アンブラインドワールド

だかずお

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〜 脅威 〜

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なっ、なんなんだよこの異様な雰囲気の野郎はよぉ。
直感的に、タケルは目の前に立つ、この男はヤバイ奴だと感じていた。

自身と変わらないくらいの年のこの男が何故こんなにヤバそうな感じがするんだ?ヤバさ?
それは不良と呼ばれる彼らから感じる危険さや危うさ?とは全く違った物だった。

違う、そう言う類のヤバさじゃない、全く異質な感じ、今まで会った人間から、見たことも、感じた事もない何かとてつもなく嫌な感じのするヤバさ。
関わらない方がいい…

俺は常識や、目に見えるものこそ全てだった人間、だけどそんな俺が思ってしまったんだ、こいつが自分と同じ人間だなんて全く信じられない、こいつは何か別の生命体に違いないと。

「光堂さんこいつ人間じゃないんでしょ?だからこんな」

光堂の顔は、相手から一瞬足りとも目が離せない、そんな真剣な表情をしていた。

「いや、こいつは人間だ」
光堂の目には大きな真っ黒い手が見えていた、半透明の黒く、大きな手は、自分とタケルの頭の上、二人の全身を覆うようにかざされている。
その手はまるでこう物語っている様だった「貴様らなどすぐに殺せる」と。

光堂はこんな事を思う、こいつ予想以上の霊力を持っている、しかも全く正体が分からない。
やれやれ、厄介な野郎だ。俺が何とかするしかない。

「北條、俺と戦え、じゃなきゃコイツラを殺す」

「?」

北條は優しく微笑んでいた。

「なにか可笑しいか?」
男は北條を挑発する様に、自身も相手の態度を真似、作り笑いで見つめる、が、それはとてつもなく冷酷で冷ややかな視線であった。

「いきなり来て、殺すなど物騒じゃあないですか?君も少しここに居て、私達の話でも一緒に聞くと良い」

「話だと?ふざけてるのか」
男はそう言ったまま突然動かなくなる。
何故なら自身の頭上にとてつもなく光輝いた大きな手が見えたからだ。
自身が先程、光堂とタケルの頭上に出していた手の10倍の大きさはある。

「すげえ」光堂は驚いていた。

「何がなんすか?」タケルの目には、二人の出現させた手は全く見えていなかった。

「くっくっく笑わせる、これ程の力とは。すぐに貴様を超えてやるからな」

ニコッ、ニコニコニコッ 
北條は笑いながら男に言った。
「名前は?」

「名前だと?ふざけるな」

「私なら、君を鍛え、更なる力を手にする事を手助けする事が出来るのに良いのかな?」

「北條さん」光堂が叫ぶ
「こいつは危険です、そんな事したら」

ニコッ「大丈夫。名前は?」

圧倒的な力の差の前に、素直に提案に乗るつもりになったのか、しばらく黙った後
「神井吟(かみいぎん)」苛立つ様子で、小声で囁いた。

「三人共私についてきなさい」

なんちゅー展開だ、こんな危なそうな奴も一緒にか?タケルは思う。
あの北條とか言うおっさんもおっさんだ、こんな危険人物を誘い、自分の命を狙ってる奴に力を与えるなんて。
正気かよ?

チラッ
神井吟、身長180くらいだろうか?俺より少し背は高い、肌は色白、無口、なんとなくモテそうなタイプだ。
髪は黒髪、サラサラしたストレートな髪が目下まで伸びている、瞳も髪でおおわれ良く見えないし、たまに見える瞳は細い、きっともう、何百人も人を殺してるに違いない(勝手な推測)とにかく不気味な野郎だ、タケルは思う。

廊下を抜けると、そこには大きな部屋が、なんと、そこには100人くらいの人々が居たのだ。

「私の場で霊力を学ぶ人達です、彼らは皆自身と言う存在の力に目覚めたく、ここに来ています」
タケルは思う、自身と言う存在?に目覚める?なんだか怪しい響きだなと。

「神井君、君は自身の力に目覚めてる。そこで問う、君の力の源泉は何だね?」北條が神井を見つめる。

「………… 黒い闇」

「自身の心に巣食う闇こそ俺の源泉、怒り、憎しみ、憎悪が原動力、それこそが最強なんだ」

「その源泉がいずれ自身を滅ぼすことになるとしてもですか?」

「じじい俺に説教か?」

「いや、自身の意見を述べたまで、君が何を頼るかを否定している訳では無いですし、正しさなどを押し付けるつもりもありません」

「なら貴様は、まさか光とでも言うつもりか?」

北條はほくそ笑む
「光であり、愛が私の源泉、それこそ無限」

「ハッハッハッハッハッハ、笑わせる、そんなものに力は無い」

すると、北條が喋り出す。

「君は力を欲している、何故でしょう?何故なら自分自身こそ本当は力が無いと自覚してるからこそ求めてるのではありませんか?人は自分に無いと思っているものを求めます、力は君にとって、そんなに重要で、必要不可欠なものですか?」

「ハッハッハハッハッハ」神井が笑い出す。

その瞬間場の空気が変わる
すぐさま北條の前に立ったのは光堂
「神井、躊躇なく北條さんを殺すつもりで攻撃を仕掛けるのなら、俺も黙っていない」

二人は硬直状態となる

「まあまあ、二人とも喧嘩はやめて話を進めましょう」北條は険悪なムードを何事も無い様にサッと流し、タケルの方を向く。

北條は思う
この者達がここに来た理由、そして、一見関係の無い様な訪問者、大きな時の流れが、点と点を繋ぎ線を描く様に繋がり出す

この青年の持つとてつもなく大きな運命力、これは·······
この時、北條には沢山のものが見えていた、それはまだこの時点では、誰も知る由のないものまで。
北條の瞳はこの時既に、しっかりと視ていたのだ、見えるはずの無い全ての事…
本来知る事を許される事の無いものまで…

「光堂君、私に全てを隠す必要はありません、それに語れないあなたが、語る必要もありません」

光堂はこの言葉に確信する
北條さんは分かっている、、

そう、本来、多少力のあるものなら、その人の本性、過去、未来など、視えてもおかしくはない、だが、本来どんな力を持った能力者にも簡単には見えないはずだ、その筈なのだ、特にタケルの事に関しては……
驚きを隠せない光堂、本当に分かっている…
やはりこの人は……

「光堂君、この子達は私が預かろう」

「達?」 
「待って下さい、俺は神井と言う人間を知らない、こいつは」

「いや、光堂君、良いんです。全ては必然性が繋いでくれている、私は二人を預かります」

北條さん、最初は止めようとした光堂だったが、北條の瞳を見て、彼を信頼し任せる事にした。
これ以上、光堂を納得させる為の言葉は要らなかった。

「さて」

北條がいきなり、もと歩いて来た道を再び歩き戻り出す。

「皆さん、良からぬ者がやって来ました、私の背後に居る様に。大丈夫、私が居ますから」北條はにっこり微笑んだ。

ゴゴゴゴゴゴゴオオオオオオオオー

光堂、神井に戦慄が走る

なんだっ!!!!この霊力の圧は?????
身体が突然重くなる。

ズギャアアアアアンッ

「やっぱりだ、この場所の波長は僕を不快にさせる」

なっなんなんだあいつは???タケルは突如現れたそいつの姿に驚愕する。

それは身長二メートルくらいの道化師の姿をした者

「ピエロだと、笑かすな」神井が口走る。

ヒュオオオオオオーッ

「あいつは、通称デス·ピエロ、名をラルフォート・ナザレ」光堂が言う。

「宇宙連合がリストアップする、宇宙に多大なる影響を与える力を持つ危険人物、つまり連合が危険視するブラックリストの一人、奴がこの地球でした事も大きい、歴史上にある事件の一つ、イエス抹殺を促した元凶も奴、その他、地球に根付こうとする、希望の変革を奴はことごとく踏み潰してきた」

「ほぅ、小僧の割に良く知ってます、感心 感心、ちょっとね、この場所から光が芽生える可能性を見てしまったので踏み潰しに参りました」

するとそのピエロはキョトンとした表情で口を大きくまん丸に開け
ヘヒョ ヘヒョ ヘヒョ ヘヒョ ヘヒョ ヘヒョ ヘヒョ ヘヒョと訳の分からない事を無表情で、誰に対してでも無く、囁き続けたのだ。

それはタケルが今まで生きてきて、この世で目にした最も不気味で異様な光景。

ヘヒョ ヘヒョ ヘヒョ ヘヒョ ヘヒョ ヘヒョ
ヘヒョ ヘヒョ ヘヒョ ヘヒョ ヘヒョ ヘヒョ ヘヒョ ヘヒョ ヘヒョ ヘヒョ ヘヒョ ヘヒョ ヘヒョ ヘヒョ ヘヒョヘヒョヘヒョヘヒョヘヒョヘヒョヘヒョヘヒョヘヒョヘヒョヘヒョヘヒョヘヒョヘヒョヘヒョヘヒョヘヒョヘヒョヘヒョヘヒョヘヒョ

「うす気味悪い、クソピエロが」神井がそう言った直後、ピエロは言った。

「闇こそ全て、光は地に落ち、闇こそが全てを支配する、我が君主に全てを注がん、今の素直な気持ちです、明日は知りませんがね」

神井はどす黒い闇を感じた、この者こそ俺の模範の道ではないか?相手に対する殺意が薄まっていく。

すると、肩を叩いたのは北條だった。
「神井君、君はあそこに行かんで良い、ここに君の友になるもの達が居るから、ここに居なさい、君の本当に欲するものはここにある」

「?」

「ああ、あんたか、人間に希望や光を広めようとしてる愚か者は?駄目だなぁ、人間は糞みたいに奴隷で居続けないといーけないんだーよ、糞に希望を持たせちゃ困~~るよ」

ブチッ その言葉にタケルの何かがキレた。
「テメェ、人間を糞だと、もっぺん言ってみやがれよ」
気づいた時には口は動き、次の瞬間には身体まで動きだし、殴りかかろうとしていた。

バッ それを静止させたのは光堂

北條がピエロに向かい歩きだす
「ラルフォート君、私はね闇も光も平等に愛し受け入れている、闇と光は表裏一体、どちらを否定しても真実には届かないと思ってます」

ピクッ「気安く話かけるな、人間の分際で」

「決定、抹消」ピエロの口が大きく開く

ブゥオン 
不気味な甲高い音がした瞬間、北條とラルフォートを黒い球体が包んでいた。

まずいっ、援護しなければ
「タケル、何処かに隠れていろ」
光堂が叫んだその瞬間だった。

ズゴオオオンッ

それはこの状態で最も起こるべきではない事

「ああ、やっぱお前ら虫唾が走るわ」
光堂に攻撃を仕掛けたのは神井吟であった。

「光堂さん大丈夫か? てめえっ神井」
神井に向かい叫ぶタケル

「貴様も殺してやろうか?わめくばかりのうるさい蝿め」

「貴様じゃねぇ、俺の名前はタケルだ」

対峙する二人



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