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第32話 乗りかかった船
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「なるほど。そういう事情もあって、身近な身内より、赤の他人の私を信用してくれたってわけか。良いわよ? 付き添い位、やってあげようじゃない」
「本当ですか?」
思わず嬉しそうに顔を向けてきた美郷に、幸恵は頷いてから、推測した内容を口にする。
「ええ。美郷ちゃんは、自分が一緒に居たら足手まといになるし、発見されやすくなるけど、妊婦のお母さんを一人で出すのは心配なんでしょう? それに確かにここに居たら、周囲がこぞって『泉さんの気持ちは分かるけど、ここは泉さんから頭を下げてくれ』とか、言い聞かせてきそうだものね」
「はい、そうなんです。だからこの際、ちょっとお母さんに周囲の目を気にしないで、のんびりして貰おうと思いまして。本当にお願いできますか?」
「ええ。幸い明後日までは休みだし、明日と明後日で泉さんの滞在場所を決めて、送って行くわ」
「ありがとうございます。安心しました」
如何にも安心したらしく、無邪気に笑って礼を述べた美郷を見て、幸恵も無意識に頬を緩めた。
(あら、年相応の可愛い笑顔。確かに生意気かもしれないけど、母親想いの良い子じゃない)
何となくホッとしながら、幸恵はこれからの予定について言及した。
「じゃあそうと決まれば、私は早いところここから出ないとね」
「え? どうしてですか?」
不思議そうに美郷が問い返してきた為、幸恵はその理由を説明した。
「だって、泉さんと一緒にこっそり出たら、私まで行方不明になって騒ぎが大きくなるし、もしかしたら泉さんとの関連も疑われるかもしれないでしょう? だから私は一旦ここを出て車を調達して、明日の6時半に泉さんを迎えに来るわ。それなら足も心配要らないでしょう? ここはちょっと、市街地からは離れているし」
「あ、そうか。そこまでは考えていなかったです。でも和臣叔父さんはどうしますか? 幸恵さんを単独行動させてくれるかしら?」
「普通に言ったら無理ね。でも美郷ちゃん、そこら辺は考えて無かったの?」
「……はい、すっかり失念してました。面目ありません」
「そこら辺は任せて頂戴。自分で何とかするわ」
がっくりと項垂れ、傍目にもしっかり分かってしまう落ち込み方を見せた美郷に、幸恵は思わず噴き出したいのを堪える。
(嫌だ、どうしてくれようかしら、この子。素で落ち込んでるわよね? 可愛いじゃない)
そして幸恵は何とか顔付きを引き締めながら、オロオロと二人のやり取りを眺めていた泉に声をかけた。
「じゃあ、泉さん。今日は早めに休んで、明日に備えて下さいね? 6時半に裏の通用口、の方で良いのよね?」
後半は美郷に確認を入れると、彼女が小さく頷く。
「はい、宜しくお願いします」
「でも、幸恵さん」
しかし尚も躊躇う気配を見せる泉に、幸恵は静かに言い聞かせた。
「あくまでも第三者としての意見ですが、少し冷却期間を置いた方が、お互い冷静に話ができると思います。今の状態で話し合うのって、ちょっと気まずくありませんか? 加えて曖昧に済ませてしまったら、今後にしこりが残りそうな気がするんですが」
そこで泉は無言で真剣に考え込んでから、幸恵に向かってゆっくりと頭を下げた。
「私事で幸恵さんに、ご迷惑おかけしてしまいますが、宜しくお願いします」
「それじゃあ明朝に」
そして腰を上げた幸恵は、早速これからの段取りを考えながら、廊下を歩き始めた。
(さて、思いきり夫婦喧嘩に巻き込まれちゃったけど、そもそもの原因が私だものね。この際、ちょっと泉さんの肩を持つ事にするわ)
そして離れに向かって、迷う事なく自分に与えられていた客間に戻った幸恵は、手早く荷物を纏めて再び廊下に出た。そして一度玄関に行って荷物を置いてから、居間に顔を出してそこに居た綾乃と祐司に尋ねる。
「ねえ、和臣はまだ会議室とやらに居るの?」
「は、はい。そうみたいですけど……。幸恵さん、どうかしましたか?」
「分かったわ、ありがとう」
「え? あ、幸恵さん?」
短く会話を切り上げ、幸恵は仕事で使っているらしい部分の見当を付けて、そこに向かって歩き始めた。
「和臣、居る?」
途中、住み込みらしい使用人とすれ違い、目指す場所の位置を教えて貰った幸恵は、そこのドアを開けながら室内に向かって声をかけた。するとテーブルを挟んで地図を見ながら話し合っていたらしい数人の男達が、一斉に幸恵に視線を向ける。
「幸恵? どうかしたのか?」
「貴様……、邪魔だ。さっさと失せろ」
「黙れ、兄貴」
怪訝な顔を向けた和臣が居るのは想定内だったが、鋭く威嚇してきた篤志を認めて、幸恵は無意識にうんざりとした表情で溜め息を吐いてしまった。
(うわ~、帰って来ていたのね、諸悪の根源。でも確かにいきり立ってる雰囲気だし、泉さんと冷静に話とかできそうに無いわよね。もうこうなったら、乗りかかった船だわ)
そして幸恵は覚悟を決めて、頭の中で用意しておいた台詞を口にした。
「言われなくても出て行くわよ。こんな空気の悪い所に、いつまでもいる様な自虐趣味は無いわ。これから東京に帰るから、一言挨拶に来ただけ。それじゃあね」
「何だと!? もう一度言ってみろ!」
「止めろ兄貴! 幸恵、今から帰るなんて無理だろう!? ちょっと落ち着いてくれ!!」
素っ気なく手を振って踵を返した幸恵に、篤志は憤怒の形相で立ち上がり、和臣は血相を変えてそんな篤志の前に回り込んで身体を押さえつつ焦った声を上げた。それを聞いた幸恵は、再度二人の方に向き直る。
「確かにもう羽田行きの飛行機は無いでしょうけど、新幹線や高速バスは有るわよ。一晩ただ寝るだけでも嫌だって事位、察して欲しいわね。もう本当にうんざりなのよ。そこの横暴兄貴にも、その腰巾着のあんたにも。本当に泉さんがお気の毒だわ。どうせ泉さんの言い分なんか聞かずに、皆で寄ってたかって『そちらが言い過ぎたから頭を下げろ』って言い聞かせるんでしょう?」
「何だと!?」
「幸恵!!」
篤志は怒りで顔を赤く染め、和臣は狼狽を露わにしながら兄を押さえ続けたが、そんな二人を見ながら、幸恵は小さく肩を竦めて言い放った。
「好意的に迎えて貰えるとは流石に思っていなかったけど、ここに来てからのあんたの兄貴の陰険さには呆れ果てたし、その兄貴の立場を慮って抗議の一つもしないあんたにも、ほとほと愛想が尽きたのよ。この際、色々考え直したくなったって事」
幸恵が二人を睨み付けながらそう告げると、室内の空気が凍り付いた。そして中の人間が揃って視線を向ける中、青ざめた顔で少し黙り込んでいた和臣が、微妙に幸恵から視線を逸らしながら、静かに口にする。
「……分かった。じゃ俺達もお互いに少し、冷静に考える時間が必要だな。無理に引き止めないから。その代わり、駅前まではタクシーを使ってくれ。……綾乃。タクシーを一台呼んでくれ」
「あ……、は、はい。あの、でも……」
そこで使用人に呼ばれたのか、廊下から顔を見せた綾乃に和臣が呼びかけ、綾乃が険悪な空気と事情が分からない為おろおろしながらも、綾乃は携帯電話を取り出して電話番号を検索し始めた。それに幸恵は簡単に礼を言いつつ、さっさと玄関に向かって歩き出す。
「頼むわ。荷物を持って、外に出て待っているから」
そして黙って歩き出した幸恵に、祐司が追い縋って軽く腕を掴みつつ呆れた口調で窘めてきた。
「おい、幸恵! 何やってるんだ。下手に事を荒立てる必要は無いだろう」
「だっていい加減、飽き飽きしたんだもの。叔母さんの見舞いは取り敢えず済ませたし、もうここに用は無いわ」
「そうは言っても。和臣さんの立場が無いだろうが?」
「あいつの立場なんか、知った事じゃ無いわよ」
「幸恵!」
歩きながらそんなやり取りをした祐司だったが、翻意させるのは無理かと諦めて手を離し、黙って幸恵の後に付いて玄関に向かった。そして幸恵の中で、苛立たしさが膨張していく。
(そりゃあ、付いて来られたら困るけど、ちょっとあっさりし過ぎじゃない? もうちょっと怒るとか弁解するとか。追っても来る気配も見せないってどういう事よ!)
むかむかした気持ちのまま玄関に到着した幸恵は、置いてあったバッグを持ち上げ、迷う事無く下駄箱から自分の靴を取り出して履き終えた。そして真っ直ぐ門へと向かう。そして待つ事一・二分で、門前にタクシーが一台滑り込んで来た。
「じゃあ、気を付けて」
「分かってるわ。……それじゃあ、広島駅前までお願いします」
早速それに乗り込み、気遣わしげに言葉をかけてきた祐司に軽く頷いて、幸恵は運転手に声をかけた。そして動き出した車内で、冷静にこれからの段取りを考え始める。
(さて、それじゃあタクシーを使ったら足が付くし、まだギリギリ営業時間内だとは思うから、今夜のうちにレンタカーを借りておきましょうか。そして駐車場とホテルを確保と)
何となく最後に見た、何かを堪える様な表情をしていた和臣の顔を思い浮かべた幸恵だったが、それから意識を逸らす様に、次々と必要な作業を進めていった。
「本当ですか?」
思わず嬉しそうに顔を向けてきた美郷に、幸恵は頷いてから、推測した内容を口にする。
「ええ。美郷ちゃんは、自分が一緒に居たら足手まといになるし、発見されやすくなるけど、妊婦のお母さんを一人で出すのは心配なんでしょう? それに確かにここに居たら、周囲がこぞって『泉さんの気持ちは分かるけど、ここは泉さんから頭を下げてくれ』とか、言い聞かせてきそうだものね」
「はい、そうなんです。だからこの際、ちょっとお母さんに周囲の目を気にしないで、のんびりして貰おうと思いまして。本当にお願いできますか?」
「ええ。幸い明後日までは休みだし、明日と明後日で泉さんの滞在場所を決めて、送って行くわ」
「ありがとうございます。安心しました」
如何にも安心したらしく、無邪気に笑って礼を述べた美郷を見て、幸恵も無意識に頬を緩めた。
(あら、年相応の可愛い笑顔。確かに生意気かもしれないけど、母親想いの良い子じゃない)
何となくホッとしながら、幸恵はこれからの予定について言及した。
「じゃあそうと決まれば、私は早いところここから出ないとね」
「え? どうしてですか?」
不思議そうに美郷が問い返してきた為、幸恵はその理由を説明した。
「だって、泉さんと一緒にこっそり出たら、私まで行方不明になって騒ぎが大きくなるし、もしかしたら泉さんとの関連も疑われるかもしれないでしょう? だから私は一旦ここを出て車を調達して、明日の6時半に泉さんを迎えに来るわ。それなら足も心配要らないでしょう? ここはちょっと、市街地からは離れているし」
「あ、そうか。そこまでは考えていなかったです。でも和臣叔父さんはどうしますか? 幸恵さんを単独行動させてくれるかしら?」
「普通に言ったら無理ね。でも美郷ちゃん、そこら辺は考えて無かったの?」
「……はい、すっかり失念してました。面目ありません」
「そこら辺は任せて頂戴。自分で何とかするわ」
がっくりと項垂れ、傍目にもしっかり分かってしまう落ち込み方を見せた美郷に、幸恵は思わず噴き出したいのを堪える。
(嫌だ、どうしてくれようかしら、この子。素で落ち込んでるわよね? 可愛いじゃない)
そして幸恵は何とか顔付きを引き締めながら、オロオロと二人のやり取りを眺めていた泉に声をかけた。
「じゃあ、泉さん。今日は早めに休んで、明日に備えて下さいね? 6時半に裏の通用口、の方で良いのよね?」
後半は美郷に確認を入れると、彼女が小さく頷く。
「はい、宜しくお願いします」
「でも、幸恵さん」
しかし尚も躊躇う気配を見せる泉に、幸恵は静かに言い聞かせた。
「あくまでも第三者としての意見ですが、少し冷却期間を置いた方が、お互い冷静に話ができると思います。今の状態で話し合うのって、ちょっと気まずくありませんか? 加えて曖昧に済ませてしまったら、今後にしこりが残りそうな気がするんですが」
そこで泉は無言で真剣に考え込んでから、幸恵に向かってゆっくりと頭を下げた。
「私事で幸恵さんに、ご迷惑おかけしてしまいますが、宜しくお願いします」
「それじゃあ明朝に」
そして腰を上げた幸恵は、早速これからの段取りを考えながら、廊下を歩き始めた。
(さて、思いきり夫婦喧嘩に巻き込まれちゃったけど、そもそもの原因が私だものね。この際、ちょっと泉さんの肩を持つ事にするわ)
そして離れに向かって、迷う事なく自分に与えられていた客間に戻った幸恵は、手早く荷物を纏めて再び廊下に出た。そして一度玄関に行って荷物を置いてから、居間に顔を出してそこに居た綾乃と祐司に尋ねる。
「ねえ、和臣はまだ会議室とやらに居るの?」
「は、はい。そうみたいですけど……。幸恵さん、どうかしましたか?」
「分かったわ、ありがとう」
「え? あ、幸恵さん?」
短く会話を切り上げ、幸恵は仕事で使っているらしい部分の見当を付けて、そこに向かって歩き始めた。
「和臣、居る?」
途中、住み込みらしい使用人とすれ違い、目指す場所の位置を教えて貰った幸恵は、そこのドアを開けながら室内に向かって声をかけた。するとテーブルを挟んで地図を見ながら話し合っていたらしい数人の男達が、一斉に幸恵に視線を向ける。
「幸恵? どうかしたのか?」
「貴様……、邪魔だ。さっさと失せろ」
「黙れ、兄貴」
怪訝な顔を向けた和臣が居るのは想定内だったが、鋭く威嚇してきた篤志を認めて、幸恵は無意識にうんざりとした表情で溜め息を吐いてしまった。
(うわ~、帰って来ていたのね、諸悪の根源。でも確かにいきり立ってる雰囲気だし、泉さんと冷静に話とかできそうに無いわよね。もうこうなったら、乗りかかった船だわ)
そして幸恵は覚悟を決めて、頭の中で用意しておいた台詞を口にした。
「言われなくても出て行くわよ。こんな空気の悪い所に、いつまでもいる様な自虐趣味は無いわ。これから東京に帰るから、一言挨拶に来ただけ。それじゃあね」
「何だと!? もう一度言ってみろ!」
「止めろ兄貴! 幸恵、今から帰るなんて無理だろう!? ちょっと落ち着いてくれ!!」
素っ気なく手を振って踵を返した幸恵に、篤志は憤怒の形相で立ち上がり、和臣は血相を変えてそんな篤志の前に回り込んで身体を押さえつつ焦った声を上げた。それを聞いた幸恵は、再度二人の方に向き直る。
「確かにもう羽田行きの飛行機は無いでしょうけど、新幹線や高速バスは有るわよ。一晩ただ寝るだけでも嫌だって事位、察して欲しいわね。もう本当にうんざりなのよ。そこの横暴兄貴にも、その腰巾着のあんたにも。本当に泉さんがお気の毒だわ。どうせ泉さんの言い分なんか聞かずに、皆で寄ってたかって『そちらが言い過ぎたから頭を下げろ』って言い聞かせるんでしょう?」
「何だと!?」
「幸恵!!」
篤志は怒りで顔を赤く染め、和臣は狼狽を露わにしながら兄を押さえ続けたが、そんな二人を見ながら、幸恵は小さく肩を竦めて言い放った。
「好意的に迎えて貰えるとは流石に思っていなかったけど、ここに来てからのあんたの兄貴の陰険さには呆れ果てたし、その兄貴の立場を慮って抗議の一つもしないあんたにも、ほとほと愛想が尽きたのよ。この際、色々考え直したくなったって事」
幸恵が二人を睨み付けながらそう告げると、室内の空気が凍り付いた。そして中の人間が揃って視線を向ける中、青ざめた顔で少し黙り込んでいた和臣が、微妙に幸恵から視線を逸らしながら、静かに口にする。
「……分かった。じゃ俺達もお互いに少し、冷静に考える時間が必要だな。無理に引き止めないから。その代わり、駅前まではタクシーを使ってくれ。……綾乃。タクシーを一台呼んでくれ」
「あ……、は、はい。あの、でも……」
そこで使用人に呼ばれたのか、廊下から顔を見せた綾乃に和臣が呼びかけ、綾乃が険悪な空気と事情が分からない為おろおろしながらも、綾乃は携帯電話を取り出して電話番号を検索し始めた。それに幸恵は簡単に礼を言いつつ、さっさと玄関に向かって歩き出す。
「頼むわ。荷物を持って、外に出て待っているから」
そして黙って歩き出した幸恵に、祐司が追い縋って軽く腕を掴みつつ呆れた口調で窘めてきた。
「おい、幸恵! 何やってるんだ。下手に事を荒立てる必要は無いだろう」
「だっていい加減、飽き飽きしたんだもの。叔母さんの見舞いは取り敢えず済ませたし、もうここに用は無いわ」
「そうは言っても。和臣さんの立場が無いだろうが?」
「あいつの立場なんか、知った事じゃ無いわよ」
「幸恵!」
歩きながらそんなやり取りをした祐司だったが、翻意させるのは無理かと諦めて手を離し、黙って幸恵の後に付いて玄関に向かった。そして幸恵の中で、苛立たしさが膨張していく。
(そりゃあ、付いて来られたら困るけど、ちょっとあっさりし過ぎじゃない? もうちょっと怒るとか弁解するとか。追っても来る気配も見せないってどういう事よ!)
むかむかした気持ちのまま玄関に到着した幸恵は、置いてあったバッグを持ち上げ、迷う事無く下駄箱から自分の靴を取り出して履き終えた。そして真っ直ぐ門へと向かう。そして待つ事一・二分で、門前にタクシーが一台滑り込んで来た。
「じゃあ、気を付けて」
「分かってるわ。……それじゃあ、広島駅前までお願いします」
早速それに乗り込み、気遣わしげに言葉をかけてきた祐司に軽く頷いて、幸恵は運転手に声をかけた。そして動き出した車内で、冷静にこれからの段取りを考え始める。
(さて、それじゃあタクシーを使ったら足が付くし、まだギリギリ営業時間内だとは思うから、今夜のうちにレンタカーを借りておきましょうか。そして駐車場とホテルを確保と)
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