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曇り時々愚痴

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「パッとしない天気だなあ」

 空を見上げると暗雲が広がる

「おい私の話を濁すな」

「今の天気だけにってか?」

「…スッ」

「待て待て、その物騒な物を仕舞いましょうか」

 せっかくの休日暇だからと散歩していただけなのに何故見知らぬ女の愚痴を聞かねばならんのかあとその手元に握りしめた仕込み傘…


「あんたどうせ暇なんでしょう?こんな辺鄙なところで私に出くわしたなら私の愚痴を聞く権利はあるわよ」


「はあ、辺鄙なって確かにそうっすねだってここ…」

 辺りは木々で生い茂る古い墓地だもの


「だいたい、最近の人間は何故お墓の前では静かにしようとかできないのかしらやたらきゃめら回したり写真撮るし」


「んー…いや、勝手にこの墓地に入ったことは謝りますが此処を抜けた土地に用があるんすよ」

 既にお気づきだろうが彼女は亡者だ

「ハンッ…この先何もないわよ廃村くらいじゃないつーか私が見えてるしこうやって喋っているということはなに、あんた霊媒師?」


「まあ徐霊はできますが違います只の一般人です。趣味で廃村巡りやってまして」


「ふーん」

 興味ないなら聞かないで?

「そういえば貴女は中々の業物であろう刀を御持ちですね生前は仕事人ですか」

 仕込み傘は暗器の類いであり造るにも相当な腕がある鍛冶職人でないとあんな偽装は難しい


「え、仕事?生前は箱入り娘として悠々自適に暮らしてたわよこれは埋葬品ってところよ」


「…ニートか」


「あ?」


 ひと睨み…おお怖い

「埋葬…あ、土葬されたんですか」

「そうよ?現代だと火葬らしいわね」

「まあそうですね戦後から暫くたって全国火葬一択になりましたがそういや没年は服装から察するに明治後期から大正辺りでしょうか」

「へえ!良く解ったわね!大正5年に死んだのよ…まだまだこんなにピチピチなのにまだ運命の殿方と出会えてないのに結核でぽっくり逝たわよ。」


「死装束ではなく当時の服装で埋葬されたんですかもしや掘り起こしたらまだ残ってたりします?」

 当時の服装と仕込み傘が現存するなら見てみたい歴史博物館だとアクリル板越しだからなあ


「あ、あんた…何目の前の墓主に堂々と墓あらし宣告するのよ罰当たりにも程があるわよ?」


「いや貴女に許可をとった上で…まあ拒否なられたのでこの話は忘れてください。」


 …ていうかもう夕暮れかよ

「でね?私は思うわけよなんでもすまほ?ってからくりに頼りすぎだと、ちょっと前は写ルンです持って馬鹿みたいに人が来たことあったわねぇ」


「ああ…写ルンですは心霊写真撮るのに持ってこいでしたからね(ホラーゲームにもなった影響もあるだろうけども)あの、そろそろ日が落ちかけてきてるんで先に進んでも良いでしょうか」


「なに?私はまだまだ喋り尽くしたいのよ成仏できてないこの可哀想なレディを置いてくつもり?久しぶりに話せる人が来たんですものもう少し付き合って貰うわよ!」


 結局強引な彼女に三日間愚痴やら聞き、散々喋り倒したあと満足顔で天へ召された。


 …死んでも尚、話に華を咲かせていたな
 腹減ったなあ



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