社会では変人な俺は仙人見習い

tukumo

文字の大きさ
上 下
24 / 86
暗雲

素寒貧の天仙に施しを

しおりを挟む
 闖入者を退場させた午後のおやつ時
 さちえさんに良く通う和菓子屋の新作まんじゅうと渋めのお茶を出して台所で無心で包丁を研いでいた俺は外から鳥たちのけたたましい鳴き声と共に羽ばたく音で無意識に警戒態勢をとった

 (何か解らんが此方に来る)
 勘だが覚った俺は玄関口の方に研ぎ終えた包丁を構える「は‥せ‥はっ‥せ、ん、、、」
 扉の向こうでは聞き慣れた声が弱々しく俺の名を呼ぶこれは‥玄関を開けると師父の悪友で真面目に修行して天仙に登り詰めた美さんの姿が

「どうしたのですか!?そんなやつれて外傷はみたところありませんが取り敢えず人参果入ります?」
 人参果は美容を保つ目的で人間界では時の皇后が血眼になって探した代物

 まあ確かに美容効果あるが3日分の食事や水分量を含んだ超回復できる代物見た目は赤ん坊か苦悶の表情を浮かべた人の顔みたいでグロテスクだが味も美味数千年に一度下界で採集できる貴重なものだが仙界では桃源郷の彼方此方で収穫される特に此処30年の間に大量生産出来るようになったとか

「いや‥酒はないかのう?暫く里帰りしておったのだが説教と路銀を没収されてしまってな此方に戻るまで断酒、素寒貧ときた種銭もなけりゃあ博打は愚か金を錬成する材料も揃えられぬときた‥それに帰ってみたら担当の山の警備と管理を任され、挙げ句の果てには私がハマっているMMOで推しの新作ガチャが出るときたこれは蓄え遣ってでも天井迄回すしかなかろう?」


「‥‥あんたそんなんではまた邪仙に戻りますよ?というか里帰りということは大陸に渡っていたのですか?説教と路銀没収は日頃の行いと汐小姐が来日した時で筒抜けになったのしょうなあ」

 ハアッ‥なんでこの人本気出せば凄いのに堕落しちゃうかなあ嗚呼そうか本気出せば直ぐに成果を出すから堕落しちゃうのか

「取り敢えず八仙、少し酒を‥あ、あと二万円程貸してくれまいか?倍にして返す!」

 そらあ倍どころかそれ以上返せるから美さんこの飲んだくれは信用できるし貸しても良いんだけども‥

「因みに師父の件について‥」

「嗚呼!勿論知っておるぞあやつの追っていた件がまさか弟子のお前が解決するとはなあ!私も八仙の処にフォローにと奴に云われてな馳せ参じたんじゃ!」

「俺をフォローする前に美さんのフォローを押し付けられたような感じなのですが?」

 そう苦い顔するでない~なんてほざくこの博打狂いのアル中仙人どうしようか‥

「では丁度近所の酒屋で上物を安く手に入れたので差し上げますが、できればそのフォローという言葉通り俺の手伝いを引き受けて頂けましたら金も倍にして返さなくて良いので手伝って下さりますか?」

「のった!なんぞ八仙欲がないのう暫く見ぬうちに煩悩を取り払ったのか?成長したのう!」

 やはりこの案のったか‥

「いえいえ煩悩は無くなりませんよ最近個人でやっている薬師グレーゾーンとしての仕事が調合で不足しているものがありまして顧客の依頼が中々遂行できずにおりまして美さんちょっと桃源郷でこのリストに書いたものを調達してきて欲しいのですよ」

 仙界、桃源郷は俺独りでは中々行けないし師父や美さん同行でも審査が必要な為丁度良い

「成る程?それくらい御安い御用じゃしかし先に一杯飲ませてくれんかのう?」

 上目遣いで頼むアル中ええいまどろっこしい!

「‥水筒にいれておきますのでこれは前払いと言うことで」部員が使う大きな水筒に酒を注ぎ依頼のメモを付けて渡す

「クフフッ解っておるではないかうむ確かに受け取ったでは行ってくる!」
 まるで疾風の如く2階から1階へ駆け降りて行く美さんを見送る俺

 (近所迷惑になるから
 隠形の術くらい使って貰いたかったなあ‥)

 隠密行動に優れた仙術隠形おんけい術は力量によるがカメラにさえ写らない足音も気配も消せる声は出しても聞こえにくい会得したら便利過ぎる技なのだが


「八仙さんあの方も仙人様なのですか?」

 いつの間に後ろで少しあきれた顔のさちえさんが俺に問いかける

「あーそうなんですよあんなんですが実は凄いお方なんですがね‥少し残念な部分をお持ちで師父の博打仲間なのも頷けますよ」

「そうですね‥でも面白いお方なのですね今度お会いしたらじっくりお話してみたいです!」

 うおお‥そんなに目を輝かせないで!

「解りました一週間以内には戻ってこれるでしょうから紹介しますよ」

「約束ですよ!」

 とても、とても喜んでいた何よりだ
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

サバイバル能力に全振りした男の半端仙人道

コアラ太
ファンタジー
年齢(3000歳)特技(逃げ足)趣味(採取)。半仙人やってます。  主人公は都会の生活に疲れて脱サラし、山暮らしを始めた。  こじんまりとした生活の中で、自然に触れていくと、瞑想にハマり始める。  そんなある日、森の中で見知らぬ老人から声をかけられたことがきっかけとなり、その老人に弟子入りすることになった。  修行する中で、仙人の道へ足を踏み入れるが、師匠から仙人にはなれないと言われてしまった。それでも良いやと気楽に修行を続け、正式な仙人にはなれずとも。足掛け程度は認められることになる。    それから何年も何年も何年も過ぎ、いつものように没頭していた瞑想を終えて目開けると、視界に映るのは密林。仕方なく周辺を探索していると、二足歩行の獣に捕まってしまう。言葉の通じないモフモフ達の言語から覚えなければ……。  不死になれなかった半端な仙人が起こす珍道中。  記憶力の無い男が、日記を探して旅をする。     メサメサメサ   メサ      メサ メサ          メサ メサ          メサ   メサメサメサメサメサ  メ サ  メ  サ  サ  メ サ  メ  サ  サ  サ メ  サ  メ   サ  ササ  他サイトにも掲載しています。

社会では変人な俺は邪仙人

tukumo
ファンタジー
仙人それはあらゆる縛りを捨てた存在。  生物に存在する寿命を取り払り、ほぼ年を取る事も無く長い時を生きる存在。  人の俗世に嫌気がさし、人との関わりを断ち、山の頂、秘境へと閉じ籠りし存在。  生物の持つ欲求を捨て去り、生命としてより高みへと昇らんとする存在。  仙術を用いて超常の現象を引き起こす存在‥。 なんて御託並べてみたものの、仙人は半分人間性は残しているし。 道徳は耳にタコができるくらい身に付けないと外道に墜ちちゃうから。 数多の修行を乗り越えて昇仙し、新米ながらも邪仙人となった山村八仙は今日もマイペースに修行に明け暮れていたがとある宴会の前日、師の計らいで守護していた地域の土着神の協力の下、異世界へ精神修行へと飛ばされる。 そんなマイペースな邪仙人の不老長寿で強き精神力を追い求めて現代社会には理解できない彼の変わった異世界転移先の日常とは!? 社会では変人な俺は仙人見習いの続編でございますが此方からお読みいただけても楽しめるように投稿して参ります。

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

【完結】蓬莱の鏡〜若返ったおっさんが異世界転移して狐人に救われてから色々とありまして〜

月城 亜希人
ファンタジー
二〇二一年初夏六月末早朝。 蝉の声で目覚めたカガミ・ユーゴは加齢で衰えた体の痛みに苦しみながら瞼を上げる。待っていたのは虚構のような現実。 呼吸をする度にコポコポとまるで水中にいるかのような泡が生じ、天井へと向かっていく。 泡を追って視線を上げた先には水面らしきものがあった。 ユーゴは逡巡しながらも水面に手を伸ばすのだが――。 おっさん若返り異世界ファンタジーです。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

転生仙境記《てんせいせんきょうき》

曇天
ファンタジー
三池 三咲《みいけ みさき》は死んだあと、 仙人が住むという仙境《せんきょう》に昇天し仙人となり、転生する。 自らが仙人となった意味を探し旅をするうち、仙境に迫る危機に巻き込まれていく。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...