ママチャリってドラゴンですか!? ~最強のミスリルドラゴンとして転生した愛車のママチャリの力を借りて異世界で無双冒険者に~ 

たっすー

文字の大きさ
上 下
83 / 100

協力者

しおりを挟む
「その協力者がいたとして、今この場所にいるとは限らないだろ」

 オレが言うとレミックは頷く。

「そうね。いる可能性の方が低いでしょうね。だからといって警戒しないでいい理由にはならないけれど」

 レミックの言葉の棘がいつの間にか戻ってきているような気がする。
 あんまりバカっぽい質問とかはしない方がいいんだろうか。

「荒事が得意な可能性も低いだろうし、そいつがリッチの仇を撃とうと考えることもきっとないだろう。それでもそいつがこの近くに潜んでいて、向こうはオレたちの顔を知っているのにオレたちは向こうの顔を知らないという事態になることは避けなければならん」

 ルシッドが言った。特に強い感情が込められているふうでもなかったが、力強い声だった。
 たしかに貴人なんかの使いっぱしりをするようなヤツに一方的にこちらの素性だけを知られているとなると、どんな不利益を被るか分かったものじゃない。

「あとは戦利品だな」

 ヤムトが言った。その目はリッチが出てきた扉へと向けられていた。
 オレたち冒険者の収入のうち、依頼攻略時に得られる戦利品は大きなウエイトを占めている。
 とはいえ依頼の内容にもよるが相手ターゲットが人間でその持ち物や財産を持ち帰れば、火事場泥棒、いや下手をすれば強盗行為にもなってしまう。
 しかしモンスターが相手の時はそれほど問題もおきない。貴重品を持っているモンスターは少ないが骨や肉や皮などは素材になるし、魔法を使う種族だった場合は魔力結晶を持っていることもある。
  魔力結晶は魔術具の作成に必要なため高値で取引されるし、特殊な例ではあるがシルバーのようにその体が貴重な金属でできていれば、下手な金銀財宝などかすむぐらいの価値があったりもする。

 ちなみに魔力結晶とは、モンスターが魔法を行使した際に出る魔力滓まりょくかすが体内にとどまり結晶化したものだ。
 強い魔法を使うほどに滓は濃い物となり、その量も増える。そして魔力結晶としてもサイズが大きく良質な物になる。高位のモンスターになればなるほど質の良い魔力結晶が得られるのはこのためだ。

 通常であれば一定のサイズになれば自然排泄されるので、魔法を行使するモンスターの棲息する場所には魔力結晶が落ちている。
 とはいってもきちんと排出されている結晶のサイズは砂粒みたいなものなのでオレたちがそれに気付けることはまずない。

 戦利品となるのは、なんらかの異常で魔力滓が排出されないまま体内に溜まり続けて大きなサイズの結晶になった物に限られる。
 要するに、胆石や尿路結石の魔力版みたいのなものなのだ。
 一般的なサイズは小石から拳大ぐらいだが、形状に関しては様々だ。基本的には生姜のようにポコポコした物が多いが、そうでないものも少なくない。トゲトゲしていたりブドウの房のようだったり、数珠つなぎだったり、カットされた宝石のようだったりと千差万別だ。
 色にいたっては赤っぽいのから黒、青、緑、白と色相環を制覇できるぐらいに多様だが、ひとつの例外もなく結晶自体が魔力の光を発している。

 ちなみに人間に魔力結晶ができないのは、人間は術式を使用するからだといわれている。
 そもそも人間は魔法が使えるようにはできていない。魔法を行使する時は、術式を使用して少しの無駄もなく体内の魔力を掻き集めて、あるいは魔法によっては周囲の魔力を集めさえしてようやく発動に至るのだ。だから魔力滓などが出ることはないらしい。
 オレみたいに術式を使用してすら魔法を使えない者もいるぐらいだ。大雑把にやっても魔法を使えてしまうモンスターと違って人間に魔力結晶ができないのは至極当たり前のことのように思える。

 で、術式を使って魔法を使っていたリッチには魔力結晶はできなかっただろうが、何より貴人だ。
 その持ち物はどれもこれもが貧乏冒険者にとってはドン引きするぐらいの価値があるんじゃないだろうか。

 だけど、

「なあ、リッチってモンスター扱いでいいのか?」

 リッチには人間と変わらない自我がある。というか識人が自我と知性をたもったままアンデッド化した存在なのだから人間よりも高度な存在といえなくもない。死体好きの変態だけど。
 今回の依頼内容は山賊の討伐で、リッチは傭兵の雇い主ではあったけど、山賊行為の黒幕だったとはいい難いわけで。
 襲われたので戦いはしたが、これで家財道具を持って帰ったりすれば普通に強盗殺人とかになるのではないだろうか。

「モンスター扱いで良いと思いますよ」

 オレの問いかけに返答したのは耳慣れない声だった。
 皆が弾かれたように声のしたほうを見た。
 リッチの部屋の扉からまたひとつ、人影が姿を現していた。

 声と体格からして男のようだ。
 黒いシャツと黒いズボン、黒いブーツと、全身を黒一色で統一している。前にいた世界だったらアーティストかちょっと痛いやつに限られる服装だが、この世界では職人たちなどはわりと汚れが目立ない黒っぽい服ばかりを選んだりする。しかし職人のそれはあまり丁寧に染められているわけでもないので、大抵は色褪せて茶色や灰色になる。

 現れた人影の服の黒は黒々としていた。よほど丁寧に染められた布なのか、あるいはまだ染めたばかりで新しい布なのか。
 いずれにせよ引っ掛かるポイントはそこではない。
 男は仮面を付けていたのだ。鈍く輝く銀色で、浮彫の装飾もあるにはあるが目の脇から頬にかけてのみのシンプルさ。無表情であるが、少し顎を引けば薄笑いを浮かべているようにも見える。

「何者だ」

 リッチの部屋から出てきたのだからリッチの仲間と考えて間違いないようには思うが、反射的にオレはそう訊いていた。

「あなた方が話していた、ここの主の協力者です」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが…… アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。 そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。  実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。  剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。  アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

スライムと異世界冒険〜追い出されたが実は強かった

Miiya
ファンタジー
学校に一人で残ってた時、突然光りだし、目を開けたら、王宮にいた。どうやら異世界召喚されたらしい。けど鑑定結果で俺は『成長』 『テイム』しかなく、弱いと追い出されたが、実はこれが神クラスだった。そんな彼、多田真司が森で出会ったスライムと旅するお話。 *ちょっとネタばれ 水が大好きなスライム、シンジの世話好きなスライム、建築もしてしまうスライム、小さいけど鉱石仕分けたり探索もするスライム、寝るのが大好きな白いスライム等多種多様で個性的なスライム達も登場!! *11月にHOTランキング一位獲得しました。 *なるべく毎日投稿ですが日によって変わってきますのでご了承ください。一話2000~2500で投稿しています。 *パソコンからの投稿をメインに切り替えました。ですので字体が違ったり点が変わったりしてますがご了承ください。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

悪役令息に転生したけど、静かな老後を送りたい!

えながゆうき
ファンタジー
 妹がやっていた乙女ゲームの世界に転生し、自分がゲームの中の悪役令息であり、魔王フラグ持ちであることに気がついたシリウス。しかし、乙女ゲームに興味がなかった事が仇となり、断片的にしかゲームの内容が分からない!わずかな記憶を頼りに魔王フラグをへし折って、静かな老後を送りたい!  剣と魔法のファンタジー世界で、精一杯、悪足搔きさせていただきます!

転生令嬢の食いしん坊万罪!

ねこたま本店
ファンタジー
   訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。  そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。  プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。  しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。  プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。  これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。  こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。  今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。 ※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。 ※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。 馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。 大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。 精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。 人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。

異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー:ファンタジー世界の仮想戦記です、試し読みとお気に入り登録お願いします。

処理中です...