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決戦の前
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最後の攻撃が開始される。
準備を進める攻撃部隊から少し離れた前線に立っているゼロはまだアンデッドを召喚していない。
最悪に備えて余力を残すとはいえ、短期決戦を挑むからには数千のアンデッドを召喚して指揮しなければならず、アンデッドを展開するために後方部隊から少し離れた場所で時を待っているのだ。
ゼロの傍らにはレナ、ライズ、オックス、リリス、イズ、リズ、コルツ、チェスター、カミーラ、セイラ、アイリアに加えてどういうわけかリックスがゼロと共に時を待っている。
ゼロ達の前には入り組んだ都市に点在する軍拠点、そしてその奥には重厚な砦がそびえ立つ。
都市内に敵の姿は無いが、敵は死霊の王、ノー・ライフ・キングだ。
戦いが始まれば一瞬のうちに数万のアンデッドが布陣してゼロ達を迎え撃つだろう。
ネクロマンサー同士の戦いを前にして周囲は不気味な静けさに包まれていた。
「最前線も最前線だな。俺としては望むところだが、肝心のゼロがこんなに前に出る必要はないだろう?お前ならばもっと後方からでもアンデッドを指揮できる筈だぜ」
ライズがゼロに話しかける。
「私が前線に立つのには理由があります。ノー・ライフ・キングがどこに居るのか分かりますか?」
「そりゃあ、あの砦に籠もっているんじゃないか?」
ライズの答えにゼロは首を振り、レナが代わりに答える。
「ライズもゼロの、ネクロマンサーの戦い方を何度も見たことがあるでしょう?ゼロは後方からでもアンデッドを操れるけど・・・」
「ああ、そうか!前線でアンデッドを直接指揮した方がいいのか!」
ゼロが頷く。
「しかも、アンデッドを出現させるのは自由自在で神出鬼没。それを使役するノー・ライフ・キングも大人しくしてはいませんよ。だから私も前線に出てアンデッドを使役するだけでなく、敵の気を探り出すんですよ」
今から始まるのはゼロとノー・ライフ・キングの死霊術の真っ向勝負なのだ。
ゼロはセイラを見た。
「セイラさんは浄化の祈りや結界による援護をお願いします」
「分かりました。でも、ゼロさんのアンデッドは大丈夫ですか?」
双方がアンデッドの戦いとなる戦場で対アンデッドの力を行使することを懸念するセイラにゼロは肩を竦めた。
「失礼ですが、全く問題ありません。貴女の力の波長に合わせてアンデッドを操ることなど造作もありません」
「・・・そう、ですか」
さらりと言われ少し傷ついたセイラ。
その様子を見てレナがクスクスと笑っている。
「アイリアさんとコルツさん、リックスさんはセイラさんの護衛をお願いします。特にリックスさんはセイラさんに危険が及んだら躊躇いなくセイラさんとアイリアさんを連れて後退してください。その退路を切り開くのはコルツさんの役目です」
「任せてくれ!」
「やり遂げてみせます!連隊長殿」
冒険者としての自信を取り戻したリックスは少し誇らしげだ。
コルツはアイラス王国軍式の敬礼で応えた。
「他の皆さんはオックスさんの指揮で私の周囲の守りをお願いします」
ゼロは皆を見渡した。
ライズが呆れ顔で笑う。
「ゼロの守りっても、お前は直ぐに剣を抜いて飛び出すからな。だが、任せておけ!俺が先に飛び出してお前が剣を振る暇なんか与えねえよ」
「頼みますよ、精霊騎士のライズさん」
「やめてくれ、まだそれを名乗るには役不足だ」
照れるライズにオックスとリリスも笑顔を見せる。
「まったく、ゼロといると命がいくつあっても足りねえよ。またゼロ連隊、いや、ゼロ軍団の副団長かよ」
「でも、どんなに厳しい状況でも、不思議と必ず生き残れると感じるのよね」
2人の言葉にゼロも思わず笑みを浮かべる。
「こんなことを頼めるのはオックスさんだけですよ。おかげでリリスさんにも面倒を掛けてしまいますね」
「おだてても何も出ねえぞ!」
「何も心配しないで貴方の戦いに専念しなさい」
イズとリズもゼロの前に立つ。
「ゼロ様、ここまでご一緒できて嬉しく思います。我等兄妹がここまでの高みに来れたのもゼロ様のおかげです」
「ゼロ様、この戦いが終わったら、その時はゼロ様を師匠と呼ばせてください」
「イズさん、リズさん、私達は仲間じゃないですか、そろそろ様は勘弁してください。そして、リズさんは既に私の一番弟子ですよ。ただ、師匠は勘弁してください」
「「ありがとうございますゼロ様!」」
チェスターとカミーラが皆の前に歩み出た。
「ゼロ、そして皆。改めて礼を言う。一度は国を失ったと思ったが、皆のおかげでここまで来れた。最後の戦い、俺達も存分に戦ってみせる。もしも、誰かが死ぬ時は俺が一番最初だ」
「・・・みんな、ありがとう」
深々と頭を下げる2人。
「止めろ止めろ!死に急ぐなよ。例え死んでもゼロはアンデッドの仲間には入れてくれねえぞ」
茶化すライズに皆が笑った。
そして、最後にレナがゼロの手を握る。
「ゼロ、必ず一緒に帰るわよ。貴方が帰るべき場所は私達の、シーナが待っているあの家だけよ。そのために私が貴方を守ってあげる。絶対に風の都市に連れて帰ってあげる」
ゼロは頷くとレナの手を離して自分が進むべき前を向いた。
「始めます」
そう言って剣を抜いて歩き出すゼロ。
進む先に数千のアンデッドの軍勢が音もなく現れた。
ノー・ライフ・キングの軍勢だ。
ゼロの周りにオメガ、アルファ、サーベル、スピア、シールド、シャドウ、ミラージュ、ジャック・オー・ランタンが現れ、ゼロの後には仲間達が続く。
ゼロとアンデッド、そして仲間達の最後の進撃が始まった。
準備を進める攻撃部隊から少し離れた前線に立っているゼロはまだアンデッドを召喚していない。
最悪に備えて余力を残すとはいえ、短期決戦を挑むからには数千のアンデッドを召喚して指揮しなければならず、アンデッドを展開するために後方部隊から少し離れた場所で時を待っているのだ。
ゼロの傍らにはレナ、ライズ、オックス、リリス、イズ、リズ、コルツ、チェスター、カミーラ、セイラ、アイリアに加えてどういうわけかリックスがゼロと共に時を待っている。
ゼロ達の前には入り組んだ都市に点在する軍拠点、そしてその奥には重厚な砦がそびえ立つ。
都市内に敵の姿は無いが、敵は死霊の王、ノー・ライフ・キングだ。
戦いが始まれば一瞬のうちに数万のアンデッドが布陣してゼロ達を迎え撃つだろう。
ネクロマンサー同士の戦いを前にして周囲は不気味な静けさに包まれていた。
「最前線も最前線だな。俺としては望むところだが、肝心のゼロがこんなに前に出る必要はないだろう?お前ならばもっと後方からでもアンデッドを指揮できる筈だぜ」
ライズがゼロに話しかける。
「私が前線に立つのには理由があります。ノー・ライフ・キングがどこに居るのか分かりますか?」
「そりゃあ、あの砦に籠もっているんじゃないか?」
ライズの答えにゼロは首を振り、レナが代わりに答える。
「ライズもゼロの、ネクロマンサーの戦い方を何度も見たことがあるでしょう?ゼロは後方からでもアンデッドを操れるけど・・・」
「ああ、そうか!前線でアンデッドを直接指揮した方がいいのか!」
ゼロが頷く。
「しかも、アンデッドを出現させるのは自由自在で神出鬼没。それを使役するノー・ライフ・キングも大人しくしてはいませんよ。だから私も前線に出てアンデッドを使役するだけでなく、敵の気を探り出すんですよ」
今から始まるのはゼロとノー・ライフ・キングの死霊術の真っ向勝負なのだ。
ゼロはセイラを見た。
「セイラさんは浄化の祈りや結界による援護をお願いします」
「分かりました。でも、ゼロさんのアンデッドは大丈夫ですか?」
双方がアンデッドの戦いとなる戦場で対アンデッドの力を行使することを懸念するセイラにゼロは肩を竦めた。
「失礼ですが、全く問題ありません。貴女の力の波長に合わせてアンデッドを操ることなど造作もありません」
「・・・そう、ですか」
さらりと言われ少し傷ついたセイラ。
その様子を見てレナがクスクスと笑っている。
「アイリアさんとコルツさん、リックスさんはセイラさんの護衛をお願いします。特にリックスさんはセイラさんに危険が及んだら躊躇いなくセイラさんとアイリアさんを連れて後退してください。その退路を切り開くのはコルツさんの役目です」
「任せてくれ!」
「やり遂げてみせます!連隊長殿」
冒険者としての自信を取り戻したリックスは少し誇らしげだ。
コルツはアイラス王国軍式の敬礼で応えた。
「他の皆さんはオックスさんの指揮で私の周囲の守りをお願いします」
ゼロは皆を見渡した。
ライズが呆れ顔で笑う。
「ゼロの守りっても、お前は直ぐに剣を抜いて飛び出すからな。だが、任せておけ!俺が先に飛び出してお前が剣を振る暇なんか与えねえよ」
「頼みますよ、精霊騎士のライズさん」
「やめてくれ、まだそれを名乗るには役不足だ」
照れるライズにオックスとリリスも笑顔を見せる。
「まったく、ゼロといると命がいくつあっても足りねえよ。またゼロ連隊、いや、ゼロ軍団の副団長かよ」
「でも、どんなに厳しい状況でも、不思議と必ず生き残れると感じるのよね」
2人の言葉にゼロも思わず笑みを浮かべる。
「こんなことを頼めるのはオックスさんだけですよ。おかげでリリスさんにも面倒を掛けてしまいますね」
「おだてても何も出ねえぞ!」
「何も心配しないで貴方の戦いに専念しなさい」
イズとリズもゼロの前に立つ。
「ゼロ様、ここまでご一緒できて嬉しく思います。我等兄妹がここまでの高みに来れたのもゼロ様のおかげです」
「ゼロ様、この戦いが終わったら、その時はゼロ様を師匠と呼ばせてください」
「イズさん、リズさん、私達は仲間じゃないですか、そろそろ様は勘弁してください。そして、リズさんは既に私の一番弟子ですよ。ただ、師匠は勘弁してください」
「「ありがとうございますゼロ様!」」
チェスターとカミーラが皆の前に歩み出た。
「ゼロ、そして皆。改めて礼を言う。一度は国を失ったと思ったが、皆のおかげでここまで来れた。最後の戦い、俺達も存分に戦ってみせる。もしも、誰かが死ぬ時は俺が一番最初だ」
「・・・みんな、ありがとう」
深々と頭を下げる2人。
「止めろ止めろ!死に急ぐなよ。例え死んでもゼロはアンデッドの仲間には入れてくれねえぞ」
茶化すライズに皆が笑った。
そして、最後にレナがゼロの手を握る。
「ゼロ、必ず一緒に帰るわよ。貴方が帰るべき場所は私達の、シーナが待っているあの家だけよ。そのために私が貴方を守ってあげる。絶対に風の都市に連れて帰ってあげる」
ゼロは頷くとレナの手を離して自分が進むべき前を向いた。
「始めます」
そう言って剣を抜いて歩き出すゼロ。
進む先に数千のアンデッドの軍勢が音もなく現れた。
ノー・ライフ・キングの軍勢だ。
ゼロの周りにオメガ、アルファ、サーベル、スピア、シールド、シャドウ、ミラージュ、ジャック・オー・ランタンが現れ、ゼロの後には仲間達が続く。
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