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巨竜激突
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ゼロが召喚したのは3つの首を持つスケルトン・ドラゴン。
かつて冥府に落ちたゼロがそこで出会い、契約した古代竜のアンデッドだ。
かつては破壊の限りを尽くした伝説級の邪竜であったが、永く冥府の底を漂っていたために、穏やかな性質になっていたが、強大な力を持つアンデッドで、召喚したゼロの負担も大きく、オメガ達最上位のアンデッドと連携させることも困難なほどである。
その内に秘めた破壊欲は健在であり、召喚者であるゼロの命を受ければその目標を完膚なきまで破壊する。
そんなスケルトン・ドラゴンの目標にゼロはドラゴン・ゾンビを示した。
ゼロの許しを得たスケルトン・ドラゴンは2体のドラゴン・ゾンビに襲いかかった。
1体のドラゴン・ゾンビを組み伏せて2つの首がその喉元に食らいつく。
残った首はもう1体のドラゴン・ゾンビを捕捉して、その長い尾を叩きつける。
反撃に猛毒のブレスを浴びるが、かつては邪竜として名を馳せたドラゴンの最上位種であり、そもそも骨しか残っていないスケルトンに毒気が通用する筈もない。
対する2体のドラゴン・ゾンビも古代竜の上位種のなれの果てであり、スケルトン・ドラゴンの攻撃に真っ向から衝突する。
激しくぶつかり合う3体のアンデッド・ドラゴンに周囲のアンデッド達が巻き込まれて次々と踏み潰されていく。
魔物達が巻き込まれてはたまったものではない。
プリシラも軍団を後退させた。
「ゼロめ、これほどの高みにまで来たか。・・・フェイレスよ、どこかで見ておるか?お主の愛弟子の成長を。お主の足下にも及ばなかったゼロだが、今やお主の腰くらいまでには及んだのではないか?」
プリシラは嬉しそうに微笑んだ。
あまりにも激しいアンデッド・ドラゴンの戦いにオックスは意識を飛ばしているゼロを引きずって後退した。
「こりゃあすげえ!次元が違いすぎる」
近づくだけで踏み潰される戦いだ、オックス達はゼロを護衛する以外に為す術はない。
そんな中でレナだけはゼロの肩に手を置きながら機会を窺っていた。
(私ならばゼロを手助けできる。ゼロの思考を感じて一瞬の好機を見極める・・・)
ゼロの言うとおり、目の前のドラゴン・ゾンビは今までの個体とはわけが違う。
レナの全力を注いだ魔法でも仕留めることは不可能だろう。
それでも出来ること、為すべきことはある。
突然始まったアンデッド・ドラゴンの激しい戦いに進撃を続けていたイザベラの軍団も足を止めた。
「なんて物を召喚しましたの、あのおバカネクロマンサーは!危なくて近づけないではありませんの!」
腰に手を当てて仁王立ちするイザベラが苛立ちを露わにする。
「イザベラよ、仕方あるまい。あのドラゴン・ゾンビの邪悪な気は別格だ。我々聖騎士団でもただでは済まん」
ヘルムントが諫めるがイザベラの怒りは収まらない。
「そんなことは分かっていますのよ!だからこそ自分自身の不甲斐なさが許せないのです」
2人のやり取りを見ていたグレイは敢えて何も口出ししなかった。
こんな時のイザベラは見守って欲しい場合と他人に何かを言って欲しい場合の両極端で、選択肢を誤れば余計に機嫌が悪くなる。
今回は黙って見守る方に賭けた。
「・・・グレイ、何とか言ったらどうですの!まったく、相変わらず気が利きませんわね!」
理不尽な言葉をぶつけてくるイザベラ。
グレイは選択肢を誤ったようだ。
そうは言ってもイザベラは冷静に判断して軍団を僅かに後退させて防御を固めつつ、周囲のアンデッドの掃討に専念した。
2対1でありながら互角の勝負を繰り広げていた巨竜3体による戦いも均衡が崩れつつあった。
ゼロのスケルトン・ドラゴンがドラゴン・ゾンビを押し始めたのである。
レナは機を見定めた。
狙うはドラゴン・ゾンビの頸骨。
極限まで圧縮した雷撃の針を片方のドラゴン・ゾンビに撃ち込んだ。
パチンッ!
レナが指を鳴らすとドラゴン・ゾンビの頸骨に突き刺さった針が炸裂する。
ドラゴン・ゾンビの脊髄を電撃が走り、その反射によりほんの一瞬だけドラゴン・ゾンビの動きが止まった。
通常であれば勝機を見いだすことも出来ないような一瞬だったが、スケルトン・ドラゴンはその隙を見逃さなかった。
3つの首が同時にドラゴン・ゾンビの首に食らいつく。
強固な肉体を持つドラゴン・ゾンビとはいえ、それ以上の力を持つスケルトン・ドラゴンに三方向から食いつかれては勝ち目はなく、その首をスケルトン・ドラゴンに食い千切られて消滅した。
「見事・・・」
戦いを見守っていたプリシラが思わず口走る。
ドラゴン・ゾンビが1体になればプリシラにも打つ手はあるが、その必要もなさそうだ。
2対1でも互角以上の戦いを繰り広げたスケルトン・ドラゴンだ、1対1ならば負ける要素はない。
程なくしてスケルトン・ドラゴンがドラゴン・ゾンビを組み伏せて、その首を食い千切り、巨竜の戦いに終止符を打った。
ドラゴン・ゾンビが倒されてサイノスを守るのは周囲のアンデッド達だけだ。
「ドラゴン・ゾンビを倒したとはいえ、アンデッドですので再召喚が可能です。ただ、強大な力を持つ故にサイノスでも再召喚までは時間が掛かります。今が勝機です!」
スケルトン・ドラゴンを戻し、意識を取り戻したゼロは代わりにオメガ達最上位アンデッドを召喚しながら叫んだ。
「よし!残りのアンデッド共は任せろ!」
オックス達が駆け出した。
「おバカネクロマンサーには遅れを取りません!全軍前進!」
イザベラも再び進撃に転じる。
「このまま何もせぬでは魔王の名折れだ。妾ももう一暴れさせてもらおう」
プリシラが大鎌を片手に歩き出す。
その背後には魔物達が続いた。
戦いは最終局面を迎えた。
かつて冥府に落ちたゼロがそこで出会い、契約した古代竜のアンデッドだ。
かつては破壊の限りを尽くした伝説級の邪竜であったが、永く冥府の底を漂っていたために、穏やかな性質になっていたが、強大な力を持つアンデッドで、召喚したゼロの負担も大きく、オメガ達最上位のアンデッドと連携させることも困難なほどである。
その内に秘めた破壊欲は健在であり、召喚者であるゼロの命を受ければその目標を完膚なきまで破壊する。
そんなスケルトン・ドラゴンの目標にゼロはドラゴン・ゾンビを示した。
ゼロの許しを得たスケルトン・ドラゴンは2体のドラゴン・ゾンビに襲いかかった。
1体のドラゴン・ゾンビを組み伏せて2つの首がその喉元に食らいつく。
残った首はもう1体のドラゴン・ゾンビを捕捉して、その長い尾を叩きつける。
反撃に猛毒のブレスを浴びるが、かつては邪竜として名を馳せたドラゴンの最上位種であり、そもそも骨しか残っていないスケルトンに毒気が通用する筈もない。
対する2体のドラゴン・ゾンビも古代竜の上位種のなれの果てであり、スケルトン・ドラゴンの攻撃に真っ向から衝突する。
激しくぶつかり合う3体のアンデッド・ドラゴンに周囲のアンデッド達が巻き込まれて次々と踏み潰されていく。
魔物達が巻き込まれてはたまったものではない。
プリシラも軍団を後退させた。
「ゼロめ、これほどの高みにまで来たか。・・・フェイレスよ、どこかで見ておるか?お主の愛弟子の成長を。お主の足下にも及ばなかったゼロだが、今やお主の腰くらいまでには及んだのではないか?」
プリシラは嬉しそうに微笑んだ。
あまりにも激しいアンデッド・ドラゴンの戦いにオックスは意識を飛ばしているゼロを引きずって後退した。
「こりゃあすげえ!次元が違いすぎる」
近づくだけで踏み潰される戦いだ、オックス達はゼロを護衛する以外に為す術はない。
そんな中でレナだけはゼロの肩に手を置きながら機会を窺っていた。
(私ならばゼロを手助けできる。ゼロの思考を感じて一瞬の好機を見極める・・・)
ゼロの言うとおり、目の前のドラゴン・ゾンビは今までの個体とはわけが違う。
レナの全力を注いだ魔法でも仕留めることは不可能だろう。
それでも出来ること、為すべきことはある。
突然始まったアンデッド・ドラゴンの激しい戦いに進撃を続けていたイザベラの軍団も足を止めた。
「なんて物を召喚しましたの、あのおバカネクロマンサーは!危なくて近づけないではありませんの!」
腰に手を当てて仁王立ちするイザベラが苛立ちを露わにする。
「イザベラよ、仕方あるまい。あのドラゴン・ゾンビの邪悪な気は別格だ。我々聖騎士団でもただでは済まん」
ヘルムントが諫めるがイザベラの怒りは収まらない。
「そんなことは分かっていますのよ!だからこそ自分自身の不甲斐なさが許せないのです」
2人のやり取りを見ていたグレイは敢えて何も口出ししなかった。
こんな時のイザベラは見守って欲しい場合と他人に何かを言って欲しい場合の両極端で、選択肢を誤れば余計に機嫌が悪くなる。
今回は黙って見守る方に賭けた。
「・・・グレイ、何とか言ったらどうですの!まったく、相変わらず気が利きませんわね!」
理不尽な言葉をぶつけてくるイザベラ。
グレイは選択肢を誤ったようだ。
そうは言ってもイザベラは冷静に判断して軍団を僅かに後退させて防御を固めつつ、周囲のアンデッドの掃討に専念した。
2対1でありながら互角の勝負を繰り広げていた巨竜3体による戦いも均衡が崩れつつあった。
ゼロのスケルトン・ドラゴンがドラゴン・ゾンビを押し始めたのである。
レナは機を見定めた。
狙うはドラゴン・ゾンビの頸骨。
極限まで圧縮した雷撃の針を片方のドラゴン・ゾンビに撃ち込んだ。
パチンッ!
レナが指を鳴らすとドラゴン・ゾンビの頸骨に突き刺さった針が炸裂する。
ドラゴン・ゾンビの脊髄を電撃が走り、その反射によりほんの一瞬だけドラゴン・ゾンビの動きが止まった。
通常であれば勝機を見いだすことも出来ないような一瞬だったが、スケルトン・ドラゴンはその隙を見逃さなかった。
3つの首が同時にドラゴン・ゾンビの首に食らいつく。
強固な肉体を持つドラゴン・ゾンビとはいえ、それ以上の力を持つスケルトン・ドラゴンに三方向から食いつかれては勝ち目はなく、その首をスケルトン・ドラゴンに食い千切られて消滅した。
「見事・・・」
戦いを見守っていたプリシラが思わず口走る。
ドラゴン・ゾンビが1体になればプリシラにも打つ手はあるが、その必要もなさそうだ。
2対1でも互角以上の戦いを繰り広げたスケルトン・ドラゴンだ、1対1ならば負ける要素はない。
程なくしてスケルトン・ドラゴンがドラゴン・ゾンビを組み伏せて、その首を食い千切り、巨竜の戦いに終止符を打った。
ドラゴン・ゾンビが倒されてサイノスを守るのは周囲のアンデッド達だけだ。
「ドラゴン・ゾンビを倒したとはいえ、アンデッドですので再召喚が可能です。ただ、強大な力を持つ故にサイノスでも再召喚までは時間が掛かります。今が勝機です!」
スケルトン・ドラゴンを戻し、意識を取り戻したゼロは代わりにオメガ達最上位アンデッドを召喚しながら叫んだ。
「よし!残りのアンデッド共は任せろ!」
オックス達が駆け出した。
「おバカネクロマンサーには遅れを取りません!全軍前進!」
イザベラも再び進撃に転じる。
「このまま何もせぬでは魔王の名折れだ。妾ももう一暴れさせてもらおう」
プリシラが大鎌を片手に歩き出す。
その背後には魔物達が続いた。
戦いは最終局面を迎えた。
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