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「え」
成井田は、間の抜けた声で返事をした。
合宿の宿泊場所である古民家を改修した民宿の縁側で、中之島は成井田に思わぬ事を話したのだった。
合宿一日目の夜、メンバーは深夜一時を過ぎてようやく寝静まった。日中歩き回って疲労が溜まっている筈のメンバーだったが、夜の飲み会も大いに盛り上がり、そのまま大広間に布団を敷いて雑魚寝をした。他のメンバーの例に漏れず壁にもたれてうとうとしていた成井田だったが、酒瓶の倒れた音で目が覚めてしまい、外の空気を吸おうと障子を開けて縁側に出た。生温い夜風に目を細めると、不意に声を掛けられた。
「トイレ?」
縁側に腰掛けて、中之島が一服していた。
「いえ、目が覚めてしまって」
中之島は、片平のイビキ煩いよな、と笑いながら浴衣の裾を摘んで灰皿にタバコを押し付ける。
「明日、ゆっくりめ出発にしようか」
「そうですね」
隣に座った成井田に、中之島は障子の向こうを親指で示すと、前部長らしく提案をした。一年の未成年者以外は、明日は二日酔いでスッキリ起きる事は出来ないだろう。昼食を予約しているが、時間をずらせるか朝イチで店に聞かなければと成井田は明日の段取りを考えた。
「コウちゃんのことだけどさ」
ぽつりと、中之島からさつきの名前が出て、成井田は思わず肩を揺らした。
さつきと中之島は幼なじみで、仲が良い。もしかしたら、成井田がさつきに告白したことまで知っているかも知れない。成井田は緊張しながら中之島の次の言葉を待った。
しかし、中之島の話は思ってもみないことだった。
「コウちゃんが親しくしてる、ユタさんて人知ってる? 渋谷で小児科医してる人なんだけど」
「え」
中之島の言葉の意味が解らず、成井田は間の抜けた声を出した。
“ユタ”は知っている。さつきに仲介して貰い、川喜田事務所や業界の話を教えてくれた人物で、さつきの、おそらく恋人だ。だが、その人は小児科医ではない。
「本名は柊木先生って言ってさ。コウちゃんはその人のこと、建築士だって俺に言ってて」
「あ……」
そこまで聞いて、成井田は先週家に来た姉とのやり取りを思い出した。
「え」
成井田は、間の抜けた声で返事をした。
合宿の宿泊場所である古民家を改修した民宿の縁側で、中之島は成井田に思わぬ事を話したのだった。
合宿一日目の夜、メンバーは深夜一時を過ぎてようやく寝静まった。日中歩き回って疲労が溜まっている筈のメンバーだったが、夜の飲み会も大いに盛り上がり、そのまま大広間に布団を敷いて雑魚寝をした。他のメンバーの例に漏れず壁にもたれてうとうとしていた成井田だったが、酒瓶の倒れた音で目が覚めてしまい、外の空気を吸おうと障子を開けて縁側に出た。生温い夜風に目を細めると、不意に声を掛けられた。
「トイレ?」
縁側に腰掛けて、中之島が一服していた。
「いえ、目が覚めてしまって」
中之島は、片平のイビキ煩いよな、と笑いながら浴衣の裾を摘んで灰皿にタバコを押し付ける。
「明日、ゆっくりめ出発にしようか」
「そうですね」
隣に座った成井田に、中之島は障子の向こうを親指で示すと、前部長らしく提案をした。一年の未成年者以外は、明日は二日酔いでスッキリ起きる事は出来ないだろう。昼食を予約しているが、時間をずらせるか朝イチで店に聞かなければと成井田は明日の段取りを考えた。
「コウちゃんのことだけどさ」
ぽつりと、中之島からさつきの名前が出て、成井田は思わず肩を揺らした。
さつきと中之島は幼なじみで、仲が良い。もしかしたら、成井田がさつきに告白したことまで知っているかも知れない。成井田は緊張しながら中之島の次の言葉を待った。
しかし、中之島の話は思ってもみないことだった。
「コウちゃんが親しくしてる、ユタさんて人知ってる? 渋谷で小児科医してる人なんだけど」
「え」
中之島の言葉の意味が解らず、成井田は間の抜けた声を出した。
“ユタ”は知っている。さつきに仲介して貰い、川喜田事務所や業界の話を教えてくれた人物で、さつきの、おそらく恋人だ。だが、その人は小児科医ではない。
「本名は柊木先生って言ってさ。コウちゃんはその人のこと、建築士だって俺に言ってて」
「あ……」
そこまで聞いて、成井田は先週家に来た姉とのやり取りを思い出した。
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