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〜 序幕 〜
しおりを挟む辺りに響き渡ったのは死んだと思われた北條の声
「こっ、この声は北條さん」タケルが驚いた次の瞬間、バラバラになった肉片から光が溢れ出す。
次の瞬間、北條の身体は全て元通りになり、光の中から再生した北條が現れたのだ。
「ラルフォート君、我肉体にあらず、いくら肉体を攻撃しても私で無いことが分からないかな?」
「うギャッうギャッを、うギャッ超うぜぇ~~こーゆうのぉ」ラルフォートが自身の顔を手でかざした瞬間、先程までの笑顔の顔が描かれた化粧は変化し、怒りの表情に一変していた。
「あーじゃかしい、めんどくせぇ、これくらい宇宙エネルギー使いこなす奴はぁ」
「分かった分かりましたよ、じゃあこうしましょう」
ラルフォートの手が真っ黒になり、その周りの空間も真っ黒になる。
「なんだよ、あれ、あいつの手の周りの空間だけが切り取られてるみたい、あの周りだけ背景すら無くなって真っ黒で何にも無いみたいだ」タケルが驚きながら言った。
ラルフォートの手の周り、そこにある筈の風景の景色すら、切り取られ、なくなり、真っ黒になっていた。
それはまるで完成したパズルのピースが一欠片なくなってしまっている様だった、そこに本来ある筈の絵そのものが無いのだ。
「あれはまずい。タケルお前の言った通り、あいつは、あいつの手の周りの次元を全て無にしてしまっている、本来魂そのものは絶対に傷つけられるものでは無かった、それはこの宇宙次元の決まりだった。だがあいつが主と呼ぶそいつが、この霊の次元のルールまで書き換えちまったんだ」
「主?」
「ルールを書き換える?そんなっ、そんな事が出来るなんて、おかしい話っすよ、なんでもありじゃないっすか」
「ああ、不可能が可能になってしまった…現状もっと恐ろしい事態になってしまっているんだ」
「えっ?」
「今はそれより北條さんを援護する、タケル下がっていろ」
「分かったよ光堂さん、確かに今の俺にはなんにも出来ない、だけど一言聞かせてくれ、なんとか、なんとかなるんすよね···?」
気づいたらタケルは光堂の背中に向かって叫んでいた。
「なんとかなる?」光堂の背筋がビッと伸びる
「ならなくても、なんとかするんだ」
その時、神井は動けずにいた。
恐れたのだ、恐れていたのだ、あまりに次元の違いすぎる力に。
なんだ、あのラルフォートの発する霊力は、恐怖?俺が怖くて動けないだと?バカな·····
[北條うううううううううううっ、これで貴様の魂を八つ裂きに出来るぞ、消滅しな」
凄い霊圧、ラルフォート、これほどとは、光堂は思った。
もしあの手に触れたらどうなるんだ?消滅、その後は?永遠の闇に突き落とされ、永遠に抜けられなくなるのか?分からない、どうなるか。
どうなる?
今はそんな事どうでもいい。
光堂は恐怖と言う名の前に一歩も怯まず足を踏み出し進んで行った。
その後ろ姿をタケルと神井はしっかりと見ていた。
タケルは思う、どんだけの修羅場をくぐればあんな化け物に立ち向かって行けるんだよ……
俺はあまりの恐怖に一刻も速くこの場から逃げたいのに。
タケルの脚はぶるぶると震えていた。
ラルフォートの高まる霊圧の前に北條は微動だにせず、立っている。
そしてなんと笑ったのだ。
「北條さん、駄目だ、奴の手に触れてはいけない、闇の主はこの世のルールすら書き換えたんだ、あれに触れたら魂すらどうなるか分からない」
光堂が助けようと動いた瞬間、声を発したのは北條
「光堂君来なくていい」
「え?」
「死ねえええええええええっ」
「駄目だ、避けろ北條さん」
ザンンンンンンッッ
北條の肉体は真っ二つになった、そして空間は切り裂かれた。
「アッハッハッハ、消滅したぞ北條がああ」
「北條さん」光堂が叫ぶ。
グニョルグニヤョグニョグニュル
なんだこの音は?
空間が曲がった?
なんだ?
「死ねえええええええええっ」
「避けろ北條さん」
「?」
「何だっ?」 「何か変だおかしい」ラルフォートの頭に違和感がよぎる。
「はっはっは、ラルフォート君、分かったかな?」
「貴様あああっ、北條なにをしたああっ」
「パラレルワールドをいじくっただけ」
「なんだとっ?」
「実はさっき君は私を既に消滅させたんだ、だが、その瞬間私は別のパラレルワールドに移行して、消滅させられてない世界、時間軸に飛んだ、つまりやり直し、今の世界ではまだ私を殺せない事がお分かりかな、一生続けるかい?」
タケルは思う、一体何が起こっているんだ?
訳が分からない。
「あああああああああーーーーーっじゃかしい~~~っここまで能力が覚醒してやがるううううっのかああああ~~」
クルッ
激高したラルフォートは一瞬で落ち着き、北條に背中を向けた。
表情は笑顔に戻っていた。
「貴様はやはり邪魔だ、この地球に良くも残ったな、こんな芸当は闇の主の目覚めによって直に出来なくなるがね」ギロリ
「コードー君、君もだ、覚えておけ、闇の主が目覚める。その時、君らは確実に終わる」
「この地球に要らないものは全て追い出しますから」
ラルフォートは不気味に笑った後、そう言い残し消えた。
ラルフォート襲来にてその場に居合わせた人々の心に残ったものそれは、恐怖。
「北條さんっ、北條さんっ、あなたが居れば大丈夫、あなたが居てくれさえすれば」
「あなたから私は離れません」
「北條さん、これからも我々を助けて下さい」「どうか我々の元を去らないでください」それは北條のもとに集まった人々の姿。
北條は困った表情を浮かべた、致し方ない事、あれ程の力を持つ者を前にして動揺、恐れることは…
自分の元にやって来て、修行をしてる者ですら今この意識状態に陥る。
もしラルフォート級の者たちが地球に姿を表したら、多くの地球人は、動揺し、混乱し、この世は恐怖に飲まれるだろう。
自身を頼り、すがる人々を見て、北條はどこか寂しげな表情を浮かべていた。
私にあるものは皆さん自身の内にあるものです、自身の力を信じるのです、人々の反応は北條の伝えてきた姿と全く真逆のものを示していた。
「光堂君、事態は一刻を争います」光堂は北條の言葉を聞き、頷く。
「タケル君、自由意志です、自分で決めなさい。私のもとで霊力を学ぶ修行につくか?今までの生活に戻るか、君が選ぶのです」
「やらせてくれ」タケルの返答だった。
ラルフォート襲来にて思った事、無力なのは嫌だ、誰かに頼り、すがるだけで何もしないままでいるのは嫌だ、そう感じたのだ。
「俺にも教えてくれ」それは神井の言葉だった。
光堂は神井を見つめる。
その表情は自身の無力さに気付き、苦悶にみちていた。
すると北條が「ついて来なさい、君達に教える事が沢山ある」
タケルは思う。
神井、正直こいつは信用ならないが、今はそれよりも自分のこの有耶無耶な状態と気持ちに蹴りをつけたい。
俺は何も出来ない、無力なんかじゃない。
こうして俺と神井の修行が始まる。
そして、これから俺はこの世界の恐ろしい現状を知ることになる
何も知らなかった
暗闇を作り、現実と言う仕切りで、狭め、覆い隠していた叡智という自身の意識のカーテンが徐々に開かれていく
見えず、知覚すら出来なかった、現実世界が遂に自身の目の前に姿を現し始めたのだ。
~ アンブラインドワールド ~
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