26 / 60
第1章
第26話 綺麗な花火
しおりを挟む
「あ? なんか飛んでるんだけど……」
「あの大きな荷物はそのためのものだったのですね」
俺が【レオネッサ】をボコボコにしている間に、随分と色々あったらしい。
【オリフラム】は肩を大きく切り裂かれているし、【イルグリジオ】に至っては腰に剣がブッ刺さっている状態で空中飛行していた。
ドールは基本的に地上戦用で、単独飛行を行うには相応の貴重なパーツが必要だ。
それをなぜかこんな序盤で装備している【イルグリジオ】を不審に思いながらも、俺はルーシーに声をかける。
「よっ、ナイスファイト」
『グレンさん……』
「ここからは選手交代だな。休んどけ」
言ってから、俺は真っ直ぐに【イルグリジオ】を見据えた。
「どっから取ってきたんだ? そんなパーツ、その辺じゃ手に入らないだろ」
『我が従者、リースによる導きの賜物だ。私は空をも支配する。貴様たちにはもう勝ち目はない。潔く負けを認めるがいい』
「飛んでるだけで随分と大仰な言い方だな……」
「きっと飛んでいるのが心地よいのですわ。まるで羽虫のよう。うふふ」
『貴様ら……! この【イルグリジオ】を虫と言ったか!?』
ナチュラルに煽るセレスにため息をつきながら、俺は操作系を調整する。
とにかく、あの筋肉野郎をボコしたので俺の気は収まった。
「セレス、あとは頼む」
「頼まれましたわ。私も楽しませて頂きます」
これまでは俺が騎体制御を行っていたが、ここからは本来の役割に戻すとしよう。
思考を切り替えると、セレスの強烈な殺意が俺の脳に染み渡る。
そうだ。これでいい。これでこそ俺たちのやり方。手加減なしの本当の戦いを見せてやる。
「さぁ、踊りましょう?」
『帝国の悪女め! ここで正義の鉄槌を下してやろうぞ!』
正義か。たしかに隠しボスと一緒にいる俺は悪かもしれないな。
そんなことを思いつつ、俺はセレスの思考に合わせてレバーを押し込むのだった。
◇ ◇ ◇
『フハハハ! 逃げろ逃げろ!』
「エリィ……立てる?」
「な、なんとか……!」
闘技場にフェルディナンの声が響く中、ルーシーは必死に騎体を立て直そうと必死だった。
右腕はもう使えない。
蹴られた衝撃に脳震とうを起こしているのか、吐き気がする。
だが、今、上空からの銃撃を躱しながら戦うグレンたちの助けに入らなければならない。
【ペルラネラ】は細かく推進器を吹かして巧みに銃撃を避けているが、いずれそれも尽きてしまうだろう。
見ていると、【ペルラネラ】はある方向を目指しているようだった。グレンたちは開幕に投げ捨てた武装を取りに戻っているのだ。
だが、それは上空から俯瞰しているフェルディナンにも明らかだろう。
目的地が割れてしまっている以上、動きを読まれる。
『貴様らの魂胆などわかっている! いつまで避け切れるか見物だな!』
――そうだ。空中で投げ捨てた銃がどこかにあるはず! それを取って、一秒でも、一瞬でもいい……!
フェルディナンの気を反らせればグレンたちは武装を手にできるはず。
「グレンさん! 待っててください! 今、アタシたちが……!」
通信機を介してグレンたちにそう伝えると、予想外の答えが返ってくる。
『手出し無用ですわ』
「け、けど……! このままじゃ……!」
ルーシーが言い終わる直前、【ペルラネラ】の推進器が妙な音を立てて噴射をやめた。推進剤が切れたのだ。
それを機に、【ペルラネラ】は一気に武装の方へと走る。
しかし、それは悪手だとルーシーでもわかった。
『これで仕舞いだな。さらばだ』
武装のある地点に【イルグリジオ】の全力射撃が撃ち込まれる。
目的地に撃ち込まれた砲弾の雨を【ペルラネラ】は避けることができない。
「姐さん! グレンさん!」
もはや騎士の安否など考慮しない、圧倒的なまでの連続射撃に、大爆発が起こった。
それを見た観衆からもざわめきが起こる。
「もう、もうやめて! フェルディナン!」
【イルグリジオ】は両肩の大砲が弾切れを起こすまで射撃を続けていた。
あんな攻撃を食らっては、いくらドールであっても、もはや原形すら残っていないかもしれない。
黒煙の中に凄惨たる【ペルラネラ】の姿を幻視して、ルーシーは思わず顔を背けた。
やがて闘技場に静寂が訪れる。
『皆の者、よく見ておけ! これが決闘というものだ! 騎士同士の戦いというものだ! 遊戯などではない! 自らの弱さを認めず、強者である私に歯向かった者の末路だ!』
闘技場をフェルディナンの声が支配した。
だが、そのとき、かすかな音をルーシーは聞く。
『フハハハハ! フハハ――はは……?』
キィィィィン、という静かな音……それに気づいたフェルディナンが高笑いを止めた。
「え……?」
エリィの声がして、ルーシーも黒煙の奥に凝視する。
そしてそれが晴れた時――。
『だから手出し無用と言ったではありませんか』
――そこには肩の装甲を花弁のように広げたペルラネラの姿があった。
◇ ◇ ◇
『ば、馬鹿なッ!? 【イルグリジオ】の全力だぞ!?』
狼狽したフェルディナンの声が響く中、俺はセレスの冷徹な思考の通りにコンソールを叩いた。
すると、手に取ったアンスウェラーの剣身が腕部の下部に移動し、上部に両手持ち用のグリップが展開される。
「まさかこれを使わされるとはな……。けれどな……!」
「この程度の火力でこの【ペルラネラ】を落とせると思って!?」
肩についた花びらのような装備は【ペルラネラ】と一緒に出土した追加防御装備【ベラディノーテ】という。
それ自体が装甲の役目を務めるが、最大の防御は四層もの魔法障壁だ。
半端な火力では破壊することのできない出力を持つが故にエネルギーを使う分、ここぞというときにしか展開できない。
だが、フェルディナンの言った通りこれで仕舞いだ。
『な、なによその武装ッ!? 武器も変形して……!?』
『う、狼狽えるなリース! あんなもの見せかけに過ぎん!』
「そうかよ!」
事前にチェックした手順通りことを進めると、アンスウェラーの剣身が四つに分かれる。
『アンスウェラー:ワイルドファイアモード』
もう防御はいらない。【ペルラネラ】はベラディノーテを格納し、腰だめにアンスウェラーを構えた。
『アンカー固定。アンスウェラー、主機直結。エネルギー回路全面開放、供給開始。ライフリング機構を始動』
ガチン、と音がして【ペルラネラ】の足首から杭のようなものが突出し、その場に身を固定する。
そして、まるで牙のように分かれたアンスウェラーの剣身が回転を開始した。
【ペルラネラ】のメインジェネレーターが最大まで稼働し、女性の悲鳴にも似た音を立てる。
『発射までファイブセコンド。照準誤差、および照射密度の修正を推奨』
「今やってるよ!」
しかし、フェルディナンも飛行してくれるとは。やってくれる。
その方が都合がいい。
なぜならこの武装は、たぶん闘技場の防御壁をブチ破りかねない。
その点、飛んでいるのならその後ろを気にせずブッ放すことができる。
「あいつら死んだらやべぇかな……」
「ふふっ、殺す気でいらっしゃった方々に対して、何を失礼なことを仰いますの?」
今更ながら俺が言うと、セレスが鼻で笑った。
「それもそうか。じゃああいつらの悪運を祈って……」
ピピッと音がして照準が【イルグリジオ】を捉えた。
出力は最大、だが照射密度をやや甘めにする。
これでやつらは逃げられない。それに、運が良ければ生き残れるだろう。
アンスウェラーの回転が最速となり、その中心が眩い光を放った。
『⚠発射準備完了⚠』
「セレス――ッ!」
俺が叫ぶと、セレスはトリガーに覆いかぶさっていたカバーを指で開く。
「さぁッ! 芥のように――ッ!」
「燃え落ちろォォォ!」
歓喜の感情が俺の脳に伝わると共に、セレスはトリガーを引いた。
途端に強い衝撃と閃光が奔る。
発射の反動で足首と肘から緩衝剤が噴出し、なおも受け止めきれない反動で【ペルラネラ】の足が地面に埋まる。
アンスウェラーから照射された極太の光は【イルグリジオ】に向かって一直線に伸びていった。
【イルグリジオ】は空中で身を捻って回避しようとするが――もう遅い!
『な、なにぃぃぃッ!?』
『助けてパパぁぁーッ!』
二人の悲鳴と共に【イルグリジオ】は光に飲み込まれる。
破壊的な光は【イルグリジオ】の手を、足を、飛行ユニットを消し飛ばした。
残ったものは、胸部の一部と思われるわずかな残骸だけ。
やがて光は細くなって微かな燐光を残し消えていった。
そして、黒焦げになった【イルグリジオ】だったものが地上に落下にする。
その音を最後に、再び静寂が闘技場に訪れた。
見れば、観衆の目は全て空に向けられていた。
そこには空に浮かぶ雲にぽっかりと開いた穴がある。
そんな中、【ペルラネラ】は金属の音を立てて元の形状へと戻ったアンスウェラーを地面に突き立てた。
観客席からは動揺の声が上がる。
『しょ、勝負あり! 勝者、ルクレツィア・バラデュールおよびグレン・ハワード!』
呆気に取られていたのか、ジェスティーヌが慌てて勝敗を宣言した。
【イルグリジオ】の中のリースとフェルディナンの安否を誰もが気にする中、セレスは振り返って笑顔を見せた。
「綺麗な花火でしたわね」
ほんとにな。異国の地で随分と派手な花火を打ち上げてしまったもんだ。
俺は深くため息をつくと、【ペルラネラ】の装甲を開いて、溜まった熱を放出させるのだった。
======================================
お付き合い頂き、ありがとうございます。
面白い、続きが気になると思ってくださった方は
↓のお気に入り登録をポチッと押してください!
感想もお待ちしております!
「あの大きな荷物はそのためのものだったのですね」
俺が【レオネッサ】をボコボコにしている間に、随分と色々あったらしい。
【オリフラム】は肩を大きく切り裂かれているし、【イルグリジオ】に至っては腰に剣がブッ刺さっている状態で空中飛行していた。
ドールは基本的に地上戦用で、単独飛行を行うには相応の貴重なパーツが必要だ。
それをなぜかこんな序盤で装備している【イルグリジオ】を不審に思いながらも、俺はルーシーに声をかける。
「よっ、ナイスファイト」
『グレンさん……』
「ここからは選手交代だな。休んどけ」
言ってから、俺は真っ直ぐに【イルグリジオ】を見据えた。
「どっから取ってきたんだ? そんなパーツ、その辺じゃ手に入らないだろ」
『我が従者、リースによる導きの賜物だ。私は空をも支配する。貴様たちにはもう勝ち目はない。潔く負けを認めるがいい』
「飛んでるだけで随分と大仰な言い方だな……」
「きっと飛んでいるのが心地よいのですわ。まるで羽虫のよう。うふふ」
『貴様ら……! この【イルグリジオ】を虫と言ったか!?』
ナチュラルに煽るセレスにため息をつきながら、俺は操作系を調整する。
とにかく、あの筋肉野郎をボコしたので俺の気は収まった。
「セレス、あとは頼む」
「頼まれましたわ。私も楽しませて頂きます」
これまでは俺が騎体制御を行っていたが、ここからは本来の役割に戻すとしよう。
思考を切り替えると、セレスの強烈な殺意が俺の脳に染み渡る。
そうだ。これでいい。これでこそ俺たちのやり方。手加減なしの本当の戦いを見せてやる。
「さぁ、踊りましょう?」
『帝国の悪女め! ここで正義の鉄槌を下してやろうぞ!』
正義か。たしかに隠しボスと一緒にいる俺は悪かもしれないな。
そんなことを思いつつ、俺はセレスの思考に合わせてレバーを押し込むのだった。
◇ ◇ ◇
『フハハハ! 逃げろ逃げろ!』
「エリィ……立てる?」
「な、なんとか……!」
闘技場にフェルディナンの声が響く中、ルーシーは必死に騎体を立て直そうと必死だった。
右腕はもう使えない。
蹴られた衝撃に脳震とうを起こしているのか、吐き気がする。
だが、今、上空からの銃撃を躱しながら戦うグレンたちの助けに入らなければならない。
【ペルラネラ】は細かく推進器を吹かして巧みに銃撃を避けているが、いずれそれも尽きてしまうだろう。
見ていると、【ペルラネラ】はある方向を目指しているようだった。グレンたちは開幕に投げ捨てた武装を取りに戻っているのだ。
だが、それは上空から俯瞰しているフェルディナンにも明らかだろう。
目的地が割れてしまっている以上、動きを読まれる。
『貴様らの魂胆などわかっている! いつまで避け切れるか見物だな!』
――そうだ。空中で投げ捨てた銃がどこかにあるはず! それを取って、一秒でも、一瞬でもいい……!
フェルディナンの気を反らせればグレンたちは武装を手にできるはず。
「グレンさん! 待っててください! 今、アタシたちが……!」
通信機を介してグレンたちにそう伝えると、予想外の答えが返ってくる。
『手出し無用ですわ』
「け、けど……! このままじゃ……!」
ルーシーが言い終わる直前、【ペルラネラ】の推進器が妙な音を立てて噴射をやめた。推進剤が切れたのだ。
それを機に、【ペルラネラ】は一気に武装の方へと走る。
しかし、それは悪手だとルーシーでもわかった。
『これで仕舞いだな。さらばだ』
武装のある地点に【イルグリジオ】の全力射撃が撃ち込まれる。
目的地に撃ち込まれた砲弾の雨を【ペルラネラ】は避けることができない。
「姐さん! グレンさん!」
もはや騎士の安否など考慮しない、圧倒的なまでの連続射撃に、大爆発が起こった。
それを見た観衆からもざわめきが起こる。
「もう、もうやめて! フェルディナン!」
【イルグリジオ】は両肩の大砲が弾切れを起こすまで射撃を続けていた。
あんな攻撃を食らっては、いくらドールであっても、もはや原形すら残っていないかもしれない。
黒煙の中に凄惨たる【ペルラネラ】の姿を幻視して、ルーシーは思わず顔を背けた。
やがて闘技場に静寂が訪れる。
『皆の者、よく見ておけ! これが決闘というものだ! 騎士同士の戦いというものだ! 遊戯などではない! 自らの弱さを認めず、強者である私に歯向かった者の末路だ!』
闘技場をフェルディナンの声が支配した。
だが、そのとき、かすかな音をルーシーは聞く。
『フハハハハ! フハハ――はは……?』
キィィィィン、という静かな音……それに気づいたフェルディナンが高笑いを止めた。
「え……?」
エリィの声がして、ルーシーも黒煙の奥に凝視する。
そしてそれが晴れた時――。
『だから手出し無用と言ったではありませんか』
――そこには肩の装甲を花弁のように広げたペルラネラの姿があった。
◇ ◇ ◇
『ば、馬鹿なッ!? 【イルグリジオ】の全力だぞ!?』
狼狽したフェルディナンの声が響く中、俺はセレスの冷徹な思考の通りにコンソールを叩いた。
すると、手に取ったアンスウェラーの剣身が腕部の下部に移動し、上部に両手持ち用のグリップが展開される。
「まさかこれを使わされるとはな……。けれどな……!」
「この程度の火力でこの【ペルラネラ】を落とせると思って!?」
肩についた花びらのような装備は【ペルラネラ】と一緒に出土した追加防御装備【ベラディノーテ】という。
それ自体が装甲の役目を務めるが、最大の防御は四層もの魔法障壁だ。
半端な火力では破壊することのできない出力を持つが故にエネルギーを使う分、ここぞというときにしか展開できない。
だが、フェルディナンの言った通りこれで仕舞いだ。
『な、なによその武装ッ!? 武器も変形して……!?』
『う、狼狽えるなリース! あんなもの見せかけに過ぎん!』
「そうかよ!」
事前にチェックした手順通りことを進めると、アンスウェラーの剣身が四つに分かれる。
『アンスウェラー:ワイルドファイアモード』
もう防御はいらない。【ペルラネラ】はベラディノーテを格納し、腰だめにアンスウェラーを構えた。
『アンカー固定。アンスウェラー、主機直結。エネルギー回路全面開放、供給開始。ライフリング機構を始動』
ガチン、と音がして【ペルラネラ】の足首から杭のようなものが突出し、その場に身を固定する。
そして、まるで牙のように分かれたアンスウェラーの剣身が回転を開始した。
【ペルラネラ】のメインジェネレーターが最大まで稼働し、女性の悲鳴にも似た音を立てる。
『発射までファイブセコンド。照準誤差、および照射密度の修正を推奨』
「今やってるよ!」
しかし、フェルディナンも飛行してくれるとは。やってくれる。
その方が都合がいい。
なぜならこの武装は、たぶん闘技場の防御壁をブチ破りかねない。
その点、飛んでいるのならその後ろを気にせずブッ放すことができる。
「あいつら死んだらやべぇかな……」
「ふふっ、殺す気でいらっしゃった方々に対して、何を失礼なことを仰いますの?」
今更ながら俺が言うと、セレスが鼻で笑った。
「それもそうか。じゃああいつらの悪運を祈って……」
ピピッと音がして照準が【イルグリジオ】を捉えた。
出力は最大、だが照射密度をやや甘めにする。
これでやつらは逃げられない。それに、運が良ければ生き残れるだろう。
アンスウェラーの回転が最速となり、その中心が眩い光を放った。
『⚠発射準備完了⚠』
「セレス――ッ!」
俺が叫ぶと、セレスはトリガーに覆いかぶさっていたカバーを指で開く。
「さぁッ! 芥のように――ッ!」
「燃え落ちろォォォ!」
歓喜の感情が俺の脳に伝わると共に、セレスはトリガーを引いた。
途端に強い衝撃と閃光が奔る。
発射の反動で足首と肘から緩衝剤が噴出し、なおも受け止めきれない反動で【ペルラネラ】の足が地面に埋まる。
アンスウェラーから照射された極太の光は【イルグリジオ】に向かって一直線に伸びていった。
【イルグリジオ】は空中で身を捻って回避しようとするが――もう遅い!
『な、なにぃぃぃッ!?』
『助けてパパぁぁーッ!』
二人の悲鳴と共に【イルグリジオ】は光に飲み込まれる。
破壊的な光は【イルグリジオ】の手を、足を、飛行ユニットを消し飛ばした。
残ったものは、胸部の一部と思われるわずかな残骸だけ。
やがて光は細くなって微かな燐光を残し消えていった。
そして、黒焦げになった【イルグリジオ】だったものが地上に落下にする。
その音を最後に、再び静寂が闘技場に訪れた。
見れば、観衆の目は全て空に向けられていた。
そこには空に浮かぶ雲にぽっかりと開いた穴がある。
そんな中、【ペルラネラ】は金属の音を立てて元の形状へと戻ったアンスウェラーを地面に突き立てた。
観客席からは動揺の声が上がる。
『しょ、勝負あり! 勝者、ルクレツィア・バラデュールおよびグレン・ハワード!』
呆気に取られていたのか、ジェスティーヌが慌てて勝敗を宣言した。
【イルグリジオ】の中のリースとフェルディナンの安否を誰もが気にする中、セレスは振り返って笑顔を見せた。
「綺麗な花火でしたわね」
ほんとにな。異国の地で随分と派手な花火を打ち上げてしまったもんだ。
俺は深くため息をつくと、【ペルラネラ】の装甲を開いて、溜まった熱を放出させるのだった。
======================================
お付き合い頂き、ありがとうございます。
面白い、続きが気になると思ってくださった方は
↓のお気に入り登録をポチッと押してください!
感想もお待ちしております!
11
お気に入りに追加
85
あなたにおすすめの小説
日本VS異世界国家! ー政府が、自衛隊が、奮闘する。
スライム小説家
SF
令和5年3月6日、日本国は唐突に異世界へ転移してしまった。
地球の常識がなにもかも通用しない魔法と戦争だらけの異世界で日本国は生き延びていけるのか!?
異世界国家サバイバル、ここに爆誕!
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
最前線攻略に疲れた俺は、新作VRMMOを最弱職業で楽しむことにした
水の入ったペットボトル
SF
これまであらゆるMMOを最前線攻略してきたが、もう俺(大川優磨)はこの遊び方に満足してしまった。いや、もう楽しいとすら思えない。
ゲームは楽しむためにするものだと思い出した俺は、新作VRMMOを最弱職業『テイマー』で始めることに。
βテストでは最弱職業だと言われていたテイマーだが、主人公の活躍によって評価が上がっていく?
そんな周りの評価など関係なしに、今日も主人公は楽しむことに全力を出す。
この作品は「カクヨム」様、「小説家になろう」様にも掲載しています。
大絶滅 2億年後 -原付でエルフの村にやって来た勇者たち-
半道海豚
SF
200万年後の姉妹編です。2億年後への移住は、誰もが思いもよらない結果になってしまいました。推定2億人の移住者は、1年2カ月の間に2億年後へと旅立ちました。移住者2億人は11万6666年という長い期間にばらまかれてしまいます。結果、移住者個々が独自に生き残りを目指さなくてはならなくなります。本稿は、移住最終期に2億年後へと旅だった5人の少年少女の奮闘を描きます。彼らはなんと、2億年後の移動手段に原付を選びます。
辺境伯家次男は転生チートライフを楽しみたい
ベルピー
ファンタジー
☆8月23日単行本販売☆
気づいたら異世界に転生していたミツヤ。ファンタジーの世界は小説でよく読んでいたのでお手のもの。
チートを使って楽しみつくすミツヤあらためクリフ・ボールド。ざまぁあり、ハーレムありの王道異世界冒険記です。
第一章 テンプレの異世界転生
第二章 高等学校入学編 チート&ハーレムの準備はできた!?
第三章 高等学校編 さあチート&ハーレムのはじまりだ!
第四章 魔族襲来!?王国を守れ
第五章 勇者の称号とは~勇者は不幸の塊!?
第六章 聖国へ ~ 聖女をたすけよ ~
第七章 帝国へ~ 史上最恐のダンジョンを攻略せよ~
第八章 クリフ一家と領地改革!?
第九章 魔国へ〜魔族大決戦!?
第十章 自分探しと家族サービス
メトロポリス社へようこそ! ~「役立たずだ」とクビにされたおっさんの就職先は大企業の宇宙船を守る護衛官でした~
アンジェロ岩井
SF
「えっ、クビですか?」
中企業アナハイニム社の事務課に勤める大津修也(おおつしゅうや)は会社の都合によってクビを切られてしまう。
ろくなスキルも身に付けていない修也にとって再転職は絶望的だと思われたが、大企業『メトロポリス』からの使者が現れた。
『メトロポリス』からの使者によれば自身の商品を宇宙の植民星に運ぶ際に宇宙生物に襲われるという事態が幾度も発生しており、そのための護衛役として会社の顧問役である人工頭脳『マリア』が護衛役を務める適任者として選び出したのだという。
宇宙生物との戦いに用いるロトワングというパワードスーツには適性があり、その適性が見出されたのが大津修也だ。
大津にとっては他に就職の選択肢がなかったので『メトロポリス』からの選択肢を受けざるを得なかった。
『メトロポリス』の宇宙船に乗り込み、宇宙生物との戦いに明け暮れる中で、彼は護衛アンドロイドであるシュウジとサヤカと共に過ごし、絆を育んでいくうちに地球上にてアンドロイドが使用人としての扱いしか受けていないことを思い出す。
修也は戦いの中でアンドロイドと人間が対等な関係を築き、共存を行うことができればいいと考えたが、『メトロポリス』では修也とは対照的に人類との共存ではなく支配という名目で動き出そうとしていた。
『世界統合に伴う大型アップデートのお知らせ』
葉月+(まいかぜ)
SF
「ゲームだと思って遊んでいたらリアルな異世界だった(人によってはSAN値チェック案件)」×「現実世界にダンジョンがこんにちは!」な、よくあるはなし。
※ゲームの周年イベントで「サプラーイズ!今日からリアルでもゲームのスキルが使えるしダンジョンからモンスターも湧くよ!たのしんでね!」とぶちかますような運営がいる近未来。ゲームの中にしかいなかった恋人を現実にサモン/召喚できるようになってしまった廃ゲーマーの「日常もの」。
※物語の舞台はナノマシンと外付けデバイスを併用する可逆的な(やめようと思えばやめられる)電脳化が実用化され、それなりに普及もしていて、サスティナブルなウォーが遠隔操作型の戦闘人形で行われているくらいの近未来。母なる惑星から宇宙への脱出など夢のまた夢で、人類は地球の資源を食い尽くしながらこのままゆるやかに滅んでいくのだろうなと、多くの人々が薄々気付いていながら知らない振りをしているような時代。
※主人公はひきこもり廃ゲーマーですが、あっという間に社会復帰します。ゲームで培った廃人ステがリアルに反映されたので。
※カクヨム、ノベルピアでも読めます。
※聖句の引用元は基本的に『Wikisource( https://ja.wikisource.org/w/index.php?title=%E3%83%A1%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%82%B8&oldid=191390 )』です。
その日、世界の壁は打ち砕かれて。
めくるめく幻想が現実のものとなり、鬱屈としたリアルはゲームのルールに塗り潰された。
強制ハーレムな世界で元囚人の彼は今日もマイペースです。
きゅりおす
SF
ハーレム主人公は元囚人?!ハーレム風SFアクション開幕!
突如として男性の殆どが消滅する事件が発生。
そんな人口ピラミッド崩壊な世界で女子生徒が待ち望んでいる中、現れる男子生徒、ハーレムの予感(?)
異色すぎる主人公が周りを巻き込みこの世界を駆ける!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる