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しおりを挟む成井田の背中を見つめながら、さつきはもやがかかったような心の中を整理しようと必死だった。
誰が相手でも、二人きりなら解散するのは当然だ。自分が嫌われているからじゃ、ない、はず……。
でも、自分は成井田に酷いことばかりしている気がする。告白を断ったし、ユタに付けられた痕のことを心配してくれたのに、手を振り払ったり、優柔不断な態度ばかりして、たぶん、たくさん傷つけている。嫌われて当然だ。それでも成井田は、皆の前でも普通に接してくれて優しい。これからも、友達でいられたら。サークル活動をしている間だけでも、仲間として側に居られる時間があるだけで嬉しい。
ただ、今日は、久しぶりに一緒に過ごして、話が出来ると思っていただけに、この時間がもうすぐ終わってしまうのだと思うととてつもなく寂しい気持ちが溢れてくる。
仕方ない。二人きりでは、サークル活動というより……
『デートうまくやってくださいね! 応援してます! (らぶらぶ)』
桐島のメッセージを思い出して、さつきはカッと頬が熱く燃えるような気がした。
もし二人きりだとしても、俺たちのは、デートじゃ、ない。友達だから。
「うっ」
「あっ?! すみません、急に止まって」
前を歩いていた成井田の背中に鼻をぶつけたさつきは、もう退場口についてしまったのかと辺りを見回した。
周りには、ジェットコースターにコーヒーカップ、お化け屋敷、ゴーカートにメリーゴーラウンドがあった。
そこはまだ、遊園地の中だった。
「バーベキューは大人数じゃないとダメかもですが、買い食いしながら遊園地は、二人でも楽しめると思うんです。ちょっとだけ、付き合って貰えませんか?」
成井田の頬も、少しだけ赤くなっているように見えた。
平日の遊園地は人がまばらで、比率では若い男女が多い。
同性のみで三人以上のグループならいるものの、男二人組は成井田とさつきくらいだ。
自分と一緒にいることで、成井田が変な目で見られないだろうか。
「男同士で……、俺と一緒にいたら、成井田は嫌じゃないかな」
「嫌だったら誘わないですよ」
「でも、男同士で……」
「俺、それはもう気にしないって、決めたんです」
さつきははっとして、成井田を見上げた。恐る恐る視線を移した先には、笑顔があった。精悍な顔立ちだが、さつきを見る表情は蕩けるように優しく見える。
「友達なら普通ですよね。俺、先輩と遊びたいです。思い出が欲しいです。折角、今日来たし。ね」
ほら、行きましょう、と成井田に手を引かれて行った先は、入り口に髪の長い白装束の女性のマネキンが置かれたお化け屋敷だった。
「ま、まって、俺、そこだめ、かも」
「ここ、行ったことあるんですか?」
慌てるさつきに成井田が振り返って聞く。
さつきは首を振った。
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