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神に挑む戦い4
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ノー・ライフ・キングを憑代にして顕現化した冥神サイノスだが、彼女自身に欲望や野望は無い。
冥界の管理者たるサイノスは冥界の住民、つまり死者達の平穏を守り神であり、それ故に相見えることのない生者はサイノスに干渉することができないのだ。
そのサイノスがこの世界に顕現化した場合、サイノスはその地を死者達が支配する安息の地にすべく死を振り撒くのである。
即ち、サイノスは死者を思う慈悲の心によりこの世界を冥界と変えようとしているのだ。
それを阻止すべくサイノスに襲い掛かったゼロのアンデッド達。
オメガの爪がサイノスに掠り、僅かに手応えを感じた。
「ククッ、私の渾身の斬撃を難なく躱しますか。流石は冥界の神というところですね。そんな神に戦いを挑むマスターこそ我が誉れ。マスターに仕えることこそ我が無上の喜び。ああ、願わくば、この時が永久に続いてほしい」
笑いながら両の爪を縦横無尽に走らせるオメガ。
「アンデッドながら生き生きとしていますね」
そんなオメガを見て呆れたように呟くゼロだが、その表情は緊迫しており、一分の油断もない。
「主様に救われた私の魂、この戦いで使い果たして無になろうとも構わない。主様と過ごした時間は千年の時にも勝る私の喜び」
アルファは氷結魔法と炎撃魔法を繰り返し放つ。
その威力はレナの魔法に匹敵する程だ。
加えてシャドウとミラージュの魔法がサイノスを休ませない。
アルファ達の攻撃の間隙を突いてサーベル、スピア、シールドが攻撃を加える。
魔法攻撃力を持たず、物理攻撃に特化した3体の連携は目を見張るものがあり、サイノスに小さなダメージを与え続けている。
それを援護するのがジャック・オー・ランタンだ。
火炎と大鎌の変幻自在の攻撃に素早く自由に飛び回る機動力でサイノスを翻弄する。
また、彼等アンデッドの力には及ばないリンツだが、その物理攻撃力はサーベル達に勝るとも劣らない。
この戦いを最後に輪廻の門をくぐるというゼロとの約束を果たすため、その力の全てをサイノスにぶつけている。
ゼロという司令塔を中心に10体のアンデッドが一丸となってサイノスに挑んでいた。
その戦いの様子をゼロの背後で見ているレナ。
大きなダメージを与えてはいないが、今のところはゼロ達が圧倒しているように見える。
その予想が甘いものであることは承知しているが、どちらにせよ生者であるレナの出る幕はない。
周りを見渡せば、サイノスが召喚したのだろう、数十万のアンデッドが戦場全体を囲んでおり、オックス、プリシラ、イザベラ達が迎え撃っている。
それならば、自分もゼロの傍らにいるよりもアンデッドの掃討に回った方が良さそうだ。
「ゼロ、私も後方に回る・・っ!」
レナの言葉を遮るようにゼロの手がレナの手を掴んだ。
「すみません、もう少しだけ私の側にいてください」
思いがけない言葉にレナはゼロを見上げた。
厳しい表情のゼロの視線の先ではサイノスの反撃に徐々に押されつつあるオメガ達の姿があった。
アンデッド故に目に見えたダメージがあるわけではないが、ほんの僅か、それぞれの動きが鈍くなっている。
オメガ達だけではない、彼等を使役するゼロは魔力だけでなく、その命を削りながら彼等に力を送っているのだ。
「どうやら最精鋭のオメガ達でも決め手に欠けるようです。それだけでなく、サイノスの力も安定しつつありますね。時間を掛けるとより危険です。一気にけりをつけなければなりません」
呟くゼロ。
「ゼロ、私にできることがあるなら何でも言って。私の魔力を全部貴方にあげるし、貴方が望むならば私の命をあげる。私をアンデッドにして戦力に加えてもいいわ」
覚悟を決めたレナの言葉に振り返ったゼロは優しい笑みを浮かべていた。
(ああ・・・ゼロのこんな微笑みを見るのは初めて。この笑顔だけで私は全てを受け入れることができる)
喜びに震えるレナだが、ゼロは笑顔のまま首を振った。
「駄目ですよ。レナさんに側にいて欲しいのはそんなことが目的ではありません。私の未練のためです」
「未練?」
「そう。貴女やシーナさん、仲間達を残しては死ぬわけにはいけないという生への未練のためです」
そう話すゼロの表情が穏やかすぎる。
レナの背筋が寒くなった。
「ゼロ、何を考えているの?」
「大丈夫です。命を無駄にしようとは考えていませんよ」
突然ゼロはレナを抱きしめて唇を重ねた。
「ゼッ・・・」
突然のことながらもレナは抵抗することなくゼロに身を委ねる。
短い口づけの後、レナから離れたゼロは剣を構えて前を向いた。
「これで更に未練が大きくなりました。貴女を残して死にたくはありませんし、シーナさんの顔を見ずに逝くわけにもいきません。・・・しかし、2人の女性に未練を感じるとは、私もなかなかの外道ですね」
自虐的に笑うゼロ。
「何をしようとしているの!ゼロッ!」
レナがゼロを捕まえようとしたが遅かった。
「レナさん、私をしっかりと呼び戻してください」
レナの指先が空を切り、剣を手に駆け出したゼロは自分自身に術をかけた。
「待ちなさいゼロ!待って!」
レナの声を背に駆けるゼロ。
その異変に気付いたアルファがゼロの前に立ちはだかる。
「主様、お止めください。サイノス討伐は我々に任せてください」
しかし、ゼロは止まらない。
アルファの手を躱し、高く跳躍したゼロはサイノスに向かって剣を振り下ろした。
サイノスは10体ものアンデッドを相手にし、本気になったとしても、脅威とまでは感じていなかった。
中途半端な顕現化のために神としての力も不安定であり、身体も思うように動かない。
ただ、それでもアンデッド達の攻撃に対応することは容易く、まともに攻撃を受けなければ致命的なダメージを受けることはないのだ。
そんな中で突然戦いに飛び込んできたのは漆黒の死霊術師だった。
先程の槍戦士や魔王とは違い、生者であるが故にその刃が届くはずもないのに明確にサイノス自身を狙って剣を走らせてくる。
そして何より、死霊術師が参戦したことにより他のアンデッドの動きが上がり、死霊術師を中心に見事な連携で攻撃を仕掛けてくるのが厄介だ。
ならば、死霊術師を倒せばいい。
サイノスは死霊術師目掛けて杖を繰り出すが、滑るような身のこなしで躱されてしまう。
それでも幾度か切り結んだ後、死霊術師の一瞬の隙を突いてその胸を貫いたのだ。
これで全てが終わると確信したサイノスは確かに見た。
心臓を貫かれた死霊術師が不敵な笑みを浮かべたのを。
「ゼローッ!」
響き渡るレナの悲鳴にオックス達が、プリシラが、イザベラが振り返った。
彼等が目にしたのはサイノスの杖に胸を貫かれたゼロの姿。
「あの野郎!何をしてやがる!」
「嘘・でしょう・・」
オックスが気色ばみ、リリスが途方に暮れる。
「ゼロ、馬鹿なことを・・・」
「何をしていますの!あのおバ・・ゼロは!」
プリシラとイザベラが戦いの手を止めて愕然とした。
サイノスの一撃でゼロは血を吐きながらも笑みを浮かべて崩れ落ちた。
心臓を貫かれてほぼ即死である。
ゼロの鼓動が停止し、命の糸が切れたその瞬間、ゼロの死霊術が発動した。
冥界の管理者たるサイノスは冥界の住民、つまり死者達の平穏を守り神であり、それ故に相見えることのない生者はサイノスに干渉することができないのだ。
そのサイノスがこの世界に顕現化した場合、サイノスはその地を死者達が支配する安息の地にすべく死を振り撒くのである。
即ち、サイノスは死者を思う慈悲の心によりこの世界を冥界と変えようとしているのだ。
それを阻止すべくサイノスに襲い掛かったゼロのアンデッド達。
オメガの爪がサイノスに掠り、僅かに手応えを感じた。
「ククッ、私の渾身の斬撃を難なく躱しますか。流石は冥界の神というところですね。そんな神に戦いを挑むマスターこそ我が誉れ。マスターに仕えることこそ我が無上の喜び。ああ、願わくば、この時が永久に続いてほしい」
笑いながら両の爪を縦横無尽に走らせるオメガ。
「アンデッドながら生き生きとしていますね」
そんなオメガを見て呆れたように呟くゼロだが、その表情は緊迫しており、一分の油断もない。
「主様に救われた私の魂、この戦いで使い果たして無になろうとも構わない。主様と過ごした時間は千年の時にも勝る私の喜び」
アルファは氷結魔法と炎撃魔法を繰り返し放つ。
その威力はレナの魔法に匹敵する程だ。
加えてシャドウとミラージュの魔法がサイノスを休ませない。
アルファ達の攻撃の間隙を突いてサーベル、スピア、シールドが攻撃を加える。
魔法攻撃力を持たず、物理攻撃に特化した3体の連携は目を見張るものがあり、サイノスに小さなダメージを与え続けている。
それを援護するのがジャック・オー・ランタンだ。
火炎と大鎌の変幻自在の攻撃に素早く自由に飛び回る機動力でサイノスを翻弄する。
また、彼等アンデッドの力には及ばないリンツだが、その物理攻撃力はサーベル達に勝るとも劣らない。
この戦いを最後に輪廻の門をくぐるというゼロとの約束を果たすため、その力の全てをサイノスにぶつけている。
ゼロという司令塔を中心に10体のアンデッドが一丸となってサイノスに挑んでいた。
その戦いの様子をゼロの背後で見ているレナ。
大きなダメージを与えてはいないが、今のところはゼロ達が圧倒しているように見える。
その予想が甘いものであることは承知しているが、どちらにせよ生者であるレナの出る幕はない。
周りを見渡せば、サイノスが召喚したのだろう、数十万のアンデッドが戦場全体を囲んでおり、オックス、プリシラ、イザベラ達が迎え撃っている。
それならば、自分もゼロの傍らにいるよりもアンデッドの掃討に回った方が良さそうだ。
「ゼロ、私も後方に回る・・っ!」
レナの言葉を遮るようにゼロの手がレナの手を掴んだ。
「すみません、もう少しだけ私の側にいてください」
思いがけない言葉にレナはゼロを見上げた。
厳しい表情のゼロの視線の先ではサイノスの反撃に徐々に押されつつあるオメガ達の姿があった。
アンデッド故に目に見えたダメージがあるわけではないが、ほんの僅か、それぞれの動きが鈍くなっている。
オメガ達だけではない、彼等を使役するゼロは魔力だけでなく、その命を削りながら彼等に力を送っているのだ。
「どうやら最精鋭のオメガ達でも決め手に欠けるようです。それだけでなく、サイノスの力も安定しつつありますね。時間を掛けるとより危険です。一気にけりをつけなければなりません」
呟くゼロ。
「ゼロ、私にできることがあるなら何でも言って。私の魔力を全部貴方にあげるし、貴方が望むならば私の命をあげる。私をアンデッドにして戦力に加えてもいいわ」
覚悟を決めたレナの言葉に振り返ったゼロは優しい笑みを浮かべていた。
(ああ・・・ゼロのこんな微笑みを見るのは初めて。この笑顔だけで私は全てを受け入れることができる)
喜びに震えるレナだが、ゼロは笑顔のまま首を振った。
「駄目ですよ。レナさんに側にいて欲しいのはそんなことが目的ではありません。私の未練のためです」
「未練?」
「そう。貴女やシーナさん、仲間達を残しては死ぬわけにはいけないという生への未練のためです」
そう話すゼロの表情が穏やかすぎる。
レナの背筋が寒くなった。
「ゼロ、何を考えているの?」
「大丈夫です。命を無駄にしようとは考えていませんよ」
突然ゼロはレナを抱きしめて唇を重ねた。
「ゼッ・・・」
突然のことながらもレナは抵抗することなくゼロに身を委ねる。
短い口づけの後、レナから離れたゼロは剣を構えて前を向いた。
「これで更に未練が大きくなりました。貴女を残して死にたくはありませんし、シーナさんの顔を見ずに逝くわけにもいきません。・・・しかし、2人の女性に未練を感じるとは、私もなかなかの外道ですね」
自虐的に笑うゼロ。
「何をしようとしているの!ゼロッ!」
レナがゼロを捕まえようとしたが遅かった。
「レナさん、私をしっかりと呼び戻してください」
レナの指先が空を切り、剣を手に駆け出したゼロは自分自身に術をかけた。
「待ちなさいゼロ!待って!」
レナの声を背に駆けるゼロ。
その異変に気付いたアルファがゼロの前に立ちはだかる。
「主様、お止めください。サイノス討伐は我々に任せてください」
しかし、ゼロは止まらない。
アルファの手を躱し、高く跳躍したゼロはサイノスに向かって剣を振り下ろした。
サイノスは10体ものアンデッドを相手にし、本気になったとしても、脅威とまでは感じていなかった。
中途半端な顕現化のために神としての力も不安定であり、身体も思うように動かない。
ただ、それでもアンデッド達の攻撃に対応することは容易く、まともに攻撃を受けなければ致命的なダメージを受けることはないのだ。
そんな中で突然戦いに飛び込んできたのは漆黒の死霊術師だった。
先程の槍戦士や魔王とは違い、生者であるが故にその刃が届くはずもないのに明確にサイノス自身を狙って剣を走らせてくる。
そして何より、死霊術師が参戦したことにより他のアンデッドの動きが上がり、死霊術師を中心に見事な連携で攻撃を仕掛けてくるのが厄介だ。
ならば、死霊術師を倒せばいい。
サイノスは死霊術師目掛けて杖を繰り出すが、滑るような身のこなしで躱されてしまう。
それでも幾度か切り結んだ後、死霊術師の一瞬の隙を突いてその胸を貫いたのだ。
これで全てが終わると確信したサイノスは確かに見た。
心臓を貫かれた死霊術師が不敵な笑みを浮かべたのを。
「ゼローッ!」
響き渡るレナの悲鳴にオックス達が、プリシラが、イザベラが振り返った。
彼等が目にしたのはサイノスの杖に胸を貫かれたゼロの姿。
「あの野郎!何をしてやがる!」
「嘘・でしょう・・」
オックスが気色ばみ、リリスが途方に暮れる。
「ゼロ、馬鹿なことを・・・」
「何をしていますの!あのおバ・・ゼロは!」
プリシラとイザベラが戦いの手を止めて愕然とした。
サイノスの一撃でゼロは血を吐きながらも笑みを浮かべて崩れ落ちた。
心臓を貫かれてほぼ即死である。
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