21 / 65
第21話 世界のことが少し分かった気がする
しおりを挟む
「そんな便利な指輪があと二つある」
ユリアーナに指輪を差しだす。
「あたしは――」
彼女の言葉を遮って言う。
「元々の力を頼らずに訓練次第で強力な属性魔法が使えるようになるかもしれないだろ?」
「意図は分かったわ」
ユリアーナが指輪をはめた。
これで属性魔法のスキルがない俺とリーゼロッテは魔道具の力を借りて属性魔法が使えるようになる。ユリアーナは失われた女神の力に頼らずに、訓練次第で強力な属性魔法が使えるようになるかもしれない。
「でも、よく同じ形のものが三つもあったわね」
「形状を変えた。元の持ち主の関係者が現れて、盗賊に奪われた品だなんて騒がれても嫌だからな」
犯罪組織が盗んだ宝石を加工しなおして足がつかないようにするのと同じだ
「この世界じゃ、盗賊が奪った品の所有権が討伐者に移るのは普通のことよ」
「俺の気分の問題だ」
ユリアーナの『小心者ね』との言葉を聞かなかったことにして話題を変える。
「そんなことよりも、試しみなくていいのか?」
――――結果。
「予想通りだ」
口では平静を装っているが、内心では今にも歓喜の叫び声を上げそうだ。
対してユリアーナは驚愕を隠せずにいる。
リーゼロッテに至っては殻を閉ざしたようにブツブツとなにかつぶやいて自分の世界に入り込んでいた。
「予想通りって……、これを予想していたっていうの?」
錬金工房の主である俺だけが予想できたことなのだろう。
事実、魔道具を使用するまで、ユリアーナでさえ予想していなかったのがその表情と口調から分かる。
指輪に付与した魔法スキルは地・水・火・風の四つの属性魔法のスキル。
属性魔石と違い魔法スキルの付与では、地・水・火・風それぞれの属性で複数の魔法が使用できた。
「この指輪が常識から外れているってことは俺だって想像がつく。だから、指輪とは別にこんな魔道具も作ってみたんだ」
銀製の幅広のブレスレットをリーゼロッテに渡して意見を求めた。
「え? あたしですか?」
「この地域でどう思われるか、意見を聞かせて欲しい」
主に一般的な魔道具として通用するかどうかが知りたい。
手にしたブレスレットの説明を始めた。
幅広のブレスレットには横に四つ、縦に三つ、合計十二個すべてが異なる形状のシンボルを刻んである。それぞれのシンボルに触れて魔力を流すことで、四つの属性魔法から三つずつの魔法、合計十二個の攻撃や防御の魔法が使える魔道具だと告げた。
盗品の中にも水と火がだせる魔道具があったのだから、それほど非常識な魔道具ではないはずだ。
「えーと……、これに近い魔道具の噂を聞いたことがあります」
「噂?」
「騎士団の団長が先王から頂戴した宝剣で、火球と水刃と岩弾が使えるそうです」
そう言うと幼い子がイヤイヤをするように首を横に振りながら、ブレスレットの魔道具を無言で俺に差し戻す。
宝剣だと?
この程度でもヤバい品物らしい。
「助かるよ、俺もユリアーナも魔道具に疎くってさ」
「本当、助かるわー」
「これからもこの調子で教えてくれると嬉しいな」
「こんなのがまだあるんですか?」
俺とユリアーナとは違った種類の乾いた笑いが彼女の口から漏れた。
さて、次は武器と防具に移ろうと思ったんだが……。
「この際だから、失敗はこの場で全て済ませてしまおう思うがどうだろう?」
「賛成よ」
決まりだ。
俺は素材の許す範囲であれこれと作成することにした。
ユリアーナに指輪を差しだす。
「あたしは――」
彼女の言葉を遮って言う。
「元々の力を頼らずに訓練次第で強力な属性魔法が使えるようになるかもしれないだろ?」
「意図は分かったわ」
ユリアーナが指輪をはめた。
これで属性魔法のスキルがない俺とリーゼロッテは魔道具の力を借りて属性魔法が使えるようになる。ユリアーナは失われた女神の力に頼らずに、訓練次第で強力な属性魔法が使えるようになるかもしれない。
「でも、よく同じ形のものが三つもあったわね」
「形状を変えた。元の持ち主の関係者が現れて、盗賊に奪われた品だなんて騒がれても嫌だからな」
犯罪組織が盗んだ宝石を加工しなおして足がつかないようにするのと同じだ
「この世界じゃ、盗賊が奪った品の所有権が討伐者に移るのは普通のことよ」
「俺の気分の問題だ」
ユリアーナの『小心者ね』との言葉を聞かなかったことにして話題を変える。
「そんなことよりも、試しみなくていいのか?」
――――結果。
「予想通りだ」
口では平静を装っているが、内心では今にも歓喜の叫び声を上げそうだ。
対してユリアーナは驚愕を隠せずにいる。
リーゼロッテに至っては殻を閉ざしたようにブツブツとなにかつぶやいて自分の世界に入り込んでいた。
「予想通りって……、これを予想していたっていうの?」
錬金工房の主である俺だけが予想できたことなのだろう。
事実、魔道具を使用するまで、ユリアーナでさえ予想していなかったのがその表情と口調から分かる。
指輪に付与した魔法スキルは地・水・火・風の四つの属性魔法のスキル。
属性魔石と違い魔法スキルの付与では、地・水・火・風それぞれの属性で複数の魔法が使用できた。
「この指輪が常識から外れているってことは俺だって想像がつく。だから、指輪とは別にこんな魔道具も作ってみたんだ」
銀製の幅広のブレスレットをリーゼロッテに渡して意見を求めた。
「え? あたしですか?」
「この地域でどう思われるか、意見を聞かせて欲しい」
主に一般的な魔道具として通用するかどうかが知りたい。
手にしたブレスレットの説明を始めた。
幅広のブレスレットには横に四つ、縦に三つ、合計十二個すべてが異なる形状のシンボルを刻んである。それぞれのシンボルに触れて魔力を流すことで、四つの属性魔法から三つずつの魔法、合計十二個の攻撃や防御の魔法が使える魔道具だと告げた。
盗品の中にも水と火がだせる魔道具があったのだから、それほど非常識な魔道具ではないはずだ。
「えーと……、これに近い魔道具の噂を聞いたことがあります」
「噂?」
「騎士団の団長が先王から頂戴した宝剣で、火球と水刃と岩弾が使えるそうです」
そう言うと幼い子がイヤイヤをするように首を横に振りながら、ブレスレットの魔道具を無言で俺に差し戻す。
宝剣だと?
この程度でもヤバい品物らしい。
「助かるよ、俺もユリアーナも魔道具に疎くってさ」
「本当、助かるわー」
「これからもこの調子で教えてくれると嬉しいな」
「こんなのがまだあるんですか?」
俺とユリアーナとは違った種類の乾いた笑いが彼女の口から漏れた。
さて、次は武器と防具に移ろうと思ったんだが……。
「この際だから、失敗はこの場で全て済ませてしまおう思うがどうだろう?」
「賛成よ」
決まりだ。
俺は素材の許す範囲であれこれと作成することにした。
55
お気に入りに追加
803
あなたにおすすめの小説

俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です ~ガチャ引き楽しくてやめられねぇ~
シンギョウ ガク
ファンタジー
仕事中、寝落ちした明日見碧(あすみ あおい)は、目覚めたら暗い洞窟にいた。
目の前には蛍光ピンクのガチャマシーン(足つき)。
『初心者優遇10連ガチャ開催中』とか『SSRレアスキル確定』の誘惑に負け、金色のコインを投入してしまう。
カプセルを開けると『鑑定』、『ファイア』、『剣術向上』といったスキルが得られ、次々にステータスが向上していく。
ガチャスキルの力に魅了された俺は魔物を倒して『金色コイン』を手に入れて、ガチャ引きまくってたらいつのまにか強くなっていた。
ボスを討伐し、初めてのダンジョンの外に出た俺は、相棒のガチャと途中で助けた異世界人アスターシアとともに、異世界人ヴェルデ・アヴニールとして、生き延びるための自由気ままな異世界の旅がここからはじまった。

【完結】神スキル拡大解釈で底辺パーティから成り上がります!
まにゅまにゅ
ファンタジー
平均レベルの低い底辺パーティ『龍炎光牙《りゅうえんこうが》』はオーク一匹倒すのにも命懸けで注目もされていないどこにでもでもいる冒険者たちのチームだった。
そんなある日ようやく資金も貯まり、神殿でお金を払って恩恵《ギフト》を授かるとその恩恵《ギフト》スキルは『拡大解釈』というもの。
その効果は魔法やスキルの内容を拡大解釈し、別の効果を引き起こせる、という神スキルだった。その拡大解釈により色んなものを回復《ヒール》で治したり強化《ブースト》で獲得経験値を増やしたりととんでもない効果を発揮する!
底辺パーティ『龍炎光牙』の大躍進が始まる!
第16回ファンタジー大賞奨励賞受賞作です。
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)
荻野
ファンタジー
ハーデス 「ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」
俺 「確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」
ハーデス 「では……」
俺 「だが断る!」
ハーデス 「むっ、今何と?」
俺 「断ると言ったんだ」
ハーデス 「なぜだ?」
俺 「……俺のレベルだ」
ハーデス 「……は?」
俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」
ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」
俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」
ハーデス 「……正気……なのか?」
俺 「もちろん」
異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。
たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!
あるちゃいる
ファンタジー
山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。
気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。
不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。
どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。
その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。
『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。
が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。
そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。
そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。
⚠️超絶不定期更新⚠️

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語
Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。
チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。
その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。
さぁ、どん底から這い上がろうか
そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。
少年は英雄への道を歩き始めるのだった。
※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる