冬馬君の夏休み

だかずお

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犬おじいさんの言葉の巻

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翌日、冬馬君は清香の家に1人で行こうか考えていた。

でも、こないだ会ったばっかで1人で行くのは変かな、などと思い迷っていたのだ。
さすがに気まずくもある。

冬馬君は漫画を読みながら考えては正子に住所を聞く事にした。
一応それとなく正子に清香の住んでいる住所を聞いてみた。

正子に自分が、清香に気がある事をばれたくはなかったので、聞き出し方に苦労した冬馬君。
バレずに上手く聞き出したと思っていたが、正子はもちろん冬馬君の気持ちに気づいていた

さすが親である。

紙に書いた住所を何度も見ては嬉しくなり、いつ行こうかなどと考えている。とりあえず紙を机の引き出しにしまって、冬馬君はお菓子でも買いに行こうと思い近所の駄菓子屋に向かった。


駄菓子屋の名前は山田商店と言う。

安くて美味しい駄菓子は大好きだ

持ってる100円玉を上手に、沢山好きな物を買うのだ。買いに行く間、頭で何を買うか一生懸命考える。

中には箱をめくると金額が書いてあって、その分のお菓子をただで買えるものなどもあった。そうヤッターメンである。当たった時は沢山買えるので嬉しいのだ。

今日は何買おう、頭の中であれも良いこれも良いなど色々吟味している

駄菓子屋に着いて好きな物を買って、少し高い壁に登り駄菓子を食べる事に。
ここは、お気に入りの定位置でよく駄菓子を買ってはここで食べている冬馬君。

好きなお菓子を地面に並べて食べる瞬間、王様にでもなった気がして何とも心地良いひと時である

空を見ながらお菓子を食べていた。
ああ、最高のひと時。

食べ終えて散歩をしていると、犬おじいさんが犬を連れて歩いていた。
正確には両手に犬を連れていたので犬達である。
あれだけ飼ってると一体、一日に何度散歩に行くんだろう?

「おじいさん」

「おや、元気かい?今日は1人だね」

二人は、あれ以来。すっかり仲が良くなっていた。

冬馬君は一緒に散歩を手伝ってあげる事に。

公園に来て二人は座ると、冬馬君はふと気になって、おじいさんは恋とかした事あるのか聞いてみた。

「おじいさんは好きな人とか、いた事あるの?」

いきなりの質問だったので、一瞬戸惑った様な顔をしたけど冬馬君の真剣な顔を見ては、目をそらさずに話始めた。

「そりゃ人生長く生きてるからあったさ」

「そんな質問するからには好きな子でも出来たんだね」

とっても優しく微笑んで言った。

「はい、そうです」

「羨ましいな」

「私はこういう性格だし、からっきし女性の前では話が出来ずにいた、だから若いうちは彼女など出来ずじまいさ、でもある日、そんな私を受け入れてくれて愛してくれる女性が出来た」

「嬉しかった、その人の前では演じる必要もなくありのままの自分でいれた嫌われるのを恐れては自分を素直に出せないでいる人は沢山いると思う」

「なにもそれは恋愛だけじゃない人間関係全てに言える」

「じゃあどうすればいいの?」

「自分だけは自分を大事にしてあげるんだ、自分だけはいつでも自分の味方でいてあげる、そしたら愛する人に嫌われて傷ついても、またちゃんと立ち直る事が出来る、友達に裏切られても自分がいつでも味方だから大丈夫。自分はいつでも自分の最愛の友達でいてあげるんだ、そしたら少しづつでも勇気が自分の内から湧いてくるよ。
自分を愛して本当に人を愛する事が出来るようになるのに気づいたのは、ずいぶん後じゃったがな」

おじいさんは真剣に冬馬君を見つめて語った。

それは冬馬君に聞かせるというよりも
自分が自分に語って言っていたようにも、冬馬君は感じた。
本当は自分自身に言っていたのかもしれない。

「まだ、少し難しかったかな」

とにかく、その言葉は冬馬君の心に響いた。
おじいさんとの公園でのひと時は冬馬君にとって何故か忘れられないものとなった 。

自分を大切にか

おじいさんにさよならを言って冬馬君はうちに帰って来た。

おじいさんの真剣な瞳が、何だか 忘れられなかった

ありがとう おじいさん、冬馬君は真剣に自分に向き合ってくれた、犬おじいさんに感謝した。

人付き合いをたまに億劫に感じたりする冬馬君は、こちらが真剣に接すれば沢山の事を学べる事を知った。

僕はこういう風に経験して感じて存在してる

当たり前だが不思議な感じもした

生きてるんだ

本当の所、何故だかも分からない

でも存在してるんだ、それは奇跡

歩きながらそう感じていた。

明日、清香の家に行こう

冬馬君は、そう決めた

胸の鼓動は高鳴っている

その日は、いつも以上に蝉の鳴き声が胸に響いていた



木々の間に差し込む光がやけに美しい、夏の素敵な一時
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