言葉が聞きたかったのかもしれない、誰に問いたわけでもなく自然に声が出てしまっていた。
すると
「大帝国の大頭、鬼道千閣 ワシの親友だった男じゃ」
「なんですと?」
一同は驚きを隠せずにいた
「昔、共に刀で天下を目指した」
「しかし時がたち、ワシは刀を振るい人を斬り、己が一番の称号を持つと言うことに興味がなくなっていった」
「だが、鬼道は違ったんじゃ」
「ある時、 奴が訪ねて来た そしてワシに勝負を挑んできたのじゃ、もちろん命がけのな。ワシは断った、友を斬れるはずがない。だが鬼道は名声、力を渇望していた」
「ワシは奴と勝負することに」
今でも覚えている、嵐の夜じゃった。
「お前と俺は一度も闘ったことがないな、一山よ。勝ったほうこそより天下に近い男そうだろう」
「もうやめにしないか、鬼道 どちらが強いかなど、もういいじゃないか 」
「刀を抜け」
そして、決着はつく。
ワシは鬼道の片腕を斬り落とさざるを得なかった。
さもなくばワシが死んでいたからじゃ、それ以来奴とは会わなかった。
そして、奴は何年か前に突然姿を表した。
「 久しぶりだな一山よ、あの日、俺はお前に腕を斬り落とされた、なに恨んじゃいない、俺はどうせ天下をとるのなら 刀の世界などではなくこの国ごと奪ってやろうと思ったのさ、見ていろ、今に面白いことになる」
「それからじゃ、大帝国が出来上がったのは」
「まさか、そんな繋がりがあったとは」 三人の弟子は初めて知る事実に驚きを隠せずにいた。
「しかし、それなら何か手がうてるんじゃないですか?先生」
「それは、また次に話そう 今はまだ時期がはやい」
「ですが」
「今日はもう寝なさい」
三人は頭を下げ 各々の部屋に戻ろうとした。
部屋を去る時に
「旅のお方よ なにやら重苦しい話を失礼した」そう言いお辞儀をして出ていった。
「すまんのぅ なにやら変な話を聞かせてしまって」
「いえ、良いんです」
「それから、君 名前をお聞かせ願いたい」一山は真堂丸を見つめた。
「真堂丸という」
一山は声をあげ笑い出す
「君がそうだったのか」
「君は刀で天下を目指してるのか?」
「興味はない」
「そうか、だが、君はあの青年とぶつかざるを得ないじゃろうな」
皆は驚く
「あの青年?」
「君らがここにくるちょっと前に訪ねて来たんじゃ、ワシに勝負を挑みに、もちろん断ったよ、勝てる気がしない相手に会ったのは、君を含め、生涯二度目じゃ、彼は必ず君の首をとりにくるぞ、心してかかれ」
僕は一瞬、その言葉に頭が真っ白になった。そんなっ、僕は真堂丸が、友達が危険な目に合うのがもう嫌だった。
もちろん そんな命をかけた決闘の場を見るのも嫌だった
何度見ても慣れるものではないのだ。
「彼は一斎と名乗っておった」
「きかねぇ名だ」太一が言う
「手に刀傷があったから、すぐに分かるじゃろう」
真堂丸はすぐに気がついた
そして道来も「あいつか」
僕もその言葉にはっとし、山ですれ違い様に出会ったあの男を思い浮かべた。
「どうやら、会っていたか 真堂丸君。勝負をする前にこんな事言って悪いがワシは生まれてはじめて刀を振るう神を見たんじゃ、その域の男じゃ。こんなこと言って悪いが、わしもこの世界を極め生きてきた者 せめてその勝負するのであれば、それを見届けあの世に逝きたいもんじゃの」と笑い
「さて寝るかのう」と立ち上がった。
部屋の出入り口にさしかかった時
急に一山の足が止まる
「お主達 」
「もしも国が危うくなり大帝国に抵抗するのであれば、うちの人間達と手を組みなさい 」
そして部屋から出ていった
一山は心決めていた
かける命は己ひとつ
皆を巻きこまず
大帝国の元から斬りくずす
それは 彼の最期の決意であった
「なあに真の兄貴が負けるはずねえさ」太一が、一山の言葉を、不安を払いのけるかの様に声にする
僕は真堂丸の顔を見つめる
真堂丸は座りこみ、外の空を見つめた
「綺麗な空だ」
僕は信じよう 友を
僕の友達 真堂丸は無敵なんだ
道来も太一も同じ気持ちだった。
この目の前にいる男が刀を持てば負けるはずない、真堂丸こそ最強だ。
だが本当は勝ち負けよりも
誰もが この、殺す殺されるの螺旋から真堂丸が無事に抜けるのを信じ祈った。
それが皆の願い
空に散りばめられた星空がとても綺麗に穏やかに心に響き渡る
僕はそれを見て心から祈りをこめた。
その日は眠れず、いつまでも祈りは止むことなく続いた。
「おっ、俺は 」身体が思うように動かない 手当がほどこされている。
俺は負けたんだな。
そう思った瞬間すぐに部屋を見回す
道来さんは?
道来さんは何処だ?
太一は傷だらけの身体を必死に起こし、立ち上がる。
俺は置いていかれたのか?
太一は自分の傷どころではなかった。
あの敗戦 刀に真摯に生きる道来さんのことだ もしかしたら、長く道来と共にしてきた太一は彼の性格を理解している。
だからこそ、そんな不安にかられていた。
廊下を出た瞬間
太一は安堵の表情を浮かべる
道来の声がしたからだ
それは外から聞こえた。
太一は声のするほうを覗き見る
それは道来が素振りをする背中姿だった。
その姿に太一は涙を流す
振り向かずに道来は喋り始めた
「太一よ、私は刀を持ってからずっと人と比べてきた、いつも勝ち負けにこだわってやってきた」
「お前もうすうす気がついてただろう、私の刀の実力はたいして変わらず。いつまでも、自信を持てず ここまで来てたことを」
「太一、私はこれから昨日の己自身を越えるよう精進する、比べるのは己自身、今は昔の様に刀で一番になることに興味はない、それでも私と共に刀の道を歩むなら 何処までもついてこい」
太一は泣きながら言った
「地獄の果てでも、ついて行きます」
太一は嬉しかった。優しい道来さんの事、自分が目を覚ました時、少しでも自分を不安にさせない為に自分の眠るすぐ近くのこの場所で素振りをし、自分の起きるのをずっと待っていてくれた道来さんの気遣いが手に取るように分かったから。
誰よりも自分を理解し大切にしてくれてる、その気持ちが嬉しくてたまらなかった。
ありがとう道来さん。
真堂丸と文太は道場に戻って来た。
一山は真堂丸の表情をみる
そして 微笑んだ。
良い目になった、瞳に光が射し込んでいる。
「友達達も起きたみたいじゃぞ」
「あっ、道来さん、太一さん」
太一が傷だらけなのに驚いたが、理由はきかなかった、なんとなく分かったからかもしれない。
「さて夕食にしようかのう」
夕食後ら門下生達はそれぞれの家に帰っていく
騒がしかった道場は、日も暮れた後は、ひっそりと静まりかえった。
部屋に残るのは 僕らと一山さん、それにあのお尋ね者になっていた三人
広い道場にロウソクを灯し 、なにやら話が始まった。
「お話があります先生」
「ふむ」
「我々になにかできることはないかと」
「大帝国のことじゃろ?」
「はい」
「どうやらワシから話すことが色々ありそうじゃ、旅のお方よ これも何かの縁一緒に聞いてくれんか?」
「もちろんです」
道来も頷いた。
「まずは自己紹介してあげなさい」
「私は海 と申す」
「私は陸と申します」
「俺は今更紹介するまでもないな」空が言う。
「あの、変なことを言ってすいませんが、僕あなた達のことお尋ね者の看板でみた気がするんですが?違ってたらすいません」
「間違いなくそれは我々です」陸が言った
「あれだけワシがやめろと言っとったのだが、仕方なかったのう」
陸が声を荒げ語り始める
「我々は大帝国を怖れてるだけではいけないんです。我々は奴らの事を探るため旅をしてました」
「そんな時でした、奴らの支配が及ぶ町で人が殺されそうになっていたのを黙って見過ごせず、助けたのです。それからです我々がお尋ね者になったのは」
「そんな」僕は思わずつぶやいてしまった。
「奴らは力と恐怖で国を支配するつもりじゃ 」
「先生、今なんとかしないと、もう手遅れになります。同じ意思を持つ者を集め立ち上がらなければ、この道場には少なくとも集めれば百はいます、このことを伝えて」
一山は返事をしなかった
「この国はどうなるんでしょう?」
僕は希望の言葉が聞きたかったのかもしれない、誰に問いたわけでもなく自然に声が出てしまっていた。
すると
「大帝国の大頭、鬼道千閣 ワシの親友だった男じゃ」
「なんですと?」
一同は驚きを隠せずにいた
「昔、共に刀で天下を目指した」
「しかし時がたち、ワシは刀を振るい人を斬り、己が一番の称号を持つと言うことに興味がなくなっていった」
「だが、鬼道は違ったんじゃ」
「ある時、 奴が訪ねて来た そしてワシに勝負を挑んできたのじゃ、もちろん命がけのな。ワシは断った、友を斬れるはずがない。だが鬼道は名声、力を渇望していた」
「ワシは奴と勝負することに」
今でも覚えている、嵐の夜じゃった。
「お前と俺は一度も闘ったことがないな、一山よ。勝ったほうこそより天下に近い男そうだろう」
「もうやめにしないか、鬼道 どちらが強いかなど、もういいじゃないか 」
「刀を抜け」
そして、決着はつく。
ワシは鬼道の片腕を斬り落とさざるを得なかった。
さもなくばワシが死んでいたからじゃ、それ以来奴とは会わなかった。
そして、奴は何年か前に突然姿を表した。
「 久しぶりだな一山よ、あの日、俺はお前に腕を斬り落とされた、なに恨んじゃいない、俺はどうせ天下をとるのなら 刀の世界などではなくこの国ごと奪ってやろうと思ったのさ、見ていろ、今に面白いことになる」
「それからじゃ、大帝国が出来上がったのは」
「まさか、そんな繋がりがあったとは」 三人の弟子は初めて知る事実に驚きを隠せずにいた。
「しかし、それなら何か手がうてるんじゃないですか?先生」
「それは、また次に話そう 今はまだ時期がはやい」
「ですが」
「今日はもう寝なさい」
三人は頭を下げ 各々の部屋に戻ろうとした。
部屋を去る時に
「旅のお方よ なにやら重苦しい話を失礼した」そう言いお辞儀をして出ていった。
「すまんのぅ なにやら変な話を聞かせてしまって」
「いえ、良いんです」
「それから、君 名前をお聞かせ願いたい」一山は真堂丸を見つめた。
「真堂丸という」
一山は声をあげ笑い出す
「君がそうだったのか」
「君は刀で天下を目指してるのか?」
「興味はない」
「そうか、だが、君はあの青年とぶつかざるを得ないじゃろうな」
皆は驚く
「あの青年?」
「君らがここにくるちょっと前に訪ねて来たんじゃ、ワシに勝負を挑みに、もちろん断ったよ、勝てる気がしない相手に会ったのは、君を含め、生涯二度目じゃ、彼は必ず君の首をとりにくるぞ、心してかかれ」
僕は一瞬、その言葉に頭が真っ白になった。そんなっ、僕は真堂丸が、友達が危険な目に合うのがもう嫌だった。
もちろん そんな命をかけた決闘の場を見るのも嫌だった
何度見ても慣れるものではないのだ。
「彼は一斎と名乗っておった」
「きかねぇ名だ」太一が言う
「手に刀傷があったから、すぐに分かるじゃろう」
真堂丸はすぐに気がついた
そして道来も「あいつか」
僕もその言葉にはっとし、山ですれ違い様に出会ったあの男を思い浮かべた。
「どうやら、会っていたか 真堂丸君。勝負をする前にこんな事言って悪いがワシは生まれてはじめて刀を振るう神を見たんじゃ、その域の男じゃ。こんなこと言って悪いが、わしもこの世界を極め生きてきた者 せめてその勝負するのであれば、それを見届けあの世に逝きたいもんじゃの」と笑い
「さて寝るかのう」と立ち上がった。
部屋の出入り口にさしかかった時
急に一山の足が止まる
「お主達 」
「もしも国が危うくなり大帝国に抵抗するのであれば、うちの人間達と手を組みなさい 」
そして部屋から出ていった
一山は心決めていた
かける命は己ひとつ
皆を巻きこまず
大帝国の元から斬りくずす
それは 彼の最期の決意であった
「なあに真の兄貴が負けるはずねえさ」太一が、一山の言葉を、不安を払いのけるかの様に声にする
僕は真堂丸の顔を見つめる
真堂丸は座りこみ、外の空を見つめた
「綺麗な空だ」
僕は信じよう 友を
僕の友達 真堂丸は無敵なんだ
道来も太一も同じ気持ちだった。
この目の前にいる男が刀を持てば負けるはずない、真堂丸こそ最強だ。
だが本当は勝ち負けよりも
誰もが この、殺す殺されるの螺旋から真堂丸が無事に抜けるのを信じ祈った。
それが皆の願い
空に散りばめられた星空がとても綺麗に穏やかに心に響き渡る
僕はそれを見て心から祈りをこめた。
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