紫蘭の咲く頃に

雪嵐ラルク

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巡り合う日

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 「……私は、君を必ず見つける」

 発した言葉と同時にぱたりと、読んでいた日記を閉じる。これは、私の日記の一つだ。もっとも、の私だが。

 何を言っているんだと言われても、本当の事だ。私は、愛する人と共に未来を歩む為に、何度も何度も輪廻転生を繰り返して来た。そして、その記憶もある。

 誰かに言えば、笑われるのは分かっているから誰にも言ってはいない。

 日記は、今読んでいた一冊だけではなく生まれ変わった分だけある。内容は少しの変化はあっても、出会う日と死別する日は全て同じ日。

 六月十二日。

 毎回、毎回この日がくるのが怖くて仕方がなかった。次こそはと何度も何度も願った。けれど、願いは叶わず彼女は命を落とした。

 
 そして、再び巡り合っても彼女に記憶はない。真っ新な、零からのスタートだ。
 別にそれは構わない。また最初からやり直して行けばいい。私が憶えていればいいのだから。

 とは言え、何度繰り返しても分からない事がある。
 彼女は必ず私の目の前で命を終える事、彼女の死は非業の死である事。
 出会いも別れも必ず六月十二日である事、紫蘭の咲く場所である事。

 特定の日付、場所である以上、何かヒントがあるかも知れないと思ったりもしたが、何もなかった。
 
 一体、何が私達をこうも引き裂くのだろう。
 ……、今は彼女を捜さないといけないんだ。原因は考えるな。

 「さぁ、紫蘭の咲く場所を探そう。そこに彼女がいるはずだ」

 今日も私は、あてもなく探し歩く。
 この世でただ一人、私の最愛の人を。

ふらりと、あてもなく探し始めて数時間が経った。紫蘭の咲く場所は見つけたが、彼女はいない。

 「まぁ、直ぐに見つかるわけはない、か。簡単に見つかれば、苦労はしない」

 ポツリと呟いて、深くため息をつく。もしかしたら、ここ以外の場所なのだろうかと思いつつも周辺を探そうと思う。折角ここまで足を運んだんだ、探しもせずに帰るのは勿体無い。

 朝早くに家を出たせいか、人気ひとけはまばらで、大半が犬の散歩やジョギング、はたまた通勤とで綺麗に咲く紫蘭や他の花々に目を止める人もほとんどいない。

 あぁ勿体無い。たまにはゆっくりと過ごす事も必要だというのに。
 まぁ、人には人の過ごし方があるのだから仕方はないが。

 「綺麗な花達だ。……けど綺麗だというのに隣に彼女がいないだけで、何故色褪せて見えてしまうんだろう」

 何色かは分かる。分かるんだ。けど、見えている色は本来の色じゃない様な気がして。
 どれだけ私の中で彼女の存在が大きく、大切か改めて認識させられた瞬間と前向きに考える事にし、本来の目的を果たそう。

 そう考え、足を踏み出した時後ろから聞き覚えのある声で名前を呼ばれ振り返る。
 振り返った先にいたのは、古くからの友人だった。

 「おはようすめらぎ
 「おはよう瑠夏るか

 瑠夏は手を振りながらこちらへと近寄ってきて私の隣に立つと、バン!っと強い力で私の背中を叩いた。

 「っ?!痛いんだが」
 「なはは‼︎お前がなんか、思い詰めた様な顔してっからだろう?」
 「……そんな顔してたか?」
 「してた、してた」

 で?どうしたんだと問いかける友人に、話すかどうか考える。
 数分考えた後、彼は笑うような、馬鹿にする様な人間じゃないという今まで見てきた彼への信頼が勝ちゆっくりと、理由を話し始めた。
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