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神に挑む戦い1
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オメガ達を召喚したとはいえ、スケルトン・ドラゴンを召喚したことによる消耗が大きく、ゼロは膝をついて動けないでいるが、その間にプリシラ、イザベラ両軍団によるアンデッドの掃討は一気に進み、サイノスの間近にまで迫っていた。
しかし、それでもサイノスに目立った動きは見られない。
アンデッドを召喚し続けてはいるが、ここにきてその召喚数も減ってきている。
サイノスは神でありながらその容姿はノー・ライフ・キングの時と同じ女性的な姿で、身体も華奢な雰囲気であり、例えるならば、丁度レナとほぼ同じ体格である。
杖を手に佇んでいるその姿からは禍々しい異様な神々しさが消えており、先ほどまでの圧倒的な気配に気圧されて立ち竦むるような力も感じられなくなっている。
虚ろな表情で立ちつくしているその姿はとてもではないが、それが神であるようには見えない。
そんなサイノスの目前にアンデッドを切り抜けたライズとチェスターが躍り出た。
「いけるぜ!」
「俺の剣でけりをつけてやる!」
2人は剣を振りかざしてサイノスに斬り掛かり、僅かに遅れてオックスが戦鎚を振りかざした。
「いかん!止めろ!」
「ダメです!下がってください」
プリシラとゼロが同時に叫んだが遅かった。
ライズの剣が横一閃にサイノスの首を捉え、チェスターの剣が袈裟斬りに振り抜かれた。
完全にサイノスを捉えた2人の剣だが、サイノスは避ける素振りを見せないどころか、2人に視線を向けようともしない。
「「なんだこれはっ!」」
ライズとチェスターが同時に口走った。
サイノスを捉えた筈の2人の剣は完全に空を切り、サイノスに傷一つ与えていない。
サイノスが避けたのではない。
剣がサイノスの身体をすり抜けたのだ。
「これならどうだ!」
オックスが大上段から戦鎚を振り下ろす。
ゴォンッ!
轟音と共に大地に叩きつけられた戦鎚、やはりサイノスの身体をすり抜けている。
「くそっ!空気を斬っているみてえだ!」
ライズがウンディーネの力を込めて剣を振るうがサイノスには全く通用しない。
チェスターの炎の剣も同様だ。
サイノスが攻撃を避けようとしないのも、視線を向けないのも、そもそもライズ達を脅威と思っていないどころか、興味すら感じていないのだ。
「虚仮にしやがって!これならどうだ!」
オックスがサイノスの胸ぐらを掴もうとしたその時、サイノスが僅かに動き、持っていた杖をオックスの胸甲に当てた。
コツン・・・。
サイノスの杖が軽く当たった瞬間。
メキッ!
「ぐぉっ!」
胸甲がひしゃげ、オックスは吹き飛ばされて地面に叩きつけられた。
「オックス!」
リリスがサイノスの眉間を狙って風の精霊シルフを宿らせた矢を放った。
命中すれば頭が吹き飛ぶ威力のリリスの矢だが、やはりサイノスの身体を通過するだけで通用しない。
サイノスの杖が再び斬り掛かろうとしていたライズとチェスターに向けられた。
「危ない!・・・呪縛!」
カミーラがサイノス目掛けて符の束を投げつけるが、カミーラの符もサイノスに貼り着かず、呪術も発動することなくハラハラと地面に落ちた。
サイノスが杖を軽く振った。
その杖が掠ったライズと剣で受け止めようとしたチェスターが小石のように弾き飛ばされる。
地面に叩きつけられたオックスもライズもチェスターも倒れたままで立ち上がることもままならない。
イズとリズが3人の救護に走った。
手練れの冒険者3人がまるで相手にならない。
その様子を目の当たりにしてもサイノスに挑もうとする者がいる。
サイノスの背後に接近したイザベラだ。
全身を強力な防護結界で包み、そのサーベルにはイザベラが信仰するシーグルとヘルムントのイフエール、そして別の聖騎士によるトルシア、3神の加護を宿してある。
並みのアンデッドならば近づくことも出来ない程の力だ。
「いきますわよ!」
妖艶な笑みを浮かべて走り出すイザベラと援護のために後を追うグレイとヘルムント。
イザベラの背を見ながらグレイは思う。
(イザベラさんのあの表情、イザベラさんには似合うんだが、聖職者らしからぬ笑みだよな・・・)
「聞こえてますわよ!褒めるか貶すかどちらかになさい!」
(思っただけで何も言っていない)
「貴方と私の仲ですのよ!考えていることなんか手に取るように分かりますわ!」
(怖い・・・)
イザベラはそれ以上は何も言わず、サイノスに飛びかかった。
「背後からなんて騎士道に反しますが、これも正義のためですわ!」
サイノスの背後から全身を回転させた力を乗せて舞うようにサーベルを振り下ろした。
だが、3神の力を宿したイザベラのサーベルすらもサイノスには届かなかった。
それどころか、サイノスの背後から斬り掛かったイザベラは勢い余ってサイノスの身体を突き抜けてその前に着地してしまう。
「いかん!イザベラ、離れろ!」
ヘルムントが叫ぶと同時だった。
トンッ。
サイノスがイザベラの肩に杖を置いた。
「グッ!」
それだけでイザベラの肩が砕け、地面に叩きつけられる。
防護結界が無かったら肩だけでなく、全身が砕けていたかもしれない。
そして、そのイザベラの胸に鋭い杖の先が向けられた。
イザベラを刺そうとしているのではない、ただ杖を地に着けようとしているだけだ。
「・・・グレイ・・」
イザベラの口から漏れた一言。
「お任せください!」
回り込んできていたグレイがイザベラの前に割って入り、渾身の力を込めてサイノスの杖に自らの槍を叩きつけた。
ガギンッ!
激しい金属音と共にサイノスが僅かに仰け反ってその杖の軌道が変わった。
その隙にグレイはイザベラを抱え上げる。
「グレイッ!・・キャッ!」
イザベラの言葉が終わるのも待たず、イザベラの怪我を気遣う余裕もないままにヘルムントに向けてイザベラを放り投げ、槍を構えてサイノスに向き合った。
「グレイッ!止めなさい!挑んではダメッ!そいつは人の力ではどうすることもできないっ!」
イザベラも身を持って知らされた神に挑む無謀。
だが、グレイは引かなかった。
「ヘルムントさん!イザベラさんを連れて後退しろ!今イザベラさんを失うわけにはいかない!」
「承知!」
グレイの声に反応したヘルムントがイザベラを抱えて後方に向けて走り出した。
「ヘルムント!お放しなさい!グレイがまだ残っていますのよ!」
「聞けぬ!イザベラよ、グレイ殿の言うとおり、連合軍司令官であるお前を失うわけにはいかん!小部隊の長に過ぎぬグレイ殿とは違うのだ!」
「何を仰いますの!グレイは私の大切な想い人、置いてはいけません!」
「それはイザベラの私情だ。それを論ずるならば、この最後の戦いに参加すること叶わず、グレイ殿を見送るしかなかったエミリア殿も一緒だ」
「あぁ・・・グレイ」
ヘルムントは走る速度を落とさずに一目散に離脱していった。
走り去るヘルムントを横目で見送ったグレイはサイノスに対峙した。
「神に挑むのは無謀。神を信じていない私にはそんなもの関係ない。興味の無い相手を恐れる理由はない!勝てる気はしないが、時間は稼がせてもらう」
言い放ったグレイはサイノスに立ち向かう。
ガギンッ!ギンッ!
グレイの攻撃の狙いは徹底してサイノスではなくサイノスが持つ杖だった。
ひたすらに全体重を乗せて杖に打ち込み、その都度にサイノスが僅かによろけ、仰け反る。。
そのグレイの徹底した攻撃にサイノスの様子が変わった。
今までは目標に杖を当てる、置くといった動きしかしなかったのが、明確にグレイを狙って杖を振り始めたのだ。
まるで興味を示していなかった対象が目の前を飛び回る羽虫程度には邪魔に感じ始めたようだ。
その戦いを見つめていたプリシラが唸る。
「むぅ・・見事だ。しかし、彼奴、グレイといったか、戦技は大したものだが、魔力も聖力も感じられん。そんな奴が何故サイノスに干渉できるのだ?・・・っ!そうか、杖か!サイノスには干渉出来ずとも杖になら!そうと踏んで彼奴、サイノスではなく杖にばかり攻撃を仕掛けておるのか!妾としたことが、そんな些細なことを見逃しておった。そうか、サイノスには勝てずとも、時間稼ぎの嫌がらせに徹しておるのか。ならば!」
プリシラは大鎌を片手に跳躍し、サイノスに挑むグレイの傍らに降り立った。
「グレイといったな!妾も加勢するぞ。ゼロが回復するまで、魔王たる妾と神であるサイノスの戦いに付いてこれるか?」
突然乱入してきたプリシラを一瞥したグレイははっきりと答えた。
「望むところです!」
しかし、それでもサイノスに目立った動きは見られない。
アンデッドを召喚し続けてはいるが、ここにきてその召喚数も減ってきている。
サイノスは神でありながらその容姿はノー・ライフ・キングの時と同じ女性的な姿で、身体も華奢な雰囲気であり、例えるならば、丁度レナとほぼ同じ体格である。
杖を手に佇んでいるその姿からは禍々しい異様な神々しさが消えており、先ほどまでの圧倒的な気配に気圧されて立ち竦むるような力も感じられなくなっている。
虚ろな表情で立ちつくしているその姿はとてもではないが、それが神であるようには見えない。
そんなサイノスの目前にアンデッドを切り抜けたライズとチェスターが躍り出た。
「いけるぜ!」
「俺の剣でけりをつけてやる!」
2人は剣を振りかざしてサイノスに斬り掛かり、僅かに遅れてオックスが戦鎚を振りかざした。
「いかん!止めろ!」
「ダメです!下がってください」
プリシラとゼロが同時に叫んだが遅かった。
ライズの剣が横一閃にサイノスの首を捉え、チェスターの剣が袈裟斬りに振り抜かれた。
完全にサイノスを捉えた2人の剣だが、サイノスは避ける素振りを見せないどころか、2人に視線を向けようともしない。
「「なんだこれはっ!」」
ライズとチェスターが同時に口走った。
サイノスを捉えた筈の2人の剣は完全に空を切り、サイノスに傷一つ与えていない。
サイノスが避けたのではない。
剣がサイノスの身体をすり抜けたのだ。
「これならどうだ!」
オックスが大上段から戦鎚を振り下ろす。
ゴォンッ!
轟音と共に大地に叩きつけられた戦鎚、やはりサイノスの身体をすり抜けている。
「くそっ!空気を斬っているみてえだ!」
ライズがウンディーネの力を込めて剣を振るうがサイノスには全く通用しない。
チェスターの炎の剣も同様だ。
サイノスが攻撃を避けようとしないのも、視線を向けないのも、そもそもライズ達を脅威と思っていないどころか、興味すら感じていないのだ。
「虚仮にしやがって!これならどうだ!」
オックスがサイノスの胸ぐらを掴もうとしたその時、サイノスが僅かに動き、持っていた杖をオックスの胸甲に当てた。
コツン・・・。
サイノスの杖が軽く当たった瞬間。
メキッ!
「ぐぉっ!」
胸甲がひしゃげ、オックスは吹き飛ばされて地面に叩きつけられた。
「オックス!」
リリスがサイノスの眉間を狙って風の精霊シルフを宿らせた矢を放った。
命中すれば頭が吹き飛ぶ威力のリリスの矢だが、やはりサイノスの身体を通過するだけで通用しない。
サイノスの杖が再び斬り掛かろうとしていたライズとチェスターに向けられた。
「危ない!・・・呪縛!」
カミーラがサイノス目掛けて符の束を投げつけるが、カミーラの符もサイノスに貼り着かず、呪術も発動することなくハラハラと地面に落ちた。
サイノスが杖を軽く振った。
その杖が掠ったライズと剣で受け止めようとしたチェスターが小石のように弾き飛ばされる。
地面に叩きつけられたオックスもライズもチェスターも倒れたままで立ち上がることもままならない。
イズとリズが3人の救護に走った。
手練れの冒険者3人がまるで相手にならない。
その様子を目の当たりにしてもサイノスに挑もうとする者がいる。
サイノスの背後に接近したイザベラだ。
全身を強力な防護結界で包み、そのサーベルにはイザベラが信仰するシーグルとヘルムントのイフエール、そして別の聖騎士によるトルシア、3神の加護を宿してある。
並みのアンデッドならば近づくことも出来ない程の力だ。
「いきますわよ!」
妖艶な笑みを浮かべて走り出すイザベラと援護のために後を追うグレイとヘルムント。
イザベラの背を見ながらグレイは思う。
(イザベラさんのあの表情、イザベラさんには似合うんだが、聖職者らしからぬ笑みだよな・・・)
「聞こえてますわよ!褒めるか貶すかどちらかになさい!」
(思っただけで何も言っていない)
「貴方と私の仲ですのよ!考えていることなんか手に取るように分かりますわ!」
(怖い・・・)
イザベラはそれ以上は何も言わず、サイノスに飛びかかった。
「背後からなんて騎士道に反しますが、これも正義のためですわ!」
サイノスの背後から全身を回転させた力を乗せて舞うようにサーベルを振り下ろした。
だが、3神の力を宿したイザベラのサーベルすらもサイノスには届かなかった。
それどころか、サイノスの背後から斬り掛かったイザベラは勢い余ってサイノスの身体を突き抜けてその前に着地してしまう。
「いかん!イザベラ、離れろ!」
ヘルムントが叫ぶと同時だった。
トンッ。
サイノスがイザベラの肩に杖を置いた。
「グッ!」
それだけでイザベラの肩が砕け、地面に叩きつけられる。
防護結界が無かったら肩だけでなく、全身が砕けていたかもしれない。
そして、そのイザベラの胸に鋭い杖の先が向けられた。
イザベラを刺そうとしているのではない、ただ杖を地に着けようとしているだけだ。
「・・・グレイ・・」
イザベラの口から漏れた一言。
「お任せください!」
回り込んできていたグレイがイザベラの前に割って入り、渾身の力を込めてサイノスの杖に自らの槍を叩きつけた。
ガギンッ!
激しい金属音と共にサイノスが僅かに仰け反ってその杖の軌道が変わった。
その隙にグレイはイザベラを抱え上げる。
「グレイッ!・・キャッ!」
イザベラの言葉が終わるのも待たず、イザベラの怪我を気遣う余裕もないままにヘルムントに向けてイザベラを放り投げ、槍を構えてサイノスに向き合った。
「グレイッ!止めなさい!挑んではダメッ!そいつは人の力ではどうすることもできないっ!」
イザベラも身を持って知らされた神に挑む無謀。
だが、グレイは引かなかった。
「ヘルムントさん!イザベラさんを連れて後退しろ!今イザベラさんを失うわけにはいかない!」
「承知!」
グレイの声に反応したヘルムントがイザベラを抱えて後方に向けて走り出した。
「ヘルムント!お放しなさい!グレイがまだ残っていますのよ!」
「聞けぬ!イザベラよ、グレイ殿の言うとおり、連合軍司令官であるお前を失うわけにはいかん!小部隊の長に過ぎぬグレイ殿とは違うのだ!」
「何を仰いますの!グレイは私の大切な想い人、置いてはいけません!」
「それはイザベラの私情だ。それを論ずるならば、この最後の戦いに参加すること叶わず、グレイ殿を見送るしかなかったエミリア殿も一緒だ」
「あぁ・・・グレイ」
ヘルムントは走る速度を落とさずに一目散に離脱していった。
走り去るヘルムントを横目で見送ったグレイはサイノスに対峙した。
「神に挑むのは無謀。神を信じていない私にはそんなもの関係ない。興味の無い相手を恐れる理由はない!勝てる気はしないが、時間は稼がせてもらう」
言い放ったグレイはサイノスに立ち向かう。
ガギンッ!ギンッ!
グレイの攻撃の狙いは徹底してサイノスではなくサイノスが持つ杖だった。
ひたすらに全体重を乗せて杖に打ち込み、その都度にサイノスが僅かによろけ、仰け反る。。
そのグレイの徹底した攻撃にサイノスの様子が変わった。
今までは目標に杖を当てる、置くといった動きしかしなかったのが、明確にグレイを狙って杖を振り始めたのだ。
まるで興味を示していなかった対象が目の前を飛び回る羽虫程度には邪魔に感じ始めたようだ。
その戦いを見つめていたプリシラが唸る。
「むぅ・・見事だ。しかし、彼奴、グレイといったか、戦技は大したものだが、魔力も聖力も感じられん。そんな奴が何故サイノスに干渉できるのだ?・・・っ!そうか、杖か!サイノスには干渉出来ずとも杖になら!そうと踏んで彼奴、サイノスではなく杖にばかり攻撃を仕掛けておるのか!妾としたことが、そんな些細なことを見逃しておった。そうか、サイノスには勝てずとも、時間稼ぎの嫌がらせに徹しておるのか。ならば!」
プリシラは大鎌を片手に跳躍し、サイノスに挑むグレイの傍らに降り立った。
「グレイといったな!妾も加勢するぞ。ゼロが回復するまで、魔王たる妾と神であるサイノスの戦いに付いてこれるか?」
突然乱入してきたプリシラを一瞥したグレイははっきりと答えた。
「望むところです!」
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