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『出会い』
しおりを挟むガタッ ゴトッ ガタッ ゴトッ
車は四人を乗せ、黒楽町の奥にどんどん進んでいる
「もう今更、引き返せないウキ」ペレーは涙ぐんでいた。
「こうなったら俺達も、元の世界に帰り、多村やペレーも無事に帰る方法を探し出すしかない」光堂が言う。
「出来れば良いがな」多村は不可能に近い、その発言に少し希望を持つようにした。
「きっと僕らなら出来るよ」マサも光堂の意見に賛成だった
「頼むからそうしてくれウキっ」
周りの景色には、あり得ない光景が広がっている
ほとんどの人間が倒れこんだり、壁によりかかり座っている、立っている人間はほとんどいない、死んでるのか?廃人?
目は何処かにいっている
一体彼らはどうしてしまったんだ?
生きる気力すらないのか?
まるで、生きてるのに、死人の様だ。
その時だった
車の前に両手をあげた、一人の女が立ちはだかる
「どうするウキ?」
「こっちには銃がある それに見る感じ、危険は感じないが」光堂は警戒しつつ、ペレーに車を止める様に言った。
ペレーは、言われた通り車を止め、会話する為、窓をほんの少し開けた。
光堂は女に向かって喋りかける
「何だ?」
「あんたらこの町の人間じゃないね、そのままじゃ誰かに見つかって殺されるのがおちよ、私を車に乗せてくれない、そしたら色々私もあなた達を助けるわ、まずは車乗せてくれない?」
みんなは顔を見合わせた
「確かにこのまま走っていても仕方ない、話だけでも聞くか?」多村は言った。
「信用出来るウキか?乗せた瞬間、何かされるかもウキ」
光堂は女に武器を持ってないか証明してくれと言った。
女は恥ずかしがりもせず、服を全てめくり、脱ぎ、武器のない事を示した「これでいい?」
四人は予想外の行動に少し顔を赤くして、照れたが信頼する事にした。
光堂がドアを開ける
「ありがとう感謝するわ 私はミサ」
「ここに入って半年になるわ」
「ここの住人じゃないウキか?どうしてここに?」
「私の妹が誘拐されたの、そして調べる内に、ここにいる事が分かった、助ける為に来たの」
「馬鹿な自殺行為だ 」多村は言った
「知ってるわ なら、あなた達は何故?」
多村は自分も同じ様な理由なのを思い出し、恥ずかしくなる。
「人の事言えないウキよ、多村」
「確かにな」光堂とマサは笑う
ミサは、みんなのやりとりを見て同じ様な理由から来たのだと知り 信頼出来そうな人達と思ったのか、少し安心した様な表情だった。
「半年いて色々、この町の事、分かったの。私の見つけた場所に来る?ここより安全よ」
「分かった」
みんなは自己紹介して、それぞれの名前と、ここまでの経緯をミサに話した。
「にわかに信じられない話だけど、ここまで来てるならどうやら本当らしいわね、それか本当に頭がいかれてるかどっちかね」ミサがほくそ笑む。
「こっちの世界の俺を見なかったか?」光堂はミサに聞いた
直後の、この光堂の問いと真剣な表情を見て、からかって嘘をついてる訳ではないとミサは確信した。
「ごめんなさい、見てないわ」
現在、車でミサの言う場所に案内してもらって、一同はその場所に向かっている。
着いた場所は、先程の所から車で30分程の場所で、確かに人は誰もいない様な、木々生い茂る林の中だった。
「車ここに停めて」
そのスペースは木の間で外からは見つかりにくい場所だった。車の上にミサが折れた木などをかぶせ、車は見事に隠された。
「わぉー、まったく車があるように見えないウキね」
しかし、林の中で人はいないのは良かったが、辺りには身を隠したり休める様な建物などは何もない。
「こっちよ」
すると車を停めたすぐ横の下に、地下に降りる階段があったのだ。
「こっち降りてきて」
下に降りるとそこは、地下のほら穴で、中はきちんとした綺麗な部屋になっている。
「何だこれは?」一同は驚く
「凄いでしょ」
「一体どうして、こんな場所が?」
「実はここに来る前、私はここの元住人にコンタクトをとるのに成功したの」
「そして大金を払う代わりに、安全に居れる場所を提供してもらったってわけ」
「凄い」四人はまだ驚いていた。
「あなた達は黒楽町という町を知らなすぎるわ、世間で言われてるだけの町ではないのは事実よ、謎だらけの町なの」
「えっ、どういう事だ?」多村がたずねる
「大体あなた達のイメージは貧困層の集まる町 、無法地帯 、危険地帯そんな所でしょ?」
「確かにそうだ」
「おかしいと思わない、そんな町にこんな地下の部屋があったり」
「私も全ては知らない、ただ半年ここにいて分かったのは、ここは奇妙な事だらけなの 世間一般のそれだけではないのは確かよ」
「私の知った事はまた、準に話すわ、まずはご飯にしましょう」
「えっ、何か食べれるウキか?」
ここに来てから、何も口にしていない四人のお腹は限界に近かった。
「もちろん」
そして、四人は安心の為か床に座りこんでしまう。
「まずは良かった」
ミサはそんな四人を見て笑っていた。
「ここでは安心して、くつろいで大丈夫よ」
しばらくして沢山の食料が出てくる、肉に野菜にフルーツ
「これだけの食料を一体どこから?」
光堂が驚き言った。
「あなた達が、さっき車で走ってた場所。あそこに居た人達はほとんどが薬物中毒者か、気力を失った人達が住んでる場所なの 信じられないでしょうけど、その奥にスーパーまであって、そこで手に入れるの」
「えっスーパー?」マサも意外な単語に驚く
「一体何なんだウキ この場所は?」
「これからあなた達も黒楽町という町を知って行く事になるわ」
「まずはここで生き延びる術を覚え」
ドスン ドスン
「もう始まったわ」
「なっ、なんなんだこの音は?」
「いい、この音がなるのは大体暗くなってから、この音がなったら絶対に表には出ないで、この林は奴らの巣なの 」
「奴らの巣?」
「キリンに似た化け物よ」
その言葉で四人は来る時に出会った、化け物を思い出しては身震いした。
「分かったウキ 絶対出ないウキ」
「表にでない限り安全よ」
四人は食事をすませ、床に布団を敷き、眠る事にした。
「話は疲れてるだろうし明日にしましょう、私はあっちの部屋にいるから何かあったら声をかけて」
「分かった 食事ありがとう おやすみ」四人はミサにお礼を言った。
「まさか布団で眠れるとは思いもしなかった」と、喜ぶ多村
「確かに最高だ」マサも少し安心したよう
ペレーはもう布団を頭からかぶっている
その三人の姿を見て光堂は何だか、ホッとした。
しかし、一体何なんだろうこの場所は?
まだ全く何も分からない暗闇の中にいるような感じもする
とにかく、みんなを無事に帰したいという光堂の思いは強かった。
外ではまだ、あの足音が鳴り響いている
ズドン ズドン
どうやら一晩中この音は鳴り響いてそうだ。疲れていたのでみんなすぐに布団の上で横になった。
予想以上に身体は疲れていたよう、安心感からか、疲れが急に、どっと出てくる。
「みんなどう思う?」多村が突然口にする。
「この町の事か?ミサのことか?全く謎だらけだ、まだ何が何だか分からない、とりあえず明日考える事にしたよ」光堂が答える
「うん確かに、悪い人じゃなさそう、後、この町は何か、僕らが思ってた以上の事がありそうな気がする」マサの意見だった。
気がつくとペレーはもう寝ている、寝言で「ミサは良い人ウキーー」
「まったく、食べ物もらえりゃ、いつもこいつはこうなんだから」多村が笑い、皆つられて笑った。
「確かに今は何も分からないな」
多村も想像してた場所だけというわけではない、この黒楽町という場所に少し困惑している様子だ。
「じゃあ、一旦今は、ミサを信頼することで大丈夫か?」
多村はつづけざまに質問した。
「それもまだ、はっきりとは分からない」
落ちつかない夜であった。
まあ、今日は寝て明日に備えよう
全く何も分からない
何を信用していいのかも
ただ分かっているのは
この四人の絆は確かな事
黒楽町、まだ全てが謎に包まれている場所
行く手には何が、待ち受けているのか?
四人は自分達の身にこれから何が起こるか、まだ想像もつかなかった。
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