異世界転生したら死ぬ直前!? ~お淑やかさゼロのトンデモ聖女に心臓を分け与えられて超絶強化! 常識外れの相棒と最強デュオで成り上がります~

阿澄飛鳥

文字の大きさ
上 下
2 / 28
1章

②うきうき聖女

しおりを挟む
 この街――バウォークの街は城郭都市だ。

 決して小さくはない街全体を三十メートル近い壁が囲んでいる。

 元の世界であればちょっとした観光名所になりそうなほど立派な外壁だが、この世界では一般的な部類でもあった。

 その理由は今、目の前で重い足音を立てて歩く巨人だ。
 

 魔装ティタニス――。
 

 人の十倍ほどの背丈を持つ鉄の巨人が街を警備していた。

 この世界の戦争はあの巨人に騎士が乗り込み、戦場を支配している。

 操縦している騎士自身の魔法を強化し、一騎で数十、数百人分の戦闘力を有する兵器だ。

 
 そんなものが襲ってくるのだからこのレベルの外壁は当然というべきか。

 
 元の世界と比べ、あらゆる文明レベルが劣っているこの世界だが、魔法というものが関わるとその限りではない。
 
 そう感じさせる光景はそこかしこに見られる。
 

『セドリック・ノア・アルバラード。セレスティルーナ・ノヴァ・シュタリアの名において、貴方を七剣星しちけんせいに任命いたします。これからもこの国に忠誠を誓い、民のために力を貸してください』


 鈴を転がすような声に俺は顔を上げた。見れば街の広場の中心に真っ黒な布が掲げられ、そこに円状の映像が映し出されていた。

 鈴音宣布れいいんせんぷ――いうなれば国営のテレビ放送のようなものだ。もちろん常に見られるものではなく、国の重要なお達しがあるときにだけ用意されるものだ。


 映像では白を基調とした衣装に身を包んだ少女が、目の前の騎士に剣を渡すところだった。
 
 
「聖女様は今日もキレイだなー」

「でもお顔は誰も見たことねぇんだろ」

「そりゃ綺麗なお顔に決まってるわよ。賢人ギアード様なんだから。それよりも新しい騎士様のほうがカッコいいわよ」
 
 セレスティルーナ・ノヴァ・シュタリア――神星シュタリア帝国の国母にして、教団から【聖女】の称号を与えられた存在だ。


賢人ギアードという神に近い種族である彼女は、建国以来三百年近い年月にわたり国を導いてきたといわれている。
 
 その顔は常にベールで被われ、城に仕える者でも見たことはないという。
 
 広場に集まった人々が新たな剣星について話す中、俺は自分の隣に座る少女へ声をかけていた。

「実際どうなんだ?」

「んあ?」
 
 外套を目深に被った少女が顔を上げる。出店のタルトを頬張っていた彼女は、ゆっくりとそれを飲み込んでから答えた。

「……中の下くらい?」

「厳しめだな」

「アタシの好みじゃないわね」

 あっけからんと言ったその声は広場にいるほかの者には聞こえなかっただろう。たとえ聞こえたとしても特に気にされることもなかったかもしれない。

 だが俺だけが知っている。その声が先ほど広場に響き渡っていた声と同じであることを。
 
「本物がここにいるって知ったらみんな驚くだろうな……」

「きっと信じないわよ」

 言いながら少女はタルトの包み紙を丸めてゴミ箱に投げ捨てる。それがすっぽりと収まると「ないしゅー!」などと自分で歓声を送っていた。
 
 
 ……たしかにこの素行で私が聖女です、と言われても信じる気になれない。

 
 少女に残念な視線を送りつつ、俺は腰掛から立ち上がる。
 
「そろそろ行くか。

「んふふ。えっへっへ」

「なんだよ」
 
 俺が偽名で呼ぶと、リアナはやや気味の悪い笑いを漏らした。

「他人から呼び捨てにされるのがなんかむず痒くて」

「お前がそうしろって言ったんだろ」

「それが嬉しいって言ってんのよ」

「ぐえっ」
 
 頬をほころばせたリアナが俺を小突く。大きくよろめくと「大げさな」とあきれられた。だが、実際にこいつは力が強いのだ。俺よりも頭二つ分ほど小さく華奢な体格なのだが。

 俺がため息をつくと、リアナが勢いよく立ち上がる。フードがめくれ、輝くような銀髪がこぼれた。

「うきうきしてきたわ」
 
「そうかよ」
 
「ダンジョン攻略はアタシたちが一番乗りよ!」

 お忍びの聖女様は初めてのダンジョンにテンションが上がっていたのだった。
しおりを挟む
作品を気に入って頂けた方、是非ともお気に入り登録で応援お願いいたします!
感想も随時お待ちしております!

ツイッター始めて見ました! こちらよりどうぞ!
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

異世界に落ちたら若返りました。

アマネ
ファンタジー
榊原 チヨ、87歳。 夫との2人暮らし。 何の変化もないけど、ゆっくりとした心安らぐ時間。 そんな普通の幸せが側にあるような生活を送ってきたのにーーー 気がついたら知らない場所!? しかもなんかやたらと若返ってない!? なんで!? そんなおばあちゃんのお話です。 更新は出来れば毎日したいのですが、物語の時間は割とゆっくり進むかもしれません。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する

カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、 23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。 急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。 完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。 そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。 最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。 すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。 どうやら本当にレベルアップしている模様。 「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」 最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。 他サイトにも掲載しています。

処理中です...