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巡り合う日
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瑠夏と手分けして捜し始めてから数日は経った。
それらしき人の情報は集まってくるものの、彼女ではなかった。とはいえ、一人で捜していた時よりは確実に進んでいる。
もっと早くに協力を得れば良かったと後悔すら抱きながらも、話さなかったのだから当たり前だなと自分で納得しておく。
「…うん、ありがとう。私もまた捜しに行くから。大丈夫、無理はしないよ」
電話越しに聞こえる、申し訳なさそうで心配している声に無理はしないと告げ通話を切る。
体調を崩したら元も子もないと、瑠夏に口を酸っぱくして言われ、約束までした以上、それを破るつもりはない。
毎日、毎日捜し回っていて疲労も溜まってはいる。今にも正直倒れそうではある。
けれど、今日は。朝から、何かが起こる予感がしているんだ。
いい方の、予感が。
あぁ、今朝からしていた予感はこれだったか。
ようやく、見つけた。私の愛しい人。
どくどくと、心臓が音を立てて今にも破裂してしまいそうだ。
そんな心臓を鎮めるために、深呼吸をひとつ。
今にも彼女を抱きしめそうになる身体を、必死に理性で止める。彼女からすれば私は、見知らぬ男なのだから。
彼女は見つかった。それだけでも十分な収穫だ。
瑠夏にただ一言、「見つかった」と短いメッセージを送る。きっと文句を言われるだろうが、報告しておくだけいいだろう。
さて、見つけたはいいがどうやって彼女と接触するか……。今は、出会えたことで余計なことを言い出さないか心配だから今日はもう帰ろう。
くるりと、踵を返した私は知らない。
彼女がこちらを見ていたことに。
彼女を見つけた日の夕方。私は家へやってきた瑠夏に質問攻めにあっていた。やはりと言うべきか、想像通りと言うべきか。
瑠夏に伝えたのはたった一言だけ。彼はそれで納得するような性格じゃない。
「見つけた、はいいんだけどさぁなんでそれだけなの皇。他にもなんかあったんじゃないの」
むすっとした表情をしながら、出したお菓子を次々と口へ運ぶ。
そんな食べ方をしていたら詰まらせるぞ、と思っていたら案の定詰まらせた。
「そんな食べ方をするからだ、全く。逃げないんだからゆっくり食べろ」
呆れながらも、飲み物を手渡す。そして、ちゃんと話すと言葉を付け加え椅子に座る。
あの時の自分には余裕がなかった、と言えば聞こえはいいだろうが協力してくれている相手に、説明しなければならないと改めて自分に言い聞かせ話し始める。
「まず、見つけたの一言で済ませてしまったことを謝る。言い訳に聞こえるだろうが、私に余裕が無かった。」
「皇が余裕をなくすなんて珍しいね。いっつも冷静で余裕そうなのに」
「そう見えているのか?」
「うん、むしろ余裕すぎて腹が立つほど」
瑠夏から告げられた言葉に少しショックを受けた。腹が、立つ。そうか……。元々、そんなに表情が顔に出るタイプではないと自覚はしている。私だって内心は色々あるんだけどなと、小さくこぼすと苦笑いされた。
「なんだ」
「なんでもないよ。……、でもまぁ見つかって良かったね皇」
「……あぁ」
今回は、早く見つかった方だ。遅ければ自分の寿命近くになってから見つかることだってあった。だから、運がいいと言える。
ようやく、スタートラインに立った。
それらしき人の情報は集まってくるものの、彼女ではなかった。とはいえ、一人で捜していた時よりは確実に進んでいる。
もっと早くに協力を得れば良かったと後悔すら抱きながらも、話さなかったのだから当たり前だなと自分で納得しておく。
「…うん、ありがとう。私もまた捜しに行くから。大丈夫、無理はしないよ」
電話越しに聞こえる、申し訳なさそうで心配している声に無理はしないと告げ通話を切る。
体調を崩したら元も子もないと、瑠夏に口を酸っぱくして言われ、約束までした以上、それを破るつもりはない。
毎日、毎日捜し回っていて疲労も溜まってはいる。今にも正直倒れそうではある。
けれど、今日は。朝から、何かが起こる予感がしているんだ。
いい方の、予感が。
あぁ、今朝からしていた予感はこれだったか。
ようやく、見つけた。私の愛しい人。
どくどくと、心臓が音を立てて今にも破裂してしまいそうだ。
そんな心臓を鎮めるために、深呼吸をひとつ。
今にも彼女を抱きしめそうになる身体を、必死に理性で止める。彼女からすれば私は、見知らぬ男なのだから。
彼女は見つかった。それだけでも十分な収穫だ。
瑠夏にただ一言、「見つかった」と短いメッセージを送る。きっと文句を言われるだろうが、報告しておくだけいいだろう。
さて、見つけたはいいがどうやって彼女と接触するか……。今は、出会えたことで余計なことを言い出さないか心配だから今日はもう帰ろう。
くるりと、踵を返した私は知らない。
彼女がこちらを見ていたことに。
彼女を見つけた日の夕方。私は家へやってきた瑠夏に質問攻めにあっていた。やはりと言うべきか、想像通りと言うべきか。
瑠夏に伝えたのはたった一言だけ。彼はそれで納得するような性格じゃない。
「見つけた、はいいんだけどさぁなんでそれだけなの皇。他にもなんかあったんじゃないの」
むすっとした表情をしながら、出したお菓子を次々と口へ運ぶ。
そんな食べ方をしていたら詰まらせるぞ、と思っていたら案の定詰まらせた。
「そんな食べ方をするからだ、全く。逃げないんだからゆっくり食べろ」
呆れながらも、飲み物を手渡す。そして、ちゃんと話すと言葉を付け加え椅子に座る。
あの時の自分には余裕がなかった、と言えば聞こえはいいだろうが協力してくれている相手に、説明しなければならないと改めて自分に言い聞かせ話し始める。
「まず、見つけたの一言で済ませてしまったことを謝る。言い訳に聞こえるだろうが、私に余裕が無かった。」
「皇が余裕をなくすなんて珍しいね。いっつも冷静で余裕そうなのに」
「そう見えているのか?」
「うん、むしろ余裕すぎて腹が立つほど」
瑠夏から告げられた言葉に少しショックを受けた。腹が、立つ。そうか……。元々、そんなに表情が顔に出るタイプではないと自覚はしている。私だって内心は色々あるんだけどなと、小さくこぼすと苦笑いされた。
「なんだ」
「なんでもないよ。……、でもまぁ見つかって良かったね皇」
「……あぁ」
今回は、早く見つかった方だ。遅ければ自分の寿命近くになってから見つかることだってあった。だから、運がいいと言える。
ようやく、スタートラインに立った。
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