社会では変人な俺は仙人見習い

tukumo

文字の大きさ
上 下
79 / 86
魑魅魍魎賭博黙示録

運は気紛れ

しおりを挟む
「よっしゃあー!大勝じゃあ!」

 意外や意外、師父と俺の予想は大いに外れてかれこれ3時間ぶっ通しで賽の目は美さんの思い通りに転がる。


「師父、なんか怖いくらい勝ち続けてませんか」


「うむ、、たまに本当に数十年に一度イカサマ無しで強運が奴に味方することがあるがまさかこの時だとは…」

 はあ~そんなこともあるんだなあ大抵の場合調子に乗って素寒貧になるのがオチなのだが本日の美さんにはそんな気すら興らない。


「では師父との賭けは引き分けですねぇ…これじゃあ賭けにもならない」

「そうだな折角だそこの闘鶏でやらんか」

 主にシャモ等の鶏を闘わせる賭博。
 これがリアルポ◯モンバトルか!

「このブラックサンダーとチキン雅の二羽に人気がありますね悩むなあ…」


 けだかいのにチキンて…いや、気高い鶏という意味か。

 ブラックサンダー黒い稲妻て、お菓子の方は最近めっきり減量されるわ高騰してるわで自分ではそんなに買わないなあ…


 どの闘鶏券を買おうか悩んでいるとふと声をかけられた。


「おや?あんたも仙人かえ?」

 声のする方へ振り返ると、ちっこい婆さまがおった。

「ええ、まだ新人ですが…」

「ほーう?しかし流れ出てくる仙氣はそれなりによう練られておる。」

「お褒めいただき誠にありがとうございます」

 あれ?この婆さまよく視てみれば最近仙人界隈で手配書に載っていた酒仙では?


「もしかして…八酒仙のひとり、何仙姑かせんこさん?」


「お!!あたいの事を知っているとは見処あるのう!ふぉッふぉッふぉッ」


 何仙姑(かせんこ) 腰をふり相手を悩殺する女酒仙なんて酔拳で紹介されてたなあ…実在すると知ってはいたけれどまさか手配書を見た挙げ句目の前の婆さまがそうだというなら実在しちゃったねぇ…

「(こんな婆さまに悩殺されるのか?)」


「お?その目はあたいが腰をふり相手を悩殺する女酒仙とは思えんとみとるな?」


「…すみませんどうも腰ふりではない悩殺の仕方をしそうだなって」


 失礼極まりない事を述べてしまったが見抜かれてはしゃあないと開き直ってみる。

 そもそも酒仙とは酒に強い人を差すが、武術に長け仙人になるものもいる。


 八仙、正しくは八酒仙。8人酒仙で酔拳の使いの猛者がいるから八仙なんだと。

 付喪の名を、者と物を橋渡しする者の受け継いだ八仙おれと被るからややこしい。


「気にするな、この姿は云わば休刊日?といったところじゃろうか酒を…もう沢山飲んでも良いならそらもう、べっぴんしゃんな姿で悩殺できるんじゃよ?」


 つまり健康維持?

「あんまし酔拳に頼るとなあ老いが速まるでなあ…」

 そこには女酒仙…ひとりの乙女の悩みを垣間見たようだった。


「八仙、そろそろ決まったか…あ、、」


「ええ、チキン雅に賭けようかなとどうしましたか?」


 師父を見やると背後から衝撃が首に伝わる

「~ッ!いきなり手刀しないでくださいよ!痛いなあ」

「外したか、、あたいも鈍ったねぇ」

 殺意、確実に仕留めようとする黒き濁った眼これは殺る気満々…一応氣を纏っておこう。



「八仙、こいつは手配書に載っている酒仙の何仙姑だ惑わされぬよう氣を抜くなよ」


「ええ、何仙姑(かせんこ) さんだとは知っておりましたよ。しかし師父、この御方は何故に手配書に載っているんです?」


 そう、下級仙人でお尋ね者になるのは珍しい事ではないが酒仙で酔拳使いのこの方がなにをして追われているのか知らない。


「ああそうか、手配書には捕縛と賞金の記載しかされていなかったな…この女は各国各地の酒場に赴いては己の技量でタダ酒かっ喰らい、挙げ句店の高価な酒を掻っ払う常習犯だ!」


「なんと…いくら酒仙(酒に強い)でもそれは立派なアルコール依存性じゃないですか」


 * 呂洞賓(りょどうひん) 酔えば酔うほど内に力がみなぎる酒仙

 * 鉄拐李(てっかいり) その片足におそるべき蹴りをひめた酒仙

 * 漢鍾離(かんしょうり) その腕に酒甕を抱いて身を守る酒仙

 * 藍采和(らんさいわ) 腰を吸収してこれを打ち砕く酒仙

 * 張果老(ちょうかろう) 特に蹴りの連続に秀でた酒仙

 * 曹国舅(そうこっきゅう) 必殺の絞め技を得意とする酒仙

 * 韓湘子(かんしょうし) 吹く笛持て胸に一撃を加える酒仙

 * 何仙姑(かせんこ) 腰をふり相手を悩殺する女酒仙


 八酒仙の皆様闘いでと飲むわけだし一人くらいアル中になってもおかしくはないか…

 一昔前の酒なんて1口飲めば酩酊するくらい度数が高い酒が出回っていたしなぁ。



「まだ新人ではありますがいざ!」

「フフフッ!来い、小童ッ!」

 わあ…いつの間に一升瓶飲み干してるしすんげえ美人だあ。


 秒で悩殺されそう





しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

サバイバル能力に全振りした男の半端仙人道

コアラ太
ファンタジー
年齢(3000歳)特技(逃げ足)趣味(採取)。半仙人やってます。  主人公は都会の生活に疲れて脱サラし、山暮らしを始めた。  こじんまりとした生活の中で、自然に触れていくと、瞑想にハマり始める。  そんなある日、森の中で見知らぬ老人から声をかけられたことがきっかけとなり、その老人に弟子入りすることになった。  修行する中で、仙人の道へ足を踏み入れるが、師匠から仙人にはなれないと言われてしまった。それでも良いやと気楽に修行を続け、正式な仙人にはなれずとも。足掛け程度は認められることになる。    それから何年も何年も何年も過ぎ、いつものように没頭していた瞑想を終えて目開けると、視界に映るのは密林。仕方なく周辺を探索していると、二足歩行の獣に捕まってしまう。言葉の通じないモフモフ達の言語から覚えなければ……。  不死になれなかった半端な仙人が起こす珍道中。  記憶力の無い男が、日記を探して旅をする。     メサメサメサ   メサ      メサ メサ          メサ メサ          メサ   メサメサメサメサメサ  メ サ  メ  サ  サ  メ サ  メ  サ  サ  サ メ  サ  メ   サ  ササ  他サイトにも掲載しています。

社会では変人な俺は邪仙人

tukumo
ファンタジー
仙人それはあらゆる縛りを捨てた存在。  生物に存在する寿命を取り払り、ほぼ年を取る事も無く長い時を生きる存在。  人の俗世に嫌気がさし、人との関わりを断ち、山の頂、秘境へと閉じ籠りし存在。  生物の持つ欲求を捨て去り、生命としてより高みへと昇らんとする存在。  仙術を用いて超常の現象を引き起こす存在‥。 なんて御託並べてみたものの、仙人は半分人間性は残しているし。 道徳は耳にタコができるくらい身に付けないと外道に墜ちちゃうから。 数多の修行を乗り越えて昇仙し、新米ながらも邪仙人となった山村八仙は今日もマイペースに修行に明け暮れていたがとある宴会の前日、師の計らいで守護していた地域の土着神の協力の下、異世界へ精神修行へと飛ばされる。 そんなマイペースな邪仙人の不老長寿で強き精神力を追い求めて現代社会には理解できない彼の変わった異世界転移先の日常とは!? 社会では変人な俺は仙人見習いの続編でございますが此方からお読みいただけても楽しめるように投稿して参ります。

俺だけ2つスキルを持っていたので異端認定されました

七鳳
ファンタジー
いいね&お気に入り登録&感想頂けると励みになります。 世界には生まれた瞬間に 「1人1つのオリジナルスキル」 が与えられる。 それが、この世界の 絶対のルール だった。 そんな中で主人公だけがスキルを2つ持ってしまっていた。 異端認定された主人公は様々な苦難を乗り越えながら、世界に復讐を決意する。 ※1話毎の文字数少なめで、不定期で更新の予定です。

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

【完結】蓬莱の鏡〜若返ったおっさんが異世界転移して狐人に救われてから色々とありまして〜

月城 亜希人
ファンタジー
二〇二一年初夏六月末早朝。 蝉の声で目覚めたカガミ・ユーゴは加齢で衰えた体の痛みに苦しみながら瞼を上げる。待っていたのは虚構のような現実。 呼吸をする度にコポコポとまるで水中にいるかのような泡が生じ、天井へと向かっていく。 泡を追って視線を上げた先には水面らしきものがあった。 ユーゴは逡巡しながらも水面に手を伸ばすのだが――。 おっさん若返り異世界ファンタジーです。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

転生仙境記《てんせいせんきょうき》

曇天
ファンタジー
三池 三咲《みいけ みさき》は死んだあと、 仙人が住むという仙境《せんきょう》に昇天し仙人となり、転生する。 自らが仙人となった意味を探し旅をするうち、仙境に迫る危機に巻き込まれていく。

処理中です...