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ゼロの大博打2
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霧の中の太陽は三分の一程が姿を隠している。
篝火の前で意識を飛ばしながら妖艶に舞い続けるカミーラ。
剣を抜いて警戒していたチェスターはその場の雰囲気が変わったことに気付いた。
「・・・来たな」
予測していたアンデッドだけではない、周辺にいた低級の魔物までもがカミーラの舞に誘われるように近づいて来る。
チェスターは剣に魔力を込めながら共にカミーラを守るシールド達を見た。
「カミーラには絶対に近づけさせない。お前等も頼むぜ」
シールドと指揮下のスケルトンの戦士達はカミーラを中心に隊列を整えた。
王都内、教会前の広場では柱に縛りつけられられたセイラの傍らに黒衣のネクロマンサーが佇み、松明を持つ信徒達がセイラを取り囲んでその時を待っている。
その場は不気味な静けさに包まれていた。
中隊を立て直したグレイは再突撃の隊形を整える。
「時間が無い、突撃を開始する!」
槍をかざすグレイを先頭に中隊は再び突撃を開始した。
グレイ達の突撃に合わせてオックス達が王都の正門を突破して一直線に教会前の広場に突き進む。
「おりゃあっ!邪魔だ!」
オックスが戦鎚を振りかざして群がるアンデッドを吹き飛ばし、ライズ、コルツが左右を固め、リリスが殿を守る。
リリスはまるで弓矢を近接武器のように次々と至近距離から放つ。
しかも、その一撃は強烈で、直撃を受けたスケルトンの頭部が粉々に粉砕された。
精霊騎士となったライズだが、未だ精霊を扱える程の技量は無いうえ、この大切な戦いにおいて不確実は力を使うことはせず、純粋に剣技のみで戦っている。
「命が惜しくないならば俺の前に出ろ!残らずぶっ殺してやる!」
「ライズ殿、アンデッド相手に何を言っていますか」
「いいじゃねえか、気分の問題だ!こんな物騒なこと対人戦闘では言えねえからな!なんたって俺は銀等級の冒険者だ。他の連中の手本にならなきゃならねえからな」
コルツの突っ込みを受けながらもライズは得意の軽口を叩きながら剣を走らせた。
オックス達は鬼神の如き戦いを繰り広げるが、セイラの居る広場まではまだ届かない。
オックス達の突入に乗じて王都内に潜入したイズとリズは教会近くの倉庫に潜んでいた。
2人が本気で気配を消して潜入したため、陽動として動いているグレイ中隊やオックス達よりも教会近くまで接近している。
「間もなく時が来る。リズ、ゼロ様の弟子としての力を示せ」
「お任せください兄様。この役を成し遂げれば私もゼロ様に少しは近づくことができます。その時こそ・・・」
2人は息を潜めて時が来るのを待つ。
太陽は半分以上が姿を隠している。
運命の時が着実に近づいていた。
グレイを先頭に突き進んできた中隊だが、アンデッドだけでなくグレイ達を迎え撃とうとする信徒達に阻まれていた。
教会まではまだ距離がある。
「時間がない、前進!」
グレイは最後の突撃を命令した。
その頃、オックス達も教会まで到達出来ずにいる。
「くそっ!倒しても倒してもキリがねえな!」
4人はアンデッド達に囲まれて足を止めていた。
太陽が天頂に差し掛かり、その姿の殆どが姿を消した。
信徒達の祈りの声が響きわたり、今まさに彼等の持つ炎がセイラに焼べられようとしている。
もう時間が無い、その時
「・・・今です!」
ゼロが呟いた。
倉庫に潜むリズの下にオメガが姿を現し、恭しく礼をする。
「お弟子様、我等の出番です」
リズは頷いて自分の持つ力の全てを使ってアンデッドを召喚した。
「みんな、お願い!」
サラマンダーの炎を身に纏うスケルトンウォリアーの戦士達、ウィル・オー・ザ・ウィスプとサラマンダーの力を絡めた火炎蜥蜴をそれぞれ数十体。
リズの指揮下に入るように指示されているオメガは眷族のヴァンパイアを数十体呼び出した。
リズのアンデッド達とオメガとその配下は儀式が行われている広場に一直線に突き進む。
それまで動きを見せなかった黒衣のネクロマンサーが動いた。
突如として現れた異質のアンデッド達の姿にネクロマンサーの気が逸れた。
儀式を邪魔せんとする敵の死霊術師の企みを阻止すべく、向かって来るアンデッドに対して強大なる力を呼び覚ます。
地響きとともに大地を割って這い出して来たのはドラゴン・ゾンビ。
絶対なる邪悪の存在であり、アンデッドを餌とする破壊の化身が大地をも震わせる咆哮をあげた。
「身の程も知らぬ愚かなる者よ。己の無力さを呪うがいい」
声高らかに空を見上げる黒衣のネクロマンサー。
今、霧の中の太陽が姿を消し、王都が闇に包まれた。
「時は来た!贄を捧げ、冥神サイノスをこの世に!太陽の光を駆逐し、世界を闇で支配するのだ」
ネクロマンサーの声を合図に信徒達が火を焼べようとしたその時
「そこまでです」
ゼロの声と共にレナの炎の壁がセイラの周囲を包み、セイラを信徒達から隔離した。
リズのアンデッド達をゼロの主力と誤認したネクロマンサーの隙を突いたゼロとレナは王都全体を覆う幻惑に紛れて儀式の場に姿を現した。
「私の勝ちです」
篝火の前で意識を飛ばしながら妖艶に舞い続けるカミーラ。
剣を抜いて警戒していたチェスターはその場の雰囲気が変わったことに気付いた。
「・・・来たな」
予測していたアンデッドだけではない、周辺にいた低級の魔物までもがカミーラの舞に誘われるように近づいて来る。
チェスターは剣に魔力を込めながら共にカミーラを守るシールド達を見た。
「カミーラには絶対に近づけさせない。お前等も頼むぜ」
シールドと指揮下のスケルトンの戦士達はカミーラを中心に隊列を整えた。
王都内、教会前の広場では柱に縛りつけられられたセイラの傍らに黒衣のネクロマンサーが佇み、松明を持つ信徒達がセイラを取り囲んでその時を待っている。
その場は不気味な静けさに包まれていた。
中隊を立て直したグレイは再突撃の隊形を整える。
「時間が無い、突撃を開始する!」
槍をかざすグレイを先頭に中隊は再び突撃を開始した。
グレイ達の突撃に合わせてオックス達が王都の正門を突破して一直線に教会前の広場に突き進む。
「おりゃあっ!邪魔だ!」
オックスが戦鎚を振りかざして群がるアンデッドを吹き飛ばし、ライズ、コルツが左右を固め、リリスが殿を守る。
リリスはまるで弓矢を近接武器のように次々と至近距離から放つ。
しかも、その一撃は強烈で、直撃を受けたスケルトンの頭部が粉々に粉砕された。
精霊騎士となったライズだが、未だ精霊を扱える程の技量は無いうえ、この大切な戦いにおいて不確実は力を使うことはせず、純粋に剣技のみで戦っている。
「命が惜しくないならば俺の前に出ろ!残らずぶっ殺してやる!」
「ライズ殿、アンデッド相手に何を言っていますか」
「いいじゃねえか、気分の問題だ!こんな物騒なこと対人戦闘では言えねえからな!なんたって俺は銀等級の冒険者だ。他の連中の手本にならなきゃならねえからな」
コルツの突っ込みを受けながらもライズは得意の軽口を叩きながら剣を走らせた。
オックス達は鬼神の如き戦いを繰り広げるが、セイラの居る広場まではまだ届かない。
オックス達の突入に乗じて王都内に潜入したイズとリズは教会近くの倉庫に潜んでいた。
2人が本気で気配を消して潜入したため、陽動として動いているグレイ中隊やオックス達よりも教会近くまで接近している。
「間もなく時が来る。リズ、ゼロ様の弟子としての力を示せ」
「お任せください兄様。この役を成し遂げれば私もゼロ様に少しは近づくことができます。その時こそ・・・」
2人は息を潜めて時が来るのを待つ。
太陽は半分以上が姿を隠している。
運命の時が着実に近づいていた。
グレイを先頭に突き進んできた中隊だが、アンデッドだけでなくグレイ達を迎え撃とうとする信徒達に阻まれていた。
教会まではまだ距離がある。
「時間がない、前進!」
グレイは最後の突撃を命令した。
その頃、オックス達も教会まで到達出来ずにいる。
「くそっ!倒しても倒してもキリがねえな!」
4人はアンデッド達に囲まれて足を止めていた。
太陽が天頂に差し掛かり、その姿の殆どが姿を消した。
信徒達の祈りの声が響きわたり、今まさに彼等の持つ炎がセイラに焼べられようとしている。
もう時間が無い、その時
「・・・今です!」
ゼロが呟いた。
倉庫に潜むリズの下にオメガが姿を現し、恭しく礼をする。
「お弟子様、我等の出番です」
リズは頷いて自分の持つ力の全てを使ってアンデッドを召喚した。
「みんな、お願い!」
サラマンダーの炎を身に纏うスケルトンウォリアーの戦士達、ウィル・オー・ザ・ウィスプとサラマンダーの力を絡めた火炎蜥蜴をそれぞれ数十体。
リズの指揮下に入るように指示されているオメガは眷族のヴァンパイアを数十体呼び出した。
リズのアンデッド達とオメガとその配下は儀式が行われている広場に一直線に突き進む。
それまで動きを見せなかった黒衣のネクロマンサーが動いた。
突如として現れた異質のアンデッド達の姿にネクロマンサーの気が逸れた。
儀式を邪魔せんとする敵の死霊術師の企みを阻止すべく、向かって来るアンデッドに対して強大なる力を呼び覚ます。
地響きとともに大地を割って這い出して来たのはドラゴン・ゾンビ。
絶対なる邪悪の存在であり、アンデッドを餌とする破壊の化身が大地をも震わせる咆哮をあげた。
「身の程も知らぬ愚かなる者よ。己の無力さを呪うがいい」
声高らかに空を見上げる黒衣のネクロマンサー。
今、霧の中の太陽が姿を消し、王都が闇に包まれた。
「時は来た!贄を捧げ、冥神サイノスをこの世に!太陽の光を駆逐し、世界を闇で支配するのだ」
ネクロマンサーの声を合図に信徒達が火を焼べようとしたその時
「そこまでです」
ゼロの声と共にレナの炎の壁がセイラの周囲を包み、セイラを信徒達から隔離した。
リズのアンデッド達をゼロの主力と誤認したネクロマンサーの隙を突いたゼロとレナは王都全体を覆う幻惑に紛れて儀式の場に姿を現した。
「私の勝ちです」
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