夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有

文字の大きさ
上 下
40 / 65

第40話 次の一手

しおりを挟む
 俺は二人の反応をスルーして話を続けることにした。

「司教が到着するまで三日以上必要だ。司教に関する情報は逐次集めるとして、ロリ代官と騎士団を何とかしよう」

「助祭はどうするつもり? 司教の到着を待ってまとめて対処する?」

 司教と助祭は特に悪事を働いているという情報はない。
 むしろ、助祭は奇跡の力で積極的に治療を行い多くの人を助けている。結果、教会からも住民からも好意的に受け入れられていた。

 評判通りの為人ひととなりなら穏便に神聖石を回収したい。

「司教と助祭の情報が不足している。ユリアーナとロッテは孤児院のルートから教会に接触して助祭の情報を集めてくれ」

「司教の情報は?」

「無理に集めようとして怪しまれても困る。助祭に集中しよう」

 俺の提案にユリアーナがわずかな時間思案する。

「そう、ね……。すべてを解決した状態で、司教の到着を待つ方がいいかもしれないわね」

「よし、決まりだ」

 俺とユリアーナのやり取りを聞いていたロッテが不思議そうに聞く。

「どうして司教様と助祭様の情報を?」

「ロリ代官にしろ騎士団にしろ、新しく赴任してきた連中が諸悪の根源だろ? 新しく赴任してくる司教と助祭がそうでないとは言いきれないからな。特に孤児院は教会とのつながりもあるから念のために調べておくだけだ」

「孤児院のことをそこまで気にしてくださったんですね。ありがとうございます」

 感激したロッテが瞳をうるませた。

 胸が痛い。
 小さな嘘かもしれないが、目の前の少女を騙していると思うと良心がとがめる。

 そこへユリアーナが割って入った。

「代官や騎士団と揉めるのはいいとして、ロッテちゃんだって教会とはもめたくないでしょ?」

「いやいやー、御代官様や騎士様とももめたくありませんよー」

「もめるというのは語弊があったわね。大丈夫よ、神罰を下すだけだから」

 屈託のない笑みのユリアーナが、引きつった笑みのロッテの手を取った。

「神罰って……」

「いい、ロッテちゃん。あなたはあたしの使徒なの」

「そうなんですか?」

 ロッテが使徒に昇格したようだ。

「その使徒であるロッテちゃんに不埒ふらちを働こうとしたロリ代官は有罪」

「大丈夫ですから。あたし、大丈夫ですから」

 ロリ代官が有罪なのには俺も賛成だ。

「騎士団に至っては取り調べ紛いの失礼極まりない態度だったわ」

「穏便にー、穏便にー」

 憤慨しているのよ、とでも言いたげな顔つきのユリアーナの前で、いまにも泣き出しそうなロッテが懇願するように言った。

 確かに俺も騎士団の態度には思うところがあるが、ちょっと意地の悪い仕返しをする程度で終わらせるつもりだった。
 女神であるユリアーナと人である俺やロッテとでは、感情面で随分と乖離かいりがあるようだ。

「あたしはこの世界の神よ。気に食わない国は亡ぼすし、気に入らないヤツには報復する権利があるの」

 報復じゃなくて試練を与える、な。

「穏便にー」

 祈りだした。

「大丈夫よ、国を亡ぼすなんてよっぽどのことだから」

 当たり前だ。
 表情をなくして固まったロッテにユリアーナが優しく語りかける。

「穏便に済ませるから大丈夫よ。たっくんの錬金工房に収納しちゃえば誰にも疑われずに失踪者が出来上がるわ」

 予想はしていたが実行犯は俺か。

「失踪者……」

 ロッテがそれだけを口にして祈りをやめた。

「錬金工房の中で解体して森の中に捨てちゃえば証拠も残らないでしょ」

「人間を解体するのはちょっと遠慮させてくれ」

 躊躇を示す俺の傍らでロッテが激しく首を縦に振って同意している。

「意気地なしね。じゃあ、言語関係のスキルを取り上げて放り出しましょう。気がふれたと思われて、すぐに交代要員が送られてくるでしょう」

「御代官様は街にとって必要な方なんです」

 ロッテが止めに入った。
 退場願うつもりだったが方針変更するか。

「交代要員に問題が無ければそれでもいいが、もっと悪くなる危険性もある」

 ロリ代官には腹が立つが、無闇に優秀な人材を排除する必要もない。

「じゃあ、どうするのよ」

「金品なり希少な魔道具を賄賂にして言うことをきかせるのと、弱みを握って言うことをきかせる。この二重の束縛が最善の手立てじゃないか?」

 だが、具体的なプランはない。

「弱みは?」

「これから探す。無ければ作ればいい」

「騎士団は?」

「幸い、以前からいる第三・四部隊はまともだ」

『騎士団長と第一・二部隊にはご退場願おう』、というセリフは口にしなかったが、ユリアーナには伝わったようだ。

「いいわ、たっくんの案を採用しましょう」

 女神の口元に笑みが浮かんだ。
しおりを挟む
新作です
どうぞよろしくお願いいたします。

下記リンクより飛べます
.:*゚..:。:. .:*゚..:。:. .:*゚..:。:. .:*゚..:。:. .:*゚..:。:. .:*゚..:。:. .:*゚..:。:. .:*゚..:。:.
女神から貰えるはずのチート能力をクラスメートに奪われ、原生林みたいなところに飛ばされたけどゲームキャラの能力が使えるので問題ありません
.:*゚..:。:. .:*゚..:。:. .:*゚..:。:. .:*゚..:。:. .:*゚..:。:. .:*゚..:。:. .:*゚..:。:. .:*゚..:。:.
感想 7

あなたにおすすめの小説

俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です ~ガチャ引き楽しくてやめられねぇ~

シンギョウ ガク
ファンタジー
仕事中、寝落ちした明日見碧(あすみ あおい)は、目覚めたら暗い洞窟にいた。 目の前には蛍光ピンクのガチャマシーン(足つき)。 『初心者優遇10連ガチャ開催中』とか『SSRレアスキル確定』の誘惑に負け、金色のコインを投入してしまう。 カプセルを開けると『鑑定』、『ファイア』、『剣術向上』といったスキルが得られ、次々にステータスが向上していく。 ガチャスキルの力に魅了された俺は魔物を倒して『金色コイン』を手に入れて、ガチャ引きまくってたらいつのまにか強くなっていた。 ボスを討伐し、初めてのダンジョンの外に出た俺は、相棒のガチャと途中で助けた異世界人アスターシアとともに、異世界人ヴェルデ・アヴニールとして、生き延びるための自由気ままな異世界の旅がここからはじまった。

異世界に落ちたら若返りました。

アマネ
ファンタジー
榊原 チヨ、87歳。 夫との2人暮らし。 何の変化もないけど、ゆっくりとした心安らぐ時間。 そんな普通の幸せが側にあるような生活を送ってきたのにーーー 気がついたら知らない場所!? しかもなんかやたらと若返ってない!? なんで!? そんなおばあちゃんのお話です。 更新は出来れば毎日したいのですが、物語の時間は割とゆっくり進むかもしれません。

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした

高鉢 健太
ファンタジー
 ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。  ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。  もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。  とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

転生してテイマーになった僕の異世界冒険譚

ノデミチ
ファンタジー
田中六朗、18歳。 原因不明の発熱が続き、ほぼ寝たきりの生活。結果死亡。 気が付けば異世界。10歳の少年に! 女神が現れ話を聞くと、六朗は本来、この異世界ルーセリアに生まれるはずが、間違えて地球に生まれてしまったとの事。莫大な魔力を持ったが為に、地球では使う事が出来ず魔力過多で燃え尽きてしまったらしい。 お詫びの転生ということで、病気にならないチートな身体と莫大な魔力を授かり、「この世界では思う存分人生を楽しんでください」と。 寝たきりだった六朗は、ライトノベルやゲームが大好き。今、自分がその世界にいる! 勇者? 王様? 何になる? ライトノベルで好きだった「魔物使い=モンスターテイマー」をやってみよう! 六朗=ロックと名乗り、チートな身体と莫大な魔力で異世界を自由に生きる! カクヨムでも公開しました。

処理中です...