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第26話 孤児院への道中
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市場で買い込んだのは、塩と穀物などの保存のきく食料、わずかばかりの肉と野菜、そして大量の古着だった。
「本当にこれだけでいいのか? こんな機会はめったにないだろうし、もっと肉を買って行ったらどうだ?」
「ありがとうございます。十分に甘えさせて頂いてます。なかなか手に入らないお肉をたくさん買っていくと後が辛くなりますから」
屈託のない笑みで答えた。
「そうか……」
俺が言葉を詰まらせていると、ロッテが古びた建物を指さした。
「あそこです! あれがあたしのお世話になっている孤児院です」
「教会みたいだな」
途中、女神ユリアーナを崇めているという教会の前を通ったが、建物の造りや規模はまったく違うが、施された意匠がそっくりだ。
「五十年くらい前までは教会として使われていたんですよ」
教会の払い下げか。
「ロッテちゃん、孤児院と教会って何かつながりがあるの?」
「孤児院は教会の下部組織なんですよ――――」
教会が孤児院の運営をしているが、最大の目的は、未来の犯罪者を減らし、やがてもたらされる税収を増やすことだという。
つまり、孤児院で最低限の食事を与えることで、スラムや犯罪組織に子どもが流れるのを防ぐことができる。子どもたちが働けるようになれば国力も上がり税収も増える。
それも経済的に余裕のある領地でなければ無理な話だ。
「――――孤児院のない貧しい領地ではあたしたちのような身寄りのない子どもは生きていけないか、スラム街に流れ込むしかないんです」
「教会の目的がどうであれ、孤児院のお陰で生き延びられているのも事実ですから、女神ユリアーナ様と教会にはどれ程感謝しても感謝し足りません」
「その割にはあっさりと脱走したじゃないか」
「それは、それ。これは、これですよー」
眼が泳いでいるぞ。
「ところで、野菜や穀物の種を随分とたくさん買い込んでいたけど、孤児院に畑でも作るつもりだったの?」
「半分正解だ」
「え? 畑を作ってくれるんですか?」
「半分?」
ロッテが目を輝かせ、ユリアーナが怪訝そうな表情をした。
「錬金工房の中に畑を作ってみたんだ」
「畑を作る、ですって? 収穫までどれくらいかかるのよ……」
「畑まで作れちゃうんですか!」
言葉半ばで顔から表情が消えたユリアーナの隣でロッテが能天気に感心した。
俺は途切れたユリアーナの質問に静かに答える。
「さっき撒いた種、もういつでも収穫できるぞ」
時間を加速して作った腐葉土と土を混ぜ合わせた畑に種を撒き、再び時間を加速させる。
ほんの何分間かのことだ。
錬金工房の中は収穫の時期を迎えていた。
「本当にこれだけでいいのか? こんな機会はめったにないだろうし、もっと肉を買って行ったらどうだ?」
「ありがとうございます。十分に甘えさせて頂いてます。なかなか手に入らないお肉をたくさん買っていくと後が辛くなりますから」
屈託のない笑みで答えた。
「そうか……」
俺が言葉を詰まらせていると、ロッテが古びた建物を指さした。
「あそこです! あれがあたしのお世話になっている孤児院です」
「教会みたいだな」
途中、女神ユリアーナを崇めているという教会の前を通ったが、建物の造りや規模はまったく違うが、施された意匠がそっくりだ。
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「孤児院は教会の下部組織なんですよ――――」
教会が孤児院の運営をしているが、最大の目的は、未来の犯罪者を減らし、やがてもたらされる税収を増やすことだという。
つまり、孤児院で最低限の食事を与えることで、スラムや犯罪組織に子どもが流れるのを防ぐことができる。子どもたちが働けるようになれば国力も上がり税収も増える。
それも経済的に余裕のある領地でなければ無理な話だ。
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「半分正解だ」
「え? 畑を作ってくれるんですか?」
「半分?」
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錬金工房の中は収穫の時期を迎えていた。
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新作です
どうぞよろしくお願いいたします。
下記リンクより飛べます
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女神から貰えるはずのチート能力をクラスメートに奪われ、原生林みたいなところに飛ばされたけどゲームキャラの能力が使えるので問題ありません
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