世界が色付くまで

篠原 皐月

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第43話 嵐の前

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「川島君、ちょっと来てくれ」
「はい」
 少し離れた位置から呼ばれた恭子は、書類作成の手を止めて立ち上がり、まっすぐ課長席へと向かった。

「課長、何でしょうか?」
 すると杉野は、机の上で両手を組みながら、思わせぶりに話し出した。

「君の仲介で、この間随分商談が楽になっているが……」
「恐れ入ります」
「一作家のアシスタントをしていたと言う割には、随分人脈が広いんだな」
「と、仰いますと?」
 恭子には次に続く台詞が大体予想できたが、しらばっくれて尋ねてみた。すると杉野が、何か含む様な口調で続ける。

「成田部長や根岸専務とかから、色々話を伺っていてね」
「どんなお話でしょうか? お二人とも中途採用の私を気遣って頂いて、お食事を奢って頂きながら、ためになるお話を色々聞かせて頂いたのに、あんな事になって本当に残念ですわ」
 片手を頬に当てて心底残念そうに恭子が述べると、杉野の表情が僅かに当惑したものに変化する。

「……ほう? 残念かね」
「はい、勿論です。これからの小笠原物産を、担っていかれる方達だったのでは?」
「そうだな。私も残念だ。ところで、こちらの商品を山種重工に売り込みたいんだが、知り合いは居ないかね?」
 探りを入れるのはまたの機会にしようと思ったのか、杉野はあっさりと話題を変えて書類を差し出してきた為、恭子もそれを受け取りながら真顔で応じた。

「山種重工には直接の知り合いは居ませんが……、そこが所属しているY&Tホールディングスの江藤副会長なら、これまで色々ご一緒させて貰っています」
 淡々と恭子が述べた内容に、杉野が驚いた様に軽く目を見張る。

「……江藤副会長だと?」
「駄目でしょうか。口を聞いて貰う位は、できるかと思いますが」
 心配そうな顔を装いお伺いを立てた恭子に、杉野は我に返った様に慌て気味に指示した。

「いや、十分だ。早速副会長に渡りを付けてくれ」
「了解しました。明日までには連絡を付けてみます」
(さて、怪しさ全開でも、利用するだけ利用しようって根性は逞しいけど、未だに墓穴を掘ってる事に気が付かない辺り、救いようがないわね)
 一礼して自席に戻りながら、恭子は密かに笑いを堪えた。そして抜け目なく、仕事の算段を頭の中で組み立てていく。

(さて、江藤さんに電話をかけるついでに……、スケジュールを確認してみたら、今週は部長の所に石黒さんが来社予定なのよね。せっかくだから一芝居お願いしようかな)
 そうして時間を無駄にしない恭子は、昼休みに江藤と連絡を付けてから、続けて登録しておいた携帯番号にかけてみた。

「もしもし、石黒だが」
「お久しぶりです石黒さん、川島です。突然すみません、今、お忙しくありませんか?」
 神妙にそう名乗った途端、当初の重々しい声音が一変し、電話の向こうからウキウキと話しかけてくる。

「久しぶりだね恭子ちゃん、大丈夫だよ。そういえば、以前紹介して貰って、作った釣り竿の出来については話して無かったね。いや、もう引きが良いのなんのって! 先月はとうとう大物を釣り上げてね。それが」
「あの、お話のところ申し訳ないんですが、昼休みが終わりますので、戦果のお話はまたの機会に改めてじっくり伺うという事で、宜しいでしょうか?」
 趣味について語り出したら止まらないタイプの人間である事を知っていた恭子は、苦笑しながら断りを入れたが、江藤は怪訝な口調で尋ね返してきた。

「それは構わんが……、昼休み? 君は今、あの鬼畜作家の所に居ないのかい?」
「実は今、先生の指示で小笠原物産の営業一課に勤務しています」
 それを聞いた石黒が、如何にも楽しそうな声を上げる。

「それはそれは。実は今度、小笠原物産に行く予定が有るんだ。適当に理由を付けて、恭子ちゃんのOLぶりを見に行くか」
「実はそれを知って、お電話したんです。そうして頂けると助かります。ついでに来社時に石黒さんにお願いしたい事がありまして」
「何だい?」
 興味深そうに話の先を促した石黒だったが、恭子の話を一通り聞いて、困惑した声を出した。

「恭子ちゃん、それは……」
「駄目でしょうか?」
「いや、そんな事はお安いご用だが……。本当にそんな事をして構わないのかい? 社内で君がやりづらくなるだろう?」
「半分はそれが目的です。今回は先生と小笠原社長の指示で動いているものですから」
 その説明を聞いた石黒は、小さく溜め息を吐いてから了承の台詞を返した。

「……最近、小笠原の内部がゴタついていると思ったら、裏で小笠原社長が糸を引いて、恭子ちゃんが動いていたか。納得だ。よし、頼まれた様に、上手くやってあげよう」
「ありがとうございます。宜しくお願いします」
 そこで石黒は、笑いを堪える様な声で話を続けた。

「でも、そうか。普通の会社勤めでもOKか。それなら小笠原が片付いたら、うちに来ないかい? 好条件を提示するよ?」
「その節は宜しくお願いしますね。先生にお話ししておきますから。それでは失礼します」
「ああ、それじゃあ、直に会えるのを楽しみにしているよ」
 そうして楽しげに会話を終えた恭子は、満足げに携帯をしまい込んだ。

「さて、これで仕込みはバッチリ、と。ターゲットも少なくなってきたし、年度が変わる前に何とかなりそうね」
 そうしてテイクアウトしてきた商品の空袋を潰しながら、恭子は通路に置かれていたベンチを立ち上がった。


「お呼びですか? 社長」
「ああ、仕事中すまない。これはプライベートの範疇だが、最近君の帰りが遅いから、家で声をかけるのをつい忘れていてな。軽く目を通して貰えるか?」
 勤務時間中に社長室に呼びつけられた清人は、苦笑いで雄一郎の机に歩み寄り、クリアファイルを受け取った。

「すみません。この所、色々立て込んでいまして」
「構わんよ。真澄の後を引き受けて、業績を下げるどころか昨年より上げていると聞いた。頑張って貰っている様で何よりだ。最近は会議の度、お前の就任に難色を示した連中の顔を見るのが楽しみでね」
「悪趣味ですよ? お義父さん」
 含み笑いをしつつファイルから取り出した何枚かの用紙に目を走らせた清人は、すぐに真顔になった。そして無言のまま読み進めている清人の顔色を窺いながら、雄一郎が声をかける。

「どう思う? 清人」
 それに対し、清人は曖昧に誤魔化す様な事はせず、真剣な口調で意見を述べた。

「これは、浩一の見合い相手候補のリストですね。俺の私見で構いませんか?」
「勿論だ」
「それなら……、取り敢えずSATコミュニケーションズと、永沢地所と、朝日銀行でしょうか? 柏木産業の中で情報通信分野は後発で、そこを補完する各種システム開発等を手がける、専門の子会社があっても良いですし、不動産部門は関東以外では弱いですから、これからのその分野の展開を考えると、業界大手との連携は魅力的です。それと、現在は資金調達はお義母さんの実家関係が融通を利かせてくれていますが、新しいルートを作っておくのも良いかと」
 見合い相手本人に関する云々ではなく、親の職業や家業について、柏木産業にとってのメリット面の分析を一気に語ってみせた清人に、雄一郎は満足した様に頷いた。

「私も全く同意見だ。それでは浩一に、それとなく話をしてみよう」
「その前に、先方に該当する女性がいる所ばかり選んでいるとは思いますが、交遊関係を含めてきちんと調査した方が良いでしょうね。あまり性格に問題がある様だと、浩一はともかく真澄が『あんなのと義理の姉妹なんて嫌よ!』とブチ切れます」
「確かにな」
 冷静に釘を刺してきた清人に、雄一郎は思わず失笑した。そして笑いながら話を続ける。

「それでは年内中に調べてみて、相手方の感触も探ってみるか。詳しい話は年明けだな」
「それ位が妥当でしょうね。機会があったら、俺の方からもさり気なく伝えてみます」
「ああ、頼む。それでは戻って構わないぞ」
「それでは失礼します」
 元通りクリアファイルにリストを挟み込んだ清人は、それを雄一郎に渡して一礼し、社長室を後にした。そして人気の無い廊下で、ひとりごちる。

「一気に面倒くさくなってきたな。確かに当初の予定としては、そろそろだったんだが……」
 一度携帯を取り出してそれを眺めた清人は、無言のまましまい直して今現在の自分の職場へと戻って行った。


 夜、夕食を食べ終えてからリビングに移動し、ソファーに向かい合ってマグカップ片手に雑談をしていた恭子と浩一だったが、話が少し途切れてから、浩一がさり気なく口にした。

「……恭子さん」
「何ですか?」
「後から、俺の部屋に来てくれる?」
「すみません。今、生理中なんです。また誘って貰えます?」
「……悪かった。それなら良いから。気にしないで」
 通算で何度目かの誘いを恭子が実にあっさり断ると、浩一は若干気まずそうに視線を逸らしながら、謝罪の言葉を口にした。恭子はその様子を眺め、密かに悩んでしまう。

(『気にしないで』って言われても……。なんか浩一さん、動揺してるし。でもはっきり断る以外に、手段って無いわよね?)
 そうして一人で考え込んでから、一応の結論を出した恭子は、冷静に声をかけた。

「……浩一さん」
「何?」
「今、そういう気分なんですよね?」
「別に……、何が何でもしたいという程じゃ……」
 動揺しながら口ごもった浩一とは対照的に、恭子はすこぶる真顔で提案してみた。

「それなら、手と口で抜きましょうか?」
「…………」
 サラッと恭子が口にした途端、浩一はピシッと固まって表情を消したが、すぐに徐々に眉を寄せて、不機嫌そうなオーラを醸し出してきた。それを見た恭子は、予想外の反応に内心慌てる。

(何か良く分からないけど、怒ってる? え? どうして? 今の話のどこに、そんなに不機嫌にさせる要素があったのかしら?)
 考えてみても分からなかった為、恭子は慎重に尋ねてみた。

「あの、浩一さん。どうかしましたか?」
 その問いに、浩一は苦虫を噛み潰した様な表情になって呟く。
「俺が、そうしてくれって頼んだら、これまでそういう事をさせてきた人間と、同類って事になるわけか?」
「はい?」
 ここで完全に予想外の答えが返ってきた為、恭子は呆気に取られた。

(ちょっと待って。したいとかしたくないとか、そういう事じゃなくて、浩一さんが一番気にする所って、そこなの? 相変わらず浩一さんの怒りのツボって、理解不能……)
 正直、対応に困った恭子だったが、どうしようも無いので素直に思ったままを言ってみる事にした。

「別に、同じって事にはなりませんよ? 相手に『しろ』って言われた事は何度も有りますけど、これまで自分から『しますか?』って尋ねた事は有りませんでしたし」
 そう告げると、浩一は一瞬虚をつかれた様な表情になり、次いで「そうか……」と呟いたきり斜め下に視線を落として、何やら考え込んだ。
 取り敢えず怒りのオーラが消失した為、恭子は安堵したが、微妙に気詰まりの沈黙が続き、再び声をかけてみる。

「あの……、浩一さん?」
 すると浩一は顔を上げ、正面から恭子と視線を合わせながら、真剣な面持ちで告げてきた。

「ああ、やっぱり今日は、そういう事はしてくれなくて良いから。その代わり何もしないから、朝まで俺のベッドで一緒に寝てくれないか?」
「え? でも……」
 咄嗟に返事が出来なかった恭子に、浩一は心得た様に軽く頷きながら話を続ける。

「誰かと一緒に寝るのがあまり好きじゃないのは、前に聞いて分かってるけど、どうしても駄目かな?」
 一応控え目に頼んできた浩一に、恭子が困惑気味に言葉を返す。
「いえ、どうしても駄目かと聞かれると……、そこまで嫌がる事でも無いとは思いますが……」
「明日は朝食もお弁当の支度もしないで、ギリギリまで寝ている事にして、駅前のカフェで軽く食べて出勤。どう?」
(どう、と言われても……)
 微笑みながら提案された内容を、頭の中で自分なりに検討してみた恭子は、(別にそれでも良いか)と判断して頷いた。

「浩一さんがそれで良いなら、私は構いませんよ?」
「じゃあ、そうしようか。後で寝る時間になったら、部屋に来て」
「分かりました」
(それに一体何の意味が……。やっぱり真澄さん以上に、先生とは別な意味で、浩一さんの思考回路って謎だわ)
 取り敢えずそこで一連の話は終わり、飲み終えたカップを持って立ち上がった浩一を見送りながら、恭子は本気で首を捻った。

 そして後片付けや翌日の準備も済ませ、後は寝るだけの状態になったパジャマ姿の恭子は、自室の枕を抱えて浩一の部屋へと向かった。

「お邪魔します」
「いらっしゃい。どうぞ」
 ノックの後ドアを開けると、同じ様に寝支度を済ませた浩一が、ベッドの上で座って本を読んでおり、恭子の姿を認めると同時にパタンとそれを閉じる。そして場所を壁寄りに少し移動し、空いたスペースを恭子に指し示した。
 対する恭子も躊躇う事無く持参した枕をベッドに置き、そこに上がり込んで毛布や掛け布団を引き上げる。

「じゃあ、おやすみなさい」
「おやすみ」
 二人で寝るにはギリギリの幅であるセミダブルのベッドであり、かなり密着した状態で向かい合って寝る事になった。しかし意外に不快感を感じないまま、恭子は目を閉じる。

(暖かい……、思ったより嫌じゃ無いかも)
 ぼんやりとそんな事を考えていた恭子は、浩一が自分の肩や背中に腕を伸ばし、きちんと毛布や布団をかけ直してから慎重に自分を抱え込む様な姿勢で眠り始めたのを感じて、真面目に考え込んだ。

(浩一さん、急に抱き枕でも欲しくなったのかしら?)
 第三者からすればかなり的外れな推論ではあったが、この場にその考えを否定してくれる者など居る筈もなく、恭子はそれについて考えを巡らせる。

(最近は、以前と比べると手元不如意じゃ無いし、浩一さんには色々お世話になってるし。来月のクリスマスにはちょっと奮発して、低反発素材の抱き枕でも贈ろうかしら?)
 真剣にそこまで考えて、恭子は目を閉じたまま小さく笑った。

(考えてみたら、誰かにクリスマスプレゼントを用意するなんて、初めてよね?)
 自分でもらしくないと思いながら、恭子は改めて浩一と暮らし始めてからの事を振り返った。

(本当に、浩一さんと暮らし初めてからは、初めて尽くしだわ……)
 そんな事をぼんやりと考えているうちに、恭子は穏やかな眠りに落ちていった。
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