世界が色付くまで

篠原 皐月

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第37話 襲撃事件

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 三ヶ月に一度の定期検診の為に葛西クリニックを訪れた浩一は、脚を組んだ葛西から笑いを含んだ声で尋ねられた。

「浩一。お前この三ヶ月間、随分お楽しみだったそうだな?」
「何の事です?」
「惚けるな。ネタは上がってるんだ。毎日彼女の手作り弁当持参で、ウキウキ出勤してるだろ?」
(情報源は清人か……)
 ニヤニヤ笑いの葛西から僅かに視線を逸らしつつ、浩一は密かに溜め息を吐いた。そして気合いを入れ直して言い返す。

「ウキウキとか連日とか、事実とは少し異なります」
「社内のボウリング大会で勝つ為に、彼女にコーチして貰ったよな?」
「確かにそうですが……」
(それは清人にバレない様に、彼女も俺も秘密にしていがどこから漏れた? 清人が気付いたにしては、特に彼女に制裁らしき物は無いみたいだが……)
 怪訝な顔で考え込んだ浩一だったが、葛西は遠慮の無い感想を付け加えた。

「彼女の前で無様に負けたくない気持ちは分かるが、彼女に教えを請う時点で相当情け無いぞ、お前」
「それは重々、承知しています」
 思わず項垂れた浩一だったが、葛西は容赦なく追い詰める。

「それで、彼女に文字通り手取り足取り指導して貰ったんだろ? 向こうからベタベタ触らせる様に仕組むとは、ある意味キャバクラで触りまくってるエロおやじよりタチが悪いな」
「……誓って、そういう事は意図していませんでした」
 心底うんざりしながら疲れる会話を終わらせようとした浩一だったが、葛西の話は止まらなかった。

「それから優勝商品の旅行券を使って、二人で一泊二日で温泉に行ったよな?」
 真顔で確認を入れてきた葛西に、浩一の顔が盛大に引き攣る。
「先輩……、どこからその話を」
「賭けても良いが、彼女が『お金が勿体ないし、一部屋で構いませんよね?』とか言って同じ部屋に泊まって、仲良くコース料理と温泉を堪能して、同じ部屋で熟睡して帰って来たんだよな?」
 どう聞いても意識的に「熟睡」の所に力を入れて断定してきた葛西に、浩一は本格的に頭痛を覚えた。

「どうして間近で見ていた様に言うんですか?」
「見ていたからな」
「はぁ!?」
 思わず目を見開き、声を裏返らせて座ったまま身を乗り出した浩一に、葛西は少し離れる様に手を振って示した上で、面白く無さそうに告げる。

「冗談に決まってるだろ。何が悲しくて、一見カップルに見えるお前達を尾行しなくちゃならないんだ。アホらしい」
(駄目だ……、いつにも増して疲れる。診察は日を改める事にして、今日はとっとと帰ろう)
 思わず目を閉じて溜め息を吐いた浩一は、顔を上げて葛西に視線を合わせ、辞去しようとした。

「先輩、申し訳ありませんが」
「結局お前、彼女をどうしたいんだ?」
「どう、とは……」
 唐突な話題の転換に浩一は戸惑ったが、葛西は先程までのふざけた顔付きを一変させ、真顔で言い聞かせてきた。

「本気で口説くつもりが無いなら、彼女を側に置いておくな。いつ、どこで縁が有るか分からんだろうが」
「未来永劫口説くつもりが無いとは言っていません」
 思わず後ろめたさを感じた浩一が、視線を逸らしながら弁解がましく呟くと、葛西がしれっとしながら言い放った。

「そうだな。彼女は口が固い上に重々立場を弁えてるし、頭の働きや容姿は標準以上だし、愛人としてキープしておくのにはなかなかの好物件」
 そこでいきなり立ち上がった浩一に襟ぐりを乱暴に掴み上げられ、顔を上向けられた葛西は口を噤んだ。すると浩一が怒りの形相で見下ろしながら、静かに恫喝してくる。

「……そんなに床を舐めたいのか?」
 しかし葛西は恐れ気も無く、薄笑いさえ浮かべながら問い返した。
「怒ったか? 生憎お前が怒っても滑稽なだけで、怖くも何とも無いな。まともに考えたらお前が彼女と結婚できる筈が無いから、てっきり愛人にするつもりかと思っていたんだが、違うのか?」
「まだ言いますか?」
 無意識に葛西の服を掴んでいる浩一の手に更に力が加わったが、葛西はそれを認識しながらも、平然と話を続けた。

「そんなに心配しなくても、彼女の過去がどうであれ丸ごと受け入れる奇特な男が一人や二人いるだろうさ」
「ですが!」
「どこぞから引っ張り出した責任とやらのお題目を唱えて、いつまでもグズグズしてるなら、お前と彼女双方の為にさっさと手放せって事だ。ほら、診察するから脱げ」
「…………」
 葛西があっさりと意識と話題を切り替えて促すと、これ以上議論しても無駄だと判断したらしい浩一は、憮然とした表情ながら大人しく服を脱ぎ始めた。

(やれやれ、説教なんて俺の柄じゃ無いってのに。似合わない事をさせるなよ……)
 そんな事を考えながら、葛西は苦笑いしつつ慎重に浩一の様子を窺っていた。


 浩一が、端からは分からない程度に不機嫌なまま過ごした週末が明け、いつも通りの日常が戻って来た頃、出勤した自社ビルのエントランスホールで、とある女性の待ち伏せを受けた。

「柏木さん」
 明らかに出勤してきた社員では無い、ワンピース姿で肩にトートバッグを提げた、同年代の硬い表情の女性から声をかけられ、浩一は無表情で相手を観察した。

(こいつ……。やっぱり武内さんとの話は破談になって、文句の一つも言いに来たか。下手に隠し立てしてた報いだろうが)
 そして相手の身元と、ここに現れた理由を正確に把握しながらも、素知らぬふりで問い掛ける。

「どちら様ですか?」
「惚けないで! 私の結婚をぶち壊した癖に!! 土下座して謝りなさいよ!!」
 その叫び声に、出勤途中の社員達は驚いた様に足を止め、二人に興味津々の視線を向けた。浩一はそれに密かにほくそ笑みながら、彼女を無視するように再び歩き始める。

「人聞きが悪い……。名前も知らない方の結婚話を、どうやってぶち壊すと?」
(のこのこ乗り込んで来るとは、どこまで馬鹿なんだ。こっちには好都合だがな。さて、ここの監視カメラの位置だと、この辺りでこの向きか)
 素早く立ち位置を計算した所で、追い縋った女が浩一の腕を掴んで引き止め、エントランスに響き渡る声で絶叫した。

「どこまでしらばっくれるつもり? 皆川宏美よ! 正毅さんに聞いたわ! あんたが彼に有る事無い事吹き込んだでしょう? それで婚約解消になったのよ!!」
 その叫びに広いエントランスは不気味な程静まり返り、そこで浩一はやっと思い出した様に、わざとらしく声を張り上げた。

「皆川? ……ああ、やっと思い出した。大学の時に参加したコンパ会場と同じビル内で、違法ドラッグを使った乱交パーティーに参加して捕まった方でしたね。あの時『俺と一緒に居た』とアリバイを主張して、もの凄く迷惑を被りましたよ」
「なっ! アリバイなんかじゃ無いわ!?」
 途端にあちこちでざわめきが生じ、周囲から好奇心と軽蔑に満ちた眼差しを受けて宏美は怯んだが、浩一は明らかに相手を馬鹿にした不遜な口調で言い放った。

「じゃあ何だと仰るんです? 俺は当時事実を言っただけです。その場が初対面だから似た顔立ちの女性と勘違いして、アリバイを証言してくれると本気で考えたんですか? 随分見くびられたものだな。そもそもあなたとは、頭の出来が違うんですよ」
「……何ですって?」
 はっきりと顔色を変えた宏美に構わず、浩一は理路整然と告げた。

「俺がずっとコンパ会場に居た事は、あなたの大学の友人や、その他大勢がこぞって証言してくれました。警察が違法薬物常習犯のあなたより、誰にも恥じる事の無い品行方正な皆さんの言葉を信じるのは当然です。逆恨みもいい加減にして下さい」
「何よ! どうせあんたが金で丸め込んだんでしょ!?」
 宏美は悔し紛れに叫んだが、今度は浩一は哀れむ様に告げて軽く頭を振った。

「それは俺を含む全員への誹謗中傷ですが、訴訟でも起こして差し上げましょうか? 負けるのが分かっていて揉めたいとは、やはり相当頭が悪いらしい。いや、頭が悪いから勝ち目が無いのが分からないのか?」
「言わせておけばっ……」
 宏美が歯軋りし、遠巻きにしている社員達は常とは異なる浩一の辛辣な言葉に唖然としていると、浩一はあっさり話を纏めに入った。

「確かに武内さんと久しぶりに会って、近況を報告していたら結婚の話が出ましたね。その相手の名前に聞き覚えがあったので、『偶然にも同じ名前の女性に、昔酷い迷惑を被りましたが、武内さんの婚約者はそんな女とは似ても似付かない、素敵な女性でしょうね』と、例の話を笑い話にしただけです。偶々あなたが当人だったとしても、事実を伝えただけですから誹謗中傷には当たりません。それに婚約解消と言う事は、彼には隠していたんでしょう? 自業自得で、俺を責めるのはお門違いです」
 そう言っておかしそうに小さく笑った浩一の表情を見て、宏美は漸くある事を悟った。

「……やっと分かったわ。これまでもそうだったのね!?」
 顔面を蒼白にした宏美が浩一を弾劾しようとしたが、それを浩一はせせら笑った。

「は? これまで? 全く意味不明ですが。懲りずに今でも薬をやっているんですか? これから仕事なんです。お引き取り下さい」
「ふざけないで!! 謝らないって言うなら殺してやる!!」
 わざと相手を煽る言動を繰り返した浩一の思惑通り、宏美は激高しトートバッグの中から布に包まれた細長い物を取り出した。そしてバッグを放り出した宏美が手早く手元の布を剥がし、中から出てきた三徳包丁を両手で掴んで、浩一に突っ込んでくる。

「きゃあぁっ!」
「柏木さん! 危ない!」
「逃げろ!」
 周囲の社員達が悲鳴を上げ、血相を変えて叫ぶ中、浩一は冷静に事態を判断し、体の手前で宏美の手首を右手だけで難無く捕えた。その為突き刺すつもりだったらしい包丁は、浩一の身体をかすりもしなかった。

(ちっ……、どこまで馬鹿だこいつ。刺し殺したいならアイスピックか錐を持って来いよ。包丁ならせめて牛刀とか。第一刃物ならこうだろうが!!)
 何か脅す道具持参で来たとは予想していたが、ここまで間抜けな事になるとはと密かに呆れつつ、浩一は素早く監視カメラの位置を再確認した。そして自分の背中側からのアングルで撮られているのを確認すると、宏美の手首を掴んでいる右手に力を込め、揉み合っているのを装いながら包丁の刃を自身の左腕に当て、勢い良く奥から斜め前に引き下ろす。

「えっ!? どうして」
「……っ! 離れろ!」
「きゃあぁぁっ! 誰か!」
「警備員! 取り押さえろ!!」
 引かれた刃の軌跡に合わせて浩一のスーツとワイシャツの生地が切れ、更に腕本体まで切れた事の証に赤い血が滲んできたのを見て、浩一の予想外の行為に宏美は呆然となったが、ここで浩一に突き飛ばされて包丁ごと床に転がった。そして一気にその場が騒然となる。

「警察を呼べ!」
「その前に救急車だ!!」
「……わ、私じゃ無い! 私じゃ無いわ!」
 出遅れてしまった警備員や男性社員達に何人かがかりで組み伏せられ、周囲から怒りの眼差しを降り注がれた宏美は半狂乱になって訴えたが、罵倒が返ってきたのみだった。

「何を世迷い言、言ってやがる!!」
「違う! そいつが勝手に!!」
「はぁ? お前が切りつけたんだろうが!?」
「本当に薬中か? こいつ」
「暴れないように縛り上げろ!」
 男達が憤然として宏美を縛り上げているのを横目で見ながら、浩一は駆け寄って来た顔見知りの社員に応対した。

「浩一課長、大丈夫ですか?」
「何とか。痛むが手も動くし、心配要らないだろう」
「救急車が来ました。取り敢えずきちんと処置をして貰って下さい」
「一部始終を見ていましたから、警察への説明は俺達がしておきます」
「すまないね、頼むよ」
 申し訳なさそうに軽く頭を下げてその場を後にした浩一は、救急車に乗り込んで早々に鳴り響いた携帯を取り出し、受信したメールを確認した。その送信者は清人で、早速手を打った、または手を打つ予定の内容が列記されているのを確認し、思わず苦笑を漏らす。

(確かに出勤時間帯だったしな。しかしどこから傍観してやがったんだ、あの野郎……。絶対笑って見ていたに決まってる)
 そして搬送された病院で処置を受け、駆けつけてきた捜査員に筋道を立てて状況を説明した浩一は、昼前にはパトカーに送って貰って社屋ビルへと戻ってきた。

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