教科書通りの恋を教えて

山鳩由真

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後日談ーもう一度あの時をー 双子の義弟5

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「いってぇ……!?」
「ノア! よせって!」
「俺と郁は愛しあってた! オフロに一緒に入ったし、同じフトンで寝たし」
「ノア、それ十二年前の話だろ。オフロは俺も一緒だし、カワノジで寝ただけだし」
「郁は俺に、I love youって返してくれた!」
「そりゃ九歳の弟に言われたら兄貴だったら応えるよ、ちなみに俺だって言われてる」
 ウィリーとノアは出会う前と同じように言い争いを始めた。どうやら横恋慕する気のノアをウィリーが止めようとしているらしい。室見は引き離した際に傷めなかったか確かめるために、郁の両手を検分する。
「ノアのほうは、郁に気があるみたいだね」
「そんな素振りは今までなかったが……」
 困惑した顔の郁は本当に思い当たらないらしい。色恋沙汰に鈍い郁だから、順当かと内心舌打ちをする。

「ごめん、二人とも。ノアは郁にずっと恋してたんだ」

 ノアを羽交い締めにしながらウィリーがすまなそうな顔をする。
 さて、どう牽制したものかと室見が思案していると、驚くことに先に郁が口を開いた。

「ノア、気づかなくて悪かった。俺はもう彼と番になっているから君とは結婚できないけれど、ノアなら素敵な相手と出会えると思う」

 実にはっきり、きっぱりと振られたノアの瞳にはみるみる涙がたまっていった。

「郁ぅ……」

 うらめしそうな顔のノアの前に、今度は室見が立ちはだかる。

「俺が必ず郁を幸せにするので、ノアさんは安心して郁のことは忘れてくださいね」

 この上なく優しい語調だったが、室見に正面からその言葉を浴びせられたノアの顔色は真っ青になっていた。


 ウィリーの運転する車に乗り、四人は母親たちの待つ家へと向かった。その道すがら、失恋して脱け殻のようになったノアに代わり、ウィリーが十二年前から続くノアの初恋を暴露した。
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