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勘
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だいたい、おおよそ、このぐらい
感覚だけが働いていた。
体が動いたの無意識にだ。
本当に風切り音が耳へ届いたのだとしても、オレがそれに反応できるはすもない。
矢がレミックに向かって射かけられたのだと認識した時にはすでに、剣はレミックの胸の前の空間を斬っていた。
手応えがあった。飛来した矢を斬った手応えだ。
オレは剣の達人か何かなのか?
いやいやいや、おかしいだろう。そもそも矢が飛んできたことすら気付けてないのだ。
「あ、ありがとう」
レミックがか掠れた声でそう言った。自分に飛んできた矢をオレが斬り落としたことに気付いたらしい。
「とにかく移動するぞ」
なんとかそう言った。
自分に何が起きたのかが理解できない。
だがすぐに次の矢が飛んでくる可能性が高い。レミックを促して木と藪の陰になる位置に移動する。
「敵の後衛が出てきてるの?」
「分からない」
ルシッドの光の攻撃で敵前衛は全滅した。
その後でオレたちは矢に狙われた。洞窟から敵の第二陣が出てきたと考えるのが妥当なところだ。
だけど、そうではないようにオレは感じていた。
改めてオレが斬り落とした矢と、それが飛んできたであろう方角を見る。滝の方からだったはずだ。
手応えを思い出してみる。角度的に上の方からから飛んできたような気もする。
滝の背後の崖を見る。岩棚の幾つかには葉の茂る灌木が生えている。身を隠して洞窟の入口を見張るにはうってつけの場所だ。
「あの辺りに魔法を撃てるか?」
オレが言うと、
「分かってる」と返ってきた。
振り返ると、オレの視線の先を追ったらしくレミックも崖の方を見上げていた。
「繁みを順番に潰していくわ」
言葉には力が戻っていた。
礼の声が弱々しかったので戦意の喪失を心配したが、杞憂だったようだ。
流石はギルドナンバーワンパーティのメンバーといったところだろうか。
「最初にあの滝の左側の上から三番目の茂みを狙ってくれ」
「あんまり大きくないやつね。でもどうして?」
「なんとなくの勘だよ」
「勘ね、まあいいわ。あなたは私が全く気付いてない飛んでくる矢を防いでくれた。その勘は信じるに価する」
「いや、ほんとにただの勘だからな」
「テウ・キテガ・イギソ・テブツレコレコ・イース」
レミックが魔法言語を口にした。
ワンドの先が宙になにかの絵を描くかのように踊る。
「シュウ」
小さいが鋭い声を響かせながらレミックはワンドを突き出した。
が、なにも起こったようには見えない。
「失敗?」
そう訊くとレミックは首を横に振った。
「肉眼では確認できないけど、魔法は発動してるわ。何も起きないのはあの繁みがハズレだったからよ」
その言葉が終わるか終わらないかのうちに、件の繁みから男が一人ふらりと立ち上がった。そのままよろよろと歩を進めたかと思うと、足を踏み外すして岩棚から落ちていった。
「お、当たりだ。何か呪いみたいなやつなのか?」
オレがそう言うとレミックはくすりと笑った。
「まさか。
水の礫を撃つ魔法よ。滝から小石ぐらいの礫を十数発作ってあの繁みに撃ち込んだんだけど、ここからじゃ小さくて見えないのよ」
「なるほど。水でできてるならなおさら見えないよな」
滝から繁みは直線で繋ぐことはできない。礫は術師の意思でその軌道を操れるのだろう。
さらには単発ではなく複数の礫を同時に放てるという。
まるでコントロール自在の散弾銃だ。心強いといえば心強いが、恐ろしい魔法だ。
「一発目で当たりを引くなんて、やっぱりあなたの勘は当てになるわ」
「いや、あの一人だけどは限らない。撃ってみたら全部の繁みに敵が隠れてたってことになるかも知れないぞ」
「それは今から確かめてみるわ」
言うとレミックは再びワンドの先端を虚空に走らせ始めた。
感覚だけが働いていた。
体が動いたの無意識にだ。
本当に風切り音が耳へ届いたのだとしても、オレがそれに反応できるはすもない。
矢がレミックに向かって射かけられたのだと認識した時にはすでに、剣はレミックの胸の前の空間を斬っていた。
手応えがあった。飛来した矢を斬った手応えだ。
オレは剣の達人か何かなのか?
いやいやいや、おかしいだろう。そもそも矢が飛んできたことすら気付けてないのだ。
「あ、ありがとう」
レミックがか掠れた声でそう言った。自分に飛んできた矢をオレが斬り落としたことに気付いたらしい。
「とにかく移動するぞ」
なんとかそう言った。
自分に何が起きたのかが理解できない。
だがすぐに次の矢が飛んでくる可能性が高い。レミックを促して木と藪の陰になる位置に移動する。
「敵の後衛が出てきてるの?」
「分からない」
ルシッドの光の攻撃で敵前衛は全滅した。
その後でオレたちは矢に狙われた。洞窟から敵の第二陣が出てきたと考えるのが妥当なところだ。
だけど、そうではないようにオレは感じていた。
改めてオレが斬り落とした矢と、それが飛んできたであろう方角を見る。滝の方からだったはずだ。
手応えを思い出してみる。角度的に上の方からから飛んできたような気もする。
滝の背後の崖を見る。岩棚の幾つかには葉の茂る灌木が生えている。身を隠して洞窟の入口を見張るにはうってつけの場所だ。
「あの辺りに魔法を撃てるか?」
オレが言うと、
「分かってる」と返ってきた。
振り返ると、オレの視線の先を追ったらしくレミックも崖の方を見上げていた。
「繁みを順番に潰していくわ」
言葉には力が戻っていた。
礼の声が弱々しかったので戦意の喪失を心配したが、杞憂だったようだ。
流石はギルドナンバーワンパーティのメンバーといったところだろうか。
「最初にあの滝の左側の上から三番目の茂みを狙ってくれ」
「あんまり大きくないやつね。でもどうして?」
「なんとなくの勘だよ」
「勘ね、まあいいわ。あなたは私が全く気付いてない飛んでくる矢を防いでくれた。その勘は信じるに価する」
「いや、ほんとにただの勘だからな」
「テウ・キテガ・イギソ・テブツレコレコ・イース」
レミックが魔法言語を口にした。
ワンドの先が宙になにかの絵を描くかのように踊る。
「シュウ」
小さいが鋭い声を響かせながらレミックはワンドを突き出した。
が、なにも起こったようには見えない。
「失敗?」
そう訊くとレミックは首を横に振った。
「肉眼では確認できないけど、魔法は発動してるわ。何も起きないのはあの繁みがハズレだったからよ」
その言葉が終わるか終わらないかのうちに、件の繁みから男が一人ふらりと立ち上がった。そのままよろよろと歩を進めたかと思うと、足を踏み外すして岩棚から落ちていった。
「お、当たりだ。何か呪いみたいなやつなのか?」
オレがそう言うとレミックはくすりと笑った。
「まさか。
水の礫を撃つ魔法よ。滝から小石ぐらいの礫を十数発作ってあの繁みに撃ち込んだんだけど、ここからじゃ小さくて見えないのよ」
「なるほど。水でできてるならなおさら見えないよな」
滝から繁みは直線で繋ぐことはできない。礫は術師の意思でその軌道を操れるのだろう。
さらには単発ではなく複数の礫を同時に放てるという。
まるでコントロール自在の散弾銃だ。心強いといえば心強いが、恐ろしい魔法だ。
「一発目で当たりを引くなんて、やっぱりあなたの勘は当てになるわ」
「いや、あの一人だけどは限らない。撃ってみたら全部の繁みに敵が隠れてたってことになるかも知れないぞ」
「それは今から確かめてみるわ」
言うとレミックは再びワンドの先端を虚空に走らせ始めた。
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