アンブラインドワールド

だかずお

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〜霧〜

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青い空を雲が覆っていた。

ビュルルルルル ビュルルルルル

「なんだこの音?」耳慣れない、けたたましいサイレン音にタケルは辺りを見回す

「ここの星の警察の警報音ウキよ」
光堂は思う
神井が何かしでかしてなければ良いが…

神井の周りに倒れ、うずくまるチンピラ達

「いてぇ~痛えよ」

「殺されなかっただけ有り難く思えカスども」

サイレンを鳴らす、空飛ぶ機体が近付いてくるのを察知し、神井はその場をゆっくりと去った

「あの野郎化物だ、おっ、俺たちもずらかるぞ」

バルベインはいまだに一人の男の子を、影に隠れ、見つめていた

「おいっ、ポッポ」近づいてくる一人の太った中年男

「俺が帰ってくるまでに俺の部屋をちゃんと掃除しておけよ」
突如、殴られ、倒れながらも頷くポッポ

「こないだの様に逃げようなんて考えるなよ、お前は永遠に俺の奴隷なんだからな」
バルベインの拳に力がこもる

男は汚いものでも見るかの様にポッポを見下し、その場を去って行く
怒りに我を忘れていたバルベインはハッとする、何故ならポッポが自身を見つめていたからだ
すぐに後ろを向き、顔を焦って隠す

「お姉ちゃんも食べ物探してるの?これ良かったら食べて良いよ、僕の夕飯なんだけどお腹空いてないから」
バルベインは、ポッポの手に握りしめられた腐りかけのパンを見つめた

バルベインの瞳から一筋の涙がこぼれ落ちるも、見られないようにすぐに隠す
「いっ、要らないよ」

黙り続けようとしたが、バルベインはこんな台詞を咄嗟に吐いた
「いつまでこんな生活続けるつもりだよ」

「いつまで?分からないよ、きっと永遠に…僕は罪深い子だから」

バルベインの頭に浮かぶ、数々の前世の記憶
バルベインは何度もこの少年の魂と関わっていた
いつかは自身の子供、または友、弟としての時代もあった
バルベインはもちろん全ての記憶を覚えている
だがポッポは全てを忘れていた
変えられない、逃げられないカルマが、二人を永遠に縛るかの様に時は流れていたのだ

「罪深い?笑わせんな、あんたに罪なんかあるわけないだろ」

その時だった、ポッポの背中から身長5メートルほどの大きな影が現れる、ポッポはその瞬間気を失った

「出たな貴様」

「またお前か、今の名はバルベインだったかな、こいつの魂は俺のものだ、こいつは罪深い存在、永遠に俺の奴隷として生き続けるんだよ」

「貴様、まだポッポの罪悪感を餌にして憑依してるんだな」

「聞きづてならないねぇ、まるで俺が悪者みたいな言い方じゃないか、こいつは自分自身で罪悪感を感じてるんだからな」

「ポッポから離れろ、じゃなきゃ私がお前を」

「はぁ?笑わせんじゃねえよ、お前みたいな力の無いやつが俺に勝てるわけねぇだろ」
黒い影に色が浮かび上がり、形を成し始める
両手に大きなカマ、顔はカマキリに似ていて、黒くよどんだ黄緑色の怪物

「お前、過去世で俺に殺されたみたいに、また殺されてえのか?お前にはこいつを助けられないんだよ、繰り返される貴様らの罪のカルマだよ」

バルベインが手に霊力を込めた瞬間、その霊力はポッポの身体に吸い込まれ消されてしまった

「あっはっは、このガキは俺を助けてぇみてぇだな、俺を殺させたくないみたいだぜ」

「ポッポいい加減目を覚ませ、いつまで罪悪感を握りしめてるつもりだ、あんたは……」

ズガアアアアンッ 

カマキリの怪物の攻撃が容赦なくバルベインを襲う
血塗れになり、地面に倒れるバルベインは叫んでいた「頼む、ポッポを見逃してくれ、その代わり全て私が背負うから、ポッポを解放してやってくれ」

「笑わせるなよ、こいつほど使いやすい肉体は無いぜ、まだまだ使わせて貰うぜ、飽きるまでなぁハッハッハ」

逃げられない、ポッポが握り、放さない、転生のカルマ
バルベインは悔しさの涙と、悲しみの血痕を流していた

「今日は殺さないでやるよ、ハッハッハ、次来たら殺すからな」
ポッポ、ポッポ、逃げて、赦して、あなたは…………

その頃

「すげー、なんだよあれは~」見たことのない街の景色と、見慣れた人種達の混じわう光景になんだか興奮しているタケル

「すげ~よな~UFOが街を飛び交ってるし、アジア人みたいな姿の人、白人も黒人もいる、ここは地球と変わらねぇんだ」

「なんだ、あれうまそ~」今度は行列を見つけ叫ぶタケル

「あれはタンパク質を多く含んだ、ペヒルって生き物の肉ウキよ、地球では牛肉に近いけど、味のレベルは比較にならないくらい旨いウキよ」

「そりゃ食ってみたいな」

それを聞いた、観光案内人が「じゃ少し並ぶけど買ってきますよ」

「おっ、ありがとう」

その瞬間光堂の表情が変わる
直後にマナも異変を察知した

「光堂」

「ああ、何か異様な霊気を一瞬探知した」

光堂が立ち上がる
「何かが始まりそうだ」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴォォ~

食べ物に興味津々のタケルとペレーはその異変に全く気付いていない。

「タケル、ペレー、マナ、三人は観光を楽しんでてくれ、すぐに戻る」

「待って光堂、私も行くわ」

「えっ、光堂さん達何処に行くんだ?」
二人は既に飛び出していた

「さては、待ちくたびれて他の店に行ったウキね」

「なんだよ。せっかちな二人だな(阿保な二人だった)」

その頃、精霊の星では

「太一さん、随分長く道来さん、ぺぺ様と話してますけど、なんの話ですかね?」ジョーが言った

「大体察しはついてるけどよ」

女王の間
「その質問には答えられなさそうですね、大きなモヤがかかって情報がシャットアウトされています。それに今は知る時期では無いと言うメッセージが響きます

「そうですか」

「すみません道来」

「いえ」

「だけど、この情報ならあなたに伝えられます」

「彼に会ってみては如何でしょう」

「彼?」

その名を一斎と申します

驚く道来
「彼はこの時代に転生し生きているのですか?」

「はい。全ての記憶もございます、彼も強かったでしょう、真堂丸と同じ様に」
道来は興奮に脚が震えた

「何処に居るのです?」

ぺぺは微笑んだ
「彼の愛する地、日本と言う国で誰とも関わらず一人生活してるみたいです、きっと一斎として生まれ生きた時の故郷」
道来は直ぐ様立ち上がる

「少し待って下さい、まだ向かうのは時期尚早」

「必ず向かわなければならない時が来ます、その時までお待ちなさい」

「ですが、私は彼に会いたい、いや会わなければならないのです」道来が声をあげる

「大丈夫、必ず会えます、そしてそこで問いなさい」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴーーーオオオーーッ

「文太と真堂丸のことを」





~ アンブラインドワールド ~


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