ママチャリってドラゴンですか!? ~最強のミスリルドラゴンとして転生した愛車のママチャリの力を借りて異世界で無双冒険者に~ 

たっすー

文字の大きさ
上 下
45 / 100

イカ対獣人

しおりを挟む
 ボスイカは全身を青く発光させた。
 白かった体が空けて見え、内臓や触手の芯が青く浮かび上がる。まるで光だけでできた生物のようだ。
 半身が浸かっている湖の水も光が零れ落ちたかのように青く染まっている。
 イカの巨大さとも相まって神々しい絵面だ。
 大人の頭部ほどもある目が、ひときわ強い光を放ちながら無感情にオレたちを見ていた。

 ヤムトの誤算はいくつかあるが、もっとも大きな誤算は、一緒にいるのがオレだということだろう。
 ここには肩を並べて剣を振るルシッドも、魔法で援護してくれるレミックもいない。
 もちろんオレは戦力としては頭数に入らない。むしろ足を引っ張る可能性のほうが高いぐらいだ。
 それも加味したうえで戦うことを選んでいるのだろうが、どうしたって無謀な挑戦に思えてしまう。まあヤムトなら、ヤバくなったら逃げるぐらいのことはできそうだけど。
 シルバーが来さえすれば、この邪神イカも簡単に制圧できるのかもしれないが、いまだ呼びかけに反応はない。あのチャリ野郎は山を駆け回るのに夢中でオレのことを忘れているに違いない。
 とりあえずオレにできることといえば、邪魔にならないようにこの戦闘から離れていることぐらいだ。

まと自ら光ってくれるんだから、こんなにやりやすいことはない」

 微塵も怯むことなくヤムトは駆ける。

 その軌跡に燐光の残像を残しながら、触手がヤムトに襲い掛かった。二本同時だ。

 突進する速度は落とさず、左右にステップを踏んでヤムトは攻撃をかわす。

 ボスイカの触手は数こそ多いが、攻撃に使用するのはひと際長い二本だけのようだ。
 しかも攻撃パターンは鞭のように叩きつけるだけらしく、避けられた触手は一度引き戻される。
 次の攻撃を繰り出した時には、ヤムトはすでにイカの間近まで迫っていた。

 戦鎚の攻撃圏内だが、正面からいったのでは無数の触手に阻まれるだろう。
 ヤムトはヘッドスライディングのように頭から飛び込むと前回り受け身の要領で立ちイカの右側に位置取りした。激しい水しぶきがあがる。
 イカの巨大な目の前にヤムトはいた。戦鎚の攻撃圏内だ。戦鎚はすでに振りかざされている。

 野球のフルスイングのように戦鎚が叩きつけられた。
 予想外に硬質な音が大きく響く。
 目を破壊した音ではない。

 戦鎚が届く直前、翼のように見えていた外殻が素早く閉じて目を守ったのだ。
 どうやら殻は、ヤムトの戦鎚でも壊れないほどに頑丈らしい。
 閉じた両翼と額当てが合わさり、巨石のような姿になる。全く攻撃が通らなさそうに見える。

 ヤムトが腕を引くより早く、触手が一斉に動いた。そのうちの数本が戦鎚に絡みつく。
 取り戻そうと力を込めたらしく、ヤムトの腕の筋肉が膨れ上がった。
 が、それも一瞬のことでヤムトはあっさりと手を放した。

 直後、下からの豪快な蹴り上げ。
 足指に生えている肉食獣の爪が、ぐちゃという音を土産に、戦鎚に絡んだ触手を切断した。

 ヤムトは戦鎚を取り返すと、水から飛び出すように離脱した。
 触手に追いすがることもさせない獣の身軽さで大きく距離を取る。

 ヤムトはふうと小さく息を吐いた。
 オレも詰めていた息をふうと吐いた。

 次の瞬間、ヤムトがその大きな背中を震わせた。

 背中越しでオレには見えなかったが、イカが何かを発射し、ヤムトの胸のあたりに直撃したようだ。

 ヤムトは崩れるように膝を着いた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが…… アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。 そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。  実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。  剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。  アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

異世界で美少女『攻略』スキルでハーレム目指します。嫁のために命懸けてたらいつの間にか最強に!?雷撃魔法と聖剣で俺TUEEEもできて最高です。

真心糸
ファンタジー
☆カクヨムにて、200万PV、ブクマ6500達成!☆ 【あらすじ】 どこにでもいるサラリーマンの主人公は、突如光り出した自宅のPCから異世界に転生することになる。 神様は言った。 「あなたはこれから別の世界に転生します。キャラクター設定を行ってください」 現世になんの未練もない主人公は、その状況をすんなり受け入れ、神様らしき人物の指示に従うことにした。 神様曰く、好きな外見を設定して、有効なポイントの範囲内でチートスキルを授けてくれるとのことだ。 それはいい。じゃあ、理想のイケメンになって、美少女ハーレムが作れるようなスキルを取得しよう。 あと、できれば俺TUEEEもしたいなぁ。 そう考えた主人公は、欲望のままにキャラ設定を行った。 そして彼は、剣と魔法がある異世界に「ライ・ミカヅチ」として転生することになる。 ライが取得したチートスキルのうち、最も興味深いのは『攻略』というスキルだ。 この攻略スキルは、好みの美少女を全世界から検索できるのはもちろんのこと、その子の好感度が上がるようなイベントを予見してアドバイスまでしてくれるという優れモノらしい。 さっそく攻略スキルを使ってみると、前世では見たことないような美少女に出会うことができ、このタイミングでこんなセリフを囁くと好感度が上がるよ、なんてアドバイスまでしてくれた。 そして、その通りに行動すると、めちゃくちゃモテたのだ。 チートスキルの効果を実感したライは、冒険者となって俺TUEEEを楽しみながら、理想のハーレムを作ることを人生の目標に決める。 しかし、出会う美少女たちは皆、なにかしらの逆境に苦しんでいて、ライはそんな彼女たちに全力で救いの手を差し伸べる。 もちろん、攻略スキルを使って。 もちろん、救ったあとはハーレムに入ってもらう。 下心全開なのに、正義感があって、熱い心を持つ男ライ・ミカヅチ。 これは、そんな主人公が、異世界を全力で生き抜き、たくさんの美少女を助ける物語。 【他サイトでの掲載状況】 本作は、カクヨム様、小説家になろう様でも掲載しています。

スライムと異世界冒険〜追い出されたが実は強かった

Miiya
ファンタジー
学校に一人で残ってた時、突然光りだし、目を開けたら、王宮にいた。どうやら異世界召喚されたらしい。けど鑑定結果で俺は『成長』 『テイム』しかなく、弱いと追い出されたが、実はこれが神クラスだった。そんな彼、多田真司が森で出会ったスライムと旅するお話。 *ちょっとネタばれ 水が大好きなスライム、シンジの世話好きなスライム、建築もしてしまうスライム、小さいけど鉱石仕分けたり探索もするスライム、寝るのが大好きな白いスライム等多種多様で個性的なスライム達も登場!! *11月にHOTランキング一位獲得しました。 *なるべく毎日投稿ですが日によって変わってきますのでご了承ください。一話2000~2500で投稿しています。 *パソコンからの投稿をメインに切り替えました。ですので字体が違ったり点が変わったりしてますがご了承ください。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

悪役令息に転生したけど、静かな老後を送りたい!

えながゆうき
ファンタジー
 妹がやっていた乙女ゲームの世界に転生し、自分がゲームの中の悪役令息であり、魔王フラグ持ちであることに気がついたシリウス。しかし、乙女ゲームに興味がなかった事が仇となり、断片的にしかゲームの内容が分からない!わずかな記憶を頼りに魔王フラグをへし折って、静かな老後を送りたい!  剣と魔法のファンタジー世界で、精一杯、悪足搔きさせていただきます!

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。 馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。 大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。 精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。 人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。

異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー:ファンタジー世界の仮想戦記です、試し読みとお気に入り登録お願いします。

異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが

倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、  どちらが良い?……ですか。」 「異世界転生で。」  即答。  転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。  なろうにも数話遅れてますが投稿しております。 誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。 自分でも見直しますが、ご協力お願いします。 感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。

処理中です...