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第4章 何事も程々に
2.思わぬお誘い
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それからエリーシアは上司二人に言い聞かされた通り、サイラスをからかったりせずに一日の仕事を終えて、住居である後宮に戻った。そしていつも通り義妹のシェリルと同じテーブルで夕食を食べながら、日中預かった物について告げた。
「シェリル、昨日の結婚式の一部始終を撮った録画石をサイラスから預かって来たんだけど、夕食後に見る?」
するとシェリルは途端に目を輝かせて、その提案に食いつく。
「あ、見る見る! 見たい! 途中まで参加していたけど、私が帰った後、どうなったのか気になっていたのよ。午後から出て来たソフィアから、簡単な経過は聞いたけど」
それを聞いたエリーシアは、ちょっと意外そうな顔になった。
「ソフィアさんも、今日から復帰していたんだ。姿が見えないから、明日から出仕するのかと思っていたわ」
「色々あるみたいで、女官長の所に報告と挨拶に行ったきり、まだ戻ってきていないの」
そこで我慢できないと言った感じで、リリスがお伺いを立ててくる。
「シェリル様! 私も一緒に見せて頂いて構いませんか!?」
「ええ、勿論よ。皆で一緒に見ましょう」
「やった! 王宮内で凄い噂になっていて、どんな状態だったのか、詳しく知りたいと思っていたんです!」
そして夕食を済ませると、エリーシアは早速録画石を起動させて、白い壁面に昨日の結婚式の映像を投影し始めた。
最初は面白半分で見ていたエリーシアとリリスも、ルセリアが下級貴族やシェリルを馬鹿にする発言をした所で揃って憤慨し、シェリルが「あれは演技だから」と宥める一幕もあった。
更にルセリアが倒れた後、シェリルを初めとする参列者が出て行った後のルーバンス公爵家の言動には、三人とも揃って憤り、特にロイがルセリアを蹴りつけようとした事に対して、盛大に非難の声を上げた。
「何なんですか、あれは!? 無抵抗の女性を蹴ろうとするなんて!」
「許せないわね! 目の前に居たら、ズタボロにしてやるのに!」
「リリス、エリー、お願い、少し冷静に」
「二人とも、そんなに怒らないで下さい。ちゃんとあの馬鹿には、私直々に天誅を下して来ましたから」
そこで女官長室から戻ってきたソフィアが、憤慨した二人を宥める様に背後から声をかけてきた為、皆慌ててそちらの方に視線を向けた。
「あ、ソフィア、お帰りなさい」
「天誅って、なんですか?」
「殺すわけにはいかないから、ちょっと殴ってきただけなんだけど。勿論、こちらの身元は分からない様にしてきたから、問題ないわ」
「はぁ……、そうですか」
にっこり微笑みながらソフィアが説明した内容を聞いて、他の三人は(どうやって身元を知られずに、殴れるのかしら?)と疑問に思ったが、なんとなく深く考えたり尋ねたりしてはいけない様な気がした為、誰もそれについて尋ねなかった。
そして投影が終了し、エリーシアが録画石をしまい込んだと同時に、ソフィアが控え目に声をかけてくる。
「エリーシアさん、ちょっと良いですか?」
「あ、はい。構いませんが、何か?」
すぐに応じたエリーシアに、何故かソフィアは控え目に尋ねてきた。
「その……、エリーさんの職場って、今は忙しいかしら?」
「確かに暇では無いですが、いつもの事ですし。どうかしましたか?」
「その……、今回サイラスに随分お世話になったから、今度夕食でも奢ろうかと思ったんだけど……。休み明けで仕事が溜まっているだろうし、忙しいわよね?」
そんな事を言われて「はい、無茶苦茶仕事に忙殺されています」などとは口が裂けても言えなかったエリーシアは、笑って手を振りながら否定した。
「そんな事はありませんって! 確かに忙しいと言えば忙しいですけど、定時上がりシフトならスパッと帰る人は多いですし、予め予定が分かっていれば、そこを空ける事位はできますよ。遠慮無く声をかけてやって下さい」
「そう? それならそうしてみるわ」
まだ幾分迷っている表情ながらも、ソフィアがそう口にした為、エリーシアは内心で快哉を叫んだ。
(よっしゃあ! ソフィアさんの方から動いてくれるとは、全然思っていなかったわ! だけどこれは、千載一遇のチャンス! サイラスにしっかり言い聞かせて、上にシフトを調整して貰う様に、掛け合わないと)
何となく考え込んでいるソフィアを横目で見ながら、エリーシアは翌日出勤したらしなければいけない事を、早速頭の中でリストアップし始めた。
「シェリル、昨日の結婚式の一部始終を撮った録画石をサイラスから預かって来たんだけど、夕食後に見る?」
するとシェリルは途端に目を輝かせて、その提案に食いつく。
「あ、見る見る! 見たい! 途中まで参加していたけど、私が帰った後、どうなったのか気になっていたのよ。午後から出て来たソフィアから、簡単な経過は聞いたけど」
それを聞いたエリーシアは、ちょっと意外そうな顔になった。
「ソフィアさんも、今日から復帰していたんだ。姿が見えないから、明日から出仕するのかと思っていたわ」
「色々あるみたいで、女官長の所に報告と挨拶に行ったきり、まだ戻ってきていないの」
そこで我慢できないと言った感じで、リリスがお伺いを立ててくる。
「シェリル様! 私も一緒に見せて頂いて構いませんか!?」
「ええ、勿論よ。皆で一緒に見ましょう」
「やった! 王宮内で凄い噂になっていて、どんな状態だったのか、詳しく知りたいと思っていたんです!」
そして夕食を済ませると、エリーシアは早速録画石を起動させて、白い壁面に昨日の結婚式の映像を投影し始めた。
最初は面白半分で見ていたエリーシアとリリスも、ルセリアが下級貴族やシェリルを馬鹿にする発言をした所で揃って憤慨し、シェリルが「あれは演技だから」と宥める一幕もあった。
更にルセリアが倒れた後、シェリルを初めとする参列者が出て行った後のルーバンス公爵家の言動には、三人とも揃って憤り、特にロイがルセリアを蹴りつけようとした事に対して、盛大に非難の声を上げた。
「何なんですか、あれは!? 無抵抗の女性を蹴ろうとするなんて!」
「許せないわね! 目の前に居たら、ズタボロにしてやるのに!」
「リリス、エリー、お願い、少し冷静に」
「二人とも、そんなに怒らないで下さい。ちゃんとあの馬鹿には、私直々に天誅を下して来ましたから」
そこで女官長室から戻ってきたソフィアが、憤慨した二人を宥める様に背後から声をかけてきた為、皆慌ててそちらの方に視線を向けた。
「あ、ソフィア、お帰りなさい」
「天誅って、なんですか?」
「殺すわけにはいかないから、ちょっと殴ってきただけなんだけど。勿論、こちらの身元は分からない様にしてきたから、問題ないわ」
「はぁ……、そうですか」
にっこり微笑みながらソフィアが説明した内容を聞いて、他の三人は(どうやって身元を知られずに、殴れるのかしら?)と疑問に思ったが、なんとなく深く考えたり尋ねたりしてはいけない様な気がした為、誰もそれについて尋ねなかった。
そして投影が終了し、エリーシアが録画石をしまい込んだと同時に、ソフィアが控え目に声をかけてくる。
「エリーシアさん、ちょっと良いですか?」
「あ、はい。構いませんが、何か?」
すぐに応じたエリーシアに、何故かソフィアは控え目に尋ねてきた。
「その……、エリーさんの職場って、今は忙しいかしら?」
「確かに暇では無いですが、いつもの事ですし。どうかしましたか?」
「その……、今回サイラスに随分お世話になったから、今度夕食でも奢ろうかと思ったんだけど……。休み明けで仕事が溜まっているだろうし、忙しいわよね?」
そんな事を言われて「はい、無茶苦茶仕事に忙殺されています」などとは口が裂けても言えなかったエリーシアは、笑って手を振りながら否定した。
「そんな事はありませんって! 確かに忙しいと言えば忙しいですけど、定時上がりシフトならスパッと帰る人は多いですし、予め予定が分かっていれば、そこを空ける事位はできますよ。遠慮無く声をかけてやって下さい」
「そう? それならそうしてみるわ」
まだ幾分迷っている表情ながらも、ソフィアがそう口にした為、エリーシアは内心で快哉を叫んだ。
(よっしゃあ! ソフィアさんの方から動いてくれるとは、全然思っていなかったわ! だけどこれは、千載一遇のチャンス! サイラスにしっかり言い聞かせて、上にシフトを調整して貰う様に、掛け合わないと)
何となく考え込んでいるソフィアを横目で見ながら、エリーシアは翌日出勤したらしなければいけない事を、早速頭の中でリストアップし始めた。
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