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第20話 この世界の常識調査
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次の目的地向かうにしても事前準備は必要だ。
錬金工房からたったいま出した椅子を二人に勧め、同様にたったいま出したテーブルの上に作成し終えたばかりの装飾品を並べる。
「リーゼロッテは魔法が使えるのか?」
「いえ、使えません」
「そんな君に朗報だ。この指輪をはめるだけで、誰でも属性魔法が使えるようになる」
テーブルの上から白金の指輪を手に取り、彼女の指にはめた。
「あたし、お金なんて持ってません!」
「お金は要らない。対価は知識。知らない事を色々と教えてく欲しい」
湧きあがった邪な想像を頭の片隅に追いやる。
「え!」
「ちょっと!」
怯えた表情でリーゼロッテが手を引っ込め、ユリアーナが怒りの形相でテーブルを叩くのが同時だった。
「どうした?」
この反応は、まさか……。
「いたいけな少女に何を要求するつもりだったの?」
立ち上ったユリアーナが、椅子の上で震えているリーゼロッテを抱きかかえた。
「誤解しないでくれ、やましい気持ちもなければ、下心もない。本当だ」
一瞬だけよぎったが口にはだしていないからセーフだ。
「いま、ものすごくいやらしそうな顔をしていたわよ」
「御代官様を思いだしました」
悪徳代官と一緒かよ! 酷い言われようだな。
「誤解だ。その指輪の説明を聞いてリーゼロッテが驚く顔を想像しただけだ」
「本当でしょうね?」
「女神様に誓う」
左手を上げてドラマで見た宣誓のポーズをした。
「いいわ、信用しましょう」
「疑ってしまってごめんなさい! あたし、神経質になっていたみたいです。許してください!」
まだ疑惑を捨てきれていない眼差しのユリアーナとは対照的に、リーゼロッテは心底反省したようで何度も謝罪の言葉を口にした。
「それじゃ、俺の信用が回復したところで話を再開しよう」
リーゼロッテを真正面から見据える。
「その指輪には地・水・火・風、四種類の属性魔法が付与されている」
「四つ魔法が使えるんですか!」
「四つじゃない。四種類の属性魔法が使えるようになる。一般に出回っている魔道具のように固定されて魔法が使えるんじゃなく、属性魔法の才能を持って生まれた人のように、訓練次第で幾つもの魔法が使えるようになる」
付与したのは盗賊たちから剥奪した地・水・火・風の属性魔法のスキル。
「えーと、よく分かりません」
この世界に存在しない性能の魔道具なので、すぐには理解できないのも無理はない。
「スキルを剥奪する能力はもちろん、剥奪したスキルを付与する能力も知らないわ」
いつの間にか俺の隣に移動してたユリアーナがリーゼロッテに聞こえないようにささやいた。
「俺の錬金工房だからこそ作れる魔道具だ」
不安がないとは言わない。だが、それを大きく上回る好奇心と期待とで胸が高鳴っていた。
それはユリアーナも同様のようだ。
指輪を見つめる瞳が輝き、口元には妖しい笑みが浮かんでいる。
「魔道具は属性魔石を使って、その属性ごとに何か一つの魔法が使えるようになるものだ。だが、この魔道具は特別なものだ――――」
俺はリーゼロッテに理解できるよう説明を始めた。
「――――持っていることも秘密にしないといけないような魔道具だと理解してくれ」
「……シュラさんは神器が作れるんですねー」
抑揚のない語調だ。
それに目の焦点があっていない。
いまなら何を言っても疑問の声をあげることなく受け入れてくれそうだ。
ユリアーナに視線を向けると、同意するように小さくうなずいた。
錬金工房からたったいま出した椅子を二人に勧め、同様にたったいま出したテーブルの上に作成し終えたばかりの装飾品を並べる。
「リーゼロッテは魔法が使えるのか?」
「いえ、使えません」
「そんな君に朗報だ。この指輪をはめるだけで、誰でも属性魔法が使えるようになる」
テーブルの上から白金の指輪を手に取り、彼女の指にはめた。
「あたし、お金なんて持ってません!」
「お金は要らない。対価は知識。知らない事を色々と教えてく欲しい」
湧きあがった邪な想像を頭の片隅に追いやる。
「え!」
「ちょっと!」
怯えた表情でリーゼロッテが手を引っ込め、ユリアーナが怒りの形相でテーブルを叩くのが同時だった。
「どうした?」
この反応は、まさか……。
「いたいけな少女に何を要求するつもりだったの?」
立ち上ったユリアーナが、椅子の上で震えているリーゼロッテを抱きかかえた。
「誤解しないでくれ、やましい気持ちもなければ、下心もない。本当だ」
一瞬だけよぎったが口にはだしていないからセーフだ。
「いま、ものすごくいやらしそうな顔をしていたわよ」
「御代官様を思いだしました」
悪徳代官と一緒かよ! 酷い言われようだな。
「誤解だ。その指輪の説明を聞いてリーゼロッテが驚く顔を想像しただけだ」
「本当でしょうね?」
「女神様に誓う」
左手を上げてドラマで見た宣誓のポーズをした。
「いいわ、信用しましょう」
「疑ってしまってごめんなさい! あたし、神経質になっていたみたいです。許してください!」
まだ疑惑を捨てきれていない眼差しのユリアーナとは対照的に、リーゼロッテは心底反省したようで何度も謝罪の言葉を口にした。
「それじゃ、俺の信用が回復したところで話を再開しよう」
リーゼロッテを真正面から見据える。
「その指輪には地・水・火・風、四種類の属性魔法が付与されている」
「四つ魔法が使えるんですか!」
「四つじゃない。四種類の属性魔法が使えるようになる。一般に出回っている魔道具のように固定されて魔法が使えるんじゃなく、属性魔法の才能を持って生まれた人のように、訓練次第で幾つもの魔法が使えるようになる」
付与したのは盗賊たちから剥奪した地・水・火・風の属性魔法のスキル。
「えーと、よく分かりません」
この世界に存在しない性能の魔道具なので、すぐには理解できないのも無理はない。
「スキルを剥奪する能力はもちろん、剥奪したスキルを付与する能力も知らないわ」
いつの間にか俺の隣に移動してたユリアーナがリーゼロッテに聞こえないようにささやいた。
「俺の錬金工房だからこそ作れる魔道具だ」
不安がないとは言わない。だが、それを大きく上回る好奇心と期待とで胸が高鳴っていた。
それはユリアーナも同様のようだ。
指輪を見つめる瞳が輝き、口元には妖しい笑みが浮かんでいる。
「魔道具は属性魔石を使って、その属性ごとに何か一つの魔法が使えるようになるものだ。だが、この魔道具は特別なものだ――――」
俺はリーゼロッテに理解できるよう説明を始めた。
「――――持っていることも秘密にしないといけないような魔道具だと理解してくれ」
「……シュラさんは神器が作れるんですねー」
抑揚のない語調だ。
それに目の焦点があっていない。
いまなら何を言っても疑問の声をあげることなく受け入れてくれそうだ。
ユリアーナに視線を向けると、同意するように小さくうなずいた。
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