アンブラインドワールド

だかずお

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〜 タケルvsトロール 〜

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「なんだ!あの猿」タケルが叫ぶ

「とっとっと、トロールウキーッ、ジョー逃げるウキよ」

「馬鹿野郎ペレー、小人達を遺跡に連れて行くのが俺たちの任務だろ」

「隊長には失敗したって言っとくウキよ」

全く、それでよくあの光堂さんや多村さん達と組んでたもんだぜ。
「わかったよ俺がやる、ペレー彼等を連れて行け」

タケル、神井の前に立ったジョーが手に持つ光線銃を構える。

その時だった、背後からジョーの持つ光線銃に手をやり、止めたのは神井
「俺の獲物をとるつもりなら貴様も殺すぞ」ギロリ

なっなんだよ、こいつの殺気は、只者じゃねぇ、それに闇のエネルギーを感じる、まさかこいつも敵?

「やめろ神井、その人は俺たちを助けようとしてくれてんだろ」
止めに入るタケル

「黙れ、俺を助けるだと?舐めた真似するな」

「貴様ら俺を無視して何をごちゃごちゃ言ってやがる、皆殺しだ」
トロールが大きな拳を振りかざす、ジョーの反応は一瞬遅れ、辺りが影で覆われてるのに気付く、まずいっ、しまった。

ズガアアアアンッ
トロールの拳が三人の頭上から振りかぶされたのだった。

「ジョーーーーッ」叫ぶペレー

ゆっくりと、閉じていた瞳をジョーは開く
「え?俺生きてる」
目の前、トロールの拳を止めていたのは、タケルと神井

「本当に凄えな北條さんは、あんたの修行で、俺こんな怪物の拳まで止められるようになったぜ」

「貴様、笑わせるな、ほとんど俺の力だ」

「なんだと神井」

「はいっ、二人共そこまで、相手に集中しなさい、死にますよ」

「ほぉ、あいつらやるじゃないか」小人達が叫ぶ。

「ふぅ~」ジョーが額の汗を拭う。
なる程、俺の感知は正しかった訳だ、地球人が霊力を操れないと先入観で思ってたから助けてみたが、身体に練り込んでいた霊力はどうやら本物だったようだな。

「喰らえデカブツ」霊力を腕に纏わせタケルがトロールに攻撃をしかける。

「遅えよ」
軽々と攻撃を躱すトロール

なんだっ、こいつこの巨体でなんて速度で動きやがる。
タケルの拳をトロールは、しゃがんで躱し、タケルの腹に頭突きをくらわす。

「ぐはっ」口から血を吐き出すタケル。

「タケル」助けに行こうとする小人達を止めたのは北條だった。

「待って下さい」

「おいっ北條、このままじゃタケル殺されるぞ、あいつじゃトロールに勝てない」パープルが言った。

「そのようで」北條はタケルと神井に背を向け二人を置いて歩き始めた。

「タケル君、君は死ぬわけないと思って油断してますね?」
タケルがふらつきながら立ち上がる。

「私が居るからどこか安心している、本当に危なくなったら助けてくれると」

「私は彼らと先を歩いています、すぐに追いついて来なさい、出来なきゃあなたは死にます、神井君もですよ」

「笑わせるな北條、こいつと俺を一緒にするな」

ヒュオオオオ~~~

タケルは今初めて気付いた、心の何処かで北條さんが助けてくれると、そんなの微塵にも思ってないつもりだった。
そう、それは自分でも気付かないくらい小さな、小さな、心の隙だった、そこにあることすら気付かず、分からなかった、目に見えない透明な怖れと甘え
その気持ちに、はっきりと気付いたのは北條が去った時、自分の膝の震えが止まらないのを見た時だった。

けっ、情けねぇな俺。
震えてる事がじゃねぇ、覚悟を決めたと思っていて結局は決まってなかった俺の精神、北條さんはそんな俺に気付いていたんだ。

「おいっ土下座して俺に助けを乞うか?そしたら助けてやってもいいぞ」神井が笑いながら言った。

ちきしょう、ふざけんな神井「俺がやる」

「なら貴様が死んだら交代にするとしよう」

先を歩く北條達

「良いんですか?北條さん」イエローが心配そうに北條の顔を覗き込む。

「もし、ここで一皮剥けねばタケル君はどっちにしろ遺跡の中で殺され死にます」

「はっはっは笑わせんなよ北條、俺の見たところもう一匹の神井って野郎、あいつはかなり強い、あいつが居るから安心してタケルを置いてきたんだろ」パープルが言う。

「多分、神井君はタケル君を見殺しにします、助けないでしょう」

「なんだとっ、あいつら仲間なんじゃないのかよ?」

「私もそうである事を願ってるんですがね」
北條はそう言い、止まらず歩き続けた。

何ウキか?この人仲間を平気で見捨てて行くウキか?怖い人ウキ。
やっぱり地球人の考えてる事はよく分からないウキ。

北條の後ろを歩くジョーの頭の中には、一つのはてなマークが、なんだこの人?
オーラの色がとてつもなく澄んでいる、それに霊力が全く感知出来なくなった、全く無かっただけか?
ジョーがそう思うのも無理は無かった、この時ジョーの感知してる場所より遥かに大きな北條の霊力が辺り全体を包んでいた。
既に全体の中に居る部分からは、それはあまりにも大きすぎて捉えられなかった。

タケル君、神井君 信じて待っています

「おら おら おらーっ」トロールの拳が容赦なくタケルを襲う、かろうじて躱すタケルであったが、すぐ隣り合わせにある死を意識しないではいられなかった。
ああ、今の拳かわせなきゃ首がもげてたな、ああ、あの角度で足をやられたら片足切断されてた。
焦る反面冷静に見てる自分が居た。

その時、トロールの拳がタケルをとらえた。
「がはっ」
顔中が血塗れになる。視界が暗くなる。
ああ、俺死ぬんだ、なんにも出来なかったな、ちったぁ成長したと思ったのに、もう俺の人生は終わっちまうのか。







死がすぐ目の前まで顔を出し覗き込んでいた。

ガタ、ガタ、ガタッ  ああ どうしよう? 

怖い

タケルの身体全身は震えていた。

それを見て舌打ちする神井、情けない奴め、ビビって立ち向かう事も出来なくなってやがる。
しかし、神井はそう思うと同時に、吐き気にも似た嫌な気持ちを感じる、それはタケルの姿がラルフォート戦の自分の姿と重なったからだ。
気にくわねぇ、怖れ、恐怖して何も出来ない無力な人間、それに己も。

「ぎゃははははははっ、なんだよオメェビビって震えが止まらねぇじゃねぇか、ダセえ ダセェ 本当にだせぇなおい」トロールはそんなタケルの姿を見、馬鹿にする様に興奮していた。

ガタ ガタ ガタッ ブル ブル ブルッ
「は ははは、怖いよ、本気で…怖くて立ち上がれねぇ」

神井はタケルのその言葉に怒りを覚えると同時に奇妙な感情を覚えた、こいつ何故そんな事をいちいち口にする?恥ずべき事だ、そんな事を敵の前で曝け出し。

「ああ、こえぇ、怖くて立ち向かいたくねぇ」

タケルは真っ赤な空を見上げた。

地球には俺の大事な人が沢山いる、大好きな人も沢山居る、もし俺が立ちあがらなきゃ、みんなどうなっちまうんだろう?
本当は俺だって怖い、でも、大好きな人達が苦しむのを見るのはもっと怖いから、俺は立ち上がる事を決めた筈だ。

驚く神井とトロール
「あの傷で立ち上がった、それに霊力が上昇しやがった」

「トロール、もう他者を傷つけるのを止めると約束してくれないか?じゃなきゃ俺、お前を」

「笑わせるなよ地球人のガキの分際で」
タケルの表情と落ち着きの変化に神井は気づく。

シュパアアアアンッ
辺りにまばゆい光が放たれた。

先を歩いていた北條が足を止める
タケル君、やりましたね。それにあの光、彼はソースエネルギーを光の意志で使い始めたみたいですね。
トロールは浄化された様です。

「俺、勝ったのか?トロールが消えちまったぞ」

神井は驚いていた、見た事もないエネルギーを放ちやがった、なんだ今の力は。
こいつ俺とは全く逆の性質のエネルギーを使いやがる。

ビュオンッ
空を斬る音の直後
二人の目の前に、半透明の北條が姿を現す。
「やりましたねタケル君」

「北條さん」

「あいつ消えちまったんだ、どうなってんすか?」

「彼は君の霊力によって浄化されたんです」

「浄化?」

「彼の魂は身体から解き放たれ、更なる成長を求め、別の空間に転生されました」

「?良く、理解は出来てないっすけど、俺は勝ったんすね、相手は無事なんすか?」タケルは目を閉じかけていた。

「浄化の能力は、仮に陰と陽と言う言葉で例えると、陰に傾いたエネルギーに陽の流れを与え、フラットのゼロポイントに戻します、そして、その者の魂に気づきを与え、進化、成長の流れに導きます、つまりトロールの魂は、その魂が最も成長出来る旅に歩み出す事となります」
この事で、現時点タケルには伝えなかった事実があった、そう、それは今迄は、の話だった。
何故なら、今のこの宇宙は闇の主の目覚めの影響により、法則が変化しつつある、浄化された魂は、他の次元に移行出来なくなっている筈、おそらく闇の主の手の内に、魂は捕らえられる事になるでしょう…

「この霊体は私がエネルギーを分散させて今こちらに飛ばしてる分け御霊です、タケル君、すぐに傷を治します、私の霊体に触れなさい」

驚くべき事に北條の分け御霊に触れた途端、タケルの傷は回復し始め、完治したのだ。

「すげぇぜ北條さん」

「肉体の傷は治しましたが、使った霊力はまだ回復してません、このまま、まっすぐ二人で歩いてきなさい、みんなで待ってます」

「はいっ」

その頃

クラーケンは遺跡の中、トロールのエネルギーが消えた事に気付く「何者だ?連合の者か?まあ今は良いとしよう、なぁそうだろう?」

「俺は構わないぜ、クラゲの怪物さんよ」

「すぐに楽にしてやるよ、宇宙連合隊長マッカース殿」

遂に強大な力が遺跡内で衝突す。



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