教科書通りの恋を教えて

山鳩由真

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後日談ーもう一度あの時をー 双子の義弟6

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 ウィリーとノアのもともとの両親は女型のアルファ同士だった。ノアの物心がつく頃には既に離婚していて、二人の子供は母親メアリーに引き取られていた。別れた方の母親と子供二人との関係は良好で、毎月面会をしていた。
 甘えん坊で癇癪持ちの子供だった九歳のノアは、ある日メアリーに「カナと結婚して一緒に暮らしたい」と告白されて大いに荒れた。メアリーは子供二人にカナの話を何度もしていた。最近夫を亡くしたばかりの日本人。キャビンアテンダントをしていて、優しく穏やかな素敵な人。ノアは、カナとメアリーが付き合いはじめるまでは、メアリーのオノロケ話を曖昧に相づちをうって我慢していた。しかし、結婚となると話は別だった。

「俺のママは二人だけだ、新しい家族なんか絶対認めない! メアリーの相手ってやつもパートナーが死んだばっかりなのに、薄情すぎる、きっととんでもないbitchだよ」

 子供部屋に戻ってから、ノアはウィリーに盛大に愚痴った。恋する瞳をしたメアリーの前で言うのはさすがに憚られたことを捲し立てる。

「写真きれいだったじゃん。俺はママが増えるの楽しみだけどな。にーちゃんができるのも」
 一方でウィリーはベッドに寝そべって何も気にした風でもなく、のんびりとこたえる。いらない紙をビリビリ破きながら発散していたノアは、ウィリーの言葉にピクリと反応した。

「にーちゃん?」

「相手の人、カナには息子がいるっていってたじゃん。十八歳だってさ」
「九歳も上か……。でも思いきりballs蹴れば勝てるよな」
「ノア……お前、初対面のにーちゃんに何する気なんだよ」

 その時から、日本に行きカナとその息子に会うまでの間、ノアは九歳上のカナの息子“にーちゃん”をどう倒すかだけをシミュレーションするようになった。

 そして顔合わせの当日、現れたカナは清楚を絵に描いたような控えめな笑顔の美しい人だった。ノアは、その場で浴びせてやろうと思っていた罵詈雑言を思わず飲み込み、促されるまま握手をした。

「初めまして。ウィリー、ノア。俺の名前は郁です。よろしく」
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