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〜 変化の兆し 〜
しおりを挟むズゥオオオンッ
龍神の開けた時空間は開きだす。
タケル達は異空間から出て、ペドラスドラコの惑星に再び戻って来ていた。
「危なかった、あれ以上あそこに居たら、存在が消滅してしまう様な、そんな気がした」リタの額には沢山の汗が滲み出ている。
タケルは再び戻ったペドスドラコに漂う、異様な空気の変化に驚く。
さっきまでとは空気が全然違う、至る所で戦闘が繰り広げられ、霊力が衝突している、こんなにも…こんなにも、空気が重くなるものなのか、これが一つの惑星が戦場になると言う事……
「宇宙中から、この機に時代を変えようと、多くの者がこの惑星に集まって来ている。二人共、気を抜くな」龍神は高く空を見上げた。
現在ラルフォートは、ただぼんやりと目の前を見つめている
それは何処か不気味な光景でもあった。
身長198センチのピエロの格好をした姿の者が、両腕をぶらりと垂れ下げ、口と目を大きく開き、ただ目の前を見つめているからだ
突然ラルフォートの目ん玉はぐるぐると回転し始める。
ああ、そうさ
最初から、この宇宙がどうなろうと私には何の興味も無いのだ
目的も、成し遂げたい事も、何もない
ただの暇つぶし、長ぁい、長あぁぁい 人生の暇つぶし
我が主、闇の主、ああ飽きた、もうどうでも良い、信仰などには興味も持てない質なわたし
「ああ」無機質なヨダレが地面にダラダラと流れ落ちる
ふふふふ、くっくっく
ラルフォートは一人歌い出した
「私の中には二人居るっ、真っ黒男と、光の男」
次の瞬間、ピエロは踊り出す
「ああ、狂気の中で踊り明かそう、私は全てを持つ存在、どっちに転ぼうが興味も無い、私は百たび惨殺されて、残ったものも何も無い、あらよっとっとっと ふにゃららへへへにょ」
次第に瞳の焦点が合い始める。
「さて、これから目の前に広がる現実と言う世界で、何をしようか?」
ラルフォートは考えだす。
すぐにしていた事は、現在のペドスドラコの惑星中に満ちる霊力を探る事だった。
「ううんっ、まだまだこの惑星が、乱れて無いのは勢力図のせいね、ああんっ」口調は突如、女言葉に変わり始める
「そうよ、現在この惑星で大きな勢力図は、宇宙連合とサタンのグループってとこかしら」
ラルフォートは見事だった、何故なら的確に、この星全体の霊力を捉え、見事なまでに、霊力が何処の勢力に属するかまでも、見事に読んでいたからだ。
それは霊力を読むだけでは普通は分からない筈なのだが、今までの経験、知識がそれを可能にさせていた。
大体こんな霊気を放つ者は、誰々のグループだろうと言うくらいの、まさにただの感である。
しかし、それはただの当てずっぽうの感ではない、ラルフォートの敵に関する知識がそれを只の当てずっぽうから、確信へと引き上げる。
「ああんっ、僕、あっ、私は、もっとイキたいのよ、もっと乱れて欲しいの、イカセテ、イカセテ、イカセテ」
口から更なる唾液がダラダラと垂れ流れる。
「おにょにょにょにょ、私の口は大河、ヨダレはそこに流れる大きな川という水の流れの滴、アッはっハッハッハ」
実はこの時、近くでラルフォートの存在に気付き、この機に名を上げる為に討ち取ろうとしている者が数名居た、だがこの異様な光景に身がすくみ動けないでいたのだ。
あの生き物はなんなんだ……
全く隙が見つからない
「そう、私は、もっと欲しい、刺激が、ああ、そう、そう、それだ、この星には必要なのよ、更なる混沌が」
ギロリ
「そう、そう、ほらほらほら」
目が大きく見開く
「来たああああああああああああああああああああああああああああああつっ」
ラルフォートはニンマリと笑い出した。
そう、この宇宙が大きく変化すると言う偉大な機に、奴らが動かないとは思って居なかった、きっと状況を読んでいたんだろう、良い、良い、面白くなってきた、連合、どうするの?
ここに居る連合の隊長の数が圧倒的に少なすぎるんじゃないの、あなた達の時代は本当に終わってしまうかも知れないね、宇宙がひっくり返る。
あにょ、へにょ、へひっ。
そう、この宇宙で絶対的権力を持つ強者
サタンを除く、他の闇の王達
この者達が動かないとは思って居なかった。
今来たのは、何処の配下の者、この凄まじい霊力を放つ者は?
今この星でやばいであろう一人、恐らくサタンの幹部であろう…
この霊力はエバーフーミー
それと今来たこいつ ニタアアアッ
ラルフォートは突如しゃがみ、何かを躱した。
「おやおや、さすがにあれじゃ死なないと思っていたけど」
ラルフォートの視線の先に立つ者、それはダークナイトだった。
「キチガイ野郎め、さすがにかなりのダメージを負った、あの忌々しい龍神めが、だがラルフォート、今目の前に居る貴様を先に殺してやるとしよう」
「くっくっく、面白い」
先程この星に降り立ったもの、それは一つの円盤
その円盤は真っ赤な円盤であった。
中から、真っ黒いマントを身に着けた一人の存在が降りて来る。
「やれやれ、サタンにも困ったものだ。一人突っ走り、闇の主と対峙するとは、我が王を差し置いて、この宇宙の王にでもなったつもりか」
真っ白い透き通る様な肌、瞳は真っ赤に充血していて、唇は青色、耳は尖っている、黒い髪の毛は足の膝下より長く、パーマがかっている、性別は女であろうと思われた。
「我が絶対的なる主は伯爵、あのお方以外には考えられない」
そいつは闇の王の一人、ドラキュラ伯爵の部下の一人
ペザンス・フレーシル
現在、ドラキュラ伯爵には最も信頼する部下が五人居る、数多く存在する部下の者で選ばれた、たった五人の存在
その内の一人がペドスドラコに姿を現したのだ。
たった一人の部下も連れずに…
そこにあるのは絶対的な自身への信頼。
自身一人で事は足りる、連合も、龍神も、サタンの配下も、何一つ問題無い。
フレーシルは何の命令も受けては居なかった、己の判断で一人ここに来た。
選ばれた五人の部下だけには、自由意志が許されていた。
それ程、伯爵は彼等を信頼し、可愛がっていたのだ。
「わたくしめの目的は、やはりあれ」
ああ、楽しみ過ぎる、はやくっ、はやく!!
その頃、光堂の身体の体温は異常な程の上昇をみせていた。
「さあ、お前の細胞に入り込んだ俺がこのまま身体ごと木っ端微塵にしてやるよ、どうする?土下座でもすれば、助ける事を考えてやっても良いが」
光堂は被っている帽子を深々と押し込む。
「お前、俺がそんな事すら予想しないで闘っていたと?」
「なに?」
「お前と闘った初戦、お前は自身の身体の肉片を僅かに残し再生した。この驚異な再生能力こそが厄介だったんだ」
「何が言いたい?」
「だから俺はこの闘い、最初から全て注意を払っていたのは、お前の分裂すると言う行動、例え0.1ミリ以下に分けても気付けるように警戒していた、お前の能力を知る者なら当たり前の闘い方だ」
「はったりを、ならば俺がこの闘いの前に既に身体を他に分けて来たと言ったらどうする」
「それは無理だな、お前の能力の限界距離は自身の本体意識の50メートル以内、前回の闘いの時、既に感知タイプの仲間に調べてもらっていた。今、50メートル以内にお前の小さな細胞も、俺の霊力探知に引っかかっていない」
「クックックだが、それがどうしたと言うのだ、それなら今すぐこの体内に入った俺の肉片がお前を粉々にすれば良いだけの話だ」
「だから……そいつを俺が却下する」
クラーケンはピクリとも自身の身体を動かせなくなる
「なんだと?」
「俺の対策は、既にお前の全肉体に浄化の能力をかけていた事だ」
「なんだとおっ」
「その技は弱い霊力の者にしか有効ではないが、お前相手にはそれが良かった、何故なら分裂したお前は確かに厄介だが、分裂した霊力は微弱だからだ」
「くそおおっ 光堂っっ」
「悪いな、来世で光による魂浄化の道に流れる事になるが、許せ」
「くそおおおおっ」
ジュワンッ
光に包まれたクラーケンの霊力は消滅した
魂は次の人生に向かって歩み出す
そう、今まではこれが普通だった、常識だったはずだった……
魂は輪廻転生の道に進む筈だった。
クラーケンの魂は突如、何も無い空間から浮かびあがった真っ黒い手によって掴まれたのだ。
「これはっ」叫ぶ光堂
その真っ黒い手はクラーケンの魂を自身の手に吸収し、消え去って行ってしまう。
「これが闇の主の力か」
そう、クラーケンの輪廻の道は閉ざされた、これからこの魂は闇の主による、永遠に抜け出せない、地獄の管理に置かれる。
この時、光堂の耳にしっかりと聞こえていた。
異様な程怯える、クラーケンの悲鳴にも似た叫び声が………
あれが永遠に続くのか……
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴオオオオーー
この宇宙に住む全ての魂達の身に、あれが……
光堂は宇宙を見渡す
そう、現在
闇の王と呼ばれるルシ・サタンと、闇の主として目覚めた存在は依然交戦中であった。
この戦闘の結果によって宇宙は大きく変化する
~ アンブラインドワールド ~
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