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第26話 襲撃(3)
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図南は二人の治療をしながら周囲の様子をうかがう。
幾つもの天幕が炎を上げて燃え上がり、戦闘の様子を照らしだしていた。
黒ずくめの襲撃者と白を基調とした神官服に身を包んだ騎士や神官たちが斬撃を交わしている。
一見、手当たり次第の襲撃に見えるが、襲撃者側は騎士団並みに統率が取れていた。
火矢の一斉射撃。
続く火矢の第二射とそれに紛れるように放たれた黒く染められた矢。斬り込んできた襲撃者たちの統制の取れた動き。
夜襲を仕掛けてきた者たちがただの盗賊でないことは明らかだった。
二人の治療を終えた図南がラルスに言う。
「ここは任せて大丈夫ですか?」
「お任せください」
その一言にうなずいた図南が、野営エリアの奥深くを目指そうとしている集団に目を留めた
「あの爺さんのところには紗良がいるんだ! 行かせるかよ!」
襲撃者たちの動きが、フューラー大司教の天幕を目指していると見て取った図南が気を吐く。
駆けだそうとした図南の眼前に新たな襲撃者が飛びだした。
図南に向けて剣が真っすぐに突き出される。
その突きを、わずかに身体をずらしてかわし、すれ違いざまに肺を通過する軌道で剣を横なぎに一閃させた。
図南の剣が襲撃者の肺を両断し、背骨を断つ。
剣術の覚えなどない図南である。
身体強化された運動能力と感覚強化により研ぎ澄まされた五感に頼った接近戦は効率が悪いと判断し、己の最も頼りとする魔術を発動させる。
「魔刃!」
力強い言葉と共に彼が手にした長剣に魔力が絡みつく。オークを大木ごと容易く両断したときの魔力の刃が長剣を包み込んだ。
次の標的を定めた図南が、魔力の刃をまとった剣を襲撃者めがけて振り下ろす。
その一撃を剣で受けようと襲撃者は自分の大剣を振り下ろされる図南の剣に合わせた。
だが、図南の長剣は大剣ごと男の右腕を斬り飛ばす。
「グゥ!」
男が地面に転がった。
一連の戦闘を見ていた襲撃者の一人が戦闘を忘れて驚きの声を上げる。
「剣を斬っただと!」
図南の眼光がその男を射抜く。
「ヒッ!」
「戦闘力を奪わせてもらう」
男が恐怖に顔を引きつらせた瞬間、図南が男の傍らを通過していた。振り抜かれた図南の長剣が男を腰から両断する。
「グワーッ!」
叫び声を上げて上半身だけの男が地面をのたうち回った。
手当たり次第に襲撃者たちの脚を斬り飛ばしながらも、森の様子に意識を集中する。図南の研ぎ澄まされた感覚が幾人もの人間を知覚した。
「まだ森の中に潜んでいるのは予備戦力か!」
こちらの手薄な箇所に戦力を投入し、突破を図るつもりだと判断した図南が矛先を変えた。
「魔弾!」
右手を突きだすと、魔力の弾丸が撃ち出される。
魔弾は森の闇へと吸い込まれるように消えると大木に当たって重低音を轟かせた。
(やはり狙ったところには飛んでいかないか)
図南は開き直ると、狙いを付けずに数十発の魔弾を森の中に向けて水平に連射する。
森の中から幾つもの重低音が轟き、襲撃者たちの悲鳴が上がった。
次いで、斬り込んできた者たちが叫ぶ。
「強力な魔術師がいるぞ!」
「攻撃魔術だ!」
「魔術師を先に黙らせろ!」
図南の放った攻撃魔術の威力に襲撃者たちが浮足立つ。
「動揺を誘う役くらいにはなったようだな」
己が放った魔弾の思わぬ効果に思わずそうつぶやくと、続いて、自分が魔術師であることを知らしめた。
「魔術師はここだ! 背中を見せれば遠慮なく狙い撃つ!」
再び森の中へと魔弾を連射する。
森の中に潜んでいた後詰の部隊の叫び声が夜の森に木霊した。
「気を付けろ! 桁外れの攻撃力だ!」
「まだ子どもだが、相手は魔術師だ。侮るなよ!」
襲撃者たちの標的が変わった。
フューラー大司教の天幕へ向かおうとした者たちまでが図南を標的と定める。襲撃者たちは図南を包囲するように一斉に動きだした。
幾つもの天幕が炎を上げて燃え上がり、戦闘の様子を照らしだしていた。
黒ずくめの襲撃者と白を基調とした神官服に身を包んだ騎士や神官たちが斬撃を交わしている。
一見、手当たり次第の襲撃に見えるが、襲撃者側は騎士団並みに統率が取れていた。
火矢の一斉射撃。
続く火矢の第二射とそれに紛れるように放たれた黒く染められた矢。斬り込んできた襲撃者たちの統制の取れた動き。
夜襲を仕掛けてきた者たちがただの盗賊でないことは明らかだった。
二人の治療を終えた図南がラルスに言う。
「ここは任せて大丈夫ですか?」
「お任せください」
その一言にうなずいた図南が、野営エリアの奥深くを目指そうとしている集団に目を留めた
「あの爺さんのところには紗良がいるんだ! 行かせるかよ!」
襲撃者たちの動きが、フューラー大司教の天幕を目指していると見て取った図南が気を吐く。
駆けだそうとした図南の眼前に新たな襲撃者が飛びだした。
図南に向けて剣が真っすぐに突き出される。
その突きを、わずかに身体をずらしてかわし、すれ違いざまに肺を通過する軌道で剣を横なぎに一閃させた。
図南の剣が襲撃者の肺を両断し、背骨を断つ。
剣術の覚えなどない図南である。
身体強化された運動能力と感覚強化により研ぎ澄まされた五感に頼った接近戦は効率が悪いと判断し、己の最も頼りとする魔術を発動させる。
「魔刃!」
力強い言葉と共に彼が手にした長剣に魔力が絡みつく。オークを大木ごと容易く両断したときの魔力の刃が長剣を包み込んだ。
次の標的を定めた図南が、魔力の刃をまとった剣を襲撃者めがけて振り下ろす。
その一撃を剣で受けようと襲撃者は自分の大剣を振り下ろされる図南の剣に合わせた。
だが、図南の長剣は大剣ごと男の右腕を斬り飛ばす。
「グゥ!」
男が地面に転がった。
一連の戦闘を見ていた襲撃者の一人が戦闘を忘れて驚きの声を上げる。
「剣を斬っただと!」
図南の眼光がその男を射抜く。
「ヒッ!」
「戦闘力を奪わせてもらう」
男が恐怖に顔を引きつらせた瞬間、図南が男の傍らを通過していた。振り抜かれた図南の長剣が男を腰から両断する。
「グワーッ!」
叫び声を上げて上半身だけの男が地面をのたうち回った。
手当たり次第に襲撃者たちの脚を斬り飛ばしながらも、森の様子に意識を集中する。図南の研ぎ澄まされた感覚が幾人もの人間を知覚した。
「まだ森の中に潜んでいるのは予備戦力か!」
こちらの手薄な箇所に戦力を投入し、突破を図るつもりだと判断した図南が矛先を変えた。
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(やはり狙ったところには飛んでいかないか)
図南は開き直ると、狙いを付けずに数十発の魔弾を森の中に向けて水平に連射する。
森の中から幾つもの重低音が轟き、襲撃者たちの悲鳴が上がった。
次いで、斬り込んできた者たちが叫ぶ。
「強力な魔術師がいるぞ!」
「攻撃魔術だ!」
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