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75 歪
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遊園地を後にしてからさつきの家に着くまで、二人はほぼ無言だった。
電車を乗り継いで家に近づくと、さつきはとんでもないことを言ってしまったのではないかと、怖くなった。
鍵を取り出したが、手が震えて玄関の鍵穴に入れるのに時間がかかった。
その間も、成井田がずっと横にいる。
お互いの家を行き来していたが、今日はサークルの仕事をする訳ではない。
まさか。
本当に。
自分から切り出した癖に、何を考えているんだろう。
混乱した頭のまま、震える手で鍵を回した。
ドアハンドルに手を掛けるが、引いたらその後どうなってしまうかと考えると躊躇われた。
成井田と、出来てしまったら。
しかしこの期に及んで迷うさつきの手の上から成井田の手が重ねられて、あっさりとドアは開いた。
部屋に入った瞬間に、さつきは成井田に抱き締められた。体を反転させられて、さつきの体はドアに押し付けられた。
「夢みたいです。嬉しい」
成井田が囁き、さつきの唇に唇で触れる。
さつきの顔は熱く火照り、顔の近さに息をするのも躊躇われて苦しくなった。
どうしよう。こんなこと。どうすれば。
考えは纏まらないまま、行為は進んでしまう。
しかし次の瞬間、衝撃を受けた成井田の体は力を失って倒れた。
「ナ、ナル……!?」
急に体重がのし掛かり、さつきは咄嗟に成井田の脇を支えるが支えきれず床に崩れ落ちる。
「手が早いな成井田くん」
頭上から聞こえた声は、明朗で聞き馴染んだものだった。
さつきは何が起こったのか解らず、震えながら声の主を見上げる。
「でもまさかこんなにあっさり誘いに乗るなんて思わなかったよ」
薄暗い廊下に立つユタは、シンプルな黒のプルオーバーとスラックスを身につけているだけなのに、悪魔的な美しさがあった。
ゆらりと近づくユタの影に、さつきは怯えた声を出した。
「ユ、ユタさ……」
「俺の言ったとおりだったね。さつき」
ユタの声や表情から、やはり感情は読み取れない。さつきには、いつもの優しいユタと変わらなく見える。
だからこそ、恐ろしくて堪らなかった。
ユタは気を失った成井田のこめかみを確認して、「血は出てないな」と呟くとその体を引きずって中に運ぶ。
「あ、な、成井田を離してあげてください」
さつきの部屋まで連れてきた成井田の腕を木製の椅子に、足首を机の足に、ユタは拘束具を使って手際良く固定した。
「さつき。成井田くんがしっかりさつきを諦められるようにしてあげないと。いつまでも未練を残してちゃ可哀想だからね」
ユタはさつきを諭すように言った。
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